車好きの友人が GT-Rを増車しました。
そうです。2007年に世に送り出された日本のスーパーカー
です。デビュー当時、ニュルンブルクリンクで7分30秒台を
出し、2009年には7分26秒台を出して車業界の注目の的
となったあの車です。
これまでお披露目のパーティーで、シートのすわり心地や
エンジン音だけは体験していましたが、肝心の走るGT-R
に乗ったことがありません。「一度助手席に乗せたい」
(“助手席”にというところがミソです。運転席に、という
オファーはもらえません・笑)という申し出を断る理由は
なにもなく、ドライブに連れていってもらうことになりました。
友人はGT-Rの性能を私に見せることを目的としていますから
その運転に遠慮はありません。発進から一気に加速。ゆるく
座っていた我が身が想像以上の力でシートに押しつけられる
ターボエンジンの威力に驚いて、気を引き締めてシートポジシ
ョンを変更しました。6速キープのまま侵入した高速連続カー
ブでの体感速度と実際速度のずれは、4輪駆動の前輪と後輪
への力の移動のぶれのなさを表しています。
友人に催促して上がってもらったワインディングロード
では、右に左にと車体にかかる力にすばやく反応して
4輪全体で蹴り出すようにバランスをとっていく安定性
に驚かされました。Rのきついカーブでも、カーブを抜け
て態勢を整えるのと加速するまでの荷重移動のつなぎ
は実になめらか。
しかも上りであろうと下りであろうと、ほとんど3速と4速
で1.8tの重い車体が軽々と前に進んでいきます。
もちろん友人は足回りのセッティングを自分のドライビン
グスタイルにあわせて調節しています。安定性がさらに
増強されているにしても、もともとの設計が“スポーツス
タビリティ”ですから、多少無理な曲がり方をしても滑る
兆候すらなく、乗っていて余計な心理的ストレスがかか
ることはまったくありません。
すごい車だ、といううわさは聞いていましたが、実のところ
“ちょっとパワフルなスポーツカー”としか思っていなかった
のでこれには本当にびっくり!GT-Rという車が、これまで
にない高度な性能を求めて妥協なく作りこまれたテクノロ
ジーの結集であることを実感しました。
関係者や専門家にしかわからないような微細なことで
あっても、重箱の隅をつつくように追究し、妥協なく取り
組むことを、開発者自らが求める姿勢とその結果が積み
上げられて実現するパフォーマンス。これぞ日本の技術
開発だと私は思います。真摯な開発者の“ものをつくる
情熱”は、どのような製品にもこめられていると思います。
GT-Rは車ですし、ものづくりのコンセプトをまったく異に
していますが、TOTOでも同じような開発者の日々の闘い
が、思いもよらない製品を実現しています。
ところで、みなさまは、シャワーに爽快さと刺激を求める
パワーシャワー派ですか?それとも、癒しとくつろぎを求
めるマイルドシャワー派でしょうか?
この春、Samui島に休暇に出かけました。
前号でお話に出しました、明確なサステナビリティ・ポリ
シーを持ったSix Senses Resorts & Spasのひとつ、
Six Senses Hideawayで過ごしたプール付のVilla Suite
のバスルームには、半屋外のデッキがありました。
デッキにはシャワーがふたつ。
ひとつはパワーシャワー、もうひとつは蓮の実のような
レトロなシャワーヘッドから滴るマイルドなシャワーが
つけられていました。その時の気分によってシャワー
を選ぶことができる。ただそれだけなのですが、とても
気持ちが豊かになります。
この気持ちの贅沢が気に入ってしまい、朝目覚めたからと
シャワーを浴び、ビーチからあがったからとシャワーを浴び
プールに入ったからとまたシャワーを浴び、ディナーに行く
からとシャワーを浴びる、という感じで、いろいろな時間に
デッキに出ていたのですが、休暇のリラックスした気分の
なかで浴びるには、やさしく降り注ぐ通り雨のようなマイル
ドなシャワーがぴったりでした。
TOTOの新しいシャワーは、このマイルド系シャワーです。
エアインシャワーという名前のこのシャワーから降り注ぐ
のは空気を含んだ滴です。肌触りもマイルドで、まるで
水の粒に包み込まれるような浴び心地をお楽しみいた
だけます。浴び心地というあいまいな感性を解析し数値化
してこのシャワーが生まれた開発のストーリーは、TOTO
の環境ポータルサイトGreen Channel内のGreen Story
に掲載しております。
空気を含んだ分、水量も少なくて済みますから、こちらも
前号で少しだけお話した4.8リットルの超節水型トイレシリ
ーズと同じく、知らぬ間に環境配慮ができてしまうエコロジ
カルな製品なのです。ですが、水量が少ないからといっ
てひょろひょろしたシャワーではないのでご安心ください。
ドライブの話がシャワーの話になってしまいました(笑)。
お伝えしたかったのは、レベルの差こそあれ、いずれ
劣らぬものづくりへの情熱のことです。コンセプトを設定
してそれに向けて追究の手を緩めない。海外で、geekと
呼ばれるらしい、いわば技術フェチの源泉が開発者スピ
リットの土台にあることこそ、日本の職人技なのでしょう。
GT-Rのような自国を誇りに思える製品が、世界市場で
輝くことがとても嬉しく思えます。
*ご参考
エアインシャワー/TOTO New Material ベーシックプラスシリーズ
エアインシャワー プレスリリース
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vol.1 海のこと、水のこと、エコロジーのこと
TOTO株式会社 佐藤仁美さん プロフィール