僕は自分の心の内や考えを文章にしたことがほとんどありません。筆不精もひとつの理由ですが、仕事の目的が自己表現ではなく、人が喜ぶことをカタチにすることに徹底してきたことが一番の理由でしょう。カッコ良くいえば自分を語らない。それが信条なのですから、今回アーネストブログへ寄稿させていただくことはちょっとした冒険でもあります。でもせっかくですのでこれを機会に、自分なりに僕とアムスタイルの仕事の内面を掘り下げてみたいと思います。
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>>キッチンの仕事のできること
僕は20代、30代を通して音楽に関わる仕事を続けてきました。32才で会社を作ってからもその環境は変わりませんでした。そして傍目には突然、38才の時にアムスタイルキッチンを創業したのです。なぜだったのでしょう。その理由について先日ふと考えさせられたシーンがありました。
スケルトンリフォームの解体の初日に立ち会った御宅のキッチンの壁に、黒いサインペンで書かれた「ありがとう」の文字。ご家族が退去される時に書いたようです。僕は思いました。「僕たちはこの家族の新しい人生を作る仕事をしているんだ」と。ともすればデザインや素材選びなどものづくりの表層的なことばかりに捉われ、施主の気持ちの奥底にある想いを理解しないまま仕事をしていることはないのかと。昔、音楽に携わっていた頃はどうだったのでしょう。自分のアイデアや企画に酔いしれてお客さんや周りのスタッフの気持ちを一つにすることに専心できていたのだろうかと。
実は自分の中ではキッチンを作る仕事は、エンターテイメントそのものなのです。
施主の思いとアムスタイルの表現手法の接点を見つけてキッチンをつくる。できることならば完成した時には、施主が涙してしまうほどの感動を与えたい。音や映像でできることが、家づくりの仕事にできないはずはないと信じて、毎日の仕事に向かっています。
>>暮らしの息づかいを伝えたい
実はアーネストさんとアムスタイル、共通していることがあります。それは広告表現です。どちらのブランドもそこに使われている写真のほとんどが、実例であるということ。これは自画自賛ですが大変に価値あることなのです。
施主が選んだ土地やマンション。設計士やインテリアコーディネイターなど多くのスタッフが関わり出来上がっていく空間に、アムスタイルのキッチンが据え付けられる。そして完成した家。窓から望む風景も大切です。塗り壁の質感も大切です。これらの写真にはどんな有名ブランドのスタジオ写真にもない、そこに暮らす人々の息づかいと積み重ねられてきたセンスが横たわっています。今後、そんなアーネストさんとアムスタイルのコラボレートも期待いただけるのではないでしょうか。
>>オリジナリティより大切なこと
先日、久々に軽井沢で撮影を行いました。この施主さん実は軽井沢で2軒目の家づくりです。1軒目もご一緒させていただき、再度ご指名を頂いた喜びはひとしおです。写真で感じていただけるでしょうか、家中に溢れるゆるやかな時の流れを。置かれた家具はブランドで取り揃えられたものではなく、肩肘張らないセンスの良さを感じます。旧軽井沢の木立の中にポッカリと空いた土地に佇む平屋建て。リビングとテラスの両方に設えられた暖炉。林と室内の端境が季節や暮らし方によって変化する家です。
キッチンは大理石をぶ厚くあしらい、堂々としたフォルムで戸外と空気を共有しています。実はこのキッチン、お話を頂いた時にはお客さまのイメージは出来あがっていました。僕たちがしたことは、それを具体化したこと。お客様が思い描いたデッサンに、細かい寸法やツヤの質感などを加え、額装して出来上がった一枚の絵のようなキッチンです。
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僕はオリジナリティという言葉が好きではありません。世界でたった一つの・・・なんてものも興味がありません。その人が歩んできた人生、その人の内面から溢れるものをしっかりと受け止めて、アムスタイルの世界観の中で好きなように演じていただく。施主がまとめきれない、とんがった部分も残しつつ、言わば少しは未完成でも、一目でアムスタイルだと分かるような上質感をその家に残してゆきたいと考えています。
ちょっとテーマの定まらない話になってしまいました。軽井沢から次回はどこへ行きましょうか。
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