――これまでのお話から、仕事の分担化によるメリット、
それを土台にした住まい作りの姿勢がよくわかりました。
思ったのは、やはり個人事務所ではないところから得られる客観性、
そして蓄積される膨大なデータが一番重要なのだなと言うことです。
まさにその通りです。客観性が得られることで、ひとつの住宅のコンセプトに対し、
さまざまな立場の人間から肉付け、改良が行えますし、
何よりそれによって非常に失敗の度合いが少なくなっていると考えています。
また、仮に失敗したことに関しても社内にデータとして蓄積されますから、
それ以降の改良に反映できます。
建築の世界ですから、それらの反映は決して早いものではなく、
10年単位の話なのですが、そういった長期的なヴィジョンが作れるというのも、
企業であるからこそできるメリットですね。
ただ、これが一般的な大企業であると、逆に多くの縛りが生まれてしまうんですよ。
何か問題が起きた場合に、改良するのではなくすべて禁止する方向に行ってしまう。
それにより、結果的に商品としての魅力がどんどん下がっていく。
禁止するのが一番楽な方法ではあるのですが、それは結果的に
自分たちの首を絞める結果になってしまうんです。
大手の一部では、まさに現在、そのジレンマに悩まされていて、
一部撤退している企業も出ていますよね。
それは設計を外注し、情報を社内で蓄積してこなかったことの弊害もあると思います。
設計の世界というのは、一見華やかで派手な世界に見えるのですが、
さまざまな細かい失敗の繰り返し、そこからの改良などの、
見えない部分での日々の努力のようなものが、やはり一番重要なんです。
我々の仕事は純粋芸術ではなく、エンジニア的要素も要求されるわけですから。
さらに我々はデザイン性が求められる華やかな設計だけではなく、
それらを支える部分での人材もしっかり育てていかなくてはならない。
それこそ建物と一緒で、土台を支える部分がどれだけ広く、
しっかりしているかが、企業としての完成度を高めるわけですから。
その土台があることで、デザインの自由度というものも保たれているわけです。
また、その土台にいる人たちにも、自分たちも一緒に作っている一人なんだ
という意識を保つことが、当社の企業としての生命線だと考えています。
当社は創立から25年間経ちましたが、建築という世界で考えると、
「まだ25年」なんですね。まだまだ改良しなくてはいけないことは山積みです。
これはもう、100年とかで考えていかなくてはいけないことなんでしょうね。