PAGETOP

アーネストブログ ENTRY

  • アーネストホーム 資料請求アンケート
  • アーネストホーム CD-ROMアンケート
メインコンテンツ
  • ENTRY
  • BLOG TOP

アーネストコラム酒酒落落 NEXT代表 加藤洋一さん 第四回 ブラックルーム

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年9月10日

指定席へどうぞ。


BLK+.jpg


漆黒の闇に灯る一条の光。その下には静かに主の訪れを待つ椅子が一脚。
外界とは全く異なる時間軸で時が流れる空間。
認識としての「離れ」。




これは私が「ホームシアター」の機能を純化、追求した結果到達した究極の解としての空間の在り方です。2004年に「ブラックルーム」という呼称で発表し、理解を得られるには時間を要するだろう、という予測はすぐに裏切られ、体感した方々の多くにご導入を決めていただきました。
前回までに述べてきたスマートハウスの姿は、エンタテインメントを中心に据えて、いつでもどこでも快適で便利な生活を実現するもので、空間の仕切りを超えて充実する性能は、謂わば「オープン化」する方向性をもっています。逆説的になりますが、日常的空間がオープン化すればするほど、それとは全く正反対の「非日常」を持つことが必然となってくると思います。
旅に出る、別荘に籠る、そうした時間ももちろん貴重なのですが、非日常に誘う空間をひとつ、自宅に用意することも忙しい現代人にとっては一考に値するのではないでしょうか。


「ブラックルーム」はテクノロジーが創る闇です。
映像にとっては映り込む余計な光は極力排除したい。音楽にとっては他の音は雑音であり、観たい映像、聴きたい音に集中するためには、外部の音と光を遮断した漆黒の闇こそが理想の空間となります。再生するための機器の存在もできる限り消し去ってしまうことが肝要です。
しかしながら、人間は本能的に闇には恐怖感を抱きます。そこで、照明というテクノロジーを使い、暗闇と仄かな灯りとの対比を生み、指定席に腰掛けたあなたを安堵と心地よさが包み込む仕掛けを作ります。まるで胎内の記憶が呼び覚まされたように心が落ち着き、しばらくすると自分の呼吸と心拍音すら聴こえてきます。五感のひとつ「視覚」が奪われることで、他の感覚、特に聴覚の感度が上がることを経験したことはありませんか?「闇」や「暗」という漢字に「音」の文字が含まれていることには、人間の視覚と聴覚の関係が表れているように思います。
以前、インテリアデザイナーの内田繁氏と対談した折に、千利休の待庵とブラックルームとの共通点についてご指摘を受けたことがあります。「待庵の壁は黒く塗られ、ホリゾントをなくしている。つまり利休は、真っ黒の空間にして限界をなくすことで、自分のいる場所が宇宙につながっているという感覚を人工的に呼び起こそうとしたのだ。利休が待庵に求めたのは宇宙を凝縮したような空間だったといえ、そういう意味でブラックルームは待庵を彷彿とさせるデザインだ」というお言葉をいただきました。


対談記事の詳細はこちら
http://www.next-yk.co.jp/pdf/htp2008-49.pdf


もともと映像と音楽を楽しむ究極の部屋を創ろう、というコンセプトで設計した空間ですが、非日常の空間として余計な装飾を削ぎ落とした結果、「茶室」に通ずるデザインになったことは私自身、興味深いことだと感じています。
感覚を研ぎ澄ませることのできるブラックルームは、読書や瞑想のための部屋としてお使いいただくなど、そこでどう過ごすかはもちろん自由です。
とはいえ、私が本当にお勧めしたいのは、やはりエンタテインメントを徹底して愉しむこと。
感覚的感度が上がった状態で映画や音楽を鑑賞することによって、対象への没入感は格段に高まります。エンタテインメント専用の部屋を設える意味はそこにあり、俗世から一気に引き離され、非日常に浸る爽快感をぜひ味わっていただきたいと思います。


* * *


こちらのブログタイトル「酒酒落落」は英訳すれば‘free and easy’となるそうです。
心にわだかまりがなく、何ものにもとらわれない、自由な様。
投稿のご依頼をいただいた際に、それこそ真のスマートハウスが支えるべき在り方であり、我々が密かに「アタラクシア」と呼んでいる境地に通じるものと、ひとり合点がいき、慣れない執筆を拝受した次第です。
「アタラクシア」についての想いはいずれまたお目にかかれた機会にでも、と願うのみですが、日々の生活にときめきをもたらすテクノロジーについて幾ばくかでもお伝えできたのであれば幸甚です。
拙文をお読みいただきましたことに深く感謝しつつ、筆を置かせていただきます。




NEXTウェブサイト
http://www.next-yk.co.jp/




デザイン・設計の
アーネストアーキテクツサイトはこちら
new-B.jpg


リフォームから、施工までの
アーネストグループ全体サイトはこちら
group_bana.jpg


TOPに戻る


PAGETOP