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アーネストコラム酒酒落落 野村皮膚科医院・院長 野村有子先生 第一回「風を感じる」

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2013年8月19日

第一回「風を感じる」


「さわやかな草原」でイメージするもの…青い空にポッカリ白い雲が浮かび、明るい緑色の草木が風にたなびいている。そして、そこのど真ん中に立った時に感じるものは、きっと、どことなく甘い香りと心地よい風。
人間の五感すべてがリラックスできる瞬間です。ここでのキーワードは「風」。


風とは、目で動きを感じる、耳で音を感じる、そして肌で直接感じることができるもの。肌で感じる風の風速は1.6mから。0.3m以上1.6m未満は風力階級「1」で、肌には感じないけれど煙がたなびくくらいの風の強さです。風力階級「2」は1.6m以上3.4m未満で、顔に風を感じて、木の葉も揺れ始める強さで、心地よいそよ風とも言えます。風力階級「3」は3.4m以上5.5m未満で、木の葉や小枝が絶えず動く強さで、蒸し暑い時にはさわやかに感じる風です。風力発電機が動き始めるのも風速3mから。人にとっても環境にとってもやさしい風はここまでです。風速10mを超えると傘がさしにくくなり、風速20mを超えると甚大な被害を引き起こしてしまいます。


私はそんな風に魅せられ、「風探偵団」を結成しました。きっかけは、17,8年ほど前に放映されたTwisterという映画です。内容は、竜巻の研究家が、竜巻を追いかけながら、竜巻の中で生じている風の流れを解析していくというもの。偶然にも映画を見た数日前に千葉県で竜巻がおきた、というニュースがありました。映画を観終わってそのまま車で千葉へ直行。途中で地図を購入し、地番をみながら向かったのですが、山や畑で地番も道表示もほとんどなく、木の倒れた跡や倉庫の屋根が吹き飛ばされた跡などが、どこにどう点在しているのかよくわからないままに帰宅。
翌週、その頃出始めたばかりのカーナビゲーション「コロンブス」を取り付け、竜巻の通ったと思われる場所にマーカーを付けながら車を走らせました。そしてやっと、竜巻の軌跡を突き止めたのです。


以後、風を感じる場所、風車や風力発電のある場所を見に行き、カメラに収めるようになりました。最も気に入っている場所は、カリフォルニア州のパームスプリングスです。ちょうどいい風の通り道になる広大な谷間があり、風力発電機が無数に並んでいて、その姿はまるでお花畑のような「風の畑」ともいえます。


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日本国内でもクリーンエネルギーとして風力発電は増えてきていますが、まだ国内のエネルギー供給の1%もありません。風力発電で発電した電力が、自由に使える電線を通して、自由に家庭やオフィスで使えるようになってほしいですね。


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さて、風は肌で感じます。いい風を感じる肌になろう…そのような思いで日々、皮膚科医としての診療を行っています。医院は、風をイメージしたビル「チャリオタワー」の1〜4階を利用して診療を行っています。チャリオとは、インド洋に雨季の前に吹く南風のことで、恵みをもたらす風ともいわれています。


ここで、チャリオタワーのご案内を一言。


1階エントランスは「風の散歩道」で、駐車場を完備しています。


2階は診療部門「医療法人そよ風会」野村皮膚科医院で、待合室には診療に関する情報の流れるモニター、患者様に読んでほしい皮膚病の簡単なパンフレットや雑誌なども展示しています。「一人一人の患者を大切にし、最高の医療を提供する」という医療理念のもとに、あらゆる皮膚疾患について丁寧に説明をし、治療からスキンケアにいたるまできめ細かな指導を行っています。


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3階には、お肌のためのいくつかのお部屋が備えられており、アレルギー対応モデルルーム「風の玉手箱」では、アトピー性皮膚炎を中心に、アレルギー対応グッズなどを紹介し生活指導を行っています。


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「グリーンブリーズ」はスキンケア製品の展示・販売コーナーで、肌にトラブルに悩まれている方でもご使用いただけるものを紹介しています。


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「風の広場」は広い吹き抜けの空間で、待合室としてご利用いただいています。


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4階は「風のアカデミー」。セミナーも行える空間です。アレルギー対応の食材を扱った「皮膚科のカフェ」とナチュラル・エコ・アートをコンセプトとしたギャラリーも併設しています。




チャリオタワーは、アーネスト様のご尽力で、「風」を感じる素晴らしい空間として完成しました。今後もこの場で多くの方々に恵みをもたらしますよう、頑張っていきたいと思います。(続く)


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「アーネストコラム酒酒落落」第22回目の連載がはじまります

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2013年8月12日

アーネストとご縁が繋がった方々が、それぞれの視点で自由にテーマを設定し執筆いただく全4回の連載コラム「洒洒落落」。次回より第22回の連載を開始いたします。


ゲストは、神奈川県横浜市で皮膚科クリニックを開院されている野村有子先生。通常の皮膚科診療に加え、アトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー性疾患の専門的な治療や、美容的なアドバイスも行なうなど、幅広くきめの細かな診療で、悩める多くの人々の力になっておられます。




〜プロフィールご紹介〜


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野村有子先生


野村皮膚科医院 院長
皮膚科専門医、医学博士 


慶應義塾大学医学部卒業。
同大学医学部皮膚科教室入局後、同皮膚科助手、神奈川県警友会けいゆう病院勤務等を経て、横浜市に野村皮膚科医院を開業。
わかりやすく丁寧な診療を心がけており、美肌ドック・スキンケア教室・フットケア外来・在宅医療・病診連携にも積極的に取り組んでいます。多数の講演や雑誌取材等で、患者様に役立つ情報提供にも力を入れています。




* * *


アーネストでは、野村皮膚科医院のクリニックスペース、及び「風」をテーマとしたコミュニティスペースが一体となったビル「チャリオタワー」を建築させていただきました。


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大自然をイメージし、三次元を描いたカーテンウォールがダイナミック。目に見えない風をさまざまな方法で表現しています。


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5層吹き抜けの天井には、風を受けくるくると回るモビールが。
2階は診療スペース、3階以上はコミュニティスペースとなっており、カフェも併設。ゆったりと開放的な空間で、卵や牛乳を使わないスイーツなどが楽しめます。


「一人一人に最高の医療を提供する」ことを信条に、26年間、真摯に患者さんと向き合ってこられた野村先生。そんな先生が考える医療のいま、皮膚科医としてお伝えしたい「お肌」のお話、そして風をご専門とする研究者のご主人の影響でその魅力に魅せられた「風」のお話を、次回より全4回に渡って連載いたします。ご期待ください。




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アーネストコラム「酒酒落落」医療通訳者 アビー・ニコラスさん 第三回「医療通訳者にとって欠かせないもの」

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2013年7月29日

3.医療通訳者にとって欠かせないもの


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最後に、医療通訳者にとって欠かせない点は色々とあるのですが、二つに絞ってご紹介したいと思います。


一つ目はプライバシーを守る事です。患者さんの氏名・年齢・性別・住所・国籍などはもちろん、その人の病状、処方された薬や検査とその結果、どこの病院で何科の診察を受けたのか、医療従事者との間での話の内容は一切外に漏らしてはいけない決まりになっています。また医療従事者やスタッフなど、病院内のすべての人のプライバシーも同様です。


さらに、通訳者自身の個人情報も漏らしてはいけません。自己紹介する時は氏名全部を名乗る事さえしないのですが、なぜでしょうか?
患者さんに通訳者の電話番号が知られてしまったと想定しましょう。慣れない国で生活するという事自体に、度合いは一律ではないにしても、ストレスの要素があります。人によってはそれが精神の不安定につながる場合も少なくありません。そんな患者さんから相談の電話がかかって来たら、通訳者は正しく責任を持って最後まで対処できるでしょうか。
通訳者は精神医学の専門家やカウンセラーではないため、誤った助言や手助けはかえって状態を悪化させることにもなりかねません。だからこそ個人情報を教えることはタブーであり、通訳者自身の家族や身内の前で話題にする事すら厳禁なのです。


そんな仕事ですから、慣れてくると独りで重荷を背負い込んでしまうことがあります。そんな時は守秘義務が保たれる相談相手、例えば同じ活動をする仲間の上司やコーディネーター、カウンセリング専門家などに話を聞いてもらうことで、通訳を続けるための三種類の健康(経済的健康・精神的健康・身体的健康)を維持するべく努めています。


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可能な限り、仲間同士でコミュニケーションをとることを心がけています。


二つ目は、患者さんが話しやすい態度を心がけることです。
通訳者の心の中にある、患者さんに対する思いやりや意気込みは表立っては見えませんが、初対面の患者さんに信頼してもらうにはどうすればよいでしょうか。まず、出身国の文化や習慣を理解し尊ぶことです。


一般に言葉の壁がある時、人は視覚での認知に頼るところが大きいといわれます。しかし表情や動作による印象の違いは国や文化によって時には大きく異なり、絶対的な目安など元々ないから大変です。親しみ易くするのは良い事のはずですが、その受け取られ方が国によって、文化によって、個人によっても異なります。
例えば、握手や相手の目を見て話すことが親しみや信頼を表すという欧米の常識は、別の文化圏から来た人たちにとっては不快なこともあります。また首を振るしぐさがYESの意味となる文化圏も存在します。また同じ文化圏の人であっても、個人により個性があるのは、各国共通ですよね。

第2回の記事で、患者さんの訴え・医師の発言に通訳者の考えや意見を混ぜてはいけないとお伝えしました。
ところが例外として、患者の文化的背景や習慣についての情報が、患者の診断や治療に必要であると考えられる場合、それを医師に伝えることがあります。例えば、宗教的な理由で輸血が出来ないために手術を断るかもしれないという場合や、断食の時期で日中食事が出来ないために食後の薬が飲めないという場合などです。


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世界には日本ではあまり知られていない文化や習慣が多くありますが、それらを無視するのは人権を奪う行為に等しいと言えると思います。医療通訳者は医療を施す資格もないし、外国人患者を助けていると考えるのは正しくありません。医療通訳とは、「人が人である権利が奪われる事態が起こる」のを防ぐための支援をする行為、と言っても過言ではありません。だからこそ異文化理解の勉強が欠かせないのです。


通訳と聞くと日本ではエリートと捉えられがちで、実際そういう面もあるでしょう。しかし仲間たちの殆どは(たとえそうであったとしても)肩書や学歴や生活水準など何とも思っていないし、患者さんの立場に立って通訳を務めようとします。会議通訳でも商談通訳でもエスコ−ト通訳でもなく、MICかながわの医療通訳は「コミュニティー通訳」なのです。
従ってその活動は、「同じ地域に住む同じ人間同士が文化や言語の違いを乗り越えて、互いに支え合いながら多文化共生が出来る社会を築こうとする」という考え方に支えられていると思っています。


* * *


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通訳者は、通訳者自身が各種制度に精通した専門家として動くのではなく、専門家につなぐのが役割です。医療に関わる専門家や関係者の役割や仕事内容を把握することで、うまく連携をとる。そして自身が通訳に徹することで通訳の正確性が維持され、誤りを防ぐことに繋がります。医療関係の専門家や相談窓口の連絡先を知っておく事で、患者と専門家との間の架け橋になることこそ、コミュニティー医療通訳としての本望だと思うのです。


私たちMICかながわの通訳者たちは、このようなことを大切に活動を続けています。この記事をきっかけに、医療通訳という活動について少しでもご理解いただける人が増えれば、こんなに嬉しいことはありません。(終)


★「医療通訳」と「MICかながわ」について、英文でもご執筆いただきました。
こちらもぜひご覧下さい。(クリックで記事が読めます)
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MICかながわウェブサイト
公開講座なども開講中
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アーネストコラム「酒酒落落」医療通訳者 アビー・ニコラスさん 第二回「一般通訳と医療通訳の違い・通訳の際に気をつけておくこと」

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2013年7月22日

2、一般通訳と医療通訳の違い・通訳の際に気をつけておくこと


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医療通訳ということは最低2言語以上に堪能で、しかも医療用語や表現にも慣れていなければなりません。そこには「語彙・話す・聴く・読む・書く」の五つの能力に加えて、言語を超えた通訳能力が必要です。
その能力とは何か、例を挙げてみます。これは、一般的な通訳と医療通訳との違いともいえることです。


MICかながわの医療通訳は単体で活動し、活動場所は病院の診察室や薬局です。そして通訳を必要とする対象も一人です。対象となる患者さんは医療知識を持っていない可能性が高く、加えて病気をお持ちだということで難しさは増します。いかに手さぐりでコミュニケーションをとっていけるかが重要になってきます。


では実際に医療通訳を行なう際、どのようなことに気をつけているかというと…。


仮に、患者さん一人と医療従事者と通訳者の三人で診察が進められるとします。通訳者は患者さんの発言と医師の発言の両方を通訳する、つまり一人で二役を務めます。そこでまず大切なのは内容が正確であること、それを最初から最後まで維持するということです。


具体的には順次通訳していく方法(逐次通訳)をとり、同時通訳は行ないません。逐次通訳とは、医師または患者が話している間、通訳者は黙って聴き、切りの良いところで話を止めてもらい通訳し、その後再び話を続けてもらうという方法です。


そして通訳をする際には、一人称を使います。例えば患者さんが “I think I have a fever.”と言ったら、通訳者は「私は熱があると思います」と医師に伝えます。「患者さんは『熱があると思う』と言っています」とは訳しません。
こうすることで患者さんと医師が直接やりとりしているかのような雰囲気が作られ、患者さんの精神的な自立と責任感を促すことに繋がります。


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通訳者にとって、元の文章の編集や自分の考えを反映させることはタブーです。思ったことを足したり引いたり、変えたりしないというのが鉄則です。
加えて、誤解され易いことばや表現は避けるようにします。通訳者は複雑な構文や言い回しは使わず、それでいて正確性を失わずに通訳出来るよう訓練しています。表現に多少の不自然さがあっても、誤解を生んで何度も聞き返したり、やり直したりするよりはずっと良いためです。
例えば “It isn’t.”と言うのではなく “It’s not.” を使う、“You aren’t going to ….” ではなく “You’re not going to ….” と言う、それにより肯定か否定の紛らわしさを減らすことが出来ます。そんな風に分かっていても実際にはなかなか出来ないものなので、普段から訓練や練習を行なっています。


通訳者は基本的な医学知識をより多く持っている方が、患者さんに分かり易い言い方が出来るのは当然のことですが、その一方医療の事は医師に任せるのも当然です。通訳者が医療の専門用語ばかりを言い並べても肝心の患者さんが理解出来なければ、それは通訳者の自己満足となってしまいます。誰のための通訳なのかを常に念頭に置く事が大切なのです。 (続く)


★「医療通訳」と「MICかながわ」について、英文でもご執筆いただきました。
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アーネストコラム「酒酒落落」医療通訳者 アビー・ニコラスさん 第一回「医療通訳という活動と「MICかながわ」」

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2013年7月15日

アーネストとご縁が繋がった方々がそれぞれの視点で自由にテーマを設定・執筆いただく連載コラム「洒洒落落」。第21回は医療通訳、という少し特殊な分野でご活躍中のアビー・ニコラス・フリューさんにご登場いただきます。


〜プロフィールご紹介〜


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Abbey Nicolas FREW (アビー・ニコラス・フリュー)


‘外国語が出来れば誰でも国際人’をいう考え方や表現に真っ向から逆らい、言葉の背後にある異文化の妥当的理解がむしろ大切だと信じる4か国で育った自称「地球人」。
横浜市在住期間が長くなってきたが、意識としての故郷はいつまでも米国カリフォルニア州ロスアンジェルス市。
元スポーツ選手からプロの舞踊家に転身後、事故で3年近い医療手術と治療の入院・療養生活を体験。その後20代半ばで教育関係に再転身と同時に再び外国生活を一時的に始めるが、日本語研究の傍ら語学教育、通訳、翻訳などを続ける内に横浜に定住(もはや神奈川県横浜市は第二の故郷)。
現在、MICかながわとAIDSネットワーク横浜でボランティア活動を続けながら、東京にある大学の非常勤講師を務める。又コミュニティー活動に積極的に参加する形で、より摩擦の少ない地域の国際化に貢献したいと考える。


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* * *


次々と迫る荒波を越える勇敢な心で様々な道を経て、現在は日本語の研究や教育に携わってきたニコラスさん。そんなニコラスさんが取り組むボランティア活動、「医療通訳」とはどのような仕事なのか。
今回より全3回でお届けします。


* * *




1、医療通訳という活動と「MICかながわ」


一般に病院と呼ばれるところには色々な科があります。しかし日本に住む外国人には、もちろん外国人専用科などいうものはないため、日本人がかかる医師や看護師に診てもらう事になります。


問診や治療や検査、薬の処方、さらには出産や手術などなど、当たり前のことですが医療に関する通訳分野の幅は日本人が日本語で病院にかかるのと同じ広さがあります。日本語が話せなければ医師に自分の症状を訴えることもできないし、医師や看護師、検査技師や薬局の人の説明も理解することができません。初めて病院にかかるとすれば、問診票の質問に答えたり、○や×を付けたり、既往歴や家族歴やアレルギーの有無などを記入する作業もありますね。また、カルテを持ってどこの何番窓口に行って順番を待てば良いのか、何の検査をするのかも、分からないことが多いのです。


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そういった外国人の方をサポートするひとつに、「医療通訳」があります。


通訳者は日本語ができない患者さんの言葉を日本語に通訳して医療機関側の職員に伝え、その逆も行ないます。通訳は病院の受付から始まり、薬局で患者が薬を受け取り、代金を支払うところまでが含まれます。


通訳者は病院の職員ではないので、給料や交通費は病院から支給されずボランティアです。余命などの告知や死の現場など、難しい通訳は精神的な負担も大きく、病院で知らないうちに何かに感染してしまう危険もあります。つまり、医療通訳に従事する者は、経済的・精神的・肉体的な健康が求められます。


そんな通訳者たちの管理・派遣を行なっている団体が、特定非営利活動法人「MICかながわ(正式名は「特定非営利活動法人多言語社会リソースかながわ」)」です。私も医療通訳者のひとりとして、ここに在籍しています。


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MICかながわは多言語共生者に向けて「『ことばの壁』をなくそう!」をモットーに、言語や文化の違いによる壁をなくすことで、誰もが安心して医療などの公共サービスを受けることができ、活き活きと暮らせる社会の実現を目指している団体です(一部ウェブサイトより抜粋)。


2002年4月の設立後、色々な認定や承認を受け、現在までに約40近くの医療機関と協定を持ち、通訳派遣事業を行っています。登録通訳者は約150から200名おり、10言語の班に分かれています。日本人も外国籍人もいます。日本人には移住経験のある人もいる一方、日本から出たことがない人も、さらには日本に帰化した元外国籍の人もいるなど様々です。皆それぞれ別の生計手段を持っていて、通訳は食べるための手段ではありません。


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ミーティング風景


事業内容としては、主に医療機関で日本語での問診や治療が受けられない人たちに通訳を提供します。MICかながわは医療機関以外にも通訳を派遣していますが、ここでは医療通訳のみに限ってご紹介したいと思います。(続く)


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アーネストコラム酒酒落落 アムスタイル代表・清水克一郎さん 最終回「くせにする、ということ」

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2013年7月01日

“それはあなたと私のよう
遠く離れて時の波間を漂い続けている
見知らぬふたりのように
僕たちは闇夜を渡って行く2隻の船
そして僕たちは笑い合う、これで良いねと”


これは1979年にバリーマニロウが歌った「Ships」という曲の歌詞です。
父と息子の愛を綴った詩ですが、強い愛で結ばれた関係、それは男と女でも、古い友人でも、母と子でも同じです。信じているからこそ、離れていられる。時には分かれて生きることを選択することもあるのです。
ともだちの少なさが自慢の僕ですので、大切にすべきことを心して生きて行こうと思う、ちょっと忙しい日々です。


* * *


「子供の手」


5才の長男がピアノを習い始めて半年が過ぎました。
僕が教えたことは鍵盤を強くしっかりと弾いて良い音を鳴らすこと。それだけです。はじめのうちは大丈夫かなと思うほどたどたどしかったのですが、気がつけば最近は左手で弾く三声の和音が男の子らしくガンガンと響いています。さすが我が息子と酒のつまみに悦に入っている今日この頃です。まあ、弾いているのは「こぐまのマーチ」なんですけれどもね。


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何はともあれ、親心としては上手くなくてもいいからせめて10年はレッスンを続けて欲しい。子ども時代に覚えた自転車や水泳の感覚が50年経っても失われないように、楽器のひとつくらいは体幹に覚え込ませて欲しいのです。近い将来のお勉強の成績も気になりますが、まずは始めたピアノが息子の人間力の礎になるまでは続けて欲しいと思っています。




「勉強の季節」


さて、梅雨の季節も終わりに近づき、僕のコラムも最終回ということで清々しい話題をと1週間考えましたが、ここから先は日々の反省文となります。悪しからず……。


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コンピューター科学者のマーヴィン・ミンスキーがインタビューの中で、「科学の歴史を振り返ってみると人間の叡智というものは“個人知能”によってもたらされている」と述べています。裏返せば、集団の知能は間違え易い、時には新しい可能性を抑圧してしまうことがあるという、身につまされる話です。


僕はアムスタイルは優れた個の集団でなければならないという志を掲げてやってきたのですが、最近ではミンスキーが言う間違え易い集団になっているのではないか。僕がいくら声高に叫んだところで、忙しさにかまかけて、楽な道を選択する平凡なチームになっているような気がしているのです。


教育下手の社長らしく無責任に言えば、この状況を打開していくには、個々人が勉強するしかありません。ただし学業とは異なり、相手を思いやることも仕事だと認識することが大切です。


僕らが作っている、高級品に類するキッチンや家具は、人間の手数以上には製造することができません。それであれば職人たちが働きやすいように、図面や情報を整理する。締め切りは守る。さらに職人の仕事の限界点はデスクワーク中心の僕らよりも早いことを知り、優秀なサポート役となる。
こんな分かりきっていて簡単なことがなかなかできない。会社らしいルールを作ってみてもうまくいきません。


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アムスタイル福岡ラウンジ


そこで行き着いたところ。アムスタイルに「勉強の季節」がやって来たと思うことにしました。振り返ってみれば今までも逆張りこそ我が生きる道と突っ張ってきたのです。世間が忙しい今こそ、勉強を重ねて、もう一度強いアムスタイルを作り直す時期がきたようです。


仕事に役に立つことは「くせにする」。「くせになるまで繰り返す」。


アムスタイルの将来を楽観しつつ、予定よりも早く転換期が来たんだと考えることにしました。




「愛ママ弁当」


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とりとめのなさついでに、最後は子供のお弁当のお話。


遠足やら遠出の散歩での子供たちの楽しみはお弁当です。そして帰宅した子供の「全部食べたよー」という言葉がママには何よりのおみやげのようです。こうして写真で眺めてみると色彩感覚もなかなかなもの。こんなお弁当のシーンが子供の記憶に積もり積もって、将来は年老いた親を大切にする大人になって欲しいと願うのですが。まあ注いで愛情が帰ってくるなんて甘い話はないですよね。


このコラムを通して思ったことは、仕事も子供も愛情をいっぱい注いで育てようということです。でも月並みですが、見返りは求めないように心がけなければいけないと思います。


* * *


連載も、いよいよ最後になりました。


コラムへお誘いいただいたアーネストスクエア株式会社の村木社長、内心ヒヤヒヤだったのではないでしょうか。ありがとうございました。締め切りは守るものと言いながら守れない僕を温かく支えていただいた広報の木下様、大変ご面倒をおかけしました。


そして最後までお付き合いいただいた、読者のみなさま、心より御礼を申し上げます。




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アーネストコラム酒酒落落 アムスタイル代表・清水克一郎さん 第三回「負けない日本になろう」

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2013年6月24日

「負けない日本になろう」


まずは手前みそな話から。


アムスタイルは今、史上最高の忙しさで、おそらく来春まで走り続けるような感じです。景気の影響もあると思いますが、でもおそらくこの5年間変化し続けた結果だと、たまには信じてみようと思う今日この頃です。


そんな日々、仕事とは何の脈絡もなくギターを2台手に入れました。それは五十男の手習いではなく、今こそ本格的に弾いてみようという決意です。1台はマーティン社の代表的なアコースティックギター「D-28」。もう1台はフェンダーUSAの「テレキャスター1958年モデル」、こちらはエレキギターです。いずれもスタンダード中のスタンダードと言えるモデルです。学生時代は安価なコピーモデルを買ったり、どうしても本物が欲しくなると必死にアルバイトをして手にいれたものです。お金がなくて一度は手にした楽器を手放してしまった青春時代へのリベンジでもあります。


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マーティン社「D-28」


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フェンダーUSA「テレキャスター1958年モデル」




>>価値ある無駄遣いなら


さてその「テレキャスター」。実は購入したままではチューニングが合いづらく、使いこなすことが難しいギターです。原因は6本の弦が乗る金属製のサドルというパーツにあるのですが(ここでは詳細は省きます)、解決策をインターネットで調べると、その問題を解消するだけでなく、さらに音も良くなるという7500円也の真鍮製の交換パーツを発見。さっそく取り寄せ、仕事疲れでショボショボの老眼と小さすぎる極小の六角レンチで格闘し取替えを完了しました。その結果、チューニングはきれいに合い、音質はツヤのある骨太なものに生まれかわりました。


大事なページを割いて何を言いたいのかとお思いの読者のみなさま。僕の趣味の話ではありますが、そこから仕事に通じる追求心、ひいてはお客様の満足度についてお話したいのです。


仕事の現場では利益や原価率といった数字が重視され、その管理の元に業務が遂行されます。これは経営指標としてそれは欠かせない要素です。そこで僕たちが日々考えていることは、「役に立つ、価値ある無駄遣いをしよう」ということ。もちろん、怠慢や不勉強による無駄遣いは許されません。
アムスタイルのように注文受注型の仕事においては、お客様の期待に応えようとした時に、計画にはないけどもう一つここを良くしよう、という視点が肝心です。ややもすれば予定行動の範囲で仕事を終えてしまう。しかしそれではアムスタイルのお客様は満足してくれません。よく見える箇所、見えないけど仕上げておきたい箇所。ものづくりの仕事には、改善点は無数にあります。
僕は担当者がここはやらなければと判断し、決断したことに文句は言いません。長い目でみればその決断は称賛されることだからです。


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実は最近、お客様の新築のお祝いで集まったご友人3人が偶然アムスタイルのキッチンのオーナーだったという話を聞きました。これほど嬉しいことはありません。毎日一生懸命やってたら僕らのファンになってくれた。それだけじゃない、そのファン同士がつながっていたのですから。




>>真似するなら徹底的に


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今年の春先、台湾に行ってきました。「見ておいた方がいいよ」という知人の紹介で、あるレジデンスの見学に行ったのです。日本で言えば超高級マンションなのですが、発想も思想も次元が違います。聞けば、オーナーは設計の前にスタッフを引き連れてヨーロッパの建築物の視察に行き、そこで膨大な枚数の写真を撮ってきて、「徹底的に真似をしろ」と指示を出したのだそうです。
ふんだんに使われた天然石の加工デザイン。アーチ状の銅貼り天井の技術。インテリアに目を向ければフィットネスがライブラリーと一体化していたり、いくつもある共有ルームでは、家具、調度品からキッチンまで、おざなりに選ばれたようなメーカー品は一切ありません。そのすべてが特注品かヨーロッパのハイブランドだけなのです。


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趣味的には賛否があるでしょう。でも日本にいるとグローバルだのボーダレスだの言葉だけが一人歩きして、何も変わっていない現実につきあたります。良いものがあれば、まずは徹底的に真似をする。本物を超えるまで徹底的にやる。それをやり続けると自分のものになる時がやってきます。発想も技術も中途半端なままで、オリジナルです、なんて言ってみても誰も見向きはしませんね。カタチや色だけでなく、そのものの生い立ちまで切り込んで真似をする。そうして言わば思想までを共有した時にグローバルに通用するモノを作ることができるのではないでしょうか。
負けない日本のスタートはそこからのような気がします。


* * *


こんなにとりとめもないコラムでよいものか、と思いながらも、次回が最終回です。飽きてもあと一回、最後までお付き合いください。


実は冒頭のギター、子供たちにグランドピアノを買ってやりたいと始めたピアノ貯金を取り崩して買ってしまったのです。どうしよう。。。




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アーネストコラム酒酒落落 アムスタイル代表・清水克一郎さん 第二回「人生は味わい深く」

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2013年6月17日

先日、家の近くにある小学校が公開されていたので、長男の来春入学に向けて見学に行ってきました。しばらく授業の様子をのぞいた後、賑やかな子供たちの声を遠くに聞きながら、誰もいない理科室で不思議な時間を過ごしました。自分が子供だった頃、時の過ぎるのがゆるやかすぎて大人になることなど想像すらできなかった時代、そして今、大事な自分の子供の進路のことさえ忘れてしまうほど、めまぐるしく忙しい毎日。
わずか5分程度の時間でしたが、40数年前と今をつないでくれた有意義な場所でした。


>>インテリアは完璧を目指さない


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感傷に浸りながらもここは仕事の癖、細部に目がいってしまいます。
グループ机の真ん中に設置された陶器のシンクではビーカーや雑巾などを洗いますが、深さがあるので子どもの身長に合わせて、前部が低く切り欠かれています。またバーナー用のガス栓はシンク前のエリアに規則正しく。デスクサイドには3口のコンセント。さらにデスクトップは広く、機能はセンターにまとめてと、キッチン作りのお手本のように良くできています。黒い天板も意匠的なポイントですね。


それにしてもこの教室はカッコいい。黒板をセンターにシンメトリーなレイアウト。前後に伸びる天井の2本の太い梁も無骨で良い。インテリアを作るのに、何でも隠してスッキリという要望が多いのですが、ちょっと雑然と好きなものを置いて、完璧を目指さない方が良い。そんなことを考えてしまう教室の風景でした。




>>必要なのは異なる価値観


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さて、最近思うこと。それは、家づくりは男女の問題そのものだということです。僕らの仕事にこのテーマは避けて通れません。しばしば離婚の原因に「価値観の相違」という言葉が使われますが、本当にそうでしょうか。そもそも結婚する時には自分にはない相手の経験や能力に惹かれてお互いを選んだわけで、まさに「価値観の相違」が結婚を決断した理由だったはずです。


家づくりのご相談を受けていると気づくことがあります。特にリフォームの場合は、夫婦はすでに長い年月を共に過ごしてきたので、その家特有の価値観を共有しています。ですが、家を作り直すとなると、過去と未来への思いが交錯するので、それぞれの価値観が強く現れてきます。中でもキッチンはその家族の役割や生活のスタイルが色濃く反映されるので、アムスタイルの宣伝文句「徹底的にカッコいいこと」だけでは成立しません。


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写真の白いキッチンは数年前にお納めした、マンションリフォームのものです。あの「理科室」によく似ていませんか。
毎朝子供のお弁当を作る時、夜遅く夫婦でお酒を飲む時、友人が集まった時、そんな日々のために素早く料理ができる環境がテーマでした。コンロは大型の5口ガスに排気量の大きい特注のレンジフード。センターに鎮座した冷蔵庫はワインセラー付きです。飲みながら料理して、左側のカウンターでは子供が勉強している。そんな毎日が形になったキッチンです。決してスタイリッシュではなくがっちりとしたフォルム。黒板の位置が冷蔵庫に入れ替わったと見れば、天井の梁型もあいまって、まさにあの「理科室」の雰囲気ですよね。




>>人生は味わい深く


では、男女の話に戻りましょう。夫婦は実は同じことを考えているようです。数ヶ月におよぶ打合せでご一緒していると、最後はいつもそう思います。でも考える順番が違う。言葉の選択が違う。だから途中で決裂しそうになることも。そんな時、あえて突拍子もないアイデアを投げかけてみることがあります。すると大抵、おふたりは声を合わせて、それは違う、時には、全然イメージと違うと言って怒られてしまうこともあります。しばしその場の雰囲気を戻すのに苦労しますが、心の中ではこれで大丈夫と思っているのです。


キッチンも家も完成するまでのプロセスが大切です。この期間が充実していないとお客様は契約をしてくれません。なので、夫婦が意見を交わしていればそれを見守る。まとまりすぎて面白みにかけてきたら、余計な口を挟んでみる。さまざまなものの見方、異なる価値観があることを施主もスタッフも共有することで、ようやく到達点が見えてきます。


この先、味わい深い人生を過ごして行くためには、このくらいの苦労はあった方が良さそうです。




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アーネストコラム酒酒落落 アムスタイル代表・清水克一郎さん 第一回「キッチンの仕事のできること」

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2013年6月10日

僕は自分の心の内や考えを文章にしたことがほとんどありません。筆不精もひとつの理由ですが、仕事の目的が自己表現ではなく、人が喜ぶことをカタチにすることに徹底してきたことが一番の理由でしょう。カッコ良くいえば自分を語らない。それが信条なのですから、今回アーネストブログへ寄稿させていただくことはちょっとした冒険でもあります。でもせっかくですのでこれを機会に、自分なりに僕とアムスタイルの仕事の内面を掘り下げてみたいと思います。


* * *


>>キッチンの仕事のできること


僕は20代、30代を通して音楽に関わる仕事を続けてきました。32才で会社を作ってからもその環境は変わりませんでした。そして傍目には突然、38才の時にアムスタイルキッチンを創業したのです。なぜだったのでしょう。その理由について先日ふと考えさせられたシーンがありました。


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スケルトンリフォームの解体の初日に立ち会った御宅のキッチンの壁に、黒いサインペンで書かれた「ありがとう」の文字。ご家族が退去される時に書いたようです。僕は思いました。「僕たちはこの家族の新しい人生を作る仕事をしているんだ」と。ともすればデザインや素材選びなどものづくりの表層的なことばかりに捉われ、施主の気持ちの奥底にある想いを理解しないまま仕事をしていることはないのかと。昔、音楽に携わっていた頃はどうだったのでしょう。自分のアイデアや企画に酔いしれてお客さんや周りのスタッフの気持ちを一つにすることに専心できていたのだろうかと。


実は自分の中ではキッチンを作る仕事は、エンターテイメントそのものなのです。
施主の思いとアムスタイルの表現手法の接点を見つけてキッチンをつくる。できることならば完成した時には、施主が涙してしまうほどの感動を与えたい。音や映像でできることが、家づくりの仕事にできないはずはないと信じて、毎日の仕事に向かっています。


>>暮らしの息づかいを伝えたい


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実はアーネストさんとアムスタイル、共通していることがあります。それは広告表現です。どちらのブランドもそこに使われている写真のほとんどが、実例であるということ。これは自画自賛ですが大変に価値あることなのです。
施主が選んだ土地やマンション。設計士やインテリアコーディネイターなど多くのスタッフが関わり出来上がっていく空間に、アムスタイルのキッチンが据え付けられる。そして完成した家。窓から望む風景も大切です。塗り壁の質感も大切です。これらの写真にはどんな有名ブランドのスタジオ写真にもない、そこに暮らす人々の息づかいと積み重ねられてきたセンスが横たわっています。今後、そんなアーネストさんとアムスタイルのコラボレートも期待いただけるのではないでしょうか。


>>オリジナリティより大切なこと


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先日、久々に軽井沢で撮影を行いました。この施主さん実は軽井沢で2軒目の家づくりです。1軒目もご一緒させていただき、再度ご指名を頂いた喜びはひとしおです。写真で感じていただけるでしょうか、家中に溢れるゆるやかな時の流れを。置かれた家具はブランドで取り揃えられたものではなく、肩肘張らないセンスの良さを感じます。旧軽井沢の木立の中にポッカリと空いた土地に佇む平屋建て。リビングとテラスの両方に設えられた暖炉。林と室内の端境が季節や暮らし方によって変化する家です。


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キッチンは大理石をぶ厚くあしらい、堂々としたフォルムで戸外と空気を共有しています。実はこのキッチン、お話を頂いた時にはお客さまのイメージは出来あがっていました。僕たちがしたことは、それを具体化したこと。お客様が思い描いたデッサンに、細かい寸法やツヤの質感などを加え、額装して出来上がった一枚の絵のようなキッチンです。


* * *


僕はオリジナリティという言葉が好きではありません。世界でたった一つの・・・なんてものも興味がありません。その人が歩んできた人生、その人の内面から溢れるものをしっかりと受け止めて、アムスタイルの世界観の中で好きなように演じていただく。施主がまとめきれない、とんがった部分も残しつつ、言わば少しは未完成でも、一目でアムスタイルだと分かるような上質感をその家に残してゆきたいと考えています。


ちょっとテーマの定まらない話になってしまいました。軽井沢から次回はどこへ行きましょうか。


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アーネストコラム酒酒落落 第20回連載は…

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2013年6月03日

各分野でご活躍の方々がそれぞれの視点で自由にテーマを設定し、執筆いただく全4回の連載コラム「洒洒落落」は、次回で第20回を迎えます。これもひとえにアーネストブログをご愛顧頂いております皆様のお蔭です。
改めてお礼申し上げます。


記念すべき20回目のゲストは、上質を求めるハイエンド層から絶大な支持を集めるオーダーメイドのキッチン家具メーカー「amstyle(アムスタイル)」代表取締役の清水克一郎さんです。


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「永遠で不変」をコンセプトに、長く使い続けられる洗練されたオーダーキッチンの数々を発表。また近年はリビングコーディネートや住空間デザインまで広く手掛け、注目を集めておられます。




〜プロフィールご紹介〜


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清水克一郎さん


1961年 東京生まれ
慶応大学中退 
音楽制作、イベント企画などの仕事を経て
1993年 アムスタイルの前身となる会社設立
1999年 amstyle kitchenブランド立ち上げ
2001年 株式会社アムスタイルに改組
amstyleのコンセプトメイカーとして事業にあたっている。


連載にあたり、清水さんからメッセージを頂きました。


キッチンを建築や家具としての視点だけでなく、日々の暮らしを豊かにする音楽や絵画、例えればリビングに置いてある古いピアノのような存在として、そこに住む人へアムスタイルのコンセプトを提案していきたい。そんな仕事の日々の中で気づいたことを書き綴ってみたいと思います。
清水克一郎


* * *


単体としてのキッチンではなく、暮らしに溶け込んだキッチンの在り方を追求し、オーダーキッチンとその進化をリノベーションなどの住空間デザインで表現するなど、常に新しい挑戦を続けておられる清水さんが大切にされている想いとは。全4回に渡って掲載いたします。お楽しみに!




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amstyle(アムスタイル)
使い続けてこそ「ベスト」の状態に近づくものでありたい。そんな信念のもと、時の試練を受けて価値となるために素材を厳選し、細かなディテールでキッチンをくみ上げていく、日本を代表するオーダーメイドキッチンのブランド。素材の一つひとつに「真価」を追求し完成する使う人の暮らしに沿ったキッチンは、暮らしに、空間に、建築に美しく馴染み、豊かな生活を生み出してゆきます。
東京・福岡にamstyleの世界観を体感できる「アムスタイルラウンジ」を展開しています。




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アーネストコラム「酒酒落落」グリーンコーディネーター幸繁信裕さん・矢野志保子さん VOL.4「これからの緑化」

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2013年5月13日

「これからの緑化」


みなさん、こんにちは。
3回に渡りご案内させていただいた「緑と花について」、最終回の今回は「これからの緑と花について」我々の想うところをお話させていただこうと思います。


人々にとって欠かせない緑とお花。
愛でる気持ちは今も昔も変わりませんが、いかにして「感じる」か、そのあり方はそれぞれの時代で変化してきていると思います。
感性の融合やライフスタイルにより、取り入れ方やしつらえ方は変化し、モノや物流の豊かさがその感性を具現化することを可能にしてきています。
屋上や壁面などの特殊緑化においてはさまざまな企業が技術開発をしており、よほど過酷な環境で無い限り緑化できないところは無いと思います。


それだけ自由度が高くなってきている緑化。
自由にお好みで選択し、植物との豊かな生活を楽しんでいただければ、
我々も嬉しく思いますが、世に出ている情報だけでは足りないと思う選択肢があります。




1つにそれは「多様性」。
インドアでもアウトドアでも、普通に購入できたり環境デザインやコーディネートで使用される植物はかなり限られたものになっております。
基準は主に「育成が容易」であること。これはとても大切だと思いますが、単調すぎてどこを見ても同じ植物では、おもしろみも半減。ちょっとしたアイディアやチャレンジ精神があれば、もっともっとわくわくする緑化ができます。
感動や発見は人々にプラスの力を与えてくれ、植物の魅力を再確認するきっかけにもなります。


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写真左:流通サイズのドラセナドラコ(和名リュウケツジュ)
写真右:ドラセナドラコ自生の姿


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写真左:ブラキキトンの自生の姿。そのユニークな姿からボトルツリーとも呼ばれる
写真右:国内で流通するブラキキトン(品種違い)の苗。将来画像左の様になるとは想像もつかない。


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写真左:コウモリラン 最近人気が高まりつつある植物。奇想天外な姿が面白い
写真右:メディニラマグニフィカ 比較的育てやすくとても美しい花を咲かせる植物だが市場に出回る量が少ない。




次に「適応植物」。
技術で植物を育成させることはできますが、もっともっと植物の適応能力を引き出し、容易に緑化することもできます。
無茶な場所に無茶な緑化をするのではなく、野に咲くたんぽぽやオオイヌノフグリ、シダやススキように自然とあるがままの緑化を心がけると手間やコストの面でもメリットがあります。
環境創造や植物との豊かな時間は長期的なもの。お水やりや害虫駆除や施肥など「義務的なこと」に手間やコストをかけるのではなく、剪定や間引きなど「直接植物に触れ、より美しく育てること」に時間をかける。そんな緑化は人々と植物のほどよい関係も作ってくれます。
土壌のないインドアやテラスでは「義務的なこと」は技術やアイディアで簡易化し、適応植物をしっかり選んであげればより豊かな時間を過ごせると思います。


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野生の草花の楚々とした美しさは改良された園芸品種では味わう事が出来ない。


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シロツメクサの群生、芝生とは違った美しさがあり、メンテナンスもかなり低減できる。時には四葉のクローバーを探したり、花の冠をつくったり。芝生には無い楽しみも生まれる。




最後に「日本」。
これは感性的な部分も大きいですが、日本人の持つ文化や伝統を継承する緑化。
現在の日本における緑と花のあり方は西洋式要素が大きいと思います。当然、西洋の良い文化や感性はどんどん取り入れていった方が良いと思いますが、自国の感性や文化や伝統と融合させる視点の緑化が増えていくとより良いと思います。
西洋のプランターに東南アジアの植物を植える、こういったコーディネートも素敵ですが、たとえば植え方・飾り方・置き場所に日本人の持つ季節感・お出迎え精神・見立て方などが融合されるとさらにハイレベルに変化すると思います。


もともと日本人はアレンジが得意だと思いますし、その感性は世界に誇れる奥ゆかしいものだと思います。
それを活かさないのは、非常にもったいないことです。
木の文化である日本が都市の木造化に向かう様に、我々は世界に誇れる都市、ビル、家の環境緑化へつながる「緑とお花のあり方」を模索し、提案し続けていきたいと思います。


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和の意匠を盛り込んだコーディネート


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コケ玉による演出緑化。和の雰囲気が落ち着いた空気感をつくる。


* * *


植物や自然の魅力は語り尽くせませんが、文字数に限りがございますので今回はこの辺で抑えようと思います。
機会がございましたら是非またお話させていただければと思います。
短い間ではございましたがブログを読んでくださった皆様、アーネストグループの関係者の方々、誠にありがとうございました!


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アーネストコラム「酒酒落落」グリーンコーディネーター幸繁信裕さん・矢野志保子さん VOL.3「季節について」

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2013年5月06日

「季節について」


今年の関東は、桜の開花がとても早かったですね。
なんだか追い立てられるように咲き、早々と散ってしまったという感じでしたが、その分今年の桜は見応えがあったように感じました。


桜が咲くと一気に春を実感しますが、それ以外にもアジサイと聞けば梅雨時期の蒸し暑さやしとしと降る雨を想像したり、紅葉と聞けば空がぐんと高くなった感じや、ひんやりした空気感を思い出したりしませんか?
季節の記憶は人によって違うかもしれませんが、たとえば私は、雪解けの時期に土から顔を出した“ふきのとう”を見つけた時、一気に幸せな気分になった思い出があります。
それは紛れもなく“ふきのとう”=春の訪れであり、それは雪国に住む当時の私にとって、とても嬉しい出来事として記憶しています。


そんな風に花や自然をキーワードにした時、人は何かしらそれぞれの季節の記憶やそれにまつわる思い出があり、季節を代表する草花であればどこかで共通する記憶を持っているのではないでしょうか?
ふきのとうではやや地味ですが、市場に行けば季節ごとにたくさんの花が出荷され、とても華やかで季節感にあふれています。
やはり花は見ているだけで楽しいものです。
例えばお部屋に一輪の花があるだけで雰囲気がぱっと明るくなりますから、花のパワーというのは凄いなぁと、常々感じます。




我々はそんな季節が与えてくれる記憶や時間、美しさを日々の生活の中で感じていただくシーズンディスプレイも行っております。
例えばグリーンの足元に少し季節のお花を足すだけでガラリと華やかさが増し、手軽に季節感を演出する事が出来ます。


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春の花鉢を取り入れた植栽アレンジ。


一輪挿しをセットするだけでも、省スペースで手軽に季節を感じることができます。グリーンの中に一輪挿しをセットするとみどりの中に咲く一輪の花のようで、美しさも引き立ちます。
季節や気分によってお花を交換できるのも一輪挿しのメリットで、日常の中でもちょっとずつ変化する季節の美しさ、わくわく気分を味わう事ができます。


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画像左:マンションの入り口に設置した一輪挿し 
画像右:緑の中に設置した花台 




商業施設では、お花を使ったもう少し大掛かりなシーズンディスプレイの企画が上がります。
お客様をお出迎えする気持ちを表現するのにシーズンディスプレイは有効だと思います。お花をはじめとする四季の美しさは、老若男女問わないものですから。


商品の切り替えやイベント時にディスプレイを変えることで、お客様へのより強いアピールにもなるでしょう。
我々がシーズンディスプレイで心がけることは「季節は美しい!」と感じていただける様、「四季の美しい部分を絞り込み、いかにわかりやすく伝えるか」ということです。
これはデザインがシンプルなものである、ということではなく、華美に表現する場合もあります。使う素材もデザインも自然界にはあり得ないものであったり、アート的な要素が強くなる場合もあります。そこには永続的な緑化とは違った発想力、応用力、技術的なノウハウが必要になります。


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春/桜のディスプレイ


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秋/小動物を使った実りのイメージのディスプレイ


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クリスマス/様々なスタイルのクリスマスツリー


樹木をディスプレイに用いる時、多くの場合花や葉はフェイクを使いますが、よりリアリティを求め幹や枝は本物の樹木を使います。
当然1本1本全て異なる枝振りなので、林業者さんのところへ直接イメージに合う樹木を選びに行く事もあります。


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イメージに合う樹木を選びに山へ!


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山採りの樹木を使った秋のディスプレイ(葉はフェイク)


一人でも多くの方に自然の美しさや季節の移ろいを感じていただき、その方の時間がより豊かになるよう、これからも表現し続けたいと思います。


* * *


1日3分お時間が作れる方は玄関やお庭に一つでも良いのでお花の苗を植えてみてはいかがでしょうか。
お世話をして苗が大きくなり、つぼみが上がり、花が咲く。自身で育てたお花は格別に美しく感じるものです。
1輪摘んで、お部屋に飾ればたった1輪でも生活に彩りが添えられたように感じられるはずです。
ラベンダー等香りのする花なら、室内でもその香りを楽しむことが出来ます。
お花はグリーンと違い咲き終わった花を摘んだり、時期が終われば株ごと交換しなければならなかったりと、それなりの手間もかかるのですが、その労力に報いるだけの、いえそれ以上の感動をお花は届けてくれるはずです。


花のある日常。季節を感じる毎日。そんなライフスタイルは気持ちが少し豊かになったように感じられる事と思います。
ぜひ生活の中にお花を取り入れて季節を感じてみては如何でしょうか?


Living With Flowers Everyday


お忙しい方は切り花一輪でも!お近くのAoyama Flower Marketでお待ちしております。


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個人邸の庭で実ったワイルドストロベリー




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アーネストコラム「酒酒落落」グリーンコーディネーター幸繁信裕さん・矢野志保子さん VOL.2「緑化について」

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2013年4月30日

「緑化について」


最近は新しく出来る施設には必ずと言って良いほど緑化が施されています。
大きな施設になれば、市や区の条例に緑化基準というものが存在するため、否が応でも一定の面積を緑化しなければいけないのですが、それを差し引いたとしても、緑化に対する要望は増すばかりです。


「緑化」とは植物が存在しない場所に人工的に生育可能な環境を作り上げ、空間を美しく快適な場所に変化させる事。対象場所はまさしく空間の全て。建物の内外の床、壁、天井はもちろん、空中を緑化したりファニチャーと一体化させたり。そこには様々なアイデアのほか技術・ノウハウが必要ですが、何より大切なのは植物の気持ちになって考えてあげること。また数年、数十年の時間感覚も必要です。


緑化の目的は用途により様々です。遮光、断熱、防風や目隠し、土壌強化、環境改善など「機能的」なことから、華やかさ・うるおい・癒やし・上質・おもしろみなど「感覚的、感性的」な需要も多いです。


それらの中でわたしたちが一番心がけていることは「つながり」です。
植物は自然と街、街と建築、建築と人、そして人と人をつなげることができる、ひと・こと・ものをつなげることができる大きな力をもっているからです。


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写真左:浮遊しているかのようなグリーン
写真右:テーブルと一体化したグリーン


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写真左:床から直接生えているかのようなデザイン
写真右:レストスペースの壁面緑化


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写真左:トイレ手洗い周りの緑化
写真右:開放的な屋上緑化


* * *


商業施設においての緑化は、空間に華やぎと上質を与えてくれます。
また、横空間や縦空間に緑化を施すことにより全体がつながり、心理的に気持ちよく、ゆったりとした回遊を促します。
レストスペースの緑化はお客様の滞在時間を長くし、購買率の上昇につながります。
人が集まる公園でゆっくり楽しくお買い物してまわるような、そんなサードプレイスに緑化はマストです。


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商業施設に設けられたレストスペース




オフィスの場合は、固い雰囲気になりがちな空間を植物が和らげてくれます。また、緑を見つめることで目の疲れが癒される、筋肉の緊張が取れる、という効果がさまざまな実験データから立証されており、快適に働く環境作りのためにも、もはや緑化は欠かす事は出来ないアイテムかもしれません。


さらに、緑のある空間はちょっと贅沢なワンランク上の印象を与えてくれます。
植物はオブジェ的な美しさも持っているのです。
来客をもてなす、新規雇用に結びつけるなど、いずれも会社の印象を高める為のアイテムとしての緑の存在は効果的です。


植物はスタッフ間のコミュニケーションも高めてくれます。スタッフの方自らがグリーンの手入れをする事により、異なる部署間でも植物の話題をきっかけに会話をする機会が増えたとお客様より報告を頂くこともあります。


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会社の顔となるエントランス


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緑に包まれたミーティングスペース


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オフィス内のレストスペース


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お気に入りを選び自由にデスクに飾れるグリーン


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レストスペースに置かれたグリーンの育て方カード




個人邸に於いてはさらに植物との関わりは密になってきます。
自然環境に入っていき体験することで人はさまざまなことを学びますが、日常的に緑を感じること、緑を育てること、それらが与えてくれるものは計り知れないと思います。
心豊かな人格形成も担い、お子様がいる家庭には是非オススメ致します。
育てる楽しみに加え、ハーブや野菜なら食べる楽しみもあります。
楽しい思い出として記憶に残れば自然を愛する心を育くむ土台となってくれるかもしれませんね。


家族で一緒に育てることでコミュニケーションや共有、共通意識もより高まります。そう、植物は物静かなペットであり、先生であり、豊かな生活のパートナーであるのです。


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写真左:個人邸のお庭にて。施主様のお子様と一緒に
写真右:個人邸のインドアグリーン


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個人邸のバルコニーガーデン


* * *


余談ですが、先日上野公園に行き子どもと一緒にイチョウの大木の下のベンチで一休みしました。暖かい日でしたので、イチョウの木陰は程よく快適で、しかも上を見上げると新緑が太陽の光できらきらと光って本当に綺麗〜。
と、じーとみているうちに、とても気持ち良い感覚となり、リラックスできたと感じました。
緑の効果ってすごいです。


今は技術の進歩もあり、アイデア次第で様々な場所を緑化することが出来ます。しかも植物という素材は多様性があり豊富で魅惑的です。
自由度も増し表現手法も多彩になってきました。
これから、緑化のありかたもどんどん進化するかもしれません。


緑豊かな環境がもっと身近にあれば人はもっと心豊かになれると思います。
その為にはやはり人と緑が触れ合えるような環境作りが大切です。


緑と触れ合い、緑を通して四季の移ろいを感じることは人間の豊かな心を育む為の源泉だと思います。
自然そのものを扱う私たちにとって緑を増やす事は大切なミッションかもしれませんが、緑や自然がもたらす効果を最大限に引き出すことによって人が楽しさや快適性を感じ、さらにそれが人と人を繋ぐコミュニケーションツールとなる。それが都市の緑化において何よりも大切なことだと私たちは考えています。




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アーネストコラム「酒酒落落」グリーンコーディネーター幸繁信裕さん・矢野志保子さん VOL.1「緑の仕事」

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2013年4月22日

「緑の仕事」


この度、ご縁あってアーネスト様のブログに連載させていただく事となりました事感謝致します。これから4回にわたり我々の仕事の紹介と、緑と人との繋がりについて少しお話させて頂こうと思います。どうぞよろしくお願い致します。


* * *


寒さも和らぎ、やっと春らしい陽気になりました。
(すでに半袖で過ごせてしまう日もありますが・・・)
ところで、1年のうち最もお花が売れる時期をご存知ですか?
きっと皆さんの想像通りではないでしょうか?
答えは「春」です。
春に出回る花は種類が多く、他の季節には少ない春らしいパステルカラーの優しい色合いが人々を引きつけるのかもしれません。
でもきっとそれだけでは無いように思います。
冬の間じっと寒さに耐えた木々達が、この時と言わんばかりに一斉に芽吹く姿はまさに生命が輝く瞬間。
人は知らず知らずのうちにそんな自然の姿に感化され、身近に取り入れたいという欲求が生まれるのではないでしょうか?
少なくとも私はこの時期特に、自宅の狭い玄関ポーチを花でいっぱいにしたい!そんな欲求に駆られる一人であることは間違いありません。


少し話がそれてしまいましたが、都会でそのような自然の美しさに心を奪われる機会って少ないですよね?


多くの人間が活動する土地として機能する以上それは仕方の無い事ですが、
せめて限られた土地や空間に緑を取り入れようとするならば、
植物の美しさを引き立てダイナミックさが感じられるコーディネートが必要です。
更に人と植物が関われるちょっとしたアイデアがあれば、人はもっと植物のある生活を楽しむことが出来るようになるのでは無いのでしょうか?
そういった視点から、私たちは施設の緑化やお庭のデザインを考え、人と植物がどんな形で関われるのかという事を大切にしながら仕事をさせて頂いております。
それでは、ほんの一例ですが施工例を交え私たちの仕事を紹介させて頂きたいと思います。




◇商業施設 環境装飾


全館いたる場所に緑をふんだんに取り入れた大型商業施設です。
目線に近い場所には本物のグリーンを、メンテナンスが困難な場所にはフェイクを取り入れる事で、まれに見る緑量を実現した施設となりました。
こちらのフロアでは室内にいながら木陰を感じられるような樹種をセレクト。
ライティングにより浮かび上がる植物の影も演出の一つとなっています。


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◇飲食店内 壁面緑化


バーカウンターの背景を壁面緑化で埋め尽くしました。
洗練されたモダン空間の中に浮かび上がる濃密な緑の壁。
熱帯植物のダイナミックで多様な生態を体験することができる
魅力的な空間となっています。


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◇大型複合ビル パティオの緑化


ショップとオフィスを兼ね備えたビル施設のパティオ(中庭)に個性的なプランター&テーブルを製作、施工致しました。曲線デザインとナチュラルな植栽により、ぐっと空間が華やいだ印象となりました。訪れた人が緑に直接触れることができる作りとなっているのも魅力の一つです。


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◇商業施設 環境装飾


駅直結の商業施設に自然をテーマに全フロアにナチュラルな印象の植物を施しました。ベンチに腰掛け木を見上げると、枝に小鳥がとまっています。
時折軽やかな鳥のさえずりが聞こえます。(鳥の巣にスピーカーを内蔵しました)そんなサプライズのある提案を実現させて頂きました。


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◇ガーデン、外構


個人邸、ショップ、マンション、商業施設に加え。最近は緑を取り入れるオフィスビル、飲食ビルも増えています
緑がある事で印象が上がりテナントの入居率が上がるのだそうです。
また、人通りの多い場所でお庭を作っていると本当にしょっちゅう声をかけられます。時には素敵な庭を作ってくれてありがとうというお言葉を頂戴することも・・・。ご自分のお庭でないにもかかわらず。です。
それだけ多くの方が、身近にあるお庭に対して美しくあって欲しいと望んでいるのでしょう。


◇複合施設の外構植栽
グラス類をふんだんに取り入れ、風を感じる庭となりました。
外観とのコントラスト、高低差を意識し明るく爽やかな印象に仕上げました。


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◇マンション花壇


もともと植えられていたさつきを撤去し、ミモザやローズマリーなどシルバーリーフを多く用いた植栽に改修しました。ナチュラルで大人っぽい印象のエントランスガーデンとなりました。


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◇つる植物を用いた外構植栽


ステンレス製のワイヤーとつる植物による植栽デザインです。
ワイヤーの自在性を生かすことで様々な場所にオリジナリティある植栽を施す事ができます。
これからつるがどんどん伸びて、どんな外観を作ってくれるのでしょう。
そんな変化も楽しめるデザインです。


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今年はお庭の仕事が増えそうです。
すでにいくつか決定した案件もあり今から施工が楽しみです。完成しましたら、ホームページにUPしますので是非チェックしてみてください。




◇シーズンディスプレイ


商業施設にとってクリスマスは年末を盛り上げる1年間で最大のイベントとなります。10月に入るとすでに業界はクリスマスムード・・・にわかに忙しさが増してくるこの時期、我々にとっても夜も眠れぬ季節の到来となります。


毎年様々なテーマを元に、マンション等に設置するツリー1本から商業施設など大掛かりなものまで承りスタッフ総出で作業しております。


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今回仕事内容の全てをご紹介できませんでしたが、それ以外にも、インドアグリーンの販売、レンタル、フラワーアレンジや祝い花、イベント装飾など、緑に関する事なら何でも承っています。
興味を持たれた方は是非こちらも覗いてみてください。

http://bgreens.jp/index.html


次回は「緑化について」
緑化をする事の意義や効果などを綴らせて頂きたいと思います。




* * *


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アーネストコラム酒酒落落 第19回連載は初登場のお二人です。

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2013年4月15日

アーネストとご縁が繋がった方々に、それぞれの視点で自由にテーマを設定・執筆していただく全4回の連載コラム「洒洒落落」、19回目を次週より掲載いたします。


今回のゲストは、生活の場や商業施設など室内外の空間緑化プランニングを手がける“グリーンのプロフェッショナル”、幸繁(こうしげ)信裕さんと矢野志保子さんのお二人です。


〜プロフィールご紹介〜


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幸繁信裕さん


1973年5月22日東京生まれ。
東京農業大学卒業後、1996年に植物を扱った空間装飾、造園、舞台装飾、園芸ショップ、フラワーショップを営む会社に入社。
小売り業、オンライン事業、ガーデニング雑貨のホールセール、バイヤーを経て、「豊かな時間」をインテリアとグリーンのアプローチから追求するライフスタイルデザインユニットを立ち上げる。
数々のインテリアショップ・アパレルブランド・雑誌社とライフスタイルグリーンを発信し、住空間を中心にグリーンコーディネートを行う。
のち、青山フラワーマーケットを展開する(株)パーク・コーポレーションでグリーン事業を立ち上げ、グリーン専門ショップ、ホールセール、室内外の空間緑化企画・施工、緑化空間のグリーン育成管理の4部を運営。
現在は主に室内外の空間緑化プランニングを行っている。
空間だけでなく、衣食住のアプローチからグリーンライフスタイルを追求していくプロジェクトを考察中。


趣味:樹、草花、バイク全般、キャンプ、旅、釣り、ギター、天体、山、スノボ、
尊敬する人:吉田龍太郎さん、井上英明さん、小山薫堂さん




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矢野志保子さん


1974年12月2日生まれ。秋田県角館町出身
1999年東光園入社(現グリーン・ワイズ)ELGDESIGN UNIT配属
インテリアショップ等へのグリーン卸事業を展開、
2004年退職を機に8ヶ月間かけ日本各地を巡る
2006年株式会社パーク・コーポレーション入社
グリーン専門部署jungleDIVISION(ジャングルディビジョン)設立、商業施設、オフィスなど、様々な空間の環境装飾に携わる。
2009年独立
2010年長女出産
2012年株式会社Breathgreen&spring創業を機に復帰


趣味:登山、釣り、読書




* * *


かつて同じ場所で働いていたというお二人。
今は活躍の場を広げられ、グリーンがもたらすあらゆる可能性を模索しながら数々のプロジェクトを成功されておられます。


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作品例:
商業施設内イベント広場を、緑豊かな公園をコンセプトにグリーンをコーディネート、施工を実施されました。


グリーンが人々や生活にもたらすもの。
また商業施設などの公共の場でのグリーンの可能性など、
お二人の視点からご執筆いただく予定ですので、お楽しみに!


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Breath green&spring(ブレスグリーンアンドスプリング)


「自然の本質的な美しさや尊さを感じることは、人々の生活や時間をより豊かなものにしてくれる」
そんな想いから、クライアントに感動を与えるモノや空間や時間を、コミュニケーションを大切に制作。
個人宅のテラスや鉢植えから大型商業施設の空間デザインまで、活躍のステージは広がっています。


また、2013年3月には、お二人が編集とグリーンコーディネートに携わった書籍「贈ろう、飾ろう インドアグリーンと小さな花鉢」が主婦の友社より発売されました。


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聖樹・巨樹研究家の杉原梨江子さん監修のもと、「運気を高める」グリーンの贈り方・飾り方の実例が多数掲載されています。こちらもぜひご覧下さい。




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アーネストコラム酒酒落落 眼科教授 ビッセン宮島弘子さん Vol.4 眼科医療のこれから

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2013年2月12日

眼科治療の中で一番需要があり、またドクターたちの興味も大きいのは老眼です。
老眼は病気ではなく加齢に伴って自然と起こりうるものですが、根本的には治せないためどう対処するかという問題になってきます。白内障治療のひとつとしてご紹介した「多焦点レンズ」なら老眼による「見えない」を解消できますが、現在研究の進んでいるレーシックでは、そこまでの成果が上がっていないのが現状です。私も試してみましたがまだまだ効果はいまいちだと感じます。しかしこれから研究が進む分野であることは間違いありません。


また、私自身の今後の目標として、さらに高度な白内障治療の提供に力を注いでいきたいと考えています。実は現在レーシックの手術に使用している「フェムトセカンドレーザー」が、昨年あたりから白内障の手術にも使えるようになったのです。これまでは手術の際、私たちが自身の手で加減しながらメスを握っていました。それがマシンを使うことで、緻密に計算されたデータを元に、手術が短時間で正確に執り行われるようになるということです。
そのマシンを私の在籍する東京歯科大学水道橋病院に導入することにしました。日本ではまだ2、3台しか導入されていない中、とにかく新しい技術として白内障に使えるようにしていくことが、30年以上の医師生活を経てたどり着いた私の最後の目標です。


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白内障治療に期待が持てる、新しい「フェムトセカンドレーザー」。


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理事長を勤めさせていただいている、日本白内障屈折矯正手術学会のイベントの様子。約2000名の会員がさまざまな知識と技術を共有する場として、今後も充実させていきたいと思っています。


* * *


どんな治療も、全ては患者さんとのコミュニケーションから始まります。しかしこの国では、与えられた治療や薬に関して疑問を持つといったことをよしとしない雰囲気が、まだ根強いと感じています。本来は、患者さんには自身の受ける治療について知る権利があるのです。海外ではそういったことが進んでいて、私が留学の際に感じたのは、患者さんが色々な質問をして、医者がそれに応えるという関係性がちゃんと構築できているということです。
その経験を活かし、診療の際は終わりに「他に何か聞きたいことはありますか?」「問題ありませんか?」と、患者さんにゆとりを与えるべく、声を掛けさせていただいています。薬の説明に関しても副作用の可能性までしっかりとお伝えすることで、そうなってしまった時の不安感を和らげることができると考えています。外来ではお待たせしてしまうこともありますが、最善の方法をともに考えていくコミュニケーションありきの医療こそが、私の信じる医療です。


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東京歯科大学水道橋病院眼科の面々。
今後も一丸となり、よりよい医療の提供を目指していきます。


東京歯科大学水道橋病院 眼科
日本白内障屈折矯正手術学会(JSCRS)




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アーネストコラム酒酒落落 眼科教授 ビッセン宮島弘子さん Vol.3 レーシックは怖いもの?

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2013年2月04日

レーシックが日本で正式に承認されたのは2000年のことです。今ではずいぶんと社会的に認知されるようになりました。レーシックとはレーザーで角膜を薄く削り、近視を矯正する屈折矯正技術のことで、日本より歴史の長い欧米ではすでに数百万人が手術を受けるなど、世界的にみても決して特殊な矯正法ではありません。近年日本でもマスコミ報道や一部の広告によって興味を持つ方が増えてきています。しかし、最近有名になっている言葉で「レーシック難民」というものがあるのをご存知でしょうか。これは、レーシックを受けたことでトラブルが起きて困ってしまった人たちの組織のことです。マスコミの大々的な報道も相まって、悪い、ネガティブな情報が目立ってしまい、レーシックは怖いと考える人が一時期より増えているように思えます。しかし、実は技術面では日々進歩を遂げているのです。


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角膜の表面をスライスする「フェムトセカンドレーザー」


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角膜を削る「エキシマレーザー」
日進月歩で精度の高い機械が開発されています。


レーシックが日本に出てきた10年前と今とで何が変わったかというと、一番は「正確さ」だといえるでしょう。私の在籍する東京歯科大学水道橋病院で現在行われているレーシックの手術は、まず角膜の表面を「フェムトセカンドレーザー」で薄くスライスし、フラップという蓋のようなものを作り、めくります。そして「エキシマレーザー」で角膜を削って視力を矯正したあと、フラップを元の状態にもどし、自然に癒着させる、というのが主な流れです。
もちろん、角膜は削りすぎると耐久が悪くなります。また近視の度数や持って生まれた角膜の厚さによって削る量が変わりますから、その人にとってベストなところをちゃんと見極めることが大切です。「エキシマレーザー」は1980年代より歴史がありますが、その性能は進化し、今ではミクロン単位の非常に高い精度で削ることが可能です。またその人の眼の形や近視、乱視があるかを全て調べて、そのデータをそのままレーザーに取り込むことができるので、ベストな眼の状態を目指して手術することができます。また「フェムトセカンドレーザー」に関していえば、10のマイナス10乗という非常に短いパルスでのスライスが可能なため、短い時間で眼への負担を最小限に抑えられるようになりました。


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両目を一度に、日帰りで手術することが可能です。


眼鏡やコンタクトでも視力は矯正できますが、角膜表面のでこぼこまでは治せません。それが0.1mm削るだけで矯正されるならば、それはとても有益なことだと思います。また近年は乱視にも対応可能となるなど、治療の幅も広がっています。眼鏡は不慮の事態にないと困りますし、コンタクトは長い時間眼に異物を入れていることで、ハードであればまぶたが下がったり、ソフトなら酸素欠乏で角膜の細胞の数が減少したりと、問題も多いのです。
私自身は15年前にアメリカでレーシックの手術を受けました。その頃はまだ日本で全く実績がなく、私がやると周囲に伝えると「大丈夫なの?」と心配されたものです。でも自分としては受けてみてとても快適だと思えたので、患者さんにも良い手術が提供できればと思っています。


東京歯科大学水道橋病院 眼科
日本白内障屈折矯正手術学会(JSCRS)




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アーネストコラム酒酒落落 眼科教授 ビッセン宮島弘子さん Vol.2緑内障治療の鍵は「早期発見」

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2013年1月28日

白内障は見えづらくなるなどの違和感を眼に感じることで気が付くことが多いですが、緑内障の場合の「見えない」は、病状がかなり進行しているケースがほとんどです。


緑内障は眼内の網膜神経節細胞が死滅する病気で、進行するにつれ視野が喪失します。緑内障の初期は、視野の一部の場所が見えづらくなります。両眼を使っていると、片方に見えなくなるところがあっても気づきにくいものです。一時期、製薬会社のポスターで、「ポスターを見て欠けているところがあればお医者さんへ。」という試みがあったほど、日頃注意していないと初期症状に気が付かない、怖い病気なのです。
しかも残念なことに、日本人で40・50代以上になると、30人に一人が緑内障にかかるといわれています。がんなどもそうで、人種的体質や食生活によってかかりやすい、かかりにくいといったことが出てきますが、そういった点では日本人は緑内障になりやすいといえるのです。また年齢が高ければ高いほどかかる率も高くなりますし、ご家族に緑内障にかかった方がいる場合もかかりやすくなるといわれています。


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緑内障の患者さんの眼底写真です。


* * *


前述のとおり、緑内障は視野が喪失していく病気です。今の医療では喪失した視野を回復させることはできませんが、薬やレーザーで進行を緩めることはできます。出来る限り早期に発見し治療を行うことで、病気の進行を食い止めることができるのです。
早期発見には、定期的に眼科を受診するしかありません。1年に1回でも2回でも良いので、受診することが早期発見への道です。


最近は会社などの健康診断で眼底写真を撮りますね。神経がくぼんで写ると緑内障の疑いがあり、眼科受診や精密検査によって発覚するケースも増えてきました。進行速度には個人差がありますが、進行が進むと失明の危険がありますので、やはりこまめな眼科受診がおすすめです。


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日本白内障屈折矯正手術学会(JSCRS)




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アーネストコラム酒酒落落 眼科教授 ビッセン宮島弘子さん Vol.1 白内障の最新治療「多焦点レンズ」

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2013年1月21日

人間の五感の中でも、とりわけ「見る」ことは生活の上で非常に重要な感覚だと私は考えています。


私の経験から申し上げて、見えなくなるということは、命に関わる問題の次に、皆さん嫌がられるという印象です。耳が聞こえない、話せないのも困るけれど、見えないと一番何も出来なくなる。だからこそ私は、一人でも多くの方が見えるようになるお手伝いをさせていただければと考えています。白内障手術をされた方が翌日、よく見えるようになって「新しい人生をまた楽しみたい」とやる気が起きたり、老眼鏡が手放せなかった生活から開放され、生活感が変わる。また、「女性はレーシックをするとみなさんきれいになる」と、男性ドクターの間では話題になったりもするようです(笑)。見えるようになると、きれいにしようという気持ちになって笑顔が増えるのではと思います。見えることとは、モチベーションを上げること。眼科医としては、出来ればメガネやコンタクトを着けずに健康な目で見えることこそ、生活をより良くし、気持ちの向上にも繋がる最良の方法だと考えます。


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東京歯科大学水道橋病院眼科では、
外来から各種手術までさまざまな診療に対応しています。


* * *


第一回のテーマは「白内障」です。白内障とは目の中の水晶体が濁る病気です。先天性のケース以外に、加齢とともに発症率が上がるとされています。進行すると、視野がかすんだりぼやけたりし、日常生活に支障をきたします。


白内障の手術は現在は主に片目ずつ、日帰り手術でできるようになっています。水晶体の濁りを取り除き、そこにプラスティック製のレンズを入れる手術で、その実施は1年間で約100万件ともいわれています。白内障治療に使用される眼内レンズで保険対応のものは、1点でピントが合う「単焦点レンズ」というものです。現在でも圧倒的に需要があり、ほとんどのケースこのレンズが採用されています。ただ、白内障は加齢とともに起こる病気です。もともと近視や乱視をお持ちだった方が、老眼も併発しているケースが珍しくありません。「単焦点レンズ」はどこか一点にピントを合わせられるレンズですから、手術の際に、近視を矯正するか、老眼を矯正するか、選ばなくてはいけないという問題が起こります。
遠くにピントを合わせると近くを見るときに眼鏡が必要で、近くにピントを合わせると、車の運転の際に眼鏡が要ります。
手術時間が短く、日帰りで済むため手軽だという認識をお持ちの方が多い白内障手術ですが、目の小さなところから機械を入れ、顕微鏡を使いながら行なう繊細な作業であることに変わりはありません。できるなら、一回の手術でまとめて改善するほうが望ましい、そんな考えから生まれたレンズがあります。
それは、二点にピントを合わせることができる「多焦点レンズ」です。


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レンズ自体は欧米で50年以上の歴史がありますが、日本の医療現場で採用されたのは2008年です。ただ、眼内レンズとしては価格が非常に高く、日本の医療費ではとても出せないのです。そこで私はこの多焦点レンズを「先進医療」として、国の認定を受けられるよう働きかけました。先進医療という言葉は、保険会社のTVCMなどで耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。実際はがん治療の分野などで比較的多く採用されているシステムで、保険診療と実費診療の混合医療が認められていない日本において、特例として検査や投薬は保険がきき、手術のみ実費で行なうことを認める医療制度のことをいいます。これにより、医療費の負担を抑えながら、高度で有益な白内障治療を提供できるようになりました。


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単焦点レンズの見え方


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多焦点レンズの見え方
遠くと近くが見えることで、日常生活が非常に楽になります。


現状では、多焦点レンズの需要は日本では1%に満ちていません。保険のきく単焦点レンズの価格は片眼5万円以内で納まるのに対し、先進医療の多焦点レンズは30〜40万円と金額的な問題もありますが、先進医療を実施できる認定施設が全国で200箇所とまだまだ少ないことも大きいと思います。保険会社の先進医療の項目を見れば、「多焦点レンズ」を見つけることができ、私はその監修にも携わらせていただいていますが、まだまだ認知が足りないというのが正直な感想です。
多焦点レンズは素晴らしいものですが、患者さん一人一人にとって本当に必要なものかを判断することも、医師の重要な役目です。まずはそういうレンズがあるということを知っていただいた上で、その方が興味を示し、その方にとって有益であると思えば、おすすめします。一人一人にとって最善の医療の選択を、医師がお手伝いさせていただく。全ての医療に通じる大切なことです。


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アーネストコラム酒酒落落 第18回の連載は弊社のお客様のご登場です。

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2013年1月15日

アーネストとご縁がつながった方々が、それぞれの視点で自由にテーマを設定・執筆いただく全4回の連載コラム「洒洒落落」。第18回目は、久々に弊社で建築をされたお客様のご登場です。


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* ビッセン宮島弘子さん
眼科学、中でも白内障治療のパイオニアとして臨床に携わりながら、眼科教授としてドクターの育成や書籍の執筆、先端医療の研究に従事。また日本白内障屈折矯正手術学会の理事長としてもご活躍中です。
弊社では先生のご自宅を設計・施工させていただきました。


~プロフィール~
1981年慶応義塾大学医学部卒。同大学の大学病院での勤務を経て、ドイツのボン大学で眼科助手として臨床経験を重ねる。1987年に帰国した後、大学病院や国立病院に勤務。日本とドイツの医学博士号を取得。現在は東京歯科大学水道橋病院・眼科教授として外来診療、手術の執刀を行う。また研究活動や専門書籍の執筆、慶應義塾大学ほかで学生の教育にも力を注ぐ。日本白内障屈折矯正手術学会理事長。日本眼科手術学会常任理事 。近年では白内障治療の最先端である多焦点レンズに注目、眼科医療分野で初となる「先進医療」認定取得に尽力、知識の啓蒙にも努める。アメリカ白内障屈折手術学会及び、ヨーロッパ白内障屈折手術学会フィルムフェスティバルにて受賞暦多数。


* * *


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ビッセンさんが在籍する東京歯科大学水道橋病院 眼科


通常の外来診療に加え、1日約20眼の白内障手術・レーシック手術を執刀、さらには研究、執筆と多忙を極めるビッセンさん。また約2000人の会員数を有する日本白内障屈折矯正手術学会の理事長として、メディアを含む社会全般に対して、よりよい医療と正しい知識の普及に努めておられます。今回、そんなビッセンさんに語っていただくのは「眼科医療の今」。ご専門である白内障治療の最新情報をはじめ、日本人に多いとされる緑内障や何かと話題のレーシックまで、4回に渡っての連載です。


ご期待下さい。


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アーネストコラム酒酒落落 Minotti日本総代理店フォーユアアンビエントすけの代表・助野忠夫さん 第四回・私の仕事のアイデンティティ

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年12月03日

おいしいものを食べたい、飲みたい。
お気に入りのファッションを着こなしたい。
好きな車に乗って、遠くへいって、非日常を味わいたい。
お気に入りの住まいで、上質なインテリ家具に包まれて暮らしたい。
好きな音楽を聴いたり、歌ったりしたい。
これが私のシンプルな欲求です。
大切な誰かのためでもあるけれど、基本的には自分のために、
自分流で、他人の評価をあまり気にせずに生きてゆきたい。
日常に流れる時間を大切にして、生きる喜びを感じながら、
人生を楽しみたい。
身勝手に思われるかもしれません。けれども私たちの仕事は、お客様が満足して有意義な毎日を送るための空間をご提供することです。
まずは自分自身が楽しまないと、人を楽しませたり、喜ばせたりすることは出来ないと思っています。


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8周年を迎えたMinotti-COURT


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2013年はどんな空間が出来るのか今から楽しみです。


第一回でも触れましたが、失敗を繰り返しながら、36年間もヨーロッパの製品を扱い続けたのは何故でしょうか。それは家具のもつ機能や耐久性などだけでなく、その家具が住まいという空間にしつらえられた時、芸術性の高い空気感を作り上げてくれる。単にソファやテーブルがあるだけでなく、その存在が空間にもたらす波動のようなものが、居心地を変えてくれる。そういった力に強くひかれていたからだと今は思います。


住宅を設計する事と同じく、家具の選択・配置を計画することはとても大切です。もしかすると実生活にとって、住宅設計以上に影響力のあることかもしれません。だからこそ家具一点一点だけを販売するのでなく、どういう組み合わせで、どうレイアウトするかに最も興味を持つようになりました。


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LIVINGのような心地よさを兼ね備えたBEDROOM。


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住居だけでなくOFFICEラウンジ等もご提案出来ます。


物が余っているような時代の中で、生活空間にベストな家具を選択することはとても難しいことです。季節ごとの洋服や今晩のお酒を選ぶことも確かに難しいけれど、家具選びは一生に何度もないことでしょう。
生活のパートナーとなる家具にめぐり会えたら、その方はすごく幸せになれると思います。そうした家具をご提供するために、いろいろな物を知っておきたい、見てみたい、扱ってみたいというのが、私の仕事のアイデンティティとなっています。そんな訳で、今まで扱ってきた家具は誠に多岐に渡ります。
これからも皆さまにご満足いただける家具を提供できるよう精進していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。




Minotti (ミノッティ)


株式会社 フォーユア アンビエント すけの




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アーネストコラム酒酒落落 Minotti日本総代理店フォーユアアンビエントすけの代表・助野忠夫さん 第三回・Minottiの戦略

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年11月26日

いま世界の家具業界は転換期にあります。アメリカやヨーロッパが不況におそわれる一方、アジア市場にその活路を見出しています。変化の激しい世界状況の中で、毎日のように新しいデザインの家具が発表され、もはや家具のデザインは出尽くしていて、さほど違いをつけられないのではないかというのが業界全体の見方です。たとえ画期的なフォルムやアイデアが生み出されても、発表したひと月後には、コピー商品がアジア市場に出回ってしまいます。


さてMinotti本社のあるブリアンツァは、古くから家具産地として栄えてきた街です。イタリアの北部にあり、コモ湖周辺に散在する貴族の館で使われるクラシック家具を作ってきました。有名家具ブランドの多くはここに本社を置いていますが、工場の海外移転も進んでいて、日本と同様に国内生産は難しい状況にあります。


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Minotti本社


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緑が多いのどかな環境


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Minottiの近くにあるComo湖はイタリアで3番目の大きさで、避暑地としても名高い場所です。現在も周囲には別荘や高級ホテルが点在しています。


その中でMinottiは「Made in Italia」をかたくなに守り通そうとする数少ないモダン家具メーカーです。先代から続く職人技を生かした、イタリアの感性を感じさせる家具。それを作り続けるため彼らの選んだ道は、ファッション業界と同じく「モード」を商品化したグローバル戦略だったのです。


Minottiの新作を年ごとに追っていくと、家具単体のフォルムや雰囲気は大きく変わっていないように見えます。しかし何かが圧倒的に違います。ソファ、アームチェア、サイドテーブル、センターテーブルの他、TVボードなどのキャビネット類やラグなどの組み合わせを変え、それに毎年数十種類も開発するオリジナルのファブリックスや皮革をアレンジすることで、様々なモードを作りだしています。同じシリーズのソファでも、選択するファブリックによって、モダンにもクラシックにもトラディショナルにもなる。まるでファッションを着こなすように変化していく家具。それこそミノッティの立てた戦略でした。


* * *


Minottiの家具作りの工程(一部抜粋)
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カバー内部の仕上げ


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レザーの選定は最新のレーザーマシンにより傷などを識別します


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針と糸を通す職人


レザーパイピング仕上げの工程
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2012年度のファブリックコレクション


* * *


製品単体は安価にコピーできても、空間の雰囲気、空気感まではコピーできません。建築家であるロドルフォ・ドルドーニをパートナーに選んだのも、空間デザインを商品とするためだったのです。
私は、家具職人をルーツにもつMinottiだからこそ、モードをビジネスに取り込めたのだと考えています。質のいい家具を作り続けるだけではグローバルなマーケットでは生き残れないという課題を正面から受けとめ「Made in Italy」の伝統を守るにはどうすべきかを考えたのです。そしてドルドーニの空間的モードを表現する能力を最大限に引き出すことで、今日の成功は生まれたのだと思います。こうした考えは、私の理想の家具販売像とぴったりでした。




Minotti (ミノッティ)


株式会社 フォーユア アンビエント すけの




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アーネストコラム酒酒落落 Minotti日本総代理店フォーユアアンビエントすけの代表・助野忠夫さん 第二回・Minottiの本質

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年11月19日

日本でイタリアの高級家具ブランドというと、カッシーナやB&B、 アルフレックスなどがメジャーと思います。ミラノ中心部のショップエリアに行くと、有名ファッションブランドが軒を連ねるなかに、これらの家具ブランドも大きなショールームを展開し、日本の家具屋のイメージとは全く違う、まるで美術館のアートのごとく家具を展示しています。私はアートを見て歩くのがかなり好きらしく、絵画や焼き物、ガラス、そして家具もビンテージやアンティークなものにひかれます。できたてのピカピカもいいけれど、使い込んだ味やぬくもり、時間をへた味のあるものに弱いたちです。そうしたものを探してミラノを歩きながら、Minottiの存在を知ったのは7年ほど前でした。


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ミラノにあるMinottiのショールーム


ほかの有名ブランドとは異なり、家具職人からグローバルなメーカーへと成長したMinottiの家具は、本質的なよさをもった製品であると直感しました。長年様々な家具を見ていると、インパクトがあっても中味はうすかったり、美しく見えても生活に活かせない家具などが分かるようになります。Minottiは華やかなブランドメーカーに比べ地味にも見えますが、貴族の時代から続くクラシック家具の伝統を受けついだ、奥行きのあるモダン家具と思います。これをぜひ日本のお客様にご紹介したい、広めたいという気持ちで一杯になりました。


* * *


Minottiの一番の特徴は、家具ビジネスにモードを採り入れたことといえるでしょう。多くの家具メーカーは、ソファやチェア、テーブルといったアイテム単位でデザイナーが異なり、家具一点一点を作品として発表しています。一点ずつは美しくても、部屋にコーディネートした姿は想像できません。
一方Minottiは、ひとりの建築家・ロドルフォ・ドルドーニが、ほぼ全ての新作をデザインしています。そのパートナーシップは十数年に渡り、毎年異なるモードをミラノサローネで発表してきました。


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2012年のミラノサローネでも新作を発表。各方面で話題となりました。


建築家のドルドーニにとって、家具は空間構成のエレメントです。特にサローネの空間コーディネートは、最新モードを占うものとして世界から注目され、会場で流す音楽や飲み物まで計算され尽くしています。ここでいうモードとは、家具によって構成された空間のスタイルです。歴代のスタイルブックを見ると、その変遷がよく分かります。過去のものだからといって古くささはありません。タイムレスであることもMinottiの特徴です。


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SUKENOでは、Minottiの魅力を広くお伝えするため
Minottiの世界観が存分に盛り込まれたカタログ
「スタイルブック」を、毎年お届けしています。




Minotti (ミノッティ)


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アーネストコラム酒酒落落 Minotti日本総代理店フォーユアアンビエントすけの代表・助野忠夫さん 第一回・輸入家具との出会い

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年11月12日

このたびアーネストさんにお声がけいただき、このようなブログでMInottiを紹介するチャンスをもらったこと、大変感謝いたします。


私、助野は今年61歳で、家具屋は2代目です。「北陸の商都」と呼ばれた高岡に生まれ、少年時代の夢は外国船の船乗りになることでした。20代前半にバックパッカーでパリを中心にヨーロッパ全域を約2カ月歩き、ヨーロッパの家具にぞっこん惚れ込みました。たまたま実家が輸入家具を扱っていたこともあり、いつかは輸入家具を中心に扱う店を開きたいと思うようになりました。しかし、高岡という地方都市で一流の輸入家具ブランドを認知してもらうまでは大変でした。


1)30年まえ、高岡でアルフレックスの家具をとてもおしゃれに展示。1年間は全く反応なし。


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2)ドイツのシステム家具インターリュプケを扱う。新婚家庭にまあまあの成績を残した。


3)ドイツのシステムキッチンポーゲンポールを扱うものの、高過ぎてあまり売れない。一方、少し安めの国産オーダーキッチンはそこそこ売れた。


幸い、北陸は日本一住宅面積の広い地域であり、輸入家具は「SUKENO」という認知も広まり、店を軌道に乗せることができました。


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高岡にある総合ショップ『SUKENO』の2階にある「木のオーダーキッチンスタジオ」。


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想い通りの空間を計画できるよう、施工後のイメージを総合的に“見える化”しています。


* * *


学生時代、南青山・根津美術館の庭は、とてもいいデートコースでした(当時は無料で入れました)。表参道の交差点から根津美術館にいたるみゆき通りも好きで、いつかこの通りにお店をもてたらと夢見ていました。そして2002年、コレッツィオーネの2階に「SUKENO」の店をオープンした時は、本当にうれしかったです。現在はコレッツィオーネ近くの南青山コートにて、Minottiのモノブランドショップを続けています。


そして、もっと沢山の方にこのブランドを知っていただきたいという願いから、このたび南青山に2店目の「トライアングル店」をオープンしました。根津美術館前の通りから六本木通りへと一直線に抜ける、新しくできた道沿いにあります。元々はPapas Cafeのあった場所の裏手にあたります。


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三角形の外観が印象的な「ミノッティトライアングル」。


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“家具をアートのように楽しみながら暮らす”をコンセプトに、Minottiの持つ先鋭的でラグジュアリーな世界観を表現しています。


これまでアーネストさんのお施主さまには、多くのMInotti製品をご採用いだきました。今でこそ少し知られるブランドになりましたが、日本では全く無名のころから認めていただいたことに深謝いたします。ブランドネームだけに左右されず、本物を見抜く目をもった方々に支えられことは、Minottiにとって一番の幸せと思います。




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アーネストコラム酒酒落落 第17回連載は初登場のこのお方です。

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年11月05日

各分野でご活躍の方々がそれぞれの視点で自由にテーマを設定し、執筆いただく全4回の連載コラム「洒洒落落」。17回目のゲストは、富山県高岡市にてインテリア製品・住宅設備の輸入・販売を中心に事業を展開され、またイタリアのインテリアブランド『Minotti』の日本総代理店として、上質なライフスタイルを提案している「株式会社フォーユアアンビエントすけの」代表取締役社長の助野忠夫さんです。


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真の上質さとモダンさを兼ね備え、弊社のお客様にも絶大な人気を誇るMinottiを日本に広めた第一人者が初登場です。


〜プロフィールご紹介〜


富山県高岡市出身。家具屋の二代目として生まれる。20代の頃バックパッカーで巡ったヨーロッパでヨーロッパ家具に魅了され、輸入家具の店舗を経営したいと考えるように。1967年4月、高岡市三女子にて家具・インテリア製品の小売業を開始。現在は高岡市の本社(SUKENO高岡/ハウジングライブラリー)のほか、Minottiのオンリーショップを南青山に2店舗展開。中でも今年9月にオープンしたばかりの『Minotti Tri−Angle(ミノッティトライアングル)』は“家具をアートのように楽しみながら暮らす”同ブランドの先鋭的でラグジュアリーな世界観を見事に表現し、またユニークな三角形の外観も相まって、南青山の新たなランドマークとして話題になっている。


* * *


輸入家具に携わり36年、培った審美眼で数ある輸入家具を世に送り出してきた助野さまが魅了されるMinottiの家具の魅力とは。数ある有名ブランドのどれとも異なる、Minottiが持つ「暮らしを豊かにする可能性」を、ご自身の遍歴とともに次回より4回に渡ってご連載いただきます。


ぜひお楽しみに。


* * *


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Minotti (ミノッティ)
世界60カ国以上に展開し、世界のセレブたちに愛されるイタリアを代表するモダン家具メーカー。世界各地のトレンドを分析し開発されるコレクションの数々は、年に一度イタリアで開催されるミラノサローネにおいても、多くの注目を集めている。


株式会社 フォーユア アンビエント すけの
「For your ambient.」その人にとっての心地よさのために。をスローガンに、インテリアを通してそれぞれに合った心地よさを届けることを目指す。現在はヨーロッパ家具、システムキッチン、システムファニチャーやそのトータルコーディネート、リフォーム施工、ハウジング業務など幅広い事業を展開し、暮らし全般をプロデュースする企業へと進化を遂げている。




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アーネストコラム酒酒落落 ニシザキ工芸社長・西崎克治さん 第4回(最終回) 深川八幡祭り 本番

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年10月22日

いよいよ「深川八幡祭り」の本番です。氏子各町を練り歩く「神輿連合渡御」の前日(今回は8月11日でした)に、各町内でお神輿の巡行が行われます。この日は町内の路地1本1本にいたるまで、くまなくお神輿を廻します。自分の家の前をお神輿が通るのを皆さん心待ちにしているのです。朝早く担ぎ手が神酒所前に集合し、いよいよ4年ぶりのお神輿の出発です。町内の巡行は一見派手さはありませんが、お祭りの本質をよく表していると思います。


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各町で町内お神輿巡行が行われる一方、富岡八幡宮からは「鳳輦(ほうれん)」(八幡宮の神様を遷したもの)を載せたトラックが各町を渡御します。


深川も少子化とは無縁ではありません。また高層マンションによる都市開発で、新住民が増えていることも事実です。お祭りを次代に継承するためには、こうした町の変化に対応する必要があります。深川八幡祭りでその橋渡しとなっているのは、子神輿や山車の存在です。子神輿は小学生まで、山車は幼児が中心になって参加します。私が祭りの虜になったのも、子神輿を担いだときの体験からでした。その興奮を忘れられず、今まで祭りに関わっています。三好2丁目の町内巡行は、大人神輿のうしろに子神輿、そのうしろに山車の順番で巡行します。幼児の引っ張る山車は、両親がカメラやビデオを持って同行し、まるで運動会のようです。


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太鼓を載せた山車を、小さな子どもと親達が一緒になってひっぱります。その先を練り歩く子神輿、大人神輿の次代の担い手たちです。


子神輿や山車の巡行は、祭礼委員の子神輿係、山車係の人たちを中心に運営されます。本当は自分たちも大人神輿を担ぎたいはずですが、子供たちを安全に巡行させるため、献身的に動いてくれるのです。また、総代が気を引き締めなければならないのも、この町内巡行の日です。翌日の「連合渡御」は大々的な交通規制をひきますが、町内はお神輿の前後しか規制できません。駐車している車を確認したり、ロープを使って対向車との距離をとったりと、祭礼委員や睦会と力を合わせ安全でスムーズな巡行を管理しています。子神輿といっても、深川名物の「水掛け」は容赦ありません。それをはね返すような担ぎっぷりは我々にとっても目を細めたくなる瞬間です。


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子どもたちも水浸しになってお神輿を担ぎます。


深川八幡祭り最大のイベント「神輿連合渡御」には、総勢54基の御神輿が参加します。毎回、渡御する順番は変わります。三好2丁目は38番。その後ろに付くのは2回目の特別参加となる「平泉」です。今回は世界遺産登録を記念しての参加とあって、注目を集めていました。12日の朝、三好2丁目を出発したお神輿は、六部会の集合場所である、木更木橋に向かいます。六部会に所属する11町会の神輿は、ここで順番通りに一列に並び、それから永代通りへと進みます。いよいよ連合渡御の始まりです。


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連合渡御の朝。総代になって7年目にして、出発の拍子木を入れさせてもらいました。順番からすると次は15年後でしょうか。


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木更木橋の手前に並んだ「六部会」のお神輿。


富岡八幡宮を出発したお神輿は、木場の貯木場跡(現在の木場公園)の外側をぐるりとまわり、深川資料館通りで小休止ののち、清澄公園の脇を通って清洲橋を渡り中央区に入ります。霊巌寺のあった霊岸島の交差点でお昼の大休止をしました。その行程を配給班の人達が先まわりして渡御を支えます。


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六部会の少女たちによる可憐な「金棒曳き」。


富岡八幡宮の参道脇に「天皇陛下御野立所」と書かれた小さな碑があります。昭和20年(1945)の東京大空襲により八幡宮は焼失し、昭和天皇はここから焼け野原となった深川一帯を視察されました。深川のお神輿も大半が失われ、その再建とお祭りの再開は、深川の人々の悲願となります。そして昭和23年お祭りが再開されると、深川の復興をいちはやく陛下にお知らせしたいと、皇居前までお神輿の渡御が行われました。それから約65年後の今年、8月12日に天皇・皇后両陛下は富岡八幡宮を訪れ、空襲を体験した方々と面談ののち、永代通りを練り歩くお神輿を史上初めてご覧になられました。


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富岡八幡宮の前から、天皇・皇后両陛下がお神輿をご覧になりました。


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永代通りでお祭りの興奮は頂点をむかえます。


一番の盛り上がりを見せるのは、永代橋を渡り永代通りから富岡八幡宮への道程です。普段は交通量の多い大通りも、この日ばかりは担ぎ手と観客で埋め尽くされます。富岡八幡宮の前では、三好2丁目のお神輿も天皇・皇后両陛下にご覧頂けました。夢のような時間はあっというまにすぎ、神酒所に戻った神輿を、いままで担げなかった人達が交互に担ぎ、本当にうれしそうでした。


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神酒所係、配給係、山車係、子神輿係、婦人部、町の長老達がお神輿を担ぎます。


お祭りというものは、お神輿を上げるずっと前、準備段階からがお祭りなのです。神輿総代である我々は、次の本祭りに向けての段取りが、いま始まったところです。


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富岡八幡宮神輿総代連合会 六部会総代 西崎克治




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アーネストコラム酒酒落落 ニシザキ工芸社長・西崎克治さん 第3回 江戸の開拓史を語る鳶の頭(かしら)

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年10月15日

いよいよ祭りが近づくと、各町で「御仮屋」や「神酒所」の設営が始まります。三好2丁目の場合は駐車場を借りて建てるため、お祭りのたびに設営・解体を行っています。設営のためやって来たのは、霊岸島の頭(かしら)と呼ばれる成田さんと鳶職たちです。霊岸島(現在は中央区新川)は隅田川をはさんで三好の対岸にあり、成田さん達はわざわざ橋を越えてきます。これには江戸時代からつづく歴史が関わっています。


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御仮屋と神酒所の設営。平日にも関わらず沢山の町の人が来てくれました。お神輿を組み立てるため、麻縄をもった霊岸寺の頭が登場します。


現在の霊巌寺(れいがんじ)は三好2丁目の近く、深川資料館通りに面しています。江戸時代の古地図を見ると、三好周辺は霊巌寺の敷地でした。松平定信の庇護も受けた、江戸有数の大きな寺だったのです。その霊巌寺は、元は霊岸島にありました。葦の原(干潟)を埋立てた霊岸島は、門前町として発展していきます。一方対岸の深川では、深川八郎右衛門による新田開拓事業が進んでいました。そして1627年、富岡八幡宮の社殿が造営されると深川一帯は多くの人で賑わうようになり、材木置場(木場)の移転や運河の開発によって、新しい町人の町へと発展します(当時の町の様子は、霊巌寺となりの「深川江戸資料館」でご覧頂けます)。


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霊巖寺の本堂は現在改装中。連合渡御の日は、元々霊巌寺のあった「霊岸島交差点」でお昼をとりました。不思議な縁を感じます。


やがて1657年、振袖火事として有名な「明暦の大火」により霊巌寺も焼けてしまいます。幕府は霊巌寺を深川に移転させ、寺の造営に関わる大工や職人たちも、そのまわりで暮らすようになりした。このように社寺の造営・移転や大火をきっかけとして江戸の町は隅田川を越え、東へと広がっていったのです。そういった歴史を背負いながら、10代つづく霊岸島の鳶職は三好までやって来ます。その縁を数百年にわたり守り続けている所も、お祭りの素晴らしさと思います。


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お神輿の組み立て。南京結びをした麻縄をお神輿の四方に結びつけ、一気に引っ張って締め付けます。


御仮屋の柱は、あとで分解しやすいよう針金を使って組んでいきます。お祭りの仮設建築に利用される独特の構造です。鳶の頭・成田さんは、お神輿の組み立てでも活躍します。担いだときにお神輿の重い屋根が落ちないよう、麻ナワを使って胴体に締め付けます。また木槌を使い、担ぎ棒をナワで連結する手際のよさも圧巻です。このロープワークは鳶職ならではの技で、素人はしっかり締め付けられません。


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木槌を上手につかって縄をしめ、担ぎ棒を連結します。渡御中にゆるむとみっともないことになります。


一方神酒所では、町の人達が集まり飾り付けを行います。3年に1度というのは微妙な間隔で、前回の記憶がおぼろげになることもあります。それを防ぐためデジカメで祭壇やお神輿などの記録写真を撮り、それをファイルにしています。正しい飾付けを次代に伝えるためにも、映像の記録が大切になると感じています。電気工事や大工仕事などは地元の本職が行い、現役をリタイアした人もお祭りのために腕をふるってくれます。三好2丁目を頼もしく思える一日です。


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町の人ひとりひとりが職能を持ち寄り、ひとつのものを作り上げていく。それこそお祭りの素晴らしさと思います。


こうした作業のまとめ役となるのが、町会で組織された「祭礼委員会」です。委員長をトップとした各係が組織され、それぞれの実務を担います。まるでひとつの会社のように、神酒所の運営から、会計、資材調達、食糧・水の配給、接待など、様々な仕事があります。お祭りの当日、食料・水を配給する係は、お神輿を先回りするため巡行を見られませんし、神酒所に詰める係や、宴会の支度をする係も同様です。町とお祭りを愛するからこそ、裏方の大切さを知り尽くした人達なのです。


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神酒所完成のあと、祭礼委員と睦が正装をして記念撮影。歴代の集合写真は、町の歴史を語っています。




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アーネストコラム酒酒落落 ニシザキ工芸社長・西崎克治さん 第2回 清澄庭園「涼亭」に集う

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年10月09日

今回はお祭りを企画・運営する組織についてご紹介したいと思います。深川八幡祭りは、門前仲町の富岡八幡宮を中心に開催され、正式には「富岡八幡例大祭」といいます。8月12日の連合渡御には、およそ3万人もの担ぎ手が参加し、観客をあわせ数十万人もの人々が深川に集まります。


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8月12日「連合渡御」には55基の御神輿が集結。


深川八幡祭りのエピソードで有名なのは、1807年に起った永代橋の崩落です。12年ぶりのお祭りに押しかけた群衆の重みに耐えかね、永代橋(当時は木橋)が崩れ落ちました。一説には千人以上の犠牲をだしたといわれます。ケンカや事故は祭りにつきものといわれるものの、お神輿を運営する「富岡八幡宮神輿総代連合会」は、担ぎ手と観客が融和し、伝統と「和」を大切にした安全なお祭りを実行するため、様々な工夫を重ねてきました。


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永代橋を渡る、三好2丁目のお神輿。


神輿総代連合会は、各町から5〜6名ほど選出された「総代」約330人によって組織されます。私も7年前に三好2丁目の総代となりました。ただでさえ、目立つ存在だからこそ偉そうにするな。謙虚な姿勢を崩してはならないと厳しく教えられます。


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連合渡御の朝、渡御の安全を祈願する「六部」の総代。


連合会は、近隣の町を束ねた7つの部会に分かれています。三好2丁目の場合、白河、清澄、平野を合わせた「六部会」に所属しています。同じ部会の総代は特に密接に(月に1度)集まり、本部の決定事項や今後の課題を報告して対策を練ります。3年に一度繰り返されるお祭りのために、月に一度の会合は多すぎると思われるかもしれません。しかし、顔を合わせる機会を重ねることで総代間の信頼関係が築かれ、無用な争いを防ぎ、協調できるのです。総代に選ばれるのは、祭りが好きで、神輿のことがわかり、多少の押しが利く。その上で比較的、時間の自由のききやすいという中小企業のおやじが多いようです。三好2丁目を例にとると、私の家具製造の他、呉服屋、仕出し料理、建具製造、おでん種製造、寺の住職、梱包資材業など様々です。ご存じのとおり深川一帯は、戦前から中小企業の連携によって成り立っています。お祭りによってそれぞれが結束し、深川の町をまとめてきたと私は思います。


* * *


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清澄庭園の「涼亭」。


さて、お祭りまでひと月をきった7月中旬。清澄庭園の「涼亭」で、三好2丁目の顔合わせ会が開かれました。この会は別名「半纏(はんてん)合わせ会」とも呼ばれます。総代は夏の着物に揃いの絽(ろ ※捩織(もじりおり)で織られる、薄く透き通った絹織物の一種)の半纏を羽織って出席します。これは総代の正装で、夏用、冬用、神輿用の半纏があり、同じ部会の総代に祝儀不祝儀のあるときは、この半纏を着て集まるのが慣例となっています。


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「六和会」と染め抜かれた絽の半纏。


顔合わせ会には総代をはじめ、町会で組織する「祭礼委員会」の方々や、青年部である「睦(むつみ)会」の他、神輿同好会の面々が集まります。そこで当日のスケジュールや祭装束の決まりなどを確認し、各組織ごとに自己紹介を行います。神輿同好会とは、お神輿を担ぐのが好きな人のサークルのような集まりで、各団体10人〜30人ぐらいのグループとなり、各地のお神輿を担ぎに行くのです。浅草地区で95団体、墨田地区で64団体、鳥越地区で15団体等々、東京都内だけで約750の団体があります。深川の祭りは東京でも人気の高い祭りゆえに、様々な同好会から当町会の半纏を借りたいと声がかかります。各地のお神輿の担ぎ方は少し異なります。深川八幡祭りの特徴は「わっしょい」のかけ声でしょう。今は東京のお祭りでも「セイヤ!ソイヤ!」などを聞きますが、深川は昔ながらのしきたりを守り、わっしょい以外は禁止しています。また装束についても白のハンダコに白のダボシャツ、白の地下足袋と決められ、揃いの半纏を各町で貸し出します。


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同好会もそれぞれの半纏で集まります。


こうした会合を円滑にすすめ、町会の長老や同好会の方々をもてなすには、場の空気も大切です。清澄庭園は回遊式の広大な日本庭園として都の名勝第一号に指定された名園です。紀伊国屋文左衛門の邸宅跡ともいわれ、三菱財閥の岩崎家が要人を招待する場として明治期に整備し、その後、関東大震災をきっかけに東京市(当時)に寄贈されました。東京大空襲の際は、多くの避難者が庭園の池に命を救われています。


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夕暮に包まれた涼亭。まるで明治の時代にタイムスリップしたかのようです。


その池の上に浮かぶ数寄屋造りの「涼亭」は、1909年(明治42年)に保岡勝也の設計で建てられ、東京都選定歴史的建造物に指定されています。今は集会場として、意外と手頃な値段で一般に貸し出されています。そのかわり仕出し弁当や飲み物の用意などを自前で行うためため支度は大変でした。手作りの会ではありますが、江戸下町の風情を充分に感じてもらえたのではないかと自負しています。




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アーネストコラム酒酒落落 ニシザキ工芸社長・西崎克治さん 第1回 「現代の名工」の手による奉納板

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年10月01日

8月12日に開かれた「深川八幡祭り」の連合渡御。東日本大震災の早期復興祈願をテーマとした今回、史上初めて天皇・皇后両陛下がいらっしゃり、富岡八幡宮からお神輿をご覧になったニュースをご記憶の方も多いのではないでしょうか。お祭りの報道シーンというと、勇壮なお神輿を担いだり、威勢よく山車を曳いたりする姿をよく見ます。しかし、お祭り当日に行き着くまでには町の人達の献身的な協力があり、なかにはお神輿を担ぐことも、巡行を眺めることすら出来ない人もいます。こうしたお祭りの内幕を、4回に分けてご案内します。


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富岡八幡宮に集合した「総代」たち。


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私と三好2丁目の総代仲間。永代通りにて。


* * *
私の本業は、オーダー家具・キッチンの制作という立場で家づくりに関わることです。その一方、深川八幡祭りをとり仕切る「総代」としての顔も持っています。お祭りは家づくりとも共通する所の多いイベントと思います。家づくりに関わる大工や職人の多くは、完成前に別の現場に行ってしまい、竣工した姿を見ることは滅多にありません。しかし、職人たちに共通した思いは、ご家族の幸せな暮らしを末長く支える家を建てることなのです。


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ニシザキ工芸のオーダー家具実例。


さてニシザキ工芸のある「三好2丁目」周辺は、霊巌寺(れいがんじ)という江戸でも最大級の寺院の門前町として発展しました。大きな寺のまわりには、大工や建具師、木彫師、塗師など様々な職人が集まり職人町を形成します。当社のルーツもそうした職人の一人で、和家具を作る「指物師」でした。今もその技はオーダー家具・キッチンへと姿を変えながら生かされています。
当社の他にも代々続く職人は町のなかに沢山います。なかでも建具・木工職人の國友三郎さんは、厚生労働省「現代の名工」に選ばれた名工です。國友さんは三好2丁目のために「奉納板」を制作してくれました。今はベニア板に紙を張った簡単なものも見かけますが、名工の手による奉納板は町の自慢です。


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奉納板の組み立てを指導する「現代の名工」國友三郎さん。


深川八幡祭りの約2カ月前。神輿倉庫から奉納板を搬出し、町会の皆で協力して立てました。八幡祭りは3年に一度開かれますが、昨年は東日本大震災の影響で延期となり4年ぶりのお目見えです。奉納板の木枠は分解式になっていて、道の真ん中に置いて組み立てます。建具の技を生かした木枠には少しの狂いもなく、伝統的な仕口(ジョイント部)は、はめ込むだけで強固に連結されます。若い人たちにとって、伝統技術に触れるいい機会でもあります。木槌の音は町内にこだまし、お祭りが近づいたことを知らせます。


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心地よい木槌の音が町内に響き渡ります。


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精巧に刻まれた仕口を「木栓」で留めています。
組み立て・分解を繰り返しても痛みません。


深川八幡祭りの連合渡御は、富岡八幡宮前・永代通りから出発し、木場から清洲橋、新川、永代橋をぐるりとめぐる約8kmもの行程を、炎天下10時間近くかけて練り歩きます。各町から参加する54基の御神輿には、1基あたり300名以上の担ぎ手が必要です。昼食や飲み物、節目に行われる集会の他、高張り提灯などの備品、お神輿・山車の修繕、お仮屋や神酒所を建てる費用なども合わせると、各町会ごとに数百から1000万円の予算が必要となります。寄進者のお名前を掲げる奉納板は、寄進を集めるためにも、とても大切な存在なのです。深川八幡祭りは、江戸三大祭り(神田、山王、深川)のなかでも、町民の自治によって行われてきた祭りです。江戸の昔から、町の一人一人がスポンサーとなって運営してきたことに、私は誇りを感じます。


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皆で力を合わせ、奉納板を立ち上げます。


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順番を確認しながら寄進者の木札をはめていきます。




さて次回は、清澄庭園の池の上に建つ「涼亭」にご案内します。ここで開かれる「顔合わせ会」は、江戸の風情を今に伝える貴重な機会となっています。




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アーネストコラム酒酒落落第16回目の連載は…

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年9月24日

第16回目の連載コラム「酒酒落落」の担当は 、東京・深川の江戸指物師の家に生まれ、現在はモダンなインテリア空間にあったオーダー家具キッチン製造を手掛けるニシザキ工芸株式会社社長・西崎克治さんです。


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2010年4月より、2度目のご登場となります。


西崎さまの過去の記事はこちら
http://earnest-blog.jp/past/2010/04/




今回のテーマは
「江戸三大祭 深川八幡まつり」。
富岡八幡宮神輿総代連合会の総代もつとめる西崎さまの視点から切り取られた
歴史ある祭の魅力を、存分にご紹介いただきます。


以下、西崎さまからのメッセージです。


今年の8月12日、深川は4年ぶりの連合渡御が行われました。東日本大震災早期復興祈願と書かれた幟が町の隅々に立ち並び、奥州平泉からも神輿が参加しました。また、天皇皇后両殿下がご覧になる下で神輿を差し上げることができた快挙。地元にとって、歴史に残る大祭となりました。そんな深川八幡祭りと深川の歴史、祭りの準備から本番当日までの様子を、4回にわけてご紹介致します。
ニシザキ工芸株式会社 西崎克治


西崎さまの連載は10月1日(月)よりスタート致します。
ご期待ください。


ニシザキ工芸
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http://www.nishizaki.co.jp/        


東京・深川でオーダー家具やオーダーキッチンを製造するニシザキ工芸は、一昔前までは神楽坂にも店を構え、花柳界に火鉢や脇息、衣桁、鏡台などを納めていた江戸指物(さしもの)師でした。指物の伝統を踏襲しながら現代のインテリア空間にあった仕事を手掛けています。




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アーネストコラム酒酒落落 NEXT代表 加藤洋一さん 第四回 ブラックルーム

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年9月10日

指定席へどうぞ。


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漆黒の闇に灯る一条の光。その下には静かに主の訪れを待つ椅子が一脚。
外界とは全く異なる時間軸で時が流れる空間。
認識としての「離れ」。




これは私が「ホームシアター」の機能を純化、追求した結果到達した究極の解としての空間の在り方です。2004年に「ブラックルーム」という呼称で発表し、理解を得られるには時間を要するだろう、という予測はすぐに裏切られ、体感した方々の多くにご導入を決めていただきました。
前回までに述べてきたスマートハウスの姿は、エンタテインメントを中心に据えて、いつでもどこでも快適で便利な生活を実現するもので、空間の仕切りを超えて充実する性能は、謂わば「オープン化」する方向性をもっています。逆説的になりますが、日常的空間がオープン化すればするほど、それとは全く正反対の「非日常」を持つことが必然となってくると思います。
旅に出る、別荘に籠る、そうした時間ももちろん貴重なのですが、非日常に誘う空間をひとつ、自宅に用意することも忙しい現代人にとっては一考に値するのではないでしょうか。


「ブラックルーム」はテクノロジーが創る闇です。
映像にとっては映り込む余計な光は極力排除したい。音楽にとっては他の音は雑音であり、観たい映像、聴きたい音に集中するためには、外部の音と光を遮断した漆黒の闇こそが理想の空間となります。再生するための機器の存在もできる限り消し去ってしまうことが肝要です。
しかしながら、人間は本能的に闇には恐怖感を抱きます。そこで、照明というテクノロジーを使い、暗闇と仄かな灯りとの対比を生み、指定席に腰掛けたあなたを安堵と心地よさが包み込む仕掛けを作ります。まるで胎内の記憶が呼び覚まされたように心が落ち着き、しばらくすると自分の呼吸と心拍音すら聴こえてきます。五感のひとつ「視覚」が奪われることで、他の感覚、特に聴覚の感度が上がることを経験したことはありませんか?「闇」や「暗」という漢字に「音」の文字が含まれていることには、人間の視覚と聴覚の関係が表れているように思います。
以前、インテリアデザイナーの内田繁氏と対談した折に、千利休の待庵とブラックルームとの共通点についてご指摘を受けたことがあります。「待庵の壁は黒く塗られ、ホリゾントをなくしている。つまり利休は、真っ黒の空間にして限界をなくすことで、自分のいる場所が宇宙につながっているという感覚を人工的に呼び起こそうとしたのだ。利休が待庵に求めたのは宇宙を凝縮したような空間だったといえ、そういう意味でブラックルームは待庵を彷彿とさせるデザインだ」というお言葉をいただきました。


対談記事の詳細はこちら
http://www.next-yk.co.jp/pdf/htp2008-49.pdf


もともと映像と音楽を楽しむ究極の部屋を創ろう、というコンセプトで設計した空間ですが、非日常の空間として余計な装飾を削ぎ落とした結果、「茶室」に通ずるデザインになったことは私自身、興味深いことだと感じています。
感覚を研ぎ澄ませることのできるブラックルームは、読書や瞑想のための部屋としてお使いいただくなど、そこでどう過ごすかはもちろん自由です。
とはいえ、私が本当にお勧めしたいのは、やはりエンタテインメントを徹底して愉しむこと。
感覚的感度が上がった状態で映画や音楽を鑑賞することによって、対象への没入感は格段に高まります。エンタテインメント専用の部屋を設える意味はそこにあり、俗世から一気に引き離され、非日常に浸る爽快感をぜひ味わっていただきたいと思います。


* * *


こちらのブログタイトル「酒酒落落」は英訳すれば‘free and easy’となるそうです。
心にわだかまりがなく、何ものにもとらわれない、自由な様。
投稿のご依頼をいただいた際に、それこそ真のスマートハウスが支えるべき在り方であり、我々が密かに「アタラクシア」と呼んでいる境地に通じるものと、ひとり合点がいき、慣れない執筆を拝受した次第です。
「アタラクシア」についての想いはいずれまたお目にかかれた機会にでも、と願うのみですが、日々の生活にときめきをもたらすテクノロジーについて幾ばくかでもお伝えできたのであれば幸甚です。
拙文をお読みいただきましたことに深く感謝しつつ、筆を置かせていただきます。




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アーネストコラム酒酒落落 NEXT代表 加藤洋一さん 第三回 マルチモニター・システム

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年9月03日

音楽と並ぶもう一つの重要なエンタテインメント要素は映像です。


先頃、世界中が熱狂に包まれたロンドンオリンピックも映像なしで伝達されるだけだったとしたら、かくも盛り上がりを見せることはなかったでしょう。昨年には地上波放送がデジタルに完全移行し、携帯電話を使ったワンセグ放送も定着、夢のように語られていたテレビ電話はインターネットの出現であまりにもあっけなく実現してしまいました。
映像との関わりは食事と同様といっても過言ではないほど、現代人の生活になくてはならないものとなっています。そして、映像と切っても切れない関係にあるのが「画面」、「モニター」の存在です。私たちの身の回りにはTVをはじめとして、コンピューターのディスプレイ、携帯電話、デジタルフォトフレーム、防犯カメラのモニターなど、数多くのモニターが溢れています。エンタテインメントのためだけでなく、いわゆる「情報」を得るためにも欠かせないアウトプット端末が「モニター」です。
それらは、もちろん有用なものではありますが、ふと冷静になって空間を眺めたとき、別々の場所に置かれたそれらのモニターは雑然とした印象を与え、インテリアの中で違和感を漂わせています。映像があるときはまだしも、何も映し出されていないオフの状態のモニターには美しさを感じることはほとんどありません。TVシステムは大型化の一方でどんどん薄型化も進み、壁掛けにしてお部屋のインテリアの一部に、という提案も多々見かけますが、それでもオフの時の違和感は払拭できません。どんなに丁寧にインストール/ビルトインしても、違和感が消えないのは、モニターという製品のマテリアルが表に出てきてしまうためです。


そうした問題のソリューションとして考案されたのが、「INTELUX(インテルクス)」という名の新しいマルチモニターシステムです。ルクスとはラテン語で光を意味し、光とテクノロジーをインテグレート(統合)することで映像と空間の新しい関係を提案していこうというのがそのコンセプトです。INTELUXは、オフの時には鏡のように空間を映し出し、必要な時にだけ必要な画面をオンしてTVや大小複数の映像を表出させることができます。鏡という生活空間に溶け込むマテリアルの向こうから、艶やかな映像が流れるマルチモニターシステムは、いくつもの映像をすっきりとひとつにまとめた形で見せることができますので、インテリアとしても洗練されたスタイルの演出が可能です。


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一見、美しい壁面家具のように見えますが…


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INTELUXマルチモニターシステムなら、TVでニュースを観ながら、PCモニターで今日の天気とスケジュールを確認、もう一つのモニターには子供部屋の様子が映し出され、玄関に誰かが近づくと同時に画面がポップアップして訪問客に対応・・・という情景が空間にしっくりと馴染む形で実現します。





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iPad上のリモートコントロール画面


小さな画面をひとつだけオンにして、例えば熱帯魚の映像を流しておいたとしましょう。まるで本物の水槽が壁に埋め込まれているように見え、ゲストの反応が楽しみな、ちょっとしたサプライズになります。また、タッチセンサー機能を組み込むことで、操作性は格段にアップし、こちらにご紹介する動画のように画面の切替えなどが直感的に行えるようにもなってきました。センサー技術は今後更に進化することは確実で、音声認識やしぐさによる制御など使い勝手はどんどんよくなっていくことでしょう。





* * *


映像のコンテンツは「情報」と「エンタテインメント」の2つに分けられることは先にも述べましたが、一言で情報といってもTVのニュースだけでなく、インターネットの情報も防犯カメラの映像も情報です。エンタテインメントは映画、スポーツ、コンサート、アニメといろいろあります。テレビ番組もそうですし、デジタルカメラの写真も含まれます。それぞれのコンテンツには相応しいサイズがあります。私は湾岸戦争の頃、戦場の映像が頻繁にニュースで取り上げられるのを観たとき、小さなお子様のいる家庭でいつもの大画面でそうしたニュースを映す出すのはどうなのか、と考えたことがあります。そうした報道は映画を観る画面とは異なるサイズの画面で区別して子供たちには観せていくべきではないかと思ったのです。現実を直視するのにリアルサイズである必要はなく、エンタテインメントとは見方を明らかに区別することで人間としての感覚を育てることが大切だと思います。少し話が逸れましたが、情報が溢れる現代社会だからこそ、複数のモニターを使い分けていく必要があり、それらの制御と見え方が賢く、人に優しいものでなければならないのです。
これからのスマートハウスの中核には、音楽のためのマルチルームシステムと、映像のためのマルチモニターシステムが欠かせない、ということがおわかりいただけると思います。


次回最終回は、スマートハウスにもてなしの要素をもたらし、真に心地よい空間を完結させる、「“離れ”のススメ」を献上いたします。


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アーネストコラム酒酒落落 NEXT代表 加藤洋一さん 第二回 マルチルーム・システム

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年8月27日

音楽はお好きですか?
こう質問されて「いいえ」と答える方は少ないのではないかと思います。
音楽の起源は有史以前、言語とともにヒトという種だけがもつ特殊な能力です。音楽はあらゆる文化において存在し、ことばは通じなくても心を伝える表現手段として機能します。
おそらく人は誰しも、心の中にいくつかの忘れがたい曲を持っているのではないでしょうか。想い出とともに封印されていたメロディ。予期せぬところでふと耳にした途端にその想い出がまざまざと蘇ってきた経験はありませんか。
切り取られた「時」に寄り添うように音楽が在る。そのような「時」が多ければ多いほど、その人の人生は豊かなものであるような気がします。
ご存知のように、音楽は録音という技術が生まれるまでは、その場限りのもので記憶にとどまるしかない存在でした。生演奏の素晴らしさは格別ですが、好きな音楽をいつでも好きな場所で聴けるようになったのは、録音技術の発展のお陰です。エジソンによって円柱型アナログレコードが開発され、その約100年後にはCDが誕生、瞬く間に時代はデジタルへと移行しつつあります。デジタル技術が進化することで、これまで不可能だったことがどんどん可能になり、音楽との関わり方はより自由に、そして音質はより自然で心地よいものになっていくことが期待できます。
CDの誕生から30年以上を経た現在、テープやディスクといった所謂「メディア」と呼ばれる物体が消え始め、ラジカセやCDプレイヤーもメーカーの製造ラインは縮小する一方です。現代人は音楽を聴かなくなっているのでしょうか。もちろん、そんなことはありません。街のあちこちでイヤホンを耳に「マイワールド」に浸っている若者達。以前にも増して音楽三昧な生活となっているのです。


しかし、そのようなスタイルだけでは豊かさを感じることはできないと思うのは私だけでしょうか。
この場を借りて提案したいのは、毎日の暮らしをより豊かにしてくれる音楽との関わり方、つまり、スマートハウスにおける心地よいミュージックシステムです。
録音された音楽はデジタルデータという形でファイル化され、ドキュメントや画像と同じようにインターネットを介してやり取りすることができます。ご想像がつくと思いますが、演奏された時のデータを理論的にはクォリティの劣化なしで家庭まで届けることも既に技術的には可能となっているのです。コンサートホールまで出掛けなくても、リアルタイムで家庭に居ながらにして楽しむことができる、そんな時代もすぐそこです。お洒落をして外出する楽しみが奪われる訳ではありません。要は、あなたの気分と嗜好にあったスタイルで音楽を楽しんでいただく機会が格段に増やせる、ということです。


スマートハウスの中核にぜひ据えていただきたいのが「マルチルーム・システム」という方式です。その名の通り複数の部屋をネットワークで結び、サーバーに保管された音楽データを各部屋に配信、部屋毎に異なる音楽を異なる設定で聴取することができます。何千枚分ものCDと同等のデータがティッシュ箱大程度のハードディスク(サーバー)に収まるだけでなく、曲やアーティストの検索、整理が簡単にできますので、家族全員の音楽ソースを保存して、シーンや要求に合わせて,家の中のどこででも高音質の音楽を楽しむことが可能です。ネットワークで繋がっていれば、別荘からでも自宅のサーバーにアクセス、同じ音源を聴くことができます。例えば、ティーンエイジャーのお嬢さんのいるAさん宅では、奥様がキッチンでお料理しながらお嬢さんのフォルダをシェア。「結構いい曲ね!と後で会話がはずみ、一緒にコンサートに出掛けたりもするんです」というお話を伺いました。多分にパーソナルな音楽を「シェア」することが簡単にできるのもサーバー管理の大きなメリットといえるでしょう。
また、こうしたシステムには学習機能があり、ランダム再生を選択しても最初に選んだ曲の雰囲気に共通した音楽をセンス良く選んで連続再生してくれます。従来のランダム再生設定でありがちだった、静かなピアノ曲の後に突然ハードロックが流れるなどといった無粋な現象は起こりません。ホームパーティなどでも心強い機能ですね。
更にインターネットラジオにアクセスすれば、世界中の色々な国の言語と音楽に触れることができます。今夜の夕食はチャイニーズだからBGMは中国語の流れる香港のラジオ局、イタリアンな夜はカンツォーネ専門チャンネル、といった具合にネットの世界は気分を盛り上げる名脇役揃いです。



マルチルーム・システムのコアとなるB&O BeoSound5 Encore


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B&O インウォールスピーカー BeoVox1


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B&O インウォールスピーカー BeoVox2


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B&O オンウォールスピーカー BeoLab3500


マルチルーム・システムなら各部屋の再生システムは非常にシンプル、スピーカーさえ鳴るようにすれば重々しいオーディオ機器が幅を利かすこともなく、スマートフォンなどでの制御が可能となります。
そして、シーンやムードに合わせ、カーテンや照明、空調との連動までを考慮してシステム全体を設計することで、自ずと洗練されたスマートハウスが構築されます。


* * *


音質に優れ、デザイン性の高いスピーカーと言えば、まずB&Oが思い浮かびますが、最近では「Artcoustic」という、まるで絵画を飾るような感覚の壁掛スタイルのスピーカーも登場しています。
ArtcousticはスピーカーキャビネットをRALカラーチャートから指定可能、ゲッティの豊富なイメージをスクリーンに採用できるなど、まさに才色兼備のスピーカーです。


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壁の色やお部屋全体のイメージに合わせて建築設計の段階からシステムをご検討いただき、音楽が心地よく流れる素敵な空間をお創りいただきたいと思います。


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アーネストコラム酒酒落落 NEXT代表 加藤洋一さん 第一回・真のスマートホーム

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年8月20日

「ときめき」のある暮らし。このキーワードでスマートハウスを考えてみよう、というのが今回の私のテーマです。


スマートハウスという言葉をインターネットで検索すると、「1980年代にアメリカで提唱された住宅の概念で、設備機器や家電を情報化配線等で接続し最適制御を行うことで、生活者のニーズに応じた様々なサービスを提供しようとするものである。」とあります。
日本でも「情報化住宅」というテーマで大学や大手住宅、家電、通信、エネルギー系、総研系企業が研究を重ねていて、2009年には経済産業省が「スマートハウス実正プロジェクト」を公募するなど、国を挙げての取り組み課題となっています。私もある大学の研究チームに参加し、ITと住宅設備をどうつなぐか、エンタテインメントサイドからみたアプローチについてお話しさせていただいたことがありますが、そこで触れた研究データは非常に刺激になりました。
昨今のデジタル化の波で技術は加速度的に進化し、様々な機能を織り込んだスマートハウスの実現は一気に現実味を帯びてきた感があります。


例えば、こんなシーンを想像してみて下さい。
休暇を終えて空港に降り立ち、あなたは旅の余韻に浸りつつも明日からまた慌ただしい日常にもどることを想い起こす。自宅に着いたらしっかりと睡眠をとり、朝には自分のモードを普段に切り替えなくては、と思いながら、ポケットからスマートフォンを取り出し、自宅のアイコンをワンタッチしてモードボタンを選択する。
約2時間後、留守宅のエントランスホールのドアを開けると、やわらかな照明が灯り、ウェルカム・ミュージックがどこからともなく流れてくる。リビング、寝室の空調は最適化され、ジャクジーもスタンバイしている。あなたは、汗を流し、ゆったりとした気分でナイトキャップ。旅の疲れを癒す眠りにつく・・・。
翌朝には起床時刻の少し前からカーテンが徐々に開き、部屋の中は外部に同調するように明るくなる。あなたは朝日の中で穏やかに目を覚ます。


いかがですか?
さりげないもてなしの心地よさがあなたを包む暮らし。
これは近未来のイメージではなく、すでに現実にできることです。
私どもが取り扱っているデンマークのバング&オルフセンでも同様のコンセプトを提案しています。





* * *


省エネやエコロジーはもちろん大事なことですが、本当に快適な生活を目指すとき、それらが最終目的というのでは人間感覚より科学技術優先としてきた前世紀のビジョンのままです。


長年ホームシアターを構築する仕事に携わってきてわかったことは、家という容れ物に最先端の設備を配備したとしても、テレビやオーディオといったエンタテインメントシステムとの連動抜きで構築されたオートメーションでは、真のスマートホームを実現することは難しい、ということです。なぜなら、エンタテインメント系のシステムこそが暮らしの質を決定づけるものであり、それらに連動する形で照明や空調が制御されることによって全く異なるアプローチが可能となり、まさに「もてなし」の感覚を加味することができるからです。ご存じのように、テレビやAV機器のリモコンというのは非常に複雑です。機能がたくさんあって使いこなすのは結構大変ですし、いつの間にかその数は増え、さてどれがどの機器のリモコンだったのか、操作する順番は・・・?などと煩雑なことこの上ありません。
このような複雑な機器をトータルシステムとして使い勝手よく整合し、iPhoneやiPad、スマートフォンからセレクトボタンをタッチするだけで簡単にコントロールできるとしたらどうでしょう?それだけではありません。そのボタンのワンタッチで機器が起動すると同時にするするとスクリーンが降りてくる、カーテンはあたかも劇場の幕のようにクローズされ、エアコンも静音モードに。照明は徐々に落ちていき、お部屋はホームシアターに早変わり。いやが応にもムードが盛り上がります。そうです。AV機器を制御できるコントロールシステムなら、家庭内のエレクトロニクスをほぼすべて一元的に制御して、シーンの切替えも思いのままにできてしまうのです。


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中途半端なオートメーションは、最初は便利に感じても慣れてしまえば当り前。心を豊かにしてくれるものにはなりません。
エンタテインメントを中心に据えたスマートハウスが暮らしにどんな変化をもたらすのか。
次回はより具体的なシステム事例を交えてお話ししたいと思います。


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アーネストコラム酒酒落落 第15回目の連載が始まります。

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年8月06日

各分野でご活躍の方々がそれぞれの視点で自由にテーマを設定し、執筆いただく全4回の連載コラム「洒洒落落」。15回目のゲストは、日本におけるホームシアター・カスタムインストーラーのパイオニア、NEXT代表の加藤洋一さんにご登場いただきます。


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(C)Photo Studio hollyhock


〜プロフィールご紹介〜
1982年新しいスタイルのオーディオ/ビジュアルショップを名古屋に立ち上げ、SONY他、国内主要家電メーカーとの直接取引を開始。86年、SONYのコンセプトショップ・プロジェクト『NEXT』の全国第一号を出店。2000年には、バング&オルフセン販売権を取得し、名古屋を拠点にインテリアまでカバーするショールームを展開。世界のハイエンド、ハイクオリティメーカーとの太いパイプを築きあげてきた。2008年にはバング&オルフセン六本木の経営権を取得、ほぼ同時に体感型シアター空間も併設した。デザインに斬新なアイディアを盛り込み、かつて経験したことのない音と映像の空間演出が話題となった。


30年以上にわたりオーディオ/ビジュアル分野に関わり、その楽しみ方のスタイルを追求するなか、2011年には「ものづくり」まで踏み込んで新たなプロジェクトをスタート。合同会社時空を設立し、その名の通り時空を超える価値の創造に取り組んでいる。


* * *


以下、加藤さまからのメッセージです。


便利さと省エネ、あるいはエコロジーを目的に語られることの多い「スマートホーム」という概念がありますが、人の暮らしには、「何ができるか」という機能追求だけではなく、「どんな使い方をしたいか」という視点が非常に重要です。音楽と映像を取り入れ、 生活を積極的に楽しみ、心を豊かにするような「感動」をもたらしてくれるシステムをいかにスムーズに組み込み、使いこなしていくのか。


「ときめき」のある暮らし。これからの「ホーム」を考える際にとても大切な要素ではないでしょうか。


30年近く「ホームシアター」という家庭におけるエンタテインメントの在り方を様々なスタイルで提案してきて、改めて感じる日々の暮らしの大切さ、そこに夢をもたらす喜びを綴ることができたら幸いです。


* * *


『good life designing 映像と音楽のある楽しい暮らし』をコンセプトに、ホームシアターのプランニングやインストール、アフターケアをサポートしてきた「NEXT」。あらゆる要望に対応する柔軟な姿勢で初心者からヘビーユーザーまで広く心強い存在となっている加藤さまが、今だからこそ伝えたい新しいライフスタイルとは?
8月20日(月)より全4回に渡って連載されます。どうぞお楽しみに。


(※8月13日(月)はアーネストブログをお休みいたします)


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アーネストコラム酒酒落落 ポーゲンポールジャパン株式会社 代表・川島東治さん Vol.4 ローカルをグローバルに

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年7月23日

ローカルをグローバルに


 前回は顧客に120%以上の満足度を与えるために必要な商品の付加価値として、「キッチンではなくポーゲンポールの価値」をお話しましたが、この最終回では商品を販売する我々当事者の付加価値についてお伝えし、また私の実現したい夢についてお話したいと思います。


 私がよく使うフレーズのひとつに、『知らないはどこまで行ってもゼロだが、知るは無限大』というものがあります。人の通常の行動範囲は結局のところその本人が知っている世界の範囲内にとどまります。今住んでいる家をリフォームしたいと考えたとき、現在使っている家の中で不満や不足感を抱いているところを思い出し、例えばキッチンは家を買ったときに既に設置されていたA社製だが今度はB社のものにしたいとか、造作(ぞうさく)で自分たちだけのためのキッチンをオーダーしようとか考えますが、その選択肢に現れてくるのもその本人が知りうる範囲に限られます。ポーゲンポールの存在を知らない方は弊社のショールームにいらっしゃることはありません。それのみならず、世界最高峰と認められたセミオーダー型のキッチンがどのようなものであるかということも知りえず、よってそれと比較した場合の他社製キッチンとの差異も知りえないということになります。これは弊社にとってはもちろんですが、ご本人にとっても残念なことではないでしょうか。


 また、ポーゲンポールの存在はご存知でショールームにいらっしゃった方でも、造作とセミオーダーの違い、セミオーダーだからこそご自分の希望に近づけつつも堅牢性が確保されたキッチンになりうること、扉材や採用するビルトイン家電などにより価格も大きく変わってくることなどをご存知ない方が多くいらっしゃいます。


 さて、私たちがこのような説明を行い、ご存知なかった点を数々述べたとしても、これはセミオーダーキッチンまたはポーゲンポールという商品説明の枠を超えるものではありません。多少の感動やサプライズはこの枠内で顧客に与えることができるかもしれませんが、それは単に知らなかったことを教えてあげただけで、他社が行うサービスと何ら変わりません。


 お客様が本当に感じる満足は予想外の情報を得られたとき、またそれにより新たな展望が開けたときです。お客様のそのような傾向を感じ取り、ヒントを与え、解決策の例などを具体的に示すことができれば、お客様の満足度や感動は非常に大きなものになります。別の言い方をすれば、「まさかキッチン屋に来てここまでのアイディアをもらえるとは思わなかった」と言わしめれば、それは120%をはるかに超える満足度を与えているものと言っていいでしょう。


 事実、その下地はあるのです。弊社にいらっしゃるお客様は間違いなくリフォームか新築の予定のある方です。キッチンを中心にという考えが増えているため、最近では家作りの早い段階で弊社を訪れる方々も増えてきました。いつからか、キッチンの扉材に合わせた床材、壁面素材、家具、照明、キッチンツールなどのアイディアを求められることが多くなってきました。しかしこのキッチン以外のところまで我々が力を注ぐことはできませんし、そもそもドイツ本社の直営店としての本分を全うしなければなりません。お客様の満足度を高めるためといって本業以外の分野に注力するのは本末転倒ですから、そこには工夫が必要になってきます。


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 Living Wellness in Luxury(リビング ウェルネス イン ラグジュアリー)。このタイトルを冠した展示イベントが、2010年10月から弊社ポーゲンポールジャパンのショールームにおいてスタートしました。これは、今後の日本人に求められるライフスタイルが、家の外の非日常にお金をかけるのではなく、家の中の健康的な日常を豊かにする傾向となることを見越した、世界的にも歴史やブランド力のある企業によるコラボレーション企画です。第1回はイタリアのフィットネスマシン・メーカーであるテクノジム、デンマークのAV機器メーカー、バング&オルフセンと弊社の3社共同で行われました。その後このLiving Wellness in Luxury(略してLWL)は協賛会社を増やしつつ恒例化され、先日第6回を終了したところですが、ここではどんな協賛ブランドが集まったか、是非こちらのURLからLWLホームページをご覧ください。 http://lwl-japan.com/


 このLWL企画は非常に多くのインプリケーション(含意)に富んでいます。弊社を含めて、協賛ブランドには自国では勿論、グローバルで見てもトップブランドであるのに日本ではあまり知られていない企業があります。イベントでは参加者であるエンドユーザーや建築家の方々にこれらをワン・ストップで商品に触れ、体験してもらうことができます。各ブランド商品の展示期間は1ヶ月ですが、そのオープニングパーティが大変に好評です。各社によるプレゼンテーション、著名なイタリアンレストランからのケータリングとそのオーナーシェフが弊社のキッチンで料理パフォーマンスを見せ、参加者を魅了します。各協賛社からの景品が当たるラッキードローもあり、非常に印象に残る、満足度の高いパーティになっています。


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第3回目のLWLではアーネストアソシエイツ様の協賛をいただき、模型とパネルの実例紹介が好評だった。


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第5回から、展示期間中に「建築家による建築家のためのワークショップ」を開催することとなったが、第6回は2名の若手建築家がLWLコンセプトの別荘模型を制作、披露した。


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これまでの協賛ブランドの中から選りすぐり、共同でLWLブックレットを制作。軽井沢の4000を越す別荘に送付されるだけでなく、今後様々な活用が期待される。


 弊社は私以外に2名の女性セールス・デザイナーがおります。私が心強く思い彼女らに感謝していることは、私の「120%以上の顧客満足」を理解してくれ、このような企画で知りえた協賛ブランドの商品や企業コンセプトなどを求められるお客様に丁寧に紹介してくれることです。ともすれば負担と感じるときもあるかもしれませんが、それを行うことがお客様と、そして自らにも付加価値を与えてくれることと感じてくれているのでしょう。また、協賛各社とのコミュニケーションにより自然と知識や人脈も広がり、通常のキッチンメーカーにはないマーケティング手法に魅力を感じてくれているかも知れません。


* * *


 さて最後に、私の実現したい「夢」の話で今回の連載を完結したいと思います。
 私の座右の銘は、 “Think globally, act locally, and it’s the other way around.” 「グローバルに考え、ローカルに実践する、逆もまた真なり」です。LWL企画のような継続的な試みは弊社の本社は勿論、どの国の直営店やディーラー店でも行われておりません。キッチンを機軸としたいわばワンストップ・ソリューションにて上質な顧客を開拓し、高いブランド力を持つ協賛会社との協力関係を築き上げるマーケティング手法が実績をもって本社に成功例として認められ、それを踏襲させる。。。商品開発として真のイノベーションを実践してきたポーゲンポールが、マーケティングとしてのイノベーションは日本というローカル発のアイディアだった。。。これが実現しグローバルに広がるとすれば、こんなやりがいのある仕事はありません。


 これで私のビジネスマンとしてのキャリアは完結、とはまだまだ言いません。充実した経験ができればなおさら、「次」に生かしたいと思ってしまうのです。


(了)


ポーゲンポール キッチンデザインセンター東京
http://www.tokyo.poggenpohl.com


「酒酒落落」川島さまの過去の記事はこちらから
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アーネストコラム酒酒落落 ポーゲンポールジャパン株式会社 代表・川島東治さん Vol.3 本当のイノベーション

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年7月17日

本当のイノベーション


 私はこれまでずっと営業・企画畑でキャリアを積んできましたが、今回のコラムは私が営業活動を行う際の基軸となる考えを、ポーゲンポールキッチンの開発理念とともにお話したいと思います。


 人は何かを購入する際、誰しも「お得感」、「お値打ち感」を求めます。「このような価値のあるものをこんなに安く手に入れられる」という点に魅力と、それこそ投資成果に対するコストパフォーマンスの最大化に大きな満足感を感じます。その満足感を与える方法は2つあって、ひとつは本当に安い価格を提供できること、もうひとつは一定の価格にどれだけの付加価値を提供できるかです。ここでは後者について述べますが、付加価値とはつまり、顧客が知りえなかった利点ということです。


 キッチンの相談にいらしたお客様は自分が求めるキッチンの実現を目的にいらっしゃるのですが、それに100%応えることは当然、というのが私の考えです。同業他社もそうであるためにその時点での差異はなく、プラン・見積りを要求される1社に過ぎないかも知れません。他社との違いに納得をいただき最終的に選ばれるためには、お客様が知りえなかった利点(付加価値)や相談を受ける側としての信頼感、説明内容の楽しさ・ワクワク感、驚き、感動を与え、100%を120%以上で返してあげてやっと優位に立てると考えるべきです。


 お客様が付加価値を認めるこのプラス20%以上の部分は二部構成になっています。ひとつは「キッチン」ではなく「ポーゲンポール」という商品価値。もうひとつはそれを勧める担当者の人間性と所属する組織です。そしてこの2つが認められたとき、真の「ブランド」が確立します。


『本当のイノベーションは未知の領域でしか見つからない』(京大iPS細胞研究所所長 山中伸弥氏)


 ポーゲンポールの120年の歴史は創業者フレデミール・ポーゲンポールが掲げた「キッチンを進化させる」というスローガンを具現化させてきた道程でした。確かに、扉材において高度なコーティング技術を確立したり、調理家電をビルトインさせたシステムキッチンを初めて世に送り出したり、業界内では常に革新性を発揮してきました。しかしそれはキッチン家具という部材の改善や効率的に料理をするためのキッチンという範囲内でのイノベーションであり、山中教授に言わせると「本当のイノベーション」ではなかったかもしれません。また、創業者の言う「キッチンの進化」も、そのような物的・技術的進化だけではなかったような気がします。


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 ポーゲンポールでは1970年から『未知の領域』への取り組みが始まりました。上の写真はexperiment 70と呼ばれる実験的な取り組みです。宇宙船や海底基地など究極の省スペースにおいてどこまでキッチンを機能させられるかを追求したものです。世界の既に有数なキッチンメーカーで、このようなcrazyな実験を始めるメーカーがあるでしょうか。これは後にポーゲンポールが初めてエアバス内にキッチンを納品することで成果を見るのですが、このあたりから、ポーゲンポールは従来のキッチンの枠を超えて、未知の領域との遭遇によって『本当のイノベーション』を加速させていくこととなります。


 世界的に著名な建築家、工業デザイナーであるホルヘ・ペンシとの共同開発によるPLUS MODO(前回に写真掲載)、家の構造との融合を実現した+INTEGRATION(同)、オフィス向けをイメージした会議用デスク兼食卓となるDINNING DESK、ポルシェデザイン、ミーレとの3社共同開発によるポルシェデザイン・キッチンP’7340、建築家ハディ・テヘラーニとのコラボレーションによる+ARTESIOなど、ポーゲンポールは世界のキッチンメーカーのリーディングカンパニーとして、キッチン以外の領域との遭遇をもってより高い次元を実現してきました。これは時代が求めるキッチンのあり方の変遷に応じて提案することを社会的使命と考えてきたからに他なりません。それは同時にキッチンが単なる住宅設備、調理場所という枠には収まらない消費者からの要望でもあったのです。


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「DINNING DESK」


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「P’7340」


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「+ARTESIO」


 先に述べた、真のブランドと認められる2つの構成のうち、商品そのものであるポーゲンポールの付加価値が「本当のイノベーション」だとすれば、もうひとつはそれを顧客へ伝える私たち(社員、会社)の付加価値です。私が営業の際に最も重視しているのはコミュニケーション能力ですが、お客様とのやり取りにおいて、いかに自らが、また会社が持つ「顧客が知りえなかった利点」を伝えることができるかが非常に大きなポイントとなってきます。そしてこのコミュニケーションにも「本当のイノベーション」が求められるのですが、具体的な内容は私が今後こうありたいと願う計画や夢を交えて、次回最終回でお伝えしようと思います。


(了)


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アーネストコラム酒酒落落 ポーゲンポールジャパン株式会社 代表・川島東治さん Vol.2 投資アドバイザー(その2)

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年7月09日

投資アドバイザー(その2)


 私がフランス人のファンド・マネジャーから学んだことは「投資」の本当の意味でした。一時的なバブル期に値動きの激しい株式を買っては売り、売っては買うを繰り返すのはその銘柄の株価の動きを勝手に憶測した投機にすぎません。投資とはその企業の事業内容や環境、経営者の力量、業績推移、設備投資計画や資産内容など様々な方面から分析を行い、できるだけネガティブなリスクを排除して現在の株価が割安と判断された株式を購入し、比較的長期間に渡って保有し、時には株主として経営陣を叱咤激励することなどで収益(リターン)を確保する行為です。そしてこの行為は証券投資のみに限らず、むしろ日常的な行動において意識されるべき考え方でもあると知らされました。投資とは、長期に渡り自らにプラスとなる結果を与え続けてくれるもの・ことに比較的大きなお金を投下することです。よく言われる「自分への投資」とは将来にわたり自らの活躍の場を広げるための自己啓蒙にお金を費やすことと言えるでしょう。


 欧米では家を購入することをしばしばinvestment(投資)という言葉で表現します。中古住宅を例に考えてみると、この言葉からは日本と欧米の考え方の違いや、中古住宅市場規模の大きな較差の原因をも垣間見ることができます。
 ある建築家が「日本の住宅は引渡し時が最も価値が高く、その後はどんどん目減りしていく」とおっしゃっていました。日本ではこの考えが根強いですが、欧米では中古住宅の価値をいかに高めるか、またその過程においてそこに住むことになる自分や家族にとっていかに価値あるリターンが与え続けられるかが重視されます。そのような観点がinvestmentという言葉に表れているのだと私は考えています。


 株式投資の場合、期待されるリターンは2種類あります。
 まずはキャピタル・ゲインといって、買った時点の株価よりも高い価格で売ることができたときの、その差額の収益。もうひとつはインカム・ゲインといい、長期保有していた期間に株主として還元される配当金という収益です。さらには株主優待品としてその企業の商品が届けられる制度もありますが、これも一種のインカム・ゲインですね。
 ちょっと横道にそれますが、現在の配当利回り(購入した際の株価に対する1年の配当金の割合)はかつてよりずっと高く、東証1部上場で配当を行っている企業の平均利回りは2%以上で、中には4%を超す高利回りの銘柄もあります。もちろん業績不振のため無配転落とか極端には上場廃止などのリスクはありますが、安心できる企業であれば、利息がないに等しい銀行預金よりよっぽど有利な運用のひとつだと思います。


 さて、日本ではまだまだ中古住宅市場が未成熟だとすれば(政府は今後この市場のてこ入れに様々な政策を盛り込んでいくようです)、住宅への投資は必然的にキャピタル・ゲインよりもインカム・ゲインを期待することになるでしょう。
 この場合のインカム・ゲインとは何か。私は夫婦、家族間の愛情や信頼感と絆の醸成、子供の健やかな成長と将来の社会的な成功の基盤となる教育・文化の形成など、ひと言でいえば「日常の生活において幸せを感じることのできるひとつひとつ」だと思っています。それを得るための「投資」として家の購入はあるべきで、またその家の中で存在感や重要性が高まってきたキッチンにおいても「投資」をするという考え方が求められてきていると考えています。


 「なぜ証券マンからキッチンセールスマンへの転職を?」との問いには、「どちらも投資アドバイザーですから」と答えることにしています。むしろキャッシュからキャッシュを生む投資よりも、お金では買うことのできないかけがえのないものを生む投資のお手伝いに、今は大きなやりがいと意義を強く感じています。ポーゲンポールのキッチンには間違いなくその投資価値があると信じています。


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「+INTEGRATION」
キッチンの収納キャビネット、ビルトイン機器やTVまでも家の壁に埋め込み、「キッチン」 と「建築」の融合(Integration)を実現。家の中の中心的なエンターティメント・センターたるキッチンを提案。


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「PLUS MODO
建築家・工業デザイナーのホルヘ・ペンシとのコラボレーションで制作されたキッチン。見えるところと見えないところの絶妙な対話を生み出す。この9月初旬、弊社ショールームに初お目見え。


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「Shelvig System」
奥の壁付け収納棚(上・下)はキッチン収納から派生した新たな収納家具。キッチン家具との調和により、キッチン中心に構成されるリビング全体に統一感と斬新なデザインを提案。


(了)


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アーネストコラム酒酒落落 ポーゲンポールジャパン株式会社 代表・川島東治さん Vol.1 投資アドバイザー(その1)

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年7月02日

投資アドバイザー(その1)


 2012年の今年、弊社ポーゲンポールは創業120周年を迎えました。私がポーゲンポール ジャパン株式会社(港区南麻布5-1-11)の設立・運営を任されて4年目となり、年月が経つことの何と早いことか、今さらながらに驚いています。このブログに初めて寄稿を依頼され、連載されたのが2年前の5月。私の拙文を見てくださった方が弊社ショールームにいらっしゃり、キッチンの受注に繋がった方がいらっしゃいます。このような機会をくださったアーネストアソシエイツ様に感謝しつつ、今回も4回の連載にお付き合いいただけますよう、読者の方々にお願い申し上げます。


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昨年納品された広尾ガーデンヒルズの案件。
弊社ショールームに近い同マンションは今後本格的な
リフォーム時期を迎えると思われ、期待が高まる。


 よく「年齢不詳」と言われますが、私も50歳を過ぎて立派な(?)中高年となりました。転職を重ね、よく言えば常に新しい挑戦を続けてきたからかもしれませんが、あまりにも学ぶことが多く、老け込んでいる暇も余裕もないのが若さを保っていられる理由なのかもしれません。今回のブログでは私が社会人になってからのこれまでを振り返りつつ、今後の夢と計画についてお話させていただければと思います。


* * *


 お会いする多くの方々から、「なぜ証券マンからキッチンのセールスマンとまるで違う分野に転職したのか」との質問を受けます。私は社会人となってから18年間、日系2社・外資系2社の証券会社に勤務しました。そのうち12年間が海外勤務です。2003年、証券・金融の世界を飛び出してから、医療サービス機器販売、映像制作、観葉植物販売の会社を経験し、現在に至っています。間の会社時代についてはおいおい話すことにして、最初と現在(あえて「最後」と言わない?)のギャップが皆様を驚かすようですが、実は私の中では同じことなのです。


 そのキーワードは「投資」です。


 私が日系証券会社へ就職した1985年は、「株屋」と呼ばれていた証券会社が総合的かつグローバルな金融機関へと、その変貌が加速されていた時代でした。金融のみならず、日本経済全体がバブル期に突入していく矢先だったわけですが、私にとって幸運だったのは、その翌年から海外勤務を命ぜられ、「投資」の意味や意義を海外の投資家から学べたことです。もし日本にいて、一部の同期生がそうであったようにバブリーな生活を謳歌してしまったとしたら、現在の私はないでしょう。赴任先はフランス、パリでした。学生時代にフランス留学経験のある私は語学を買われ入社したのですが、予想以上に早い海外赴任でそれが希望だった私は心を弾ませたものです。


 やや専門的になりますが、株式を公開している企業(上場企業)が投資に値するかどうかを測る指標のひとつにPERという尺度があります。Price Earning Ratioの頭文字を読んだもので、その企業の株価が、1年間で生み出す1株当たりの純利益の何倍になっているかを示すものです。例えばある会社の株式が現在1,000円で売買されているとして、その会社の1株当たり純利益が50円と予想された場合、PERは20倍、といいます。これは別の見方をすれば、その株式(銘柄ともいいます)は会社の20年分の価値を見越して売買されているとも言えます。このPERの数値が高ければ高いほど成長性に期待が持てるとも言えますが、バブル期の日本において上場企業の平均PERは60倍をゆうに超えていました。東京証券取引所で売買される1部上場銘柄全体の指標である日経平均株価は2万円を超え、3万円も超えようとしていた時代の話です。銘柄の中には100倍、200倍を超えるものまであり、さすがに200年先の株価は買えないだろうと呆れた現象が起きていましたが、実際にはそういう銘柄こそ人気が高く、株価の上昇も凄まじかったのです。


 パリでの私の仕事は主に日本の株式と転換社債(株式と社債の中間的な証券)を保険会社や銀行等の金融機関に推奨販売する営業でした。そういう顧客を新規開拓するのも仕事です。これら金融機関には世界のあらゆる国の証券に投資・運用する部門があり、その責任者たるファンド・マネジャーが私の顧客だったわけです。当時25、6歳の私にとって彼らはあまりに投資運用のキャリアに長け、その国際的な視野や考え方は会うたびに勉強になったものですが、その彼らでさえ(彼らだからこそ?)理解に苦しむ日本市場の破竹の上昇が、私のような若僧にも営業のチャンスを与えてくれていたのだと思います。


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当時盛んに行われていた日本株式セミナー。
金融機関のファンド・マネジャーらを招待し、株式市場がバブル期を
迎える直前、積極的に日本株投資を勧めていた(当時26歳)。


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日本株投資を強気で運用する機関投資家10社を募り、
1週間の日本ツアーを行った。彼らが投資する企業の本社や
工場訪問にフルアテンド(当時27歳)。


 そのとき、忘れられない顧客とのやり取りがありました。私は本社のリサーチ部門に所属するアナリストの企業レポートをもとに、ある自動車メーカーへの投資を推奨していました。その銘柄のPERは70倍、当時の平均PERとそんなに変わらず、高いという認識はありませんでした。相手のベテランのファンド・マネジャーは私に言ったものです。「いいかムッシュ・カワシマ、フランスのプジョーのPERは10倍だ。アメリカのGMだって20倍もない。そんなPERの銘柄にお金をつぎ込むのはもはや投資ではなく投機だ。日本もいずれ国際的なPER水準まで下がる」。


 この言葉が、私が「投資」の本当の意味を掴むきっかけとなりました。


 因みに現在の東京証券市場の平均PERは15倍程度。このベテラン氏の予言どおりなのですが、だからといって当時の彼の投資姿勢が正しかったかどうかはまた別の問題です。プロフェッショナルな資金運用者は毎年ベンチマークと呼ばれる市場の平均的なパフォーマンスを示す指標と比べ、それを上回る運用成績を収めなくてはならないからです。時には投機と思われても運用成績をあげるために短期的な買いと売りを行う必要もあったのです。
 何だかキッチンメーカーの人間が書いたとは思えないような内容で、まるで株式投資講座のようになっていますが、次号にて「投資アドバイザー」の真意をご確認ください。


(続く)


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アーネストコラム酒酒落落 第14回目の連載は…

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年6月25日

各分野でご活躍の方々がそれぞれの視点で自由にテーマを設定し、執筆いただく全4回の連載コラム「洒洒落落」。14回目のゲストは、今年創業120周年を迎えたドイツのキッチン家具メーカー『ポーゲンポール』日本支社・ポーゲンポール ジャパン株式会社 代表の川島東治さんです。2010年6月、第4回の「酒酒落落」で執筆していただいて以来、2年ぶりの登場となります。


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〜プロフィールご紹介〜
1961年2月2日生まれ。北海道函館市出身。
弘前大学(フランス文学専攻)を卒業後、日本勧業角丸証券(現みずほインベスターズ証券)入社。翌1986年、同社パリ駐在員事務所(のち現地法人化)に出向。その後クレテ゛ィ・スイス・ファースト・ホ゛ストン(CSFB)証券、山一フランス(副社長兼営業部長)、メリルリンチ証券(株式ディレクター)を経て、2004年映像制作会社起業に出資参画。その後、観葉植物の企画販売会社の再建に携わるなど広く活躍。08年12月ポーゲンポールジャパン代表取締役就任。
学生時代の留学で1年、社会人となり10年フランスに滞在、CSFB時代に1年半ロンドンに滞在経験を持つ。この間、ヨーロッパのフランス語圏各国の機関投資家を担当し日本株式営業を推進。98年山一證券倒産とメリルリンチ入社のため帰国。メリルリンチでは国内主要機関投資家とフランス系投資信託会社向けの営業を担当。
趣味は料理、銭湯通い、SF映画鑑賞。特技は仏語、英語、料理、カラオケなど。


* * *


世界で活躍する証券マン、映像制作・プロデュース、観葉植物企画販売、そしてポーゲンポールジャパンの代表と、様々な経験を重ねながら今もなお走り続ける川島代表。これまでのことを振り返り、その軌跡が起こした様々な化学反応を、今後の夢と計画のお話とともに、4回に渡り語っていただきます。
第1回は「投資アドバイザー」。証券とキッチン、一見全く相容れないように見える二つの中にある共通項とは?
ぜひお楽しみに!


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ポーゲンポール……
今年創業120周年を迎えたドイツ発祥のキッチン家具メーカー。世界でも有数の歴史を持ち、「私たちのゴールはキッチンを進歩させることにある」という強い信念のもと、常に技術に磨きをかけ、ユーザーから高い信頼を得ている。ドイツ国内をはじめ、世界的にも最高級キッチンメーカーとして認められており、そのクオリティの高さから、「Poggenpohl」=「品質の指標」といわれている。


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アーネストコラム酒酒落落 JAXSON清水秀男さん Vol.4 京都にて

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年6月04日

最終回は、今や自宅に次ぐ寛ぎの場所、京都について綴らせていただきます。


もともと若い頃より京都は憧れの地であり、リフレッシュのために必ず年に数回は行っています。


家内が昔から持っていた小さな町屋造りの家を手入れして使い始めた6年前より、料亭・旅館のもてなし、格式を味わう楽しみも格別ですが、住まいを設けてこその楽しみ、東京では先ずもって無い気さくで人情味溢れるご近所づきあい、いきつけのおばんざい店など、より深い一生ものの繋がりを得ることができました。


朝は7時には玄関の戸が叩かれ、隣のYさんがお煮しめと焼き魚で朝食の差し入れ。夕食は外食を、と思っていても、“勿体無いからウチで食べなはれ!”とY家に連れ込まれ、、京都の始末の心そのもの且つ人情の塊のご夫婦や、仕事に一切関係なく、全くの素の私として開けっぴろげに付き合える親友とのひと時恋しさに、気持ちが疲れたと感じると京都に向かうのです。


先日5月の連休には何十年かぶりのえびがに(ざりがに)釣りを寺の側溝で孫としました。昔の悪ガキぶりを孫に教えるつもりがついつい夢中になり、時間が経つのを忘れ熱中、身体は覚えているもので、自分で言うのも変ですが、上手いです。10匹も取りました。帰ってきて白川に放なしてやりました。


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近所の坊やに釣りを指南


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孫はとっくに飽きているのですが…


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釣りの成果です


* * *


>>> 京都大学講演と茶会


もう昨年の11月になりますが、外にお伝えしていませんでしたので、京都大学学祭での講演についてお話しします。
講演は以前紹介されたTVガイアの夜明けを見た将来起業を目指す学生のサークル、国際ビジネス研究会の学生からの依頼により参加させていただいたものです。


いざ演台に立つと、モニターが3台もあり、聴講者は学生、一般の方に混じって見るからに教授らしき方々もおられ、真面目な学生生活を過ごしてきていませんので、紹介を受けている間は立ち位置が逆なような、妙に落ち着かない気分でありました。


内容はいつもの講演とは少し変えて、学問上では聞けないであろう起業当時からブランドを立ち上げるまでの七転八倒、日本の文化やものづくり力をベースとしたニッチブランドこそ、世界でも通用するという持論をお話しさせていただきました。私にお声掛けいただいた時点で、市場を独占する超大企業の経営者が語る誰もが納得する内容は期待されていないはず、と飾ることなくお話しした結果、何名もの学生からその後もメールをいただき、慕ってもらうのは可愛く、また頼もしいもので、今もやりとりをしています。


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講演の様子


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国際ビジネス研究会学生と




講演会の前日は京都大茶の湯研究会の計らいで茶会にお招きいただきました。
過去花見会等で経験しているものの、初めて正式な茶事風茶会を体験させていただきました。


茶会は国の登録有形文化財に指定されている、京都大学清風荘・西園寺公望の旧邸で催されました。多数の方が参加されるものと思っていましたが、連客は四名のみ、細川家のご子息と数奇屋建築の第一人者、中村外二工務店の代表中村義明さんとご一緒させていただきました。


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2席目 薄茶席


所作の間合いの静寂に充実感を感じ、掛軸、花、茶器と向き合う時には自分の心を覗くような不思議な感覚を覚えました。
日本民族の精神文化である茶道の奥深さ、作法は制約ではなく“大切なゲストをいかにもてなすか”を問うものと、繊細風雅な文化に日本に生まれたことを誇りに思います。


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3席目 濃茶席 掛軸を拝見 和服が私です




起業を夢見てイタリアに渡り、海外を猿岩石のように見て歩き、お風呂をつくると決め、真似することは無くとも一番参考になったのは、京都の老舗旅館“柊家”の高野槙のお風呂でした。安楽に頭を支える枕、あふれるお湯を受ける排水溝、シンプルながら、如何に心地よく肩まで浸かるか計算しつくされているこのお風呂は今も私の目標であり、戒めです。




柊家そして今回の茶会も、もてなしの心のありようを学ばせていただきました。
日本人の私がつくるお風呂が、日本でも海外でも、癒しと寛ぎと充足、そして家族の大切な時を過ごす場として活かされるよう願いを込めて、これからもお風呂をお届けしていきたいと思います。


ブログを読み返してみれば、私は常に人との関わり、信頼関係と幸運な出会いに支えられてきたことを書き連ねてきたようです。Something Great:偉大な力を感じずにはいられません。


最高に幸運な出会いだった我が家の太陽、家内が丹精を込めた今年の自宅のバラをご紹介して終わりとさせていただきます。
ありがとうございました。


清水秀男




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>>> JAXSONウェブサイト
http://jaxson.jp/



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アーネストコラム酒酒落落 JAXSON清水秀男さん Vol.3 インドネシアより

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年5月28日

今月の初め、インドネシア ジャカルタに行ってきました。


海外では初のJAXSON全室採用ホテルのオープニング確認が目的です。ホテルはKERATON AT THE PLAZA A LUXURY COLLECTION HOTEL。このホテルはセントレジスやWホテル、ウェスティンブランドを擁するスターウット・ホテル&リゾートグループに属し、セントレジスと並び最高級の位置付けとなるものです。
LUXURY COLLECTION HOTELは、ジャカルタの他、ギリシャ、イタリア・ヴェニス、トルコ・アンカラ等に在り、その地の貴族が所有した建物をベースにするなど、インテリアの豪華さなどに特徴のあるブランドです。


LUXURY COLLECTION HOTELオフィシャルサイト
http://www.starwoodhotels.com/luxury/index.html


KERATON、ジャワ語で皇帝という意味のこのホテルの全室採用についてはドラマがありました。
ブログという形式でないとなかなかお伝えできない裏話を綴らせていただきます。


* * *


ちょうど今から1年前、17年ぶりに私はインドネシアを訪問しました。
以前、上海のプロジェクトでタッグを組んだシンガポールのデザイン事務所よりジャカルタのホテルのスィートルームの案件をいただき、ホテルのプロジェクトマネージャーと打合せをする目的です。


話は17年前にさかのぼりますが、アジア各地のハイアットホテルオーナーへの営業をかけていた頃、私はジャカルタのグランドハイアットのオーナー、ロサノ氏と出会いました。
彼は当時のスハルト政権の側近でもありましたが、非常にフランクな方で、ビジネスの話はもちろんですが、日本文化や食の話題で意気投合したものです。


そんな当時を思い出しながら、ハイアットの2階のレストランで食事をしていると、そのロサノ氏が歩いてきたのです。
まったくの偶然の再会でした。
「清水は何でここにいるの?」というロサノ氏の問いに答えると、なんと今回の案件のホテルもロサノ氏がオーナーであるとのこと。
翌朝にはボードメンバー会議に招かれて、詳細を詰め、当初スィートルーム4室だけの採用予定だったのが、全室140室、さらにオーナーズルームまでJAXSONで進むことになったのです。
シンガポールのデザイナー、リチャード氏との信頼関係、オーナー ロサノ氏からの推奨で、この上なくスムーズな進行で無事受注することが出来たのです。


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KERATON AT THE PLAZA オーナー ロサノ氏と


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ホテル客室


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バスルーム(バスタブはカスタムメイドです)


また、当時小さな男の子だったロサノ氏の御子息は素晴らしい青年となり、父親の片腕として活躍しておられ、今後はJAXSON製品の代理店をしていただくことになりました。


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プラザインドネシア不動産部 主要メンバー、関係者の皆さん


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ロサノ氏の御子息と


20年近くも前の御縁がこのように花開くこと、本当に嬉しく思います。また、日々の出会い、人との関わりの積み重ねがあってこそ、このような幸運な偶然がやってきたのだと、改めて身の引きしまる思いがします。


インドネシアと日本の交流促進が日系企業の現地法人、大使館の連携で活発に進められています。今回のロサノ氏との再会をきっかけに、年に数回開催される日本の文化を紹介する講演会に光栄にも講師を依頼されました。前回は和菓子のとらやの社長が講師をされたと聞き、大役ですが、風呂文化日本についてお話したいと思っています。


* * *


Keraton at The Plazaのオープンを確認後、バリ島のとあるホテル改装計画の打合せのために移動しました。移動中インドネシアを代表する名峰Bromo MountainやRaung Mountainを空から見ることが出来ました。
早朝の清々しい空気の中の山は悠大で神々しい眺めでした。


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アーネストコラム酒酒落落 JAXSON清水秀男さん Vol.2 ミラノサローネより

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年5月14日

今回は先月4月に開催されたミラノサローネを中心にお話しさせていただきます。
サローネはイタリアミラノで開催される30万人を超える来場を誇る世界最大のデザインイベントです。
30年以上も毎年欠かさず通っています。毎回新たな発見があり、特に展示装飾については良いも悪いもブランドの有り方として非常に参考になります。また、サローネは自分の目利きが間違っていないか流れを確認する機会でもあります。


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画像:サローネ会場エントランスにて。入場を待つ人達。


今年は隔年開催のキッチン、バスルーム関連見本市も開催されました。
前置きですが、本来ならば様々なブースや製品を画像でご覧に入れたいのですが、プレスではない私が各ブランドの写真を撮りご紹介することはポリシーとしてしておりませんのでご了承ください。


インテリアと比較するとCassinaやB&B、Moltiniのように、バス関連業界には独自のブランド観を確立したメーカーが少ないような気がします。
今回はイタリアのサニタリーブランドなど、著名デザイナーを起用し流石というデザインも多くありましたが、デザイン先行という感が否めません。その中でもDURAVITやVITRAなどは日本の入浴スタイル、“肩まで浸かり温まる”ことをコンセプトにしているタブもあり、日本の入浴文化の影響を実感します。
また、バスタブ=インテリアとしての感覚も浸透してきたのでしょう、置型バスタブをメインに発表している企業が多く見られました。


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画像:以前からの知り合いでVICTORIAというサニタリー会社のブースにて。JOAN氏と打ち合わせ。


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画像:左CALRO氏。2005年JAXSONがサローネに参加した時に知り合った高級ブランド専門のレップの方と偶然の再会。
左より2番目 シンガポールのJAXSON代理店の社長HENRY氏。
もう20年ものお付き合いになります。


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画像:蛇口の会社CEAにて。キッチンブランドBOFFIなどにも供給している会社でクオリティの高いブランドです。
左はCEAのオーナー夫人です。


* * *


JAXSONはもう7年前になりますが、2005年Fuori Saloneでバルカシリーズという置き型バスを日本に先駆け発表しています。


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画像:新シリーズ“BARCA”を一堂に展示、発表しました。


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画像:カクテルタイムは和のフィンガーフードと日本酒で。


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フィエラと会場間のシャトルカー。


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画像:会場のメイキング画像です。


リゾートスタイルをコンセプトとする当シリーズは、今までにない素材を用いた斬新さが話題となり、ホテル、旅館やエステ、現在は個人の住宅でも採用いただいています。また、中国の高級マンションに全室採用されるなど、海外プロジェクトにも多く参加しています。


* * *


今年のサローネではグループ会社のLIXILが2年連続してサローネに参加、トルトーナのスーパースタジオで“泡による入浴スタイルの提案”を出展、大きな反響を呼びました。
原研哉さんをデザイナーに迎え、テーマ“A New Desire”人間が味わうことの出来る愉楽とリラクセーションの未来の一端を印象的に展示していました。
日本の会社が世界の檜舞台で評価されるのは非常に嬉しいことです。


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                                (C)LIXIL
好きな本に囲まれあたたかな泡に包まれる至福の時間。
心の豊かさを感じます。


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これはJAXSONのバスタブです。15年ほど前に発売されたこのバスタブ、キャスターが付いており、移動可能(モバイル)をコンセプトとし、背景には書棚が。
私だけではないはずです、特に男性はお風呂と読書の組み合わせは嬉しいのではないでしょうか。


* * *


今回の締めは食の話題にします。
三十年間も通ったイタリアンレストランが突然店を閉めており、とても残念でした。最後の晩餐のあるコルソマジェンタ通りの三人兄弟の店でした。
旨い店の私の見極め方をお教えします。アーリオオーリオペペロンチーノ(ガーリックと鷹の爪のパスタです)の味を基準にしてみてください。ごまかしの効かないシンプルなメニューこそ、その店の腕が分かるものです。三人兄弟の店のペペロンチーノは絶品でした。私が食べた皿にはオイル少しも残らず、ネコが食べた跡のようだと言われたものです。私も料理が好きですが、未だあの味には至りません。
美味しい店を探すのはとても難しいのですが、ナビリオの運河沿いの店は美味しい処が多いようです。


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画像:ナビリオ運河沿いの店にて。ラードのスライスと鹿肉のスライス。世界一ラードの旨い店と看板に書いてありました。
石の採れる場所はラード作りにとても適しているそうです。


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パイナップルのアイスクリーム添え。シンプルですが、ごく薄くスライスしたパインの食感が楽しいデザートです。我が家でも定番になっています。


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画像:ナビリオ地区のアンティークショップで見つけた器です。色が美しく衝動買いしました。


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私の訪伊は、毎回超過密なスケジュールです。身体の疲れとは逆に、ミラノの空気、人、食がパワーをくれます。


インテリアとファッションとグルメ。肌で感じたトレンドをJAXSON流に料理するアイデアが湧いてきます。




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アーネストコラム酒酒落落 JAXSON清水秀男さん Vol.1 JAXSONの生い立ち

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年5月01日

アーネストアソシエイツ村木常務のお声掛けでこれから4回に渡り寄稿させていただくことになりました、株式会社JAXSON 会長の清水秀男と申します。よろしくお願いいたします。


アーネストホーム様には15年以上も前からJAXSON製品を採用いただいております。「高級住宅」、だけでは表現できないアーネストの家づくり。住まうこと・暮らすことの楽しさ、豊かさ、尊さを追求するとこうなるのだろう、と常に学ばせていただいています。厳しい家づくりにかける姿勢は当然JAXSON製品にも要求され、私を含め歴代営業担当も厳しい要求にこそ燃える性質ですので、今に至るまでお付き合いいただいているものと自負しております。


***


私がお風呂のデザイン、モノづくりの世界に入ったきっかけは、家具ブランド「arflex」への憧憬と言い切れます。舞台美術などのアルバイトに明け暮れた学生時代、大きなトレンドを生み出したVANジャケットファッションに熱中する中、VANから立ち上がった「アルフレックスジャパン」に出会いました。そして運命的にもarflexの日本版家具の製造工場は私の従兄弟が経営しており、そこで直にブランドのモノづくりの場面に触れたのです。インテリアシーンを牽引するブランドとして、そして自由闊達でセンスの良い着こなしのarflex社員に憧れて、いつか日本人のライフスタイルに影響を与えるような事業を興したい、と強く思ったのです。


30年以上も前に購入したアルフレックスのダイニングテーブルは、長らく家族団欒の中心にあり、今は美大に通う孫の制作用デスクとして大切に愛用されています。代々受け継がれる家具のようにJAXSONもありたい、と思います。


さて、その後25歳より2年間、ミラノに留学した訳ですが、師事したインテリアデザイナーからは直接的なテクニックではなく、食をはじめファッションなど、人生の楽しみ方を吸収する機会となりました。若い私が怖気づくような一流の場にも連れ歩いてもらったことは人生の宝となっています。


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画像:ミラノ・モンテナポレオーネ通り。クロスするマンゾーニ通りにあった“RITS SADDLER”は一番好きなファッションブランドです。馬具等の皮革製品から始まった由緒あるブランドで、エリザベステイラーやチャップリンなどにも愛用されていたそうです。時代の流れで今はコルティーナの店舗だけになっています。


とはいえインテリアデザインが目的の留学ですから、次第に焦りが大きくなっていきます。自分は何をデザインしたいのか、できるのか、、自問自答の日々。「椅子やテーブルのデザインで、日本人がヨーロッパ人に勝てると思うのか。」という師の言葉に半ば諦めの気持ちでお風呂に浸かり、望郷の思いで日本のお風呂に入りたい、と思った、ここから全てが始まりました。師はヒントを与え続けてくれていたのです。日本人らしい文化や背景を持ったものに取り組むべきだと。
帰国後すぐに工房を興し、従兄弟の会社で培った樹脂成型技術を基にバスタブデザインの傍ら趣味のレーシングカーのカスタムパーツを作りながら世界中の展示会視察やバスルーム事情をマーケティングしたのです。そして1982年、常に私を支え叱咤激励してくれる家内と共にJAXSON JAPANを設立しました。そして今年8月にはJAXSONは30周年を迎えます。


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画像:サブリオーネ2Gコンセプトイラスト。
このモデルは両親と子供、3人のバスタイムをイメージしてデザインしました。
http://jaxson.jp/products/series/spazio/sabrione/sabrione2g.html


余談ですが、ミラノで培った料理の腕は常に家でも発揮しています。食へのこだわりがご縁を呼び、10年前から国際美食団体、日本ロティスール協会会員になっています。


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画像:ロティスール東北支部のパーティー。右は家内です。
ラ・シェーヌ・デ・ロティスール協会サイト
http://rotisseurs.jp/about/


***


私は対外的な表現の際には「バスタブ」と言いますが、個人的には「お風呂」の方がしっくりきます。「お風呂」という言葉にはそこから広がる時間や寛ぎまで含まれるような気がするのです。


4月発刊のモダンリビングの別冊付録の広告に五右衛門風呂スタイルのお風呂を出しています。
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モダンリビングサイト
http://www.hearst.co.jp/product/modernliving



リゾートスタイルでもあり、和のテイストも持つこのお風呂に入っているモデル、実は私の孫娘です。孫とのお風呂の時間は童心に帰るひと時です。家族の和を育むお風呂をデザインできる幸せを感じる時間です。




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アーネストコラム「酒酒落落」第13回目の連載が始まります

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年4月23日

各分野でご活躍の方々がそれぞれの視点で自由にテーマを設定し、執筆いただく全4回の連載コラム「洒洒落落」。13人目は、弊社の作品にも数多く取り入れられているバスタブブランド『JAXSON』の会長兼チーフデザインオフィサー、清水秀男さんのご登場です。


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〜プロフィールご紹介〜
1952年生まれ。
1982年JAXSON(現:株式会社JAXSON)を創業。
JAXSON全製品のデザインを手がける。
探究心旺盛で、建築デザインが好き。
先進的な建造物に魅力を感じつつも、日本の伝統建築に惹かれ、年に数回は必ず京都に訪れる。


今回のテーマは「JAXSON お風呂考」。
住設機器の枠を超えたデザイン製の高さが、国内のみならず世界的にも評価されている同社。
日本の伝統的な風呂文化の魅力を広く発信する“世界のバスタブメーカー”を目指し、さまざまなニーズに応える製品開発を行っています。
そんな同社の会長兼デザイナーとして、今もなお世界でご活躍中の清水会長が考える“浴”とは?


以下、清水会長からのメッセージです。


日本人は尚更だと思いますが、お風呂嫌いな方は少ないのではないでしょうか。普段はカラスの行水派でも、心底疲れた時にはお風呂に肩まで浸かって無心になる……という方も多いのでは。これから4回に渡って、お風呂から広がる私見や思いを綴らせていただきたいと思います。
清水秀男


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JAXSONウェブサイトはこちら
http://jaxson.jp/


JAXSON……
その名は「釈尊(お釈迦様)」と「JAPAN(日本)」に由来し、慈愛あふれる仏の心と日本文化への経緯を表しています。従来、単なる住宅設備の一部であった浴槽をインテリアへと昇華させ、最高のデザインと入り心地、クオリティを備えたバスタブを世界に発信することをミッションとして創業されました。徹底したデザインとマテリアルへのこだわり、入り心地を追求する姿勢が評価され、国内海外の高級住宅・ホテルスイートルームに多く採用されています。


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JAXSON南青山ショールーム




次回より全4回に渡って、たっぷりとお届けいたします。
新たな連載にご期待ください。




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アーネストコラム酒酒落落 長渕悦子さん Vol.4 「みんなで一つ」

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年3月26日

Vol.4 『みんなで一つ』




最終週はインドの南部ムンドゴッドにあるチベット難民キャンプでの花物語です。


三年ほど前から毎年様々な物資をキャンプに贈呈させて頂き、少しばかりの支援をさせて頂いています。その物資の中の、タオルやTシャツを身に纏った村の人達の、笑顔の写真に私たちも勇気付けられて来ました。
そしてやっとこの地を訪れることができました。


インドの真ん中あたりにムンバイと言うところがある。インドの首都はデリー。そのデリーより少し南下した場所にあるムンバイは、日本でいえば東京に対する大阪のようなインドの二大都市のひとつ。
そのムンバイから車で約一時間。山あり谷ありの農村を幾つも越えた場所にムンドゴッドはあり、その地域の一部がチベットの難民キャンプとして存在する。
この舗装のされてないガタゴト道、一時間の道中に見たインドは文明からタイムスリップしたかのように、人間本来の原始のエネルギーに満ち溢れた姿があった。
道路を闊歩する水牛たち、それを追う農夫、頭に大きな籠を乗せ裸足で歩くサリー姿の女性たち、牛車を巧みに扱う少年たち、その目に飛び込んでくるすべての光景はなんとも凄まじい力に満ち溢れていた。
(以下写真撮影:長渕悦子)


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広大な田畑を抜けたところにチベット、ムンドゴッドキャンプはある。
ルンタと呼ばれるチベット文化の象徴である、赤黄青緑白の5色の旗が風になびく。
ここからはインドが持つ独特なエネルギッシュな景色から、一変、優しい色となる。キャンプは第一から第九まであり約400世帯がここに暮らす。
キャンプ村には真っ赤なブーゲンビリアが咲き誇り、個々の家々には牛が繋がれている。とてものどかな農村だ。


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私たちの到着を今か今かと待ってくれていた光景は圧巻だった!
チベット文化にはカターと言ってチベットシルクの白い布を、歓迎などの祝福の際に相手に首から掛ける慣わしがある。
幼稚園児からお年寄りまで一体何人の人達が出迎えてくれたのだろう!
約100人近くの人達の敬愛を意味するカターでの歓迎はあまりにも衝撃的で、車から降りた私は脚が震えた。熱い思いの湧き上がる感情を抑え、出迎えてくれた人達の温かさをしっかりと胸に抱いて奥に進んだ。


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同行して下さったのは埼玉医科大学の医師、西蔵ツアン先生。チベットから9歳の時、一家でインドに亡命、13歳の時に日本に渡り以後、日本に帰化される。
長渕剛の歌「ガンジス」の元になった1992年のインド渡航もこのツアン先生に同行して頂いている。


チベットは1950年以降、中国から辛辣な弾圧を受けており、インドに基本的人権を求めて亡命した人が現在まで、このムンドゴッドを含めて15箇所、7万人がいる。
ここムンドゴッドのキャンプ村の歴史はすでに50年以上あり、学校、病院、僧院など、人の暮らしに欠かせないライフラインは確立されているのだそうだ。そう言う意味ではアフリカのような「難民キャンプ」という言葉の持つ飢饉に喘ぐ飢餓状態の生活ではない。自然と共存する人間本来の生身の生活が感じられる。


100本近い聖なるカターで出迎えて頂き、感無量のうちに歓迎のセレモニーを受ける。
チベット民族舞踊を見せてくれた園児の愛くるしい姿、歌声。
平均年齢16歳ぐらいの少年少女たちの群舞の清々しさ、そして遠く帰れぬチベットを思い、歌ってくれた少年の「故郷を思ふ唄」、どれもこれもが強烈に心に刺さる。
そして皆の、その純粋な顔。動き。声。瞳。


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私は東京より二個の花器とアレンジを挿す緑の吸水スポンジを用意して行った。インドの花で私がアレンジメントを作り、それをプレゼントする予定でいた。
しかし私がお花屋さんに行く前に、その話を聞いたチベットキャンプ村の婦人会長さんがたくさんのお花を届けてくださった。


ならば、これは私一人が作るのではなく、「キャンプの人たちで一緒に作れないか!皆で一緒に一つのお花をを作れないか!」
その綺麗で可憐なムンドゴッドに咲く花たちを見てそう思ったのだった。
先程の踊りを披露してくれた園児から、小中高の子供達と、引率の先生方約30人が幼稚園室に興味深く集まってくれ、皆で一つのアレンジメントのやり方を面白く、可笑しく聞いてくれた。
一本ずつ好きな花を持ってもらい、一人一人それを上手にハサミで切って挿し、綺麗に形作っていく。
もちろん、全員このようなことの経験は無く、一本ずつ緑の吸水フォームに挿す感触が奇異なのか快感なのか、園児たちは、「きゃ!きゃ!」とはしゃいでいた。


そして工夫の挙句、30分後みんなの結晶の二個のアレンジメントが完成!!
どこからともなく盛大な拍手が湧いた!
例えこの花の形が不揃いだとしても、これは国と世代を越えた何より強い絆の架け橋が完成したのだった。


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それからは高校生のお兄さんたちがドラムを叩いて見せてくれたり、女子と共にブレイクダンスを躍ってくれたり、出来たばかりのバスケットコートでナイスシュートを見せてくれたり、最後にキャンプの奥にあるチベット仏教の寺院をも案内してくれた。
男の子達全員が流暢な英語で、チベットの歴史やそれぞれに祀ってある仏陀の意味する事を一生懸命伝えてくれる。そして仏に向き合った時の所作など、とても10代後半とは思えない礼節のある真摯な態度に、私はとても深い衝撃を覚えた…
日本の同じくらいの子供達がどこまで日本の仏像の意味することを言えるだろう……いえ、このわたしも含めてだが。
改めて母国をこの上なく愛し、尊ぶこのチベットの子達の熱い思いに感銘を覚えないではいられなかった。


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写真上:届けた衣類やタオルをまとった村人たちと笑顔の記念撮影
写真下:長男(中央)を加えて出来たばかりのバスケットコートにて
     試合を行った


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寺院を案内してくれたチベットの子供達と


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私が里親になっているテンジンちゃん


今。チベットの人口は600万人と言われている。そのうち、諸外国に亡命をしている人が約10万人、そのうちの7万人がインドへの亡命である。
人権尊重を求めて子供だけをインドに亡命させる親も沢山いる。真冬のネパールを自分の脚だけで越え、ダラムサラまで亡命してくる子供達の勇気を称えたい。そんな子供達を集めたTCV(TIBETAN CHIDLEN´S VILLEGE) は、分校も含めて今や1万5千人になろうしている。
ここを私は是非今年訪ねたいと思っている。


「清貧」という言葉があるが、まさに清貧の持つ人間本来の生身の生活をびしびしと見せつけてもらった。復興にかけた戦後の日本の匂いだ。私の父母の青春時代と重なる。
生活に華燭は要らない。華燭をそぎ落とした時、人間本来の暮らしに必要なものが見えてくる。


それは何。
それは自然と共存する姿。
それは何。
それは一生懸命に生きようとする姿。


幸せの定義はそれぞれにある。
その考え方も様々だ。
しかし、「無い物に苦しまず、有るものに満足し感謝する」彼らの生き方は畏敬の念の何物でもない。


帰り際、婦人会長さんが
「このキャンプの地に皆で花を植えてみようとオモイマス。花は皆を笑顔にシマシタ」
この言葉は嬉しかった。




今年、3月10日(土)
渋谷にてチベットの平和を願うピースマーチと言われるデモ行進に参加しました。
宮下公園を出発点として、渋谷スクランブル交差点〜青山246号線〜原宿メインストリート〜明治通り〜宮下公園と約一時間、日本一若者で賑わうこの場所を拡声器にて、チベットの平和を願いシュプレヒコールを繰り返しました。私たちの叫ぶチベットの現状と、中国政府に対する抗議を道ゆく人たちも立ち止まって耳を傾けてくれていました。
私たちのできることは小さいかもしれません。
しかし今、世界で起きている様々な惨状に耳を傾けることは大きな力に繋がる一本の命綱なのかもしれません。


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西蔵ツアン先生(左)と私




最後に・・・・・


4週に渡って今、私の感じる事を書かせて頂きました。
そのどこにも花との関わり合いがあります。
花の、植物の持つ生命力に私たちは癒しとパワーを頂いています。
たとえ刹那の輝きだとしても、その生命力は生き生きとした美しさを見せつけ、私たちに活力を与えてくれます。また刹那だからこそ一層輝いて見えるのです。


私たちが生きている時間にも限りがあります!
この時間を有意義なものに変えて、これから私たちが子供達に明るい未来を感じられるよう「希望という命のリレー」を紡いでゆきたいと思います。









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アーネストコラム酒酒落落 長渕悦子さん Vol3.「福島第一原発 20キロ圏内警戒区域、浪江町に立ち入る!」

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年3月19日

Vol. 3 『福島第一原発 20キロ圏内警戒区域、浪江町に立ち入る!』


テレビ朝日「3・11報道STATION スペシャル〜愛おしきあなたへ〜」の現地取材が2月25日に福島県浪江町で行われました。これはその取材に同行させて頂いた時の私の記録です。



2012・2・25
12:05

南相馬の「道の駅」にて全員防護服に着替える。
ゴム手袋は二重。
長靴に履き替え、さらにその長靴が地面に当たる部分をビニールの靴袋で覆う。
そしてゴム手袋と防護服、長靴と防護服の接着部分をガムテープで何重にも留める。
最後にマスク、ゴーグルを装着し完全密閉。
身体をすべての物で覆い尽くす。


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12:45
二台の車に乗り込む!当たり一面の銀世界…
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13:15
窓外の静寂。車内の緊迫。相反する。
沈黙が続く車内。


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メモをとる私


浪江町20キロ圏内立ち入り禁止区域の検問所を通過!


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自分が撮れるこれが最後の写真



13:50
浪江町駅前に到着。
駅から続くメイン通りの商店街を歩く。放射線量平均1.5マイクロシーベルト。(ちなみにその日の東京0.04マイクロシーベルト)
完全崩壊の日本家屋の食堂。曲がった街灯。扉が空いたままの雑貨屋。品物がそのまま陳列されているパン屋。駐車場に残された何台もの車。
黄点滅する 信号。
降りしきる雪…
命が一つも無くなった町!

これが今、日本に起こっている現実、この現実を思い知らされる!


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14:30
立野地区
突然、目の前に二頭の黒和牛が現れる!突然の命の出現!近寄っても逃げない!
こちらをじっと見つめる瞳…その瞳の可愛さが強烈な痛みとして私の胸をえぐる…
ピーピーピーピー!危険を知らせる鳴り出す放射線量計!
放射線量10マイクロシーベルト。
ここで生きてる…牛たち…


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路上の溝は異常に高い放射線量
最高値15マイクロシーベルトを記録した



15:05
苅野地区
被害を受けず田んぼの真ん中に掲げられている看板。
『みんなで作る明るい苅野』
裏切られたその言葉。
酪農家の牛舎。
牛のいない残酷で無惨で空虚な「そこ」を主(あるじ)に付いて入る。牛は一頭たりともいない。
が、強烈に漂う死の匂い。 カメラを回さないのを約束に牛舎の外に広がる雪の牧草地に案内される。
そこにはショベルカーで掘った巨大な穴があった。手前にはブルーシートがかけられてあったが奥には幾重にも重なり合った黒い大きな和牛の遺体がむき出しになっていた…
その光景!牛の顔!腕!脚!

私は静かに防護服の中で一人声を上げて泣いた…



16:15
浪江町の最大の被害地 海岸線に沿った請戸地区に移動。
福島第1原発より約4キロ地点。
林の向こうに建屋の4本の煙突を見る。
いくつもの漁船が、テトラポットが、打ち上げられたまま放置。
残った請戸小学校の校舎と体育館が海岸線より数百メートルのところに見える。
荒れ狂う海。白波がいくつも押し寄せテトラポットに砕ける大波の、しぶき。
海岸線に広がる請戸地区の住宅は無残にもその形を一切残さず…
広がる「無」に支配されている。


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写真右上:田んぼに流れて来ているお墓(手前)や船(奥)
写真下:5km先に福島第一原発が見える


暗く立ち込める雲が、この答えの出ない大罪の今後を象徴しているかのように見えた。
「 死の町」と言って謝罪した政治家がいたが、住民への配慮ならそれは撤回して謝罪すべきであろう。しかし私たちの反省と言う観点でいうなら、これは本当に「死の町」を作ってしまったと思った!
ここには確実に「命」が存在しない…
ここで生きている動物たちには「力のある命」が存在しない…

このあまりにむごたらしい惨状と刻々と変化する線量計の高数字に囲まれそれでも誰が原発の存在意義を唱えられるのだろうか…


* * * * *
約4時間、浪江町の中を歩かせて頂きました。私が見て来たものを言葉でどう表現して良いのか、どうしたらお伝えできるのか…正直言葉が稚拙で歯痒いです。
私たちが良く見るコンパスで囲まれた警戒区域の20キロ圏の半円は地図上では小さいです!
しかしその半円は本当に広大でした!
橋を渡る時、浪江の町が一望出来る場所がありました。何百何千と言う屋根が見え、それはまるで「これは雪の寒さからただ人が外に出てきてないだけ!本当はお家の中に皆、いるんだ!」と錯覚をおこすような普通の当たり前の雪の風景でした。
しかし…


南相馬に戻って来た時に別場所から駆けつけて下さった浪江町の
馬場有(たもつ) 町長さんとお会いが出来、東京から作っていったお花と手紙をお渡しする事が出来ました。が、今の私にはそんな事しか出来ませんでした。
目をつぶると、昨年夏に鹿児島県霧島市でサマーキャンプをした時の、浪江町の子供達の一人一人の顔が浮かんで来ます。
どうか私たちの未来である子供達に、笑顔を取り戻す事が出来ますように…
それはそれが物凄い苦難の道であっても、もう一度原発のあり方を考えなければいけないのだと思います。


どの国がその見本を示す事が出来るのでしょうか…
どの国がその事をやらなければいけないのでしょう!
答えは一つだと思います…


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帰路後南相馬でスクリーニングテストを受ける
全行動における積算量は0.4マイクロシーベルトと告げられる


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写真左:馬場町長さんと
写真右:お渡ししたフラワーアレンジメント


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私の花を手紙も付けて飾って下さった記者会見


最終週はインドにあるチベット難民キャンプのことを書きます。


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アーネストコラム酒酒落落 長渕悦子さん Vol2.「それでも、負けない息吹!」

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年3月12日

Vol. 2 『それでも、負けない息吹!』


それは陽だまりの温かさを少しだけ感じさせる穏やかな春の午後だった。田園調布、花工房胡桃のアトリエで前田先生と私は二人で机に向かい、手には色とりどりの花たちが舞う。
それはいつものように。
その日の花材はチューリップ、アネモネ、スイートピー、ヒヤシンス、春の優しい香りが私達を包んでいた。
目の前の花を手に取り、工夫を凝らせながら、それを自分の定めた位置に射止めていく!
その日の難関はチューリップの長く伸びた茎を湾曲させながら桜の枝にワイヤーで止めていく事だった!
私の座っている向かいにもチューリップを満載したツル籠が天井からぶら下がっていた。
本当に穏やかな春を予感させる普通の陽だまりの午後だった。

数分後、身体に強い揺れを感じる。
それが地震だと気付くには時間はかからなかったが、その天井から吊るしたツル籠の揺れ幅の大きさは尋常ではなかった!
棚に陳列している数多くのガラス花器、花瓶、シリンダー、全ての物が強い振動に揺さぶられ、ぶつかって立てるガラス音が不気味で尋常ではなかった!
思わず机から立ち上がり両手で押さえ込む!
しかし二人が両手で押さえ込める数ではない!
そして異様な地響きとも取れる轟音を感じたように記憶している!瞬間!
次々と弾け出す水!倒れる花瓶!咄嗟に私はまだ倒れていない大きなガラス花器を倒して廻った!
地震という全くなす術が無い天の牙が歯を向いて襲いかかって来た瞬間だった!

忘れもしない、私の2011・3・11

この時点の私は、この後に次々と起きていく日本歴史上の大惨事を想像すべくもない!
いや、だれが予期出来たであろう!

以下は「それからの一年」の私の被災地との記録です。

2011・4・6
福島県須賀川市に4tトラック一杯の物資を自らの運転で届ける。


  橋本市長さんが須賀川アリーナに案内して下さり、
  避難している警戒区域の方達のお話しを聞く。
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4・7
深夜仙台市到着。


  ホテルの部屋に到着後、震度6強の地震に襲われる。
  その想像を絶する強烈な揺れにホテルから 悲鳴があがる!
  停電!真っ暗な中、戸外に避難。全市が停電。交通網麻痺。
  仙台駅前はパトカー、救急車が赤い点滅と共にサイレンをならし
  パニックとなる。
  翌朝やむなく東京に戻る。

4・15
岩手県山田町、大槌町に再びトラックで物資を搬入。


  片道10時間。東北自動車道に残る沢山の亀裂、断裂が
  生々しい。初めて見る漁港町の被災の惨状に息が出来
  ない程の衝撃を受ける。
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写真左:山田町 高さ8mの巨大防潮堤の決壊
写真右:船が建物の上に

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海を見下ろす高台にて

4・16
自衛隊慰問、宮城県立総合運動競技場と松島航空基地。


  門をくぐると脚が震えた!東日本大震災における宮城県
  自衛隊の前線基地、総合運動競技場は全国各地から自
  衛隊員が集められ、行方不明者の捜索に異様なまでの
  緊迫感に包まれていた!

5・3〜5・12
仙台市に宿泊先を構え七ヶ浜町にて10日間のボランティア活動を行なう。


  〜活動の内容〜
  ・写真を含む遺失物の洗浄、展示
  ・個人宅の瓦礫、汚泥撤去
  ・七ヶ浜国際避難所、中央公民館の清掃
  ・ 多賀城自衛隊の方達と仮設住宅に日常生活物資を搬入
  ・仮設住宅への引越し、入居後の手伝い
  ・ フリーマーケットの実施
  ・スタジアムで行われたサッカー教室の駐車場誘導
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写真左:瓦礫撤去後の家屋
写真右:全国各地から集まったボランティアの若者達と
     瓦礫撤去をする(ヘルメットが私)

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写真左:写真の洗浄と展示
写真右:自衛隊員と一緒に物資の仕分け

  名前を名乗らずマスクのままボランティア活動をさせて
  もらった。この時に見た現地の人たちの力強さ、日本中
  から集まった善意の物資、海外からも来ているボランティア
  の人たちの心意気に直接触れ、この10日間で日本の津
  波災害におけるボランティア活動の多くの事を学んだ。

6・14
再び七ヶ浜ボランティアセンターを訪ねる。


  主任の星真由美さんが元気に迎えてくれる。

6・15
石巻小学校の児童を訪ねる。NHK SONGS日和山公園収録。


  雨の中の子供達の元気いっぱいの歌声は多くの人に力を
  与えた。
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8・1〜8・8
福島県浪江町の児童20名と鹿児島県霧島市にてサマーキャンプ。


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写真左上:バナナボートでひっくり返って皆で大笑いした
写真左下:全員で無人島に到着
写真右:最後の夜のお別れ会で流した子供達の涙は忘れない


8・11
4月に訪れた岩手県山田町に再び行く。三県が同時刻に合同で慰霊花火大会を行なう。


  瓦礫がかなり撤去され、住宅地跡地からは一斉に青々と
  雑草が生い茂り目の前の緑の平野は、初めて見たあの日
  の山田町から 復興の匂いを感じた。
  牡蠣の養殖が復活した山田湾から上がる花火は見事な
  大輪を咲かせ、涙と共に胸が震えた。
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12・31
石巻市門脇小学校跡地。NHK紅白収録。


  厳寒の中、地元の人たちの応援が有難かった。

2012・2・18〜19
岩手県、陸前高田、大槌町、気仙沼を訪ねる。


  大槌町役場の中村課長さんと10ヶ月ぶりの再会。物資を届
  けた震災直後のまるで戦場のような緊迫感漂う仮役場の中
  での初対面がよみがえる。
  だいぶ落ち着いた状況になった事を聞き安心する。
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写真左:大槌町役場町民課 中村一弘課長さんと
写真右上:気仙沼 今なお残るタンカー 
写真右下:陸前高田 どこまでも続く鉄材の瓦礫

一年間を通して各地で見てきた被災地での現状、そしてボランティアを通しての実体験は本当に多くの事を学ばせてくれました。
瓦礫汚泥撤去の凄さは言葉では言い表せません!しかし数時間で見事に片付ける人間力の凄さもまた痛烈にまざまざと体感し感銘を受けました。
東北には「人間の目は臆病だけど人間の手は強い」という言い伝えがあるそうです。
まさに人間の力の結集には凄まじいものを感じました!

かけがえの無い命が、形ある物が一瞬にして目の前から消され、流される。
どんなに辛くてもそれでも残るのは、真正面から生きる命と、連帯や絆に見る真の思いやりの心、そして積み重ねた思い出、そういう無形のものが何事にも代えられない一番大事なもの、前に進ませてくれるものだと思いました。
それこそが明日への力になることを痛烈に感じたのでした。

この一年私は私自身の価値観を改めて考える沢山のものをこの目で見させて貰ったのでした。

最後に私が被災地で見た、「負けない!力強い!この植物の息吹!」を見て下さい。

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瓦礫撤去後に見つけたド根性アスパラ(七ヶ浜)

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塩害にもめげず花を咲かせた5月のアヤメ(七ヶ浜)

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被災した人たちを和ます日和山公園の脇にある
喫茶店「かざみどり」の見事な薔薇の木(石巻)

くしくも昨日で丁度丸一年を迎えました。 犠牲になった多くの方達のご冥福を心からお祈り申し上げます。 と共に、だからこそ今、日本が大きく変わらなければいけない岐路に立たされている事を深く実感しています。

2011・3・12 長渕 悦子

次は立ち入り禁止となった福島第一原発警戒区域、浪江町の中を書きます。

長渕悦子様のツイッターはこちら。 http://twitter.com/#!/cleopatraetsuko

>>アーネストアーキテクツのWEBサイトは
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**お知らせ**
アーネストグループのWEBサイトがリニューアル致しました。
i pad・タブレット端末にも対応!ぜひご覧ください。
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アーネストコラム酒酒落落 長渕悦子さん Vol1.「花に酔う」

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年3月05日

今回お話しを頂きました長渕悦子(志穂美悦子)です。


昨年の暮れに私の初のフラワーアレンジメント作品集『INSPIRE』〜いちかばちか〜を発刊することが出来ました。
初アレンジメントを作った日からわずか
一年間で創った作品は300点強になりました。


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作品の撮影はアーネスト駒沢展示場でも行わせて頂きました。
展示場のエレガントなインテリアでより華やかなイメージに…。


今まで創った全ての作品を自分自身の手で撮りためていたので、その300点強の中から72点に厳選しました。デザイナー湊篤雄氏と共に細部に渡ってこだわり創り上げたものですから上梓した時は感慨ひとしおでした。
今回のこのブログ寄稿のお話しを頂き、私はいま一番好きな「花」との関わり合い〜またボランティアを通して見たもの〜を4週に渡って書かせて頂こうと思っています。
どうぞよろしくです!


『花に酔う』


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今お気に入りの大事に育てている
「ピエール・ドゥ・ロンサール」のツルバラ。


人には必ず大好きな事がある。
それは歌を歌うことだったり、文章を書くことだったり、話すことだったり、はたまた…走ることだったり、踊ることだったり…それがプロとなるとさらに追求し、永遠の探究となる。そして探究の先にあるもの、それが時としてその人を苦しくもしてしまうものなのかもしれない。
しかし
「好き」の延長線上に「酔う」というものが存在するように思える。
好きなことは、その人自身を酔わせてくれているのだ。私はお酒は飲まないが、お酒を飲んだ時の気持ちがよくなるあの感覚に似ているのだろう。
私は、花と向き合うと この「酔う」というものに大きく包まれる。
この感情が何とも言えない。何とも言い難い至福の時であったりするのだ。
そう!「花に酔う!」


私のガーデニング歴はかれこれ20年になる。ガーデニングの花植えからトマトやキュウリの野菜作りにまで発展し、その野菜作りからさらに発展し、我が家の小さな庭でニワトリを飼ったこともある。
主人の故郷鹿児島から茶色の大きな地鶏をツガイも含めて三羽運んでもらい、それが月日と共に何回となく雛をかえした。その賑やかなこと。
種を巻いたひまわりが咲き乱れていた夏に放し飼いの地鶏たちが高い木の上から(鶏は放し飼いにしていると野生化して木の上に留まったり飛んだり出来るようになる。)ある日、飛び過ぎて塀を越えて行き交う道路に舞い降りたこともあり、慌てて捕まえに行ったこともあった。(あの時は本当に慌てた !)
きっと田舎育ちの私は無類の自然派なのだろうと思う。
とにかく花や野菜の種や苗を買って来ては庭に植え、時には鉢に植え、我が家での自然を楽しんでいた。
花もだが土に触れることが何より無心になれた。
心がホッと落ち着くのだ。そんな事を続けた15年。


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さまざまな草花を使って。
個性的なチェアの上はオウムのピーちゃんの定位置。
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バラが咲く時期は庭が華やかに。


そんな我が家に二年前、一つのお花が届いた。
2010年4月23日。
義父の6回目の命日。
供花とは白、あるいは淡い色合いの物であるという私の概念をものの見事に打ち砕いた供花が届いた。
濃いボルドーのカラーと深緑のマムを組み合わせた色の濃い花群であった。花器は四角い黒のお皿。。それはそれは強烈な個性を放っていた。
手に取ったあの日の事は忘れない。
実にその日が私とフラワーアレンジメントの忘れもしない出会いだった。
こんな花を創ってみたい!こんな花を贈れるようになりたい!


仕事柄、今まで沢山のお花をいただく機会に恵まれ、沢山のお花を手にする事が多い私ではあったが…目の前のこれは「個の思いが詰まった力のある作品」だった。
田園調布にある『花工房胡桃』はベルギーが生んだ世界的なトップフラワーデザイナー ダニエル オスト氏の内弟子として長きに渡り研修を積んだ2人の女性、清水はるみ先生、前田玲子先生のユニット名。
私が受け取ったこの作品の創り主である。
ベルギー!!
なるほど斬新な筈である。初めて習いたいと思った。


時をほぼ同じくして私が仲良くして頂いている貴乃花親方の女将さん、花田景子さんからフラワーアレンジメント創作のお誘いを受ける。
「自分が好きなようにお花を作れるの。」
赤井勝先生の主催する『装花の会』は先生が朝、市場で仕入れた季節の多種多様の花々を
生徒が自分の手で選び、自分流にアレンジメントしていく。とは言え、初心者、新参者にはそのほうがきつかった!(笑)
いわば独創性を養う自分独自の個性の場であり、自分が試されている場であり、自分に課する場でもある。


2010年 薔薇が一斉に開花する5月
この二つの異なる場所と我が家の自主練で私は花との楽しくも…でも初のニッパー使いで手にマメが出来る程の格闘が始まる。
写真を撮ることが趣味の私は毎回作ったアレンジメントの花を撮り続ける。
365日ほぼ毎日何かを作っていたように思える〜わたしの暮らしにフラワーアレンジメントは無くてはならないものになっていった。 花の力強い生命力と刹那の輝き、それを人間の手でアート性に変えていくことの面白みはガーデニングとはまた違った喜びであった。
最初の一年で作品の数300点を越える。。


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2011年11月花作品集「INSPIRE」を発刊。
2012年2月 BSプレミアム「美の壺」の出演。
2012年3月「六本木フォトコンテスト」
『摩天楼に花のブーツ!』優秀賞受賞。
二年前の自分からは想像も出来なかったことだった。




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アーネストコラム「洒洒落落」第12回のご登場は… 

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年2月27日

各分野でご活躍の方々がそれぞれの視点で自由にテーマを設定し、執筆いただく全4回の連載コラム「洒洒落落」。12人目は、弊社のお客様としてご縁が繋がりました長渕剛様の奥様、長渕悦子様のご登場です。


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プロフィールご紹介...
ジャパン・アクション・クラブ (JAC) 出身のアクション派女優・志穂美悦子として、数多くの映画やTVにて活躍後、結婚を機に引退。以来芸能活動は行っていなかったが、2011年11月に長渕剛様が経営するカフェ『ROCK ON』の東日本大震災復興特別企画として、自身のライフワークであるフラワーアートをまとめた写真集書籍『Flower Arrangement INSPIRE 〜いちかばちか〜』を自費出版で発売。売上げの全てを寄付するチャリティーブックの存在が話題となる。また2012年3月15日(木)にはこれまでの活動の軌跡を追ったTV番組・NHKBSプレミアム「美の壷」の放送も予定されるなど、フラワーアートの分野で更なる世界の広がりが期待される。
長渕悦子様のツイッターはこちら。
http://twitter.com/#!/cleopatraetsuko


書籍の撮影および番組の収録時には、アーネスト駒沢空間ショウルームも撮影場所としてご協力させていただきました。
少しだけ、ご紹介させていただきます。


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「Flower Arrangement INSPIRE 〜いちかばちか〜」より。


◎長渕様がご出演されるNHKBSプレミアム「美の壷」は、3月15日(木)19:30〜放送です。
http://www.nhk.or.jp/tsubo/


人間、そして自然の持つ「ちから」を、被災地支援を通じてたくさん感じてきたという長渕様。
震災から約一年、これまでに行ってきた東日本大震災復興支援活動、またチベット難民キャンプ支援活動についてのお話を中心に、長渕様の温かな想いに触れることのできる新連載、ぜひお楽しみに。


◆ROCK ON ウェブサイト
http://www.nagabuchi.or.jp/new_contents/rockon/


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アーネストコラム「洒洒落落」第11回 モダンリビング編集長 下田結花さん

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年2月13日

【Vol.4 ザ・コノート
http://www.the-connaught.co.uk/

昨年取材で訪れたイギリスのホテルの話も、今回が最終回。今までは、カントリーハウスホテルを中心に書いてきましたが、今回はロンドンのホテル「ザ・コノート」です。

「ザ・コノート」は、ロンドンのメイフェアにある、1917年創業の5ツ星ホテルです。こじんまりとした佇まいは、いわば都会の「マナーハウス」。ホテルというより、「邸宅」という言葉がふさわしいでしょう。
数年前、訪れた時は、重厚でクラシックなインテリアに圧倒されましたが、その後、大がかりな改修やインテリアのリファブリッシュが行われ、シックな雰囲気は残しながらも、コンテンポラリーで洗練された空間になりました。リファブリッシュに当たっては、幾人ものインテリア・デザイナーやガーデン・デザイナーを起用して、さまざまなテイストの空間をつくり上げています。

私が今回、宿泊した部屋は、新しくなったモダンなインテリアの一角。ベッドルームとリビングが廊下とバスルームを挟んでつながった部屋でした。家具、アート、器に至るまで、完璧にコーディネイトされた部屋は、ホテルという概念を超えています。
このホテルはまた、レストランが素敵なのです。エントランスを入って左に、アールの窓に沿った形でテーブルの並ぶダイニングルームがあるのですが、ここでイギリスの朝食をゆったりと新聞を読みながら頂くのは、ほんとうに心地よい贅沢な時間です。

こうしたインテリアもさることながら、それ以上なのは、柔らかく気配りがきき、常に変わらぬ笑顔で接してくれるスタッフの存在。それがコノートの最大の魅力といえるでしょう。
ホテルの価値を測るには、設備やインテリアといったハード面も大切ですが、結局は「人」なのではないかと思います。今まで多くのホテルを取材してきて、印象に残っているのはそうした素晴らしいスタッフがいたホテルばかり。本当の意味での「ラグジュアリーホテル」とは、その両方のバランスがとれたところをいうのではないでしょうか?

「ロンドンに飽きた者は、人生に飽きた者だ」という言葉があるほど、今もロンドンは尽きせぬ魅力のある場所です。私はロンドンに行くと、いつも早起きになります。早朝、ハイドパークを散歩し、朝食を楽しみます。そしてアンティーク・マーケットへ。昼間は国立の美術館・博物館(すべて入場無料。寄付金のみ)を回り、夜はバレエやミュージカルを観に行くーーというのが、お気に入りのコース。今の季節でも楽しめるコースです。
エアはヴァージンアトランティック航空を使っています。今、ヴァージンでは冬のバーゲンフェアを実施中。エコノミーだけでなく、プレミアムやアッパークラスもうれしい価格です。
http://www.virginatlantic.co.jp/


4週続けてお送りしてきた、「イギリスのホテル」はいかがでしたか? 
モダンリビングのブログ「ML日誌」でも、こちらで紹介しきれなかったイギリスのホテルの写真や話題をアップしています。
ML日誌 http://mdnlvng.exblog.jp/

2月7日発売のモダンリビング「豪邸特集号」では、日本の現代の豪邸をたっぷりお届けしています。そして、この「ザ・コノート」を含め、ラクジュアリーホテルの特集も。ぜひモダンリビング本誌もご覧くださいね。


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私が泊まった部屋のリビング。
シックでコンテンポラリーな家具。アートも素敵。

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こちらはベッドルーム。モノトーンでシンプル。
リビングとは廊下をはさんでつながっています。

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大理石のバスルーム。シャワーブースとバススタブが両端に、
センターにこの洗面が配されています。

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部屋でお茶を頼んだら、こんなセッティングで持ってきてくれました。
小さなカップケーキ付き。

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コーナーによって廊下のインテリアにも違いが。
壁にはモノクロ写真が飾られています。

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エントランスからモダンな客室へ向かう廊下の入り口。
突き当たりには坪庭が。

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まるでモダンアートのようなガーデン・デザイン。
赤煉瓦の壁との調和が新鮮。

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朝食は、このダイニングで。
アールを描く窓に沿っておかれたテーブル。
窓の外にはマーガレットの花壇。

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銀のカトラリーと白いリネンが清々しいテーブル。
フルーツサラダとオレンジジュースもたっぷり。

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ヘルシーセットというのがあったので頼んでみました。
三段重ねは、上の段からドライフルーツとトマトジュース、
ヨーグルト、ポリッジ。

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テーブルの上の花のアレンジにも、センスが感じられます。




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アーネストコラム「洒洒落落」第11回 モダンリビング編集長 下田結花さん

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年2月06日

【Vol.3 ロード・オブ・ザ・マナー
http://www.lordsofthemanor.com/


イギリス、コッツウォルド。ロンドンからクルマで2時間。ここには、100年前と変わらない景色が残っています。どこまでいっても、なだらかな丘陵が続き、羊が途切れることはありません。そんな中に、「マナーハウスホテル」と呼ばれるカントリーホテルがたくさん存在しています。
「マナーハウス」とは領主の館のこと。その地域を治めていた人たちの屋敷を、ホテルに改修したものです。たいていの場合、屋敷だけでなく、広大な敷地も含まれます。そうした「マナーハウス」の典型とも言えるのが「ロード・オブ・ザ・マナー」です。

最近では、こうした「マナーハウスホテル」も内装を一気にモダンに変えてしまう場合が多いのですが、マナーハウスの古き良き面影が懐かしいと思うこともしばしばです。そんな中で、この「ロード・オブ・ザ・マナー」は、リファブリッシュしつつも、ゆったりとした時間の流れを失わずにいます。花柄の壁紙やチンツのカーテン、フォーポスターベッドや大きな鏡、出窓のウィンドウシートなども、ここでは健在。床は少し傾き、階段は急で、廊下も細いのですが、そうした空間そのものが、屋敷の面影を伝えているのです。
とはいえ、すべてはきちんと手が入れられていて、清潔快適。ゆったりとしたおおらかなサービスや、なんといってもこうしたホテルには欠かせない年期の入ったスタッフの笑顔も健在です。一方、料理は、インテリアとは対照的にしっかりモダン・ブリテッシュ。器や盛りつけも新鮮です。しかし、ここでも変わらないのは、時間の流れ方。食事には、たっぷり3時間以上かかります。
そもそもマナーハウスの周りには、夜、外出するような場所はありません。せいぜい、村のパブくらい。ですから、夜の予定は食事だけ。
まず、ソファの置かれたラウンジで、ドリンクとアペリティフを頂きながらメニューを決めるところから始まります。これにたっぷり30分。それから「テーブルの用意ができました」と食堂に移動するまで、さらに20分。
料理はたいていスリーコースメニューで、前菜、メイン、デザートからなります。ここまでは食堂のテーブルで。既に2時間半以上経過。そして、今度はまた最初のラウンジに戻り、思い思いに好きなソファでくつろぎます。大きなコーヒーポットとプチフールがきて、食後酒を頼む人も。寒い季節ならば、暖炉のそばでというのもいいものです。コーヒーを飲みながら気がつくと、既に1時間以上たっています。その間、話して話して話す。食事の時間は、会話の時間なのです。
7時から始めた食事が終わった頃には、既に11時近く。もう後は、明日の朝食を楽しみに寝るだけです。
こんな時間の過ごし方は、イギリス人にとっても特別なもの。結婚記念日や誕生日に、こうした場所で過ごすカップルが多いそう。比較的、年齢の高い方達が多いのも、ほっとくつろげる空気の理由かもしれません。

先週も書いたように、冬のロンドン&カントリーサイドも、夏とは違った魅力があるもの。航空券もホテル代も格安で、しかも円高の今なら、こんなマナーハウスでの時間を少し長くとっても大丈夫そう。
そしてそんなときのおすすめは、ヴァージン・アトランティック航空のアッパークラスでの旅。フルフラットシートですから、寝たままロンドンへ。ヒースローでのアッパークラスラウンジも、ちょっとほかでは味わえない快適さです。今なら、冬のキャンベーン実施中だそう。
http://www.virginatlantic.co.jp/

夏が待ちきれない人のための、イギリスです。


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「ロード・オブ・ザ・マナー」の外観。
ローワースローターという村の近くにある。

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2階の窓辺のウィンドウシート。
ここに座って読書、は至福のとき。

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ダイニングルームは正統な中にも、
カントリーホテルらしいくつろぎが…。

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広大な芝生の庭の奥には池もある。
どこまでが敷地かわからないほど。

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ブルーのデルフィニュームとラベンダーの咲いた庭は、
まさにイギリスそのもの。

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1m以上もある大輪のデルフィニューム。
ブルーのグラデーションが美しい。

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客室の家具は、ほとんどがアンティーク。
こんなパーソナルチェアでゆったり。

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部屋の大きな鏡もアンティークのもの。
部屋のインテリアは一室ずつ違う。

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庭のテーブルでお茶やアフタヌーンティーを
頂くこともできる。




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アーネストコラム「洒洒落落」第11回 モダンリビング編集長 下田結花さん

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年1月27日

【Vol. 2 バーンズリーハウス・ホテル
http://www.barnsleyhouse.com/jp/


ロンドンから車で2時間。西に位置するコッツウォルドと呼ばれるエリアは、イギリス人にとって「心のふるさと」とも言われています。どこまでも続く緑の丘陵と羊の群れ。その中に点在する昔ながらの小さな美しい村。
ウィークディはロンドンで過ごし、ここに週末ハウスを持つのがイギリス人にとっての夢だそうです。
ここはまた、イギリスの中でもレベルの高いラグジュアリーなカントリーハウスホテルが、最も多いエリアでもあります。かつての伝統的な重厚でクラシックなカントリーハウスホテルから、近年ではモダンなインテリアに改装され、印象は一変しました。なかでも、ロンドンのおしゃれな若い人々にも人気が高いのが「バーンズリーハウス」です。

「バーンズリーハウス」はかつて、ローズマリー・ベアリーさんという方の屋敷でした。今では完全にリノベーションされ、インテリアもモダンに改装されています。全部で十数室といった小さなホテルですが、一室ずつ違うインテリアはどれも明るくチャーミング。ラグジュアリーすぎないのも、心地よさの秘訣でしようか。ベッドのすぐ横にバスタブが置いてあったり、梁や窓を効果的に生かしていたり、ロフトがあったり…と、同じ部屋はひとつとしてありません。レストランの食事もとてもおいしく、くつろいだ雰囲気が満ちています。
しかしなんといっても「バーンズリーハウス」の魅力は、美しい庭にあります。ローズマリーさんは、チャールズ皇太子の庭も手がけた著名なガーデン・デザイナーでした。彼女が何十年にもわたって丹精した庭は、ほかのどんな庭とも違い、小さな一角それぞれにフォーカルポイントがあり、少し角度を替え、見る場所を変えただけで、まったく違った魅力を見せてくれるのです。それは、写真を撮ってみると、いっそうよくわかります。
「キッチンガーデン」と呼ぶ一角は、いわゆる菜園ですが、え、これが野菜!?と思ってしまうほど。組み合わせと配置によって、美しい幾何学模様を描いています。
5月から6月にかけては、庭が最も輝くとき。朝、少しだけ早く起きて、庭を歩いていると、その美しさに感嘆します。遮光は緑を輝かせ、陰影を作り出してくれるからです。
散歩の後は、庭を眺めながら外のテラスで朝食。宿泊しなければ味わえない、贅沢で幸せな時間です。


今、イギリスはポンドも安く、とても魅力的。庭を味わう楽しみは残念 ながらありませんが、バーンズリーハウスから届いたメールマガジンを見ると、冬の庭を眺めながら、暖炉のそばでゆったりと寛ぐのもいいなあ、と思います。
冬のロンドンにも楽しみが。数年前、私が12月ロンドンに行ったときは、ミュージカルやバレエ&オペラ、美術館など、夏とはまた違っ
た面を満喫しました。夏よりずっと手頃な価格で、一流のホテルに滞在できるのもうれしいところです。
取材では、いつもヴァージンアトランティック航空を使っているのですが、今、ヴァージンではウィンター・バーゲンを実施中。エコノミーだ
けでなく、プレミアムエコノミーやアッパークラスも格安になっています。この機会に、冬のイギリスを楽しんでみては?

ヴァージンアトランティック航空のサイトはこちら。
http://www.virginatlantic.co.jp/


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ホテルの全景。メインの建物以外に小さなコテージが敷地に点在します。


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6月、石の壁にはまだバラが美しく咲いていました。


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レストランの外のテーブルでは、
庭を眺めながら朝食を楽しめます。


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インテリアは一室ずつまったく違っています。
モダンな中にも、リラックスできる優しい雰囲気です。


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キッチンガーデンは、野菜とは思えないほと美しい植栽。
真ん中のかかしは季節ごとにコスチュームもチェンジ。


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レストランでの朝食のセッティング。
庭からの光が真っ白なクロスに映えます。


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シンプルでモダンなベッドルームは、インテリアの参考になります。
アクリルの家具使いが新鮮!


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ベッドのそばにバスタブ。
こんな大胆なバスもホテルの楽しみです。


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庭とコテージの境には、こんなドアが…
ドアを開けると、絵のような庭が広がります。

アーネストコラム「洒洒落落」第11回 モダンリビング編集長 下田結花さん

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2012年1月21日

アーネストコラム「洒洒落落」も、早いもので第11弾となりました。
新連載は、ハースト婦人画報社 モダンリビング編集長の
下田結花さんのご登場です。

今回のテーマは、「イギリスで出合った、印象的なホテル」。
人気雑誌の編集長ならではの視点で切りとられた個性溢れるホテルの魅力を、全4回に渡りお届けいたします。


【Vol. 1 コワースパーク
http://www.coworthpark.com/ 】


ほぼ毎年、6月にはイギリスに取材に行っています。
6月は庭が最も美しい季節。8月7日発売の「モダンリビング」では、庭の特集を組むので、観光のハイシーズンでなかなか取材が難しいことも多いのですが、敢えて6月にしています。
今回は、昨年、取材したホテルの中から、印象的だったイギリスのホテルを4回にわたってお届けしましょう。
イギリスのホテルは、それぞれが個性的なだけでなく、一軒の中でも、インテリアが1室ずつ違うことも多く、そういう意味でもとても奥深く、楽しめます。


まずは、昨年、オープンしたばかりの「コワースパーク」からご紹介しましょう。
ロンドン郊外、ヒースロー空港から車で15分、というロケーションにあるこのホテルのコンセプトは、「エコ・ラグジュアリー」。
世界中に5ツ星ホテルを展開する、「ドーチェスター・グループ」が経営しています。 広大な敷地の半分は、ポロの競技場。当然、大きな厩舎もあり、馬を連れた宿泊客にも対応できるようになっています。
宿泊施設は敷地に点在。メインの建物以外に、かつての厩舎をリノベーションした一棟や、納屋を改装したコテージやレストランなどもあり、変化に富んでいます。どの建物も、本来の素朴さを生かしつつ、シンプルな中に高級感のあるインテリアに設えられています。
スタッフとして地元の人たちを積極的に雇用しており、温かなサービスも魅力。ここも、5ツ星ホテルです。
スパは大きなプールを含む独立した建物。室内には高級家具やアートをたっぷりと配しています。このスパには、太陽光や地熱など自然エネルギーを利用した設備が設けられていて、ホテルで使うエネルギーの多くをまかなっているそうです。
レストランはオーガニックフードを中心にした、ヘルシーなフレンチ。一品一品に、最もふさわしいお酒をコーディネイトした「テイスティング・コース」というのがあり、これが楽しみで訪れる人も多いとか。
イギリスでは、近年、オーガニックフードやエコロジーに対する関心がますます高くなっています。エコロジーとラグジュアリーを共存させているこのホテルは、まさのその象徴とも言えるでしょう。
自然豊かなロケーションと、質を大切にしたシンプルで上質な空間や食べ物。 「ラグジュアリー」の意味も変化してきていることを感じさせられるホテルです。


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「コワースパーク」のメインの建物の全景。
古い建物をリノベーションしています。

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メインの建物へと美しい並木が続きます。
これも庭の一部。

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朝、敷地を散歩していると目に入るのはこんな景色。
敷地の中の牧場。

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朝の散歩の途中、ポロの練習をしている人たちと
出会う事も。

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メインの建物のラウンジ。インテリアはモダンで
優しい色使い。

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客室のベッドは、枝を模したアイアン。
エコがモダンにデザインされています。

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バスルームは置き型バス。
向かい側にシャワーブースがあります。

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元は厩舎だったところをリノベーションした、
ステイプルと呼ばれる客室。独立した建物です。

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敷地の中には、小さな池も・・・・。
この環境すべてを楽しめることが、何よりの贅沢です。

アーネストコラム「洒洒落落」モダンリビング編集長 下田結花さん 

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2011年12月21日

アーネストコラム「洒洒落落」は各分野で
ご活躍の方々がそれぞれの視点で自由に
テーマを設定し寄稿いただきご紹介させて
いただく連載コラムです。
             
次回、11人目は・ハースト婦人画報社
モダンリビング編集長
下田結花
さんから
ご寄稿いただいたコラムをvol.1〜vol.4の
計4回にわたりご紹介させていただきます。

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撮影 下村康典


プロフィールご紹介


下田結花(しもだゆか) モダンリビング編集長

旧婦人画報社(現・ハースト婦人画報社)に入社後、
書籍編集部、別冊 編集部、女性誌の編集部を経て、
2003年から「モダンリビング」 の編集長に。
創刊60周年を迎える「モダンリビング」をビジュアル建築誌として確立。
2012年1月号では、ロゴと誌面を刷新し、伝統に裏打ちされた実用的側面と
軽快なデザインを取り入れたリニューアルを敢行。
新誌面も高い評価を得て、新たな読者層を開拓している。


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『モダンリビング』は1951年創刊。家とインテリアのビジュアル建築誌です。
毎号「幸せを実感できる暮らしと空間」を提案しています。

http://www.hearst.co.jp/product/modernliving

アーネストコラム「洒洒落落」ネコ・パブリシング 編集長 平井 大介さん

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2011年10月24日

フランクフルトでのスーパーカーたち:群雄割拠編


フェラーリ、ポルシェ、ランボルギーニと続いた「フランクフルト・ショー」レポートの第4弾。今回は最終回ということで、会場に展示されたスーパーカーの中から注目の5台をピックアップします。

フェラーリ、ポルシェ、ランボルギーニにアストンマーティンを加えた4ブランドが、現在スーパーカー業界における「四天王」とも呼べる存在です。ちなみに四天王という表現はスーパーカー専門誌「ROSSO」在籍時代に勝手に付けただけですので、一般的ではありません。でも日本人って、「御三家」、「四天王」、「○○の△△」(例:浪速のイチロー)という呼び方好きですよね(笑)。

アストンマーティンは、イタリアのカロッツェリア(デザインやワンオフでクルマ製作などを行なう企業の総称)である「ザガート」とのコラボモデル「アストンマーティンV12ザガート」をモーターショーで初公開しました。前から見るとジェントルなアストンマーティン、後ろに回れば刺激的なザガート・デザイン。見事な融合です。来年夏から生産が始まるそうで、世界150台限定生産。日本上陸も期待したいですね。アストンマーティンは77台限定のフラッグシップ、「One-77(ワン・セブンセブン)」も展示していましたが、初めて見た生産型、その完成度の高さに驚かされました。

続いてVWグループから、ベントレー・コンチネンタルGTCとブガッティ・ヴェイロン・グランスポーツ・ル・オール・ブランを。GTCはオープンモデルとなる「派生車種」、ル・オール・ブランは「顧客が選べる一仕様」として発表されたわけですが(何と「ベルリン王立磁器製陶所」とのコラボレーション)、最近はひとつボディから誕生する関連車種の多さが目立ちます。それだけスーパーカーは開発に費用がかかり、元をとるのが難しい商売なんでしょうね。ちなみに世界最速の400km/hオーバーを記録するヴェイロンですが、予定の台数を全部売っても赤字! だそうです。でもブランド力を下げないため、台数は増やさないとか。資金力のあるVWグループじゃないとあり得ない話です。

最後にジャガーC-X16とマセラティ・クーバンを。いずれもコンセプトカーですが、C-X16は現行XKの後継と噂されるハイブリッドスポーツ、クーバンはマセラティ初となるSUV発売に向けた1台です。ジャガーはフォード傘下を離れインドのタタ傘下になったことで、以前より自由になった気がします。「資金は出すけど、口は出さない」とタタの太っ腹ぶりも伝わっており、C-X16がさらに魅力的な市販車となることを期待します。そしてクーバン。こちらは同じフィアット・グループに最近クライスラーが加わったことで、ジープの兄弟車では? と噂されます。プレス向け資料はそれを否定する言葉がいっぱいでしたが……。市販版がどうなるか、こちらも期待です。スタイルはなかなかに魅力的ですから。

長くなってしまいましたが、これでもまだフォローできていないスーパーカーがたくさんあります。これだけのスーパーカーが群雄割拠状態にあるのは、クルマ好きにとって幸せな状況と言えますね。ということで、最後までお付き合い頂きましてありがとうございました。フランクフルト・ショーのレポートはHOBIDAS AUTOでも展開ズミですので、よろしければあわせてご覧下さい。

http://auto.hobidas.com/

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アストンマーティンV12ザガート


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アストンマーティンOne-77


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ブガッティ・ヴェイロン・グランスポーツ・ル・オール・ブラン


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ベントレー・コンチネンタルGTC


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ジャガーC-X16

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マセラティ・クーバン

アーネストコラム「洒洒落落」ネコ・パブリシング 編集長 平井 大介さん

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2011年10月17日

フランクフルトでのスーパーカーたち:ランボルギーニ編

フェラーリ、ポルシェと続いた「フランクフルト・ショー」レポートの第3弾。今回はこちらもフェラーリのライバルとなる、ランボルギーニをピックアップします。

ランボルギーニの「燃えたぎる」情熱は、フランクフルト・ショー前夜から感じられました。大きなモーターショーになりますと、数社が前夜祭的なイベントを開催します。その中で最大級となるのがフォルクスワーゲン(VW)グループのイベント、通称「VWナイト」です。何せ、VW、アウディ、ベントレー、ブガッティ、セアト、シュコダ、(最近VW傘下となった)ポルシェ、そしてアウディ傘下にあるランボルギーニまでが含まれるのですから。メディア向けとなる数千人を想定した会場は満員御礼で、噂では入れなかった人もいるとか。私は日本人らしく定刻前に到着し(笑)、最前列確保しましたので大丈夫でしたが。

そこでランボルギーニは、文字どおり「燃える」パフォーマンスで会場を盛り上げました。そう、炎です(写真参照)。そして燃えるような赤い専用色を持つ限定車「ランボルギーニ・ガヤルドLP570-4スーパートロフェオ・ストラダーレ」が、炎と共に登場したのでした。ガソリン積んでいるクルマが……などという日本人的心配はイタリア人には不要。いかに会場を盛り上げるか! 実にイタリアらしい部分です。もちろん安全性には最大限配慮している……ハズです(笑)。

この限定車はもちろん、フランクフルト・ショー会場にもディスプレー。そしてブースには春のジュネーブ・ショーで発表された新型V12フラッグシップ、「ランボルギーニ・アヴェンタドール」も2台が並んでいました。実は久々のモーターショー取材で、このアヴェンタドールを見るのは今回が初めて。しかし想像どおり、いやそれ以上に存在感のあるデザインでした。既に日本にも上陸してディーラーイベントなどに登場しているので、街中で見る日もそう遠くないと思います。

次回はこれまで紹介した、3ブランド以外のスーパーカーたちをピックアップします。ちなみにフランクフルト・ショーのレポートは、HOBIDAS AUTOで既に展開ズミです。ご興味がございましたら、あわせてご覧下さい。

http://auto.hobidas.com/


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ショー会場に飾られたアヴェンタドール。マットブラック仕様でした。


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ホワイトと2台を展示。有機的なデザインは、実に存在感があります。

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発表前のガヤルドLP570-4スーパートロフェオ・ストラダーレ。車名が長いです(笑)。


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前夜祭「VWナイト」にて。このように本物の炎がバンバン噴かれる中で登場。


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こちらもVWナイトの1枚。とにかくスゴイ人で、VWグループの注目度の高さが伺えます。

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ふたたび会場から。ブースのお姉さまがファッショナブルなのは、ランボルギーニを始めとしたイタリア系の特長です。

アーネストコラム「洒洒落落」ネコ・パブリシング 編集長 平井 大介さん

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2011年10月11日

フランクフルトでのスーパーカーたち:ポルシェ編

前回のフェラーリに続く「フランクフルト・ショー」レポートの第2弾。今回はフェラーリ永遠のライバル、ポルシェをピックアップします。

フランクフルトは地元ドイツ勢にとって、最も力が入るモーターショーでして、ポルシェもその例外ではありません。今回は7世代目となるコードネーム991、新型ポルシェ911を発表いたしました。ショーの主役の1台と言っても差し支えないでしょう。

発表前からの話題は、先代911(コードネーム997)からどれだけサイズアップするか。コンパクトなスーパーカーである911が、サイズアップすることに我慢がならないクルマ好きは少なくないようで、「だったら997が最高の911になる」という997最終モデル賞賛派から、「全幅がこれ以上広くなると立体駐車場に入らない」という現実派まで、話題騒然でした。

そして答えは……何とグレーゾーン。確かに全長は56mm、ホイールベースは100mm伸び、全高は7mm低くなり、フロントトレッドも拡大と資料には書いてありますが、肝心の全幅は「約1.8m」と曖昧な表現。そう、あのしっかり者のドイツ人がです(笑)。おそらく幅が広くなったのは事実。でも最初に数値を発表すると、そこばかりが強調されると警戒しての展開かと思われます。

しかし新型911にとって、それは「重箱の隅」的な指摘。実車は伸びやかでグラマラスで、実にスタイリッシュ。個人的には964シリーズ(3世代目)のボディラインが、力感があって一番好きなのですが、991はそれ以上の雰囲気かもしれません!

また「我々は人々の感情を呼び起こす完璧な量産スポーツカーを、さらに改良し、ベストなものを造ることができました」と社長さんは明言。つまりは「全幅だ何だとつべこべ言わず、とにかく乗ってみなさい! 乗ればわかります!!」という、自信たっぷりの作品なのです。そして乗って黙らされるのは我々プレスの常。ポルシェに乗るとそのクオリティにいつも驚き、そして感心するのです……。この新型911も、「間違いない」仕上がりになっていることでしょう。

次回はもうひとつのフェラーリのライバル、ランボルギーニをピックアップします。なお最新号となるフェラーリ専門誌「スクーデリア95号」が、11日に発売となりました。911の話はもちろん入っていませんが(笑)、前回クローズアップした458スパイダーの話題をたっぷりと収録。表紙はその走行シーンが目印です。お近くの書店さんか、下記通販サイトよりお求め下さい。


http://shopping.hobidas.com/shop/hobidas-syoten/item/97961111.html

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こちらが新型ポルシェ911。撮影車はオプション装着車です。


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リヤのダックテールはオプション。20インチホイールが装着可能です。


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写真はデュアルクラッチのPDKですが、マニュアルは何と7速に進化!


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エンジンフードはこのように開きます。エンジンはほとんど見えません。

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ポルシェは今回、新型911以外に3台の新型車と1台のコンセプトモデルを公開。こちらは「ボクスターE」と呼ばれる電気自動車です。


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こちらは1900年に発表された「ローナー・ポルシェ」と呼ばれる、ハイブリッドのプロトタイプ。そんな昔から造っていたとは、ポルシェは本当にスゴイ会社です。

アーネストコラム「洒洒落落」ネコ・パブリシング 編集長 平井 大介さん

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2011年10月04日

フランクフルトでのスーパーカーたち:フェラーリ編

ふたたびアーネストコラム「洒洒落落」に寄稿させて頂くことになりました、平井と申します。現在フェラーリ専門誌『SCUDERIA』と自動車ニュースサイト『HOBIDAS AUTO』を担当しておりまして、先日その両媒体の取材を兼ねて、フランクフルト・ショーへ行って参りました。ということで今回は、「フランクフルトでのスーパーカーたち」をテーマにお伝えできればと思います。どうぞしばらくお付き合いください。


このドイツ・フランクフルトで開催されるモーターショーは2年に1回開催されていますが、正確には「Internationale Automobil Ausstellung」、直訳すると「国際的な自動車展示」となりまして、略して「IAA」、「フランクフルト・ショー」などと呼ばれています。会場の広さだけで言えば最近は中国のモーターショーがダントツですが、内容も含めれば、未だにフランクフルトは世界最大級。2日間のプレスデイでは全く時間が足りないほど充実した(そして取材的にはツライ)モーターショーです。


1回目は、やはりSCUDERIA担当としてフェラーリ以外にはありえません(笑)。ある意味、今回これがメインの取材とも言えます。はい、「458スパイダー」というニューモデルの登場です。同じ4.5LのV8(だから458なのです)をリヤミッドシップに搭載するクーペ「458イタリア」、そのオープン版となりまして、458イタリアで定評のある圧倒的な運動性能をオープンエアで楽しめるという、実に魅力的なモデルです。

しかもルーフを布製のソフトトップではなく、ハードトップで開発。普通に考えればハードトップのほうが重いですが、何とフェラーリはハードトップをアルミ製とすることで、逆に25kgも軽量なものを造ってしまったのです。こうなると、同じ運動性能を持ち、スペック面もほぼ同様。もし屋根を閉めたときのデザインが気に入れば、スパイダー以外の選択肢はあり得ない? とさえ思います。でもそこはフェラーリもちゃんと考えていて、クーペのほうのセッティングをよりハードに変更するマイナーチェンジを予定しているみたいですけどね。

なお458スパイダーについては、10月11日発売のスクーデリア95号で徹底特集しておりますので、どうぞそちらもご覧下さい。次回はフルモデルチェンジ版911を発表した、ポルシェをお届けいたします。


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こちらがフェラーリ458スパイダー。F430スパイダーの後継モデルとなります。

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458スパイダーのデザインは会場の評判も上々。個人的にも実に美しいと思います。


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これがアルミ製の電動ハードトップ。わずか14秒で開閉が可能となっています。

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同じ電動ハードトップを持つV8モデルの「カリフォルニア」。フロントエンジンという違いはありますが、フェラーリは客層が違うと、両立に自信を持っています。

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ブース奥のラウンジ。とある撮影のために「赤い飲み物」をリクエストしたら、ストロベリージュースが。これが驚くほど美味。さすがフェラーリ・ブースと改めて感心。

アーネストコラム「洒洒落落」ネコ・パブリシング 編集長 平井 大介さん

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2011年9月24日

アーネストコラム「洒洒落落」は各分野で
ご活躍の方々がそれぞれの視点で自由に
テーマを設定し寄稿いただきご紹介させて
いただく連載コラムです。
             
10人目は株式会社ネコ・パブリッシング
ROSSO/SCUDERIA編集部
編集長 平井 大介さん
さんから
寄稿いただいたコラムをvol.1〜vol.4の
計4回にわたりご紹介させていただきます。


平井編集長458spyder_6.jpg

                      
             
ROSSO/SCUDERIA編集部
編集長 平井 大介さん

                
profile
1997年4月に入社後、広告部、カー・マガジン編集部
を経てROSSO編集部へ。2007年12月よりROSSO編
集長に就任。2010年1月よりSCUDERIA編集長を兼務。
現在はROSSOを離れ、SCUDERIAと自動車ニュース
専門サイトHOBIDAS AUTOの編集長を兼務している。
愛車はランチア・イプシロン・モモデザイン。
小さいものから大きいものまで基本的にはイタリア車
好きで、左ハンドル+マニュアルのイタリア車以外
買ったことがない。

スクーデリア20110808180300008656.jpg

           
フェラーリにまつわるライフスタイルを紹介する隔月刊
誌。偶数月10日発売。
        
           
ネコパブリッシングWEBサイト
https://www.neko.co.jp/index.php

今回はフランクフルトモーターショーから世界の最新の
スーパーカー事情をご寄稿頂く予定です。

フランクフルトモーターショーはドイツのフランクフルトで
2年に1度開催される世界最大のモーターショー。
ドイツ自動車工業会(VDA)が主催。 1992年以降は
偶数年には、ハノーファーで商業車用のショーを開催し
奇数年にフランクフルトで乗用車及びバイクのショーを
開催するようになった。


アーネストコラム「洒洒落落」安藤歯科・ORCインプラント矯正センター 理事長 安藤正実 先生 第4回

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2011年8月01日

第4回
車のレストアから人間のレストアへ
本来は私は自他共に認める気の多い人間で、多趣味の極みなのです。釣り(すべてのジャンル)ゴルフ、乗り物全般などかなりディープにかかわって来たのです。
そんな自分が最近、気がついたら仕事(歯科医療)ばかりに熱中しているのです。実は歯科治療を仕事で行っていると、いくら患者様に最善を尽くしたつもりでも中には誤解から怒られたり、悲しまれたり、ときにはモンスターペイシェントに悩まされたりして、心身ともに疲れてしまうこともあります。それでも今、私は自分の理想とする環境(東京、埼玉、伊豆各診療所)に於いて非常に気の知れた有能なスタッフの力を借りて、日々患者様に本当に喜んでいただける水準の医療を提供できる自分に自信を持ち(自信過剰なぐらいに)たくさんのスマイルに満ちた環境で自分の能力の限界を出し切れることに喜びを感じています
特に従来マイナスのイメージに支配されていた感のある(たとえば歯を削る、抜く、神経をとる、お金を取られる、何もかもとられる=マイナスの意)歯科治療が今は(インプラントを入れる、歯を移植する、人工エナメル質をつけたす、神経を再生する、骨を再生するなど)プラスの要素に支配されようとしています。それらの治療を行うには当然多くのことを勉強する必要があります。しかしこれは当然、私の喜びでありますし、車のレストアの時もそうだったのですが、人のできることはすべてディープに自分でやる。だれもが嫌がるような難解な車も、誰もが手をつけられない難症例の患者様と同じように私にとっては喜びなのです。時間の経過の中で朽ち果てていく自動車と人生の苦難の中で傷んでしまった人の笑顔はどちらも私にとって本当に治してあげたいという気持ちを起こさせます。

その結果昨年インプラント症例数は東日本最多の一人となり、天下の学閥、東京医科歯科大学の全症例数よりも私一人の取り扱い症例数は多くなりました。また上顎の極度に吸収された患者様に対して行われるZygoma implantについては日本1、2の累積症例数を誇っています。
昨年完成したアーネストアーキテクツ設計によるORC インプラントセンターは自他共に認める日本最新、最大規模のインプラント専門施設でありこの完成とデザインの革新さがこれらの結果につながったことは疑いのない事実です。
ところでこれを読んでくださっている方々は、Aa菌、Pg菌という細菌をご存知でしょうか?これらの細菌は歯周病の特異菌といわれるもので、この他にも数種の特異菌がいます。これらの菌に感染している方の数はおおよそ20−100人に一人くらいなのですが、この菌の保菌者は多くが難治性の歯周病に罹患しています。大変熱心にブラッシングされているにもかかわらず歯茎がはれたり、歯がぐらぐらするのが治らない患者様は、かなりの確率でこれらの菌に感染しています。PCR法という細菌増幅法と遺伝子検査により菌の同定ができるようになった現在では、感染の有無が簡単に検査可能となりました。そしてこれらの菌は飲み薬を飲むだけで除菌することができ、従来若いうちから悩まされていた難治性の歯周病[侵襲性歯周炎]が驚くほど簡単に治るのです。
しかし、一般の歯医者さんでこのことをご存じの先生はまだ少ないのが現実です。従来型の歯ブラシ指導と歯石とりに終始しているのが現状なのです。
私の医院は一寸特殊なもので、全国から若くして歯を失った多くの患者様が毎日いらっしゃります。そのためこのような歯周病の患者様を多く見る機会に恵まれ、そのことからこれに対する内科的治療法[飲み薬による]が現実的に行われるようになったわけです。
もし読者の中で、しっかり歯磨きしているのに歯茎に自信の持てない方がいらしたら是非、PCR検査をされることをお勧めします。

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術前侵襲性歯周炎により歯がぐらぐらになった40代女性です。Aa菌Pg菌両者に感染していました。

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上顎歯インプラント治療、下顎ご自身の歯を内科的に治療しきれいになった口元。(入れ歯ではありません)


この方は一例ですが、現在で当院では28歳から95歳まで様々な年齢の方がPCR法による検査と歯周病内科治療、通常のインプラント治療、ALL on 4, Zygoma Implantなどの最新治療法にによって救うことができるのが私の今の最高の喜びなのです。

最後に私の尊敬するシュバイツアー博士の言葉を引用して私の話を終わりにしたいと思います。

「人生の目的は奉仕であり、他者に良い気分を与えるための強い意志を示すことである」


医療法人社団 新正会 安藤歯科 ORCインプラント矯正センター

      理事長 歯学博士 安藤正実


安藤歯科・インプラントガイド http://www.ando-implant.jp/

アーネストコラム「洒洒落落」安藤歯科・ORCインプラント矯正センター 理事長 安藤正実 先生 第3回

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2011年5月30日

第3回私の趣味について


幼少のころ私の父親は当時住んでいた市内でまだ数台の車しかなかった時代にアメリカはフォード社製の1963年式のマスタングという車に乗っていました。当時その車に乗せてもらって町の中をドライブするのが小さいときとても自慢だったことを昨日のように思い出します。その後多くのヨーロッパ車(メルセデス、フォルクスワーゲン,bmw)などをのり継いだのち、私が免許を取って初めて運転させてもらったメルセデスも父のお下がりでした。

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当時、大学の同級生からはベンツに乗っている新入生という偏見めいた見方をされましたが、それはそれ、元来目立ちたがり屋の私にとって向かうところ敵なしという感じでした。しかし免許取り立ての学生にとって少々大きすぎるその車は約1年で退役せねばならないほど壊れてしまい、父が大事にしていたことを思うと今でも父に申し訳なく思ってしまいます。その後まだ日本に於いてBMW が今のように知られる存在になるずっと以前に私の家のガレージに来たブルーのBMW3.0csi(1974)は、現在までメインテナンスを行いながら私の診療所のエントランスに飾られています。ちなみにこの車は当時信じられないくらい速く、空いた第3京浜でいろいろな車と競争しましたがほとんど負け知らずでした。自動車評論家の徳大寺有恒氏もそのころのこの車を絶賛してくれたことを覚えています。
この車は私にとって大変思い出の深い車で、今の家内と初めてドライブしたのもこの車でしたし、結婚式の結納の場にこの車で出かけ途中目黒の交差点でエンストし着物姿の母親に押してもらったことも忘れられません。さらには、家内と行った山中湖でフュ―エルポンプが故障し車の下にもぐって外した部品のオーバーホールをして帰ってきたこともありました。とにかく良く壊れるBMWでした、そのおかげ(そのせい?)で車の構造や仕組みを覚えるきっかけになりました。そして長男が誕生して、当時、彼を連れて良くドライブにも出掛けたある日のことです。中央高速でポルシェと競争になり、伴走した時にエンジンが火を噴きついに廃車寸前となりました。この時から、この車と長く付き合うためには自分でメンテナンスするしかないという思いでイギリスのヘインズ社から出版されている自動車解体新書work shop manual(イギリスではごく普通の家庭でも車の修理は自ら行う人が多いためこのような本が発刊されている)を片手に自らこのエンジンのオーバーホールを行ったのでした。(当時学生のアルバイト代だけではこの車を維持できないための苦肉の策でした)
そして自ら修理したエンジンに初めて火が入った時、そのエンジン音は今でも忘れられないくらいいいものだったことを記憶しています。
この時の経験から、私の旧車のレストア趣味が始まりました。ちなみにそんなこと突然素人の私にできるはずがないと思われる方も多いかと存じますが、実は前述の私の父親がいつも一緒に手伝ってくれたのでした。彼は小さいときから器用でしかも相当に賢い人だったと思います。(息子の欲眼かもしれません)中学生の時自転車に小さなエンジンをつけてバイクのようなものを作り当時の校長先生に売ったそうです。若いころは陸王や、ハーレーにも乗りバイクをこよなく愛し、暫く修理工場にも勤めた経験があったそうです。
そのようなわけで私と父はよくアメリカのmonster garage に出てくる親子のように車のカスタムやレストアを自宅のガレージで行っています。その後Lotus Europa(1974)
Jaguar XKE (1967)などレストアし現在Maserati merak(1974)のProjectに挑んでいます。
これらの車はレストア中のマセラティを除き当院埼玉診療所の1階エントランスに季節ごとに展示しています。絵の好きな先生はよく診療室に絵を飾りますが、私の場合、デザインの好きな車がそれに代わるものなのです。


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一階エントランスの展示車

自宅のガレージには修理工場並みの設備が今は整っていますので(リフトも付いています)
近隣にお住まいの方の一部は、私のことを自動車屋さんと思っているようです。
現在進行中のレストアの完成はこの秋になりそうですので、もしご興味のある方は是非見にいらしてください。

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自宅ガレージ


安藤歯科インプラントガイドはこちらから
http://www.ando-implant.jp/

アーネストコラム「洒洒落落」安藤歯科・ORCインプラント矯正センター 理事長 安藤正実 先生 第2回

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2011年5月10日

私は今から25年前に歯科医師になりました。当時お世話になっていた医局の先輩が新規に純日本製インプラントを開発されたのがきっかけで22年前よりインプラント治療を行うようになりました。当時は各県に2−3医院くらいしかインプラントを取り扱っている医院がないころでしたので、一般の患者様はその存在すらご存じないころからその治療法を経験していました。ところがその当時の日本製のインプラントは相当に粗悪品[今だから言えますが]でしたものですから成功率が50パーセントというようなほとんど人体実験に近いものだったのです。しっかりと骨につかないインプラントが周囲に線維性結合組織に囲まれた状態をfivrointegration(疑似歯根膜などと解釈する]などと呼び肯定する意見もあったくらいです。ちなみにこれは現在における失敗インプラントを意味します。
そのため私はこの治療法についてはまだまだ実用段階ではないと考え、しばらくの間この治療法を封印することとしました。その後スウェーデン製のブローネマルクシステム、やITI インプラントなどのチタン製のインプラントが日本に入ってくるようになり、彼の地でのそれらの治療がすでに確立段階であることを知りながらも、すぐにこの治療法に戻ることができなかったのはこのような理由からなのでした。当時大学においてもたくさんの失敗インプラントの撤去のため訪れる多くの患者様を見た医局員たちは、とても行うべきではない治療法であるという認識をするに十分だったのです。そのため本治療法について大学が一番に遅れてしまったのも無理からぬことなのです。。
当時欠損補綴(入れ歯)はドイツのケルバー先生の開発されたコーヌスクローネ義歯の全盛期でこの治療法も大変に素晴らしかったと記憶しています。(この治療法もすべての歯科医師が行ってはいない方法だったと思いますがなぜか私はこの治療に関して当時関東地方でもトップの症例数を行っているといわれていました)そして約10年にわたってこの治療法を中心に行ってきたのです。


インプラント治療との再会


そして12年前母校の大学で新しい日本製純チタンインプラントを開発しその開発にあたっていくつかのお手伝いをしたのがきっかけでまた再びインプラント治療を始めたのでした。
チタンが骨とつくことを発見したのがスウェーデンのProffesor ingubar branemark
博士なのは業界では有名な話なのですが彼は現在のインプラントの祖と呼ばれており世界中のインプラントロジストから慕われています。現在彼は高齢ながらブラジルにおいて恵まれない人々のために無償で義眼やエピテーゼ(皮膚付きの人口顔面)などの治療を行う施設を世界中の歯科医師からの寄付によって運営しています。
私は現在ブローネマルク先生の開発したシステムであるノーベルバイオケア社のインプラントにおけるインストラクター(同社ではメンターと言います)を行っていますが、インプラント治療に復帰後わずか10年足らずでこのように日本におけるインプラント治療の第一人者と言っていただけるようになったのには実は理由があります。
2004年日本に一人のポルトガル人の歯科医師が来日しました。彼の名はDr.PAULO MALO
と言います。彼の開発したALL On 4システムという方法は従来、片顎8−10本のインプラントを必要とする無歯顎の患者様に4−6本のインプラントを用いてさらに一日で歯を入れるという画期的な方法でした。
私はノーベルバイオケアの招待で彼に会う機会を持つことができ彼の話を聞きたいがため、翌年16時間かけポルトガルの彼のオフィスに行ったのです。その時日本から一緒にポルトガルに行った歯科医師達が現在の日本のインプラント界のコアメンバーとなる人たちだったと知るまでにはさほどの時間が必要ではありませんでした。とにかくマロ先生の医院は世界規模です。スタッフ400名が大きなビルの5フロア(現在20階建てのそのビルすべてが彼の診療所です。)で忙しそうに働いている姿はこんなヨーロッパの僻地でありえない様子だったのです。
現在彼のデンタルオフィスは世界各国に存在し名実ともに世界ナンバー1の歯科医師なのです。私は彼には相当に参っています。というのは彼は学生時代にモデルのアルバイトをしていたくらいのイケ面(私は決してゲイではありません)でしかも相当に頭もいい人です。彼に会ってから今日まで彼は心の師であり、また永遠の目標でもあります。
ちなみにポルトガルですが、バスコダガマがヨーロッパ大陸を発見した太古の昔よりヨーロッパ最西端の地として最も早くから文明が存在した地でもあります。
今は当時の栄枯は衰退してまさに哀愁のヨーロッパという雰囲気がとても素敵なところであります。私はそんな古い街において世界で最も最先端のインプラント治療法に出会う機会に巡り会うことができた幸運に強く導かれながら日本に戻る機上において、あこがれのアーネストの山口氏に頼んで理想の診療室を作る決心をしたのです。


ツーショット002.jpg


Dr,paulo malo とのツーショット


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一度見てみたかった発見のモニュメントの前で研修の最終日に観光客気分で

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Nobel Biocare Japan(世界1流のインプラントメーカー)前会長ulf nilson氏
トUCLAインプラント科教授Peter moy 先生と一緒に


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日本におけるインプラントの大先輩 ブローネマルクオッセオインテグレションセンター
所長 Club 22会長 小宮山弥太郎 先生とリスボンで


アーネストコラム「洒洒落落」安藤歯科・ORCインプラント矯正センター 理事長 安藤正実 先生 第1回

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2011年4月06日

 まずはじめにこのブログを書いている途中に
大変な大惨事が日本を襲いました。
多くの被災者や亡くなられた人々のことを考えると
のんびりブログを書いている場合ではないと思いましたが
我々のように生き残った者が以前にも増して日々を
精いっぱい生きることが日本の復興に役立つことと考え
再び書かせていただきます。


ちなみに私の診療所はアーネスト社長の山口氏の発案のもと
アーネストアーキテクトの尾高氏の設計によって
一昨年に完成しました。
地震の当日大きく揺れるその診療室で仕事中でしたが
設計時にそのデザイン性とは相いれないほどの
堅牢な設計をしていただいたおかげで
本当に安心していられたことには大きな感謝を感じました。
まるでポルシェのような剛性感を感じたと言えば
言いすぎかもしれませんが、
ミシリともせず揺れ続いたのにはびっくりしました。


今回このブログを通じて私の趣味と仕事の係わり、
人生における目的についてお話したいと思います。


現在私は50歳です。
私が歯科医師を目指したのは13歳、中学生の時です。
一人っ子だった私は小さいときから部屋の片隅で
ぶつぶつ言いながら一人で
粘土細工をしているのが好きな子供でした。
今でいうところのfigureのような
小さなアニメ人形(当時はお化けのQ太郎、鉄人28号)や
小さな自動車(マッハ号や知る人ぞ知るパーカー氏の運転する
ペネロープ号)などを何度も何度も作っては
破壊するを繰り返しておりました。
両親やその友人たちにその作品を見せると
皆が一様にすごいとほめてくれるのが嬉しく
て益々それらの作品の完成度が上がって行きました。
そのおかげか、最も大脳の活動が高い幼少期に
指と脳における関連づけが確立された可能性が
私のその後の人生に大きな影響を与えたことは
疑いのないことでした。
とにかく手先の器用な子供という評価を得た私は
将来の職業選択に芸術系もしくは
歯科医師のような技術系への思いを巡らすようになります。
そして中学の時、前述のように歯科医師になろうと思ったのです。


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【久しぶりに粘土で作ってみました。3分ほどでこんな形にできました。】


現在の歯科医師のイメージは、さほど高くない偏差値の割に
医師の資格が取れるが高い授業料の割に年収も低く、
医学部にあぶれた学生の落とし所の様な感じ、
と言うといいすぎかもしれませんが、まあそんなところでしょう。
今では医師の平均年収2400万に対し、
歯科医師の年収970万円と2倍以上に差がつきましたが、
私が歯科医師を目指した昭和50年当時歯科医師の年収のほうが
医師のそれを上回った時期があることは意外と知られていません。
当然、当時の歯学部受験の偏差値も現在より高く、
医学部の中堅よりも難易度の高い歯学部は何校もありました。
私の卒業した品川区にある某歯科大学もその一つでした。
この大学は私立で唯一、医科、歯科、薬科をもち、
現在では保健医療(看護科,理学療法科)の医系総合大学です。
私はこの大学の卒業生の東京代表を務めつつ
日々の臨床を行う開業医です。


話は突然変わりますが、アニメ、サザエさんのお父様、
磯野波平氏は何歳だと思われますか?実は彼は54歳です。
現在の54歳は家で着物などきていませんし、
会社に帽子をかぶっても行きません。
しかしこのアニメができた昭和40年初頭のころ
日本人男性の平均寿命は63歳でしたから、
彼はあと10年で天に召されても不思議は無い年齢なのです。
彼の口腔内は診たことがないので何とも言えませんが、
確か頭には毛が一本しか残っていなかった様な気がします。
おそらく目も悪かったに違いありません。
現在日本歯科医師会で8020(ハチマルニーマルと読みます)運動
なるものをやっておりますがこれは80歳の年齢時に
最低20本の歯を残そうということです。
なぜ20本なのかと言いますとこの本数が
食事を不自由なく食べることのできる最低本数だからです。
実際に今80歳の平均残存歯数は7本ですので
8007というのが現実です。

安藤先生image_(2).jpg


さて話を磯野波平氏に戻しますが
当時は寿命が短かったおかげ?で
死ぬまで噛めずに歯で苦労する人が少なかったのに対し、
現在は平均寿命の伸びに伴い、食に於いて
欠かすことのできない歯を失う人の率が高まっているのです。
そして日本のみならず世界的に
無歯顎者(歯の一本もない方)の人口が
爆発的に増えているのです。
歯の状態が健全な読者の皆様には想像もできないことかと思いますが、総入れ歯というものはそんなに具合のよいものではありません。
咀嚼能率という指標があります。
それは生のお米を噛んでいただいて
どのくらい細かくなったかをふるいにかけて
調べる方法(篩分法)を用いて
具合が良いと患者様が思っている義歯において調べると
正常な人の30パーセントが最高の義歯と言われる程度なのです。
義歯安定剤のCMを見るにつけ、あれでごまかしている
多くの患者さまがたくさんおられることを悲しく感じることがあります。
現在世界で歯を失った場合の第一選択肢は
義歯やブリッジ(両隣の歯を削る方法)からインプラント
という人口の歯根を用いる方法に変わりつつあります。
特にスウェーデンやデンマークではほとんどの患者様が
インプラント治療によって歯を回復しているのが現実です。
ちなみに日本では2010年のデータで約20パーセントの歯科医師が
行うようになりましたが専門的に行っている医院の割合は
2パーセント未満であります。
実はこの治療は一般的な歯科治療と比べると
やや難易度が高くすべての歯科医師が行って良いかと言うと
そうでもない気がする治療方法なので
この割合は何となく正しい気もするのですが、
インプラントを行っていない先生にかかっている患者様は
不幸なことに良く噛めず使い心地も悪い義歯で
一生を過ごすことになる可能性があるのです。

次回に続く

アーネストコラム「洒洒落落」安藤歯科・ORCインプラント矯正センター 理事長 安藤正実 先生

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2011年2月04日

アーネストコラム「洒洒落落」は各分野でご活躍の方々が
それぞれの視点で自由にテーマを設定、寄稿いただき
ご紹介させていただく連載コラムです。


9人目は新正会「安藤歯科・ORCインプラント矯正センター」
理事長 安藤 正実 先生
より寄稿いただいたコラムを
vol.1〜vol.4の計4回にわたりご紹介させていただきます。


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Profile
1983年 昭和大学歯学部 卒業。
東京都板橋区、埼玉県朝霞市、静岡県伊東市に各歯科医院を開設。
2009年に新正会「安藤歯科・ORCインプラント矯正センター」開設。
ただ歯を治療するだけではなく、「安藤歯科・患者さま総女優化計画」
として治療を終えた患者さまはすべて「女優」並みのお口元になることが当院の究極の目標です。

「難症例がきてくれることが最大の喜び」を掲げ、どなたにでも
自信を持って笑い微笑みかけることができるように、
キレイな白い歯と歯並び、さまざまな治療を総合して
どんな患者さまにも希望を持てる治療を心がけております。


***

安藤歯科・ORCインプラント矯正センター ホームページ
http://ando-shika.jp/
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「エクウス」編集長 原口 啓一さん Vol.4 馬大国ハンガリー

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2011年1月18日

Vol.4 馬大国ハンガリー
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【国立の馬の生産施設、バーボルナ国立スタッドファームで早朝、厩舎から放牧されるシャギア・アラブ種の若馬たち】


 最終回の第4回は東欧に目を転じてみましょう。
意外と知られていませんが、東欧の中でもハンガリーは騎馬 民族の血を脈々と受け継ぐ馬大国なのです。
 バカンスや長期休暇にはヨーロッパ各地から乗馬愛好家がこの国を訪れます。そうした人たちのためにハンガリー政府観光局では国内の乗馬リゾートや乗馬クラブ、そして馬のショーなどを楽しめる施設を冊子にまとめ配布しているほどで、「乗馬」はこの国の大切な観光資源といえます。乗馬を楽しめる場所は国内の各地に点在していますが、なかでも人気があるのは海の無いハンガリーにおける最大の湖、バラトン湖周辺でのリゾートライディングです。湖での遊泳やレイククルーズを楽しみながら乗馬も楽しめるとあって、バカンスの時期には国内外から多くの観光客が訪れにぎわいます。

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【家族連れで乗馬を楽しむ人も多い。】

 この国での乗馬の楽しみ方はさまざまな選択肢があることでしょう。馬場においては乗り手のレベルに合わせ初級から中上級まで対応してくれ、馬場を出れば馬の背に揺られながらの散策から平原の疾走まで乗り手次第です。

 この国を移動していると気がつくのがあちこちで馬車と出会うことでしょう。現在では観光が中心ですが、各地に馬車博物館が設けられ馬車がいかに生活に密着していたかをうかがい知ることができます。もしハンガリーに行く機会があるなら、乗馬は抵抗があるかもしれませんので、ぜひ馬車を試してみてください。いつもと違う目の高さで眺める景色はひと味違います。

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【豊かな緑の中を馬車で行く。白馬はリピッツアーナ種でおとなしく頭がいいうえにご覧のように美しい。】


 ハンガリーの歴史を紐解いて人と馬に関わる人物といえば、首都ブダペストの観光名所となっている英雄広場で騎馬像となっている7人の部族長たちが知られています。

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【騎馬民族の誇り、ハンガリーの始祖といわれる7部族長の像。】


 ただそれはあくまでハンガリー国内のことで、国外にも知られている人物としてはシシィことエリザベートが有名です。オーストリア=ハンガリー帝国の皇妃エリザベートの人生はミュージカルになるほど有名ですが、彼女は大の乗馬好きだったのです。義母との折り合いが悪かったこともあり、ウィーンを離れハンガリーで乗馬三昧に明け暮れたシシィは自国オーストリアよりハンガリーで絶大な人気がありました。ブダペストには彼女が通ったというカフェが今も残っています。また、彼女の優雅な横座りの騎上姿やジャンプをする勇猛な姿など絵画作品として今も見ることができます。実際に彼女の乗馬技術はとても高かったということで、今ならオリンピックに出場していたかもしれません。

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【エリザベートを彷彿とさせる横乗りの乗馬。】


 ハンガリーにおいて人と馬がいかに密接な関係にあるかを知る方法として、国内の各地で行われている馬術ショーがお薦めです。独特の青い衣装と帽子を被ったチコーシュと呼ばれる馬飼いが見事に馬を御す姿は圧巻。なかでもプスタファイブと呼ばれる妙技は前に3頭、乗り手のそれぞれの足元に1頭ずつ、合わせて5頭の馬を見事にさばき疾走するのです。実はこれは19世紀末にオーストリアの画家が空想で描いたものをハンガリーの馬乗りが自分たちの技術をもってすれば可能だと猛訓練を経て獲得した技術だということですが、今ではすっかりハンガリー名物として多くの観光客の目を楽しませています。ハンガリー東部に広がるプスタと呼ばれる大平原では今でも昔ながらに馬飼いや牛飼いが暮らし、自然の中で生きるという伝統を継承しています。

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【疾走するプスタファイブ。10頭以上を御すことも可能だという。】


 もうひとつハンガリーが馬大国として名を馳せる理由は国を挙げて馬の生産に力を入れていることによります。かつて社会主義の実験的な生産形態として農業畜産業などを集めて大規模集団農場の経営を推進しました。この業態の中でハンガリーでは馬の生産がもっとも成功しました。騎馬民族の血の成せることなのでしょうか。姿形が美しく頭がいいと言われるリピッツアーナという種類の馬や、かつてハンガリーから送られてきて昭和天皇が愛したというシャギア・アラブという種類の馬など、国際市場においてハンガリーの馬生産は高い評価を得ています。

 最後にハンガリー国内でも一風変わった有名人として知られる、ユニークな人物を紹介しましょう。カッシャイ・ラヨッシュ氏は騎乗から矢を放つ「ホースバック・アーチェリー」をハンガリーの伝統にのっとり体系化しマーシャルアーツ(武術)にまで高めた人物です。その高い技術は折り紙つきで1分間に精確に矢を的に射た回数はギネスブックにも記録されているほどです。現在は国内外に信奉者が増え、国際的な組織に育っています。カッシャイ氏はハンガリーの騎馬民族としての誇りを形にして次の世代につなげたいと日々鍛練しているのです。

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【訓練中のカッシャイ・ラヨッシュ氏。鞍無しの裸馬に乗っている。】


 社会主義下にあった東欧では西側の華やかさとは違いますが、途切れることなく馬との関わりを持ち続け、これが独自の馬文化を生み出しています。これまでお伝えしてきたようにヨーロッパには人と馬の長い長い関わりによって生み出されてきた独自の文化があります。その一端でも皆様にお伝えでき、少しでも興味を持っていただけましたら、これに勝ることはありません。エコ流行りの昨今、究極のエコとして人と馬との関係をもう一度見つめ直し、ぜひ一度馬に会いに行ってみてください。


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【スィルヴァーシュヴァーラド国立ホースファームではリピッツアーナ種を育成している。】
ALL Photos by Yasuo Konishi

      ***
        
この度、4回にわたり乗馬の素晴らしさや
文化にふれ、益々馬への魅力が高まったのではないでしょうか?
私自身も馬は大好きなのですが、改めて各国の乗馬文化を
知ることができ、海外旅行の際の楽しみが増えそうです。
久しぶりに馬を見に、足をのばしてみようかと思います。
都内でも、馬事公苑や代々木公園など馬がいるところは
何箇所かありますので、皆様もリフレッシュに訪れられては
いかがでしょうか?

皆様のお役にたっていただければ幸いです。
どうもありがとうございました。

「エクウス」編集長 原口 啓一さん vol3 フランス流儀の乗馬ライフ

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2011年1月11日

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Photo by Ryusuke Hayashi
【エリートライダー、カドル・ノワールの名演技。フランス古典馬術のお手本とも言える、華麗な演技は必見。】

 第3回はフランス流儀の乗馬ライフ。馬にゆかりのある街は、フランスにもたくさんあります。その中でも夏のドーヴィルは特に馬との関わりあいが深い街といえます。
 多くのセレブが集まってくるこの街は、ナポレオン3世の親類にあたるモルニィ公爵によって、社交を楽しむために開発されたといわれます。別荘や競馬場、カジノや高級ホテルなど、バカンスを満喫するに十分な施設が充実しているのも街の魅力のひとつ。フランスの別荘所有者の大半がこのドーヴィルに構えるほど、富裕層のパリジャンに愛されているのも「社交」というコンセプトで造られた街だからです。パリの社交界がそのまま移ってきたようなその趣きには、ココ・シャネルも注目し、この地に開いたブティックで成功の糸口を掴んだことも知られています。


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Photo by Manabu Matsunaga
【フランスでも人気の高い、リゾート地、ドーヴィルでは豪奢なカジノも賑わいを見せる。】


 夏のバカンスシーズンになれば、フランス国内で開催されるレースの中でも重要なレースがおこなわれる、ラ・トゥーク競馬場と、クレール・フォンテーヌ競馬場が華やいだ雰囲気に包まれます。

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Photo by Manabu Matsunaga
【ラ・トゥーク競馬場で開催されたエルメス杯のレース。】


 レースはもちろんのこと、ポロ大会など競技も盛んですが、クレール・フォンテーヌ競馬場は特に作りも華やかで、競馬場全体がテーマ・パークのようになっており、一家で楽しめるのが特徴。美食を楽しみたい方には、本格フレンチのレストランで舌鼓を打ち、テラス・カフェではほっと一息つきながらレースを観戦など、リゾート地ならではの競馬の楽しみ方がお勧めです。

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Photo by Manabu Matsunaga
【ポロ競技大会の一幕。ドーヴィルのポロ大会の歴史は約1世紀にわたる。毎年夏には世界最高レベルの試合がおこなわれ、決勝戦は社交の場としても機能している。】


 サラブレッドの競りも、世界中のセレブの熱い視線が注がれるイベントのひとつ。その美しさがノルマンディー地方随一といわれる、現ドーヴィル市所有のストラスブルジェール邸では400名あまりが招待されて開催されるレセプション・ランチが恒例となっており、競りの参加者たちの旧友、交友が深められ、いっそう華やいだ雰囲気に包まれます。

 もうひとつの馬にゆかりのある町としては、ソミュールが挙げられるでしょう。フランス古典馬術の伝統を誇る、国立馬術アカデミーを有する馬の町です。ユネスコの世界遺産に登録されるロワール河岸の小さな町ながら、誇り高きフランス乗馬の香りが漂っています。

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Photo by Ryusuke Hayashi
【ソミュールの町のシンボル、ソミュール城を臨む町の夕景。】


 馬術アカデミーの騎手たちはカドル・ノワール(黒の制服の意)と呼ばれ、フランスのみならず世界中の馬術家の憧れの存在。洗練された制服に身を包み、伝統の証人として世界各国で活躍するフランスが誇るエリートライダーでもあります。

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Photo by Ryusuke Hayashi
【カドル・ノワールの指導員。厳格な雰囲気かつ、馬に対する真摯な姿勢が彼らの特長ともいえる。】

 アカデミーは19世紀中ごろに軍備の強化に伴って設立されましたが、さすがフランス。ただ強いだけの軍隊ではなく、騎手にも馬にも見た目の美しさが要求されたといいます。セル フランセという馬の品種もここから誕生しました。また、カドル・ノワール独特のパフォーマンスに、机やいすなどを馬で超えるシーンがあります。それは練習の合間の余興から始まったとされますが、これも馬術を楽しもうという騎手たちの遊び心から生み出されました。彼らは、一流ライダーとしての技術と、誇り高き精神に裏打ちされた品格など、フランス流乗馬の理想型を体現した存在ともいえるでしょう。


 さて、パリでも乗馬は盛んです。バカンスに重きを置くフランスの人々にとっては、パリで日ごろは活動するも、週末はパリ市内から程近い郊外に居を構えてゆったりと過ごすライフ・スタイルが理想的とされます。パリ16区に自宅をもつ、とあるマダムはパリでご主人と会社を経営しつつ市内から車で2時間ほどの場所に別荘を構えており、馬にとってストレスのない場所ということもあって、この地に決めたといいます。交友関係の広いご夫婦ゆえ日ごろからパーティーに招かれることが多いのも事実。しかし、金曜の夜にはパリでのパーティーを終えてから車を走らせ、別荘へ向かうこともしばしばといいます。

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Photo by Manabu Matsunaga
【もとは、狩人の屋敷だったという別荘。】


特に愛娘と楽しむ乗馬は至福のひと時で、娘さんは全国規模の馬術大会にも参加し、好成績を残すほどの腕前ですが、それは結果的にそうなったということで、マダムともども、競技者として活躍することは考えていないとのことです。ただ、馬が好きで、楽しみたいから、純粋に楽しいから乗っている――。ストレスのない自然に囲まれた環境で、自由気ままな乗馬ライフを満喫しているといったところでしょうか。
洗練されたフランス流乗馬は、「自由と遊び心」がキーワードといえそうです。


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Photo by Manabu Matsunaga
【別荘の庭で、馬を調教中。パリと郊外に居を構えるフランスマダム、パオラ・アリゴニさんの愛娘は、週末の乗馬の時間を心待ちにしているとか。】

「エクウス」編集長 原口 啓一さん vol2 華麗なるイギリス流乗馬ライフ

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年12月18日

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 第2回目は、英国乗馬にスポットを当ててみましょう。イギリスでは、伝統ある『HORSE&HOUND』にはじまり、本誌で提携している、イギリス国内売り上げNO.1の『HORSE&RIDER』など数十種類にわたる乗馬雑誌が発行されています。それだけでも、イギリスでいかに乗馬に関する関心が高いのかが窺えます。イギリス国内の乗馬人口は300万人といわれ、日本では7万人ほどといわれていますので、その数は約43倍にもなります。乗馬雑誌をのぞいてみると、自馬をもっていることが前提として展開される記事で誌面は構成されています。日常の乗馬で遭遇するさまざまな事例を想定した、いわゆるかゆいところに手が届く、記事や、競技者向けの騎乗テクニック、馬の病気に関わる対処法まで実にさまざまなのです。たとえば、森林での外乗の際、水溜りに遭遇したときにどうするのか……? といった細部にわたるシチュエーションを想定した記事などは日本人からすると新鮮な印象もあります。


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【ニューマーケットのせり場にある厩舎。約700頭入る。】


 さて、かのサラブレッドを生み出したのは、英国王室のヘンリー8世です。競馬会の聖地ともされるニューマーケットもイギリスにあり、そこには世界トップクラスの厩舎が軒を連ね、中東の王室経営の厩舎もあります。厩舎をもつことも、ある程度の資金を有する調教師にしか成せません。また、世界中の王室や富裕層を相手に仕事をする調教師のアシスタントもそれなりのマナーを身につけ、幼いころから馬に親しんでいる名家のご子息が多いと言われます。馬に関わる世界は、上流社会が深く関わっているのもイギリスならではの文化といえるでしょう。また、通常のビジネスに飽きてしまった人が、サラブレッドビジネスに魅了される話をよく耳にします。それも、よい血統の馬の子供が名馬になるとも限りません。そのスリルややりがい、いい馬を生み出す喜びや楽しみがあるのも魅力のようです。ヴィクトリア女王も大の乗馬好きとして知られますが、馬産を手がけるなど、その喜びを知ったうちの一人といえるでしょう。王室が深く関わる馬の世界ですが、第3回ヴーヴクリコ・ポロ・クラシックでもヘンリー王子が選手として活躍して話題になるなど、国内外の大会で王室の面々が積極的に参加することも珍しくありません。英国貴族のたしなみとして、もっとも優位にあるのがハンティング、その次がポロと言われます。そして、次が乗馬という位置づけになるわけですが、前回のご挨拶で申し上げたとおり、国力を反映する「馬」の存在は英国王室にとっては必要な存在と言わざるを得ませんでした。よって、いい馬を王室が保持するのは当然のこと、その結果として貴族は日常の中で馬を操っていたのです。乗馬というとノーブルな気品が漂うのは、貴族と切っても切れない関係にあるからともいえるでしょう。余談になりますが、ヒースロー空港近郊に位置するドーチェスターグループ系列のラグジュアリーホテルでは、真っ先にアクティビティ用にポロ専用の競技場を敷地内に設計したといわれます。世界中のVIPを魅了するホテル経営を展開する同グループが、威信をかけるホテルだけに、その競技場にも力を入れているのかもしれません。
 


 さて、カントリーサイドにも目を転じてみましょう。国の保護指定を受けた美しい町並みが国際的にも有名なコッツウォルズという田舎町は、イギリスの富裕層の間でも憧れとされる地です。15世紀あたりに建設された、重厚な石造りの建物を購入し、ロンドンのシティとあわせてコッツウォルズにも居を構える生活は理想のライフスタイルとされています。『EQUUS 8月号』のイギリス特集で取材したとある女性は、まさにその生活を満喫するマダムの一人。彼女は、アメリカのボストン出身ですが、小さいころから乗馬を嗜み、結婚を機にイギリスへ。乗馬の本場に移ったことで、コッツウォルズを選択したといいます。


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【ウィークデイはロンドン、ウィークエンドはコッツウォルズと、Town&Countryを地でいくスーザン・シンガーさん。】


近郊の町では、馬術大会が頻繁に開かれ、馬術の国家代表選手でもあるオリンピックメダリストを指導者として乗馬の腕を磨くことも夢ではない環境です。現在も、週の半分をロンドン、半分をコッツォルズで生活しながら愛馬との乗馬ライフを楽しんでいます。


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【スーザンさんの持ち馬。この馬は2012年のロンドンオリンピックに出場するかもしれないという。】


 シティ、ロンドンの中心地でも馬は身近な存在です。ミューズと呼ばれる、アヴェニューやストリートと並ぶ通りは、その昔、厩があった場所。車が普及する前の移動手段は馬が主流ですので、馬を留めておく厩が必要となりました。目抜き通りから一歩奥に入り、パティオのような敷地を囲むようにフラットが並ぶ、その場所がミューズです。物価の高いロンドンでも、このレトロな物件がアーティストを中心に注目を集めていると言われます。さて、車が普及し、ロンドン名物である「ブラックキャブ」が町の交通手段として使われるようになりましたが、このタクシーに王室からお触れが出されます。「車には馬用の藁を積むためのスペースを必ず確保しなければならない」というもの。よって、後部が広いあの形が誕生したとされます。馬を単なる交通手段としてだけ考えていなかった、王室の誇り高きエピソードといえるでしょう。


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【ハイドパークにある乗馬クラブ。子どもたちはポニーに乗っておおはしゃぎ。】

ALL Photos by NAOKI

「エクウス」編集長 原口 啓一さん Vol.01 ヨーロッパ文化の精華としての乗馬

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年12月01日

はじめまして。
このたびご縁をいただいてこのアーネストコラムに拙文を掲載させていただくことになりました乗馬マガジン「エクウス」の原口と申します。
せっかくいただいた機会ですから、ここでは「乗馬」という趣味を持つことからはじまる心地よいライフスタイルについて、世界の乗馬事情などを交えながらご紹介させていただきたいと思います。


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EQUUS 2009年10月号

 さて皆さん、「乗馬」と聞いていったい何を思い浮かべられるでしょうか?
「馬に乗ることだろ」ということは誰でもが承知していますが、では「馬に乗る」として、その先何をするのかということになると、その世界をきちんと把握されている方は意外と少ないのではないでしょうか。
 あれほど世界中が沸き立つオリンピックにおいても、馬術競技となると我が国ではほとんど実況中継されることもありません。年間で乗馬を体験される方の数は100万人ともいわれていますが、趣味として乗馬を繰り返し楽しんでいるのは10万人前後のようです。現状ではまだまだマイナースポーツの域にあるといわざるを得ないのが日本の乗馬環境です。


 しかしながら、ヨーロッパへと目を転じてみると乗馬の環境は一変します。
シーズンともなるとその多くの国で毎週のようにさまざまな規模の馬術競技会が開催され、ホースショーと呼ばれる大きな大会になると、時計の“ロレックス”などの世界の一流企業がスポンサードし、その模様はヨーロッパ中にテレビ配信されています。
そして観覧席に設けられたVIPエリアには糊のきいた白いテーブルクロスに縁取られたディナーテーブルが用意され、シャンパンや豪華な食事を楽しみながら観戦しているVIPも多く見受けられるのもヨーロッパならではの競技会風景でしょう。

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EQUUS 2009年10月号「シャンティイ」より


 またかつて馬が、その国の国力を象徴するものであった時代の名残でしょうか、多くの国には国立の乗馬学校があり、より強い馬を生み出すための国立の研究機関、あるいは国が支援する機関が設立されています。強く逞しい馬と巧みな馬の操り手を持つことは、現在においてもその国の人々にとって大きな誇りとなっているのです。ですから、王室のある国ではロイヤルファミリーと呼ばれる人々は例外なく皆巧みに馬を操りますし、中には国を代表してオリンピックの馬術競技に出場するほどの人もいます。何が言いたいのかと申しますと、少々大袈裟な云い方になりますが「馬」に関すること、とりわけ優秀な騎馬文化のノウハウを持っているかどうかということにはそれぞれの国の威信がかかっているのです。ですからヨーロッパの人々は強い馬、巧みな乗り手には、相当な敬意を払っています。馬具工房からスタートしたエルメスをはじめ、皮革業として起業し、その一環で馬具や馬車用のトランクなどを手掛けていたヨーロッパの一流老舗ブランドが、誇りを持ってそのルーツが馬具関連の事業であるあることを今日まで大切に受け継ぎ、あるいは現在でも馬術選手や競技会のスポンサーとしてサポートしているのは、ヨーロッパの人々の馬文化へのリスペクトを考えると当然のブランド戦略ともいえるでしょう。

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EQUUS 2009年10月号「スコットランド」より

 まあ、日本とヨーロッパの乗馬事情の比較はこのくらいにして、話を現在の日本の乗馬環境へと戻します。日本で乗馬を楽しんでいる方の7割強は女性です。その背景の一つには、格式を持って育まれてきたヨーロッパの由緒ある乗馬文化への憧れが多少なりとも後押ししていると思います。そうなんです。つまり乗馬という趣味にはヨーロッパのエレガンスに通じる、ノーブルで芳しい香りが色濃く漂っているのです。


 馬は「大きく」「強く」「逞しく」「繊細」で「優しい」動物です。人との距離感の取り方は、犬や猫などのペットとはまったく別物です。そして何より優れているのは、人と心で対話のできる動物だということです。人がイライラしたまま馬に近づくと馬は警戒しますし、どんな状況でも人が落ち着いて対処していれば馬も安心してその人に心を委ねます。つまり人の心のあり方次第で、馬の反応は大きく変わるということです。周囲に対して思いやりと寛容と謙虚の心、すなわちノーブルな心を持って接すると、彼らはパートナーとして最高の力を発揮してくれるのです。このようなコミュニケーションができる動物は、馬をおいて他には考えられないのではないでしょうか。乗馬は子供から大人まで何歳からでも始められますし、競技においても、年齢や性別による区別はまったくありません。その大きな理由の一つが体力や技術ではなく心と心の交流によって生まれるパートナーシップに乗馬の醍醐味があるからでしょう。このコミュニケーションの円滑さを促進させるのが日頃の練習を通して磨きをかける技術ということになるのです。
 さて弊誌「エクウス」では毎号、旅という形で世界中のさまざまな乗馬文化を紹介しています。その目的は、なんといっても一人でも多くの乗馬愛好家を増やすことです。旅好きの方はたくさんいらっしゃると思いますが、行き慣れた旅も、そこに「+乗馬」というテーマが入るとまったく別の風景と楽しみが広がりはじめます。ヨーロッパだけではなく世界中のほとんどの国で乗馬は楽しめますし、地域ごとに馬と人の接し方も密度も変わります。その違いを楽しみながら馬に触れる旅は、旅の楽しみを何倍にも拡げてくれるはずです。そしてそれは日々の暮らしの中でもいえること。乗馬という趣味を一つ持つだけで、いつものウィークエンドが大きく変わります。健康的でエコロジカルで、四季の変化や人との触れあいにまでこまやかな心配りが生まれる週末。郊外へ馬に乗りに行く、それだけのことで日々の暮らしの中で大切にしたいものへの意識も変わってきます。

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EQUUS 2009年8月号「ハワイ特集」より


 乗馬を通して新たな快適&上質ライフを提案する、それが「エクウス」の役割と考えておりますが、乗馬に興味を持っていただいたとしても、実際に馬に触れ乗ってみないと、その本当の魅力は伝わりません。ですから「エクウス」では、現在約60の全国の優良乗馬クラブと提携し、乗馬誌「エクウス」を定期購読いただいている方で実際に乗馬を希望される方をプレミアム・ライディング・クラブ「エクウス」の会員に登録させていただいております。会員登録されますと、加盟クラブの中から個々の会員にふさわしいクラブのご紹介や実際の騎乗予約をはじめ乗馬に関するさまざまなお問い合わせに対応する乗馬コンシェルジュ・サービスを提供いたしております。


 まずは乗馬に興味を持っていただくこと。そして実際に馬の乗ってみたいと思っていただくこと。そのためにここでは、これまで「エクウス」が取材した世界の乗馬事情の中から特に素晴らしい乗馬ライフを送っているエリアを厳選し、それぞれどのようなライフスタイルの中で乗馬を楽しんでいるのか、その多彩な楽しみ方をご紹介していきたいと思います。それらの中から、実際にご自分が乗馬を楽しんでいるイメージを投影できるシーンが見いだせたら幸いです。なぜって、そこまで具体的なイメージが描き出せたら、もう馬に乗ってみるしかありませんから。


「エクウス」編集長 原口 啓一さん

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年12月01日

アーネストコラム「洒洒落落」は各分野で
ご活躍の方々がそれぞれの視点で自由に
テーマを設定し寄稿いただきご紹介させて
いただく連載コラムです。


8人目はプレミアム・ライディング・マガジン「エクウス」
編集長 原口 啓一さん
から
寄稿いただいたコラムをvol.1〜vol.4の
計4回にわたりご紹介させていただきます。

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プレミアム・ライディング・マガジン「エクウス」
編集長 原口 啓一さん


Profile
雑誌好きが高じて、文化出版局に就職。
「ミセス」や「ハイファッション」そして「Mr. High Fashion」などの
編集部に所属し、女性誌、ファッション誌、男性誌の編集を学ぶ。
1989年に独立し、編集制作会社「(株)ドゥ・アッシュ」設立。
大手出版社の女性誌を中心に編集業務の受託制作を手掛ける一方、アシェット社刊の「ELLE Japon」編集長、中央公論社刊の「マリークレール ジャポン」編集ディレクターなどを努める。
2003年に自社出版も視野に入れた制作営業会社「(株)テラミックス」を設立。
雑誌の終焉、出版不況といわれる時代の新たな出版ビジネスにもチャレンジ。
ライフスタイル提案型の新・乗馬誌「エクウス」は、
これからの出版ビジネスに対する一つの提案として創刊したもの。
今いちばんはまっている趣味は、ヨット。
ヨットハーバーまで馬でいって、ヨットで遊んで、馬で帰る──、
これがいつか実現してみたい、週末の理想型。


プレミアム・ライディング・マガジン「エクウス」WEBサイト
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http://www.equus.co.jp/
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重慶飯店 李 楊秀瑛さん vol.4 春節について

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年11月05日

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“春節”とは、中国のお正月にあたります。
中国では今でもお正月は旧暦でお祝い致
します。ちなみに2011年の春節は2月3日
です。
                  
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春節は日本の元日にあたり、中国では
その前日の大晦日が大変重要になります。
大晦日には魔よけや縁起担ぎのために門に
赤い春聯(縁起の良い対句を書き、家の入り
口などに貼る紙)や逆福、切り紙を貼り、部屋
やベランダに赤いちょうちんを吊るします。
中国では赤色が繁栄を表しおめでたい色と
されているので色々な場面で利用されます。
また、お正月には必ず新品の赤色の服をど
こかに身に付けるのです。
                
春節03.jpg
                  
大晦日には必ず一家そろってする食事を
団円飯といいメーニューは、地域で異なり
ますがお魚料理は絶対に作ります。
食事前に爆竹をならします。これは魔よけ
の一種で、昔鬼がパチパチいう音でにげた
ということからおこなわれています。
           
そして、夜の12時前に、年越し餃子を
食べます。
             
春節04.jpg
            
これは、日本の年越しそばにあたります。
なぜ、餃子?
餃子の発音が交子(子を授かる)と同じで
あることや、清代の銀子の形に似ているこ
とで縁起の良い食べ物として珍重され、ま
た“交”には「続く、末永し」という意味もあ
り、春節に長寿を願い食され、大晦日には
年越し餃子(更歳餃子)を食べる。これは
元来北部の習慣で、地域によって南部など
では餅(年糕)を食べます。
       
餃子を食べる前に子供たちはおじいちゃん
おばあちゃん、おじさん、おばさんに新年の
挨拶をし、お年玉(圧歳銭)をもらいます。
              
春節05.jpg
            
翌日元旦の朝には、新しい衣服を着て親戚
や友人宅に新年の挨拶回りをはじめます。

新年快楽、恭喜発財
               
今年は中国式お正月を体験してみては
いかがでしょうか?
          
      ***
        
この度、4回にわたり中国のちょっとした歴史
や食にふれ、私自身もう一度ふりかえって習
慣を顧みることができました。毎日忙しく過ご
してしまい、大事な習慣に気づかずにいました。
いろいろ調べたり、聞いているうちに本当に中
国は言葉の陰陽や音を大事にするんだなとつ
くづく思い知らされました。

皆様にもお役にたっていただければ幸いです。
ありがとうございました。


vol.1 中秋節について
vol.2 上海蟹について
vol.3 嫁入り籠について

李 楊秀瑛さんプロフィール

重慶飯店 李 楊秀瑛さん vol.3 嫁入り籠について

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年10月19日

vol.3.jpg

中国の骨董家具を見に出かけると、よくみかける
チャイニーズアンティーク籠。
これ、何のために使うものかご存知ですか?
        
私も知らなく、一つで購入していたのですが
これは一対(二つ)で持つものなのです。
        
その由来は嫁入り道具のひとつだったのです。
          
嫁いでいく娘のために母親の手料理をいれる
ものなのです。
一つは娘に。もう一つは婿にと。
しばらく実家の手料理が食べられなくなるため
母親がもたせるための籠だったのです。
          
籠の形は丸いのが一般的ですが、柄、素材も
いろいろ。でもそのなかでも共通している点は
子孫繁栄、家内安全、万事如意など一家の
平安を願うものばかりなのです。
縁起のいい花、言葉、絵柄がかかれているの
です。
        
もし機会があれば注意してみてください。
とてもおもしろい発見をすることでしょう。
         
余談になりますが、中国のその当時の婚礼は
3日3晩続き、花嫁は相手がどういう顔なのか
も知らなく、花嫁衣裳を着て、顔に赤い布をつけ
籠にのって相手の家に嫁いで行く。
そして、寝室で花婿が来るのを待ち、布をとっ
てもらいそこではじめて相手と出会うのです。
本当にミステリーというか、今では考えられない
風習ですよね。
           
vol.3_2.jpg
            
          
vol.1 中秋節について
vol.2 上海蟹について
李 楊秀瑛さんプロフィール

重慶飯店 李 楊秀瑛さん vol.2 上海蟹について

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年9月28日

上海蟹.jpg
            
10月、11月。いよいよ上海蟹の季節到来ですね。
皆様のまわりでも今年はいつ食べようか?と計画
をしはじめるのではないでしょうか。
私はむくのがめんどくさいので、蟹味噌とて食べや
すいところだけいただければもう満足なのですが
蟹好きな人にとってはあの細い足の部分をむいて
いるときでさえニコニコしています。
蟹を食べるときは、本当に静かになり真剣にむいて
いるので本当におもしろいです。

蘇州近郊の陽澄湖や無錫太湖で採れるこの上海蟹。
でも、“上海蟹”というこの名称、実は日本でしか通用
しません。
地元中国では“大閘蟹”(ダージャーシエ dàzháxiè
上海語 ドゥザッハ)

上海蟹01.jpg
陽澄湖産を証明するシリアルナンバー
入りの上海蟹


この上海蟹シーズンは“九雌十雄”旧暦の9月の雌、
10月の雄ということばがあるように、お腹にたっぷり
卵を抱く10月の雌と、ねっとりとした白子が美味しい
11月の雄は格別!!!

では、上海蟹はなぜ秋なのでしょうか?
それは夏に盛んにうごいた蟹が、北からのシベリア風
の寒さにより急に動かなくなるため、蟹味噌や肉が一
気に蓄積されるからです。

食べ方としては「蒸蟹」が一般的。生きた蟹をタコ糸で
しっかりと結びシソの葉を敷いたセイロで一気に蒸し上
げ、鎮江産の黒醋と生姜のきざみで食べます。
鎮江産の黒酢は墨のように黒く、味はすっぱさの中に
どこか苦みも感じさせ、この苦みがカニを食べた後の口
の中に残るあのふんわりとしたうまみを出すのです。
生姜のきざみは、カニの生臭さを消す作用があります。

中華料理には「陰と陽」があり、この上海蟹(陰)と生姜
(陽)の関係もそれで、上海蟹を食べると体温が低下す
るので、そこで調味料の中に生姜を加え体温の低下を
防いでいるのです。

また甲羅に少し紹興酒を入れいただくという方法もあり
ます。紹興酒の甘みとミソの深い味わいがいつまでも
口に残ります。

そして食べた後には龍井茶(杭州を産地とする緑茶)で
手のニオイを落とします。タオルや石鹸ではなかなか落
ちない蟹の生臭さが簡単にとれてしまいます。

皆様も今年の上海蟹挑戦してみてください。

(私ども重慶飯店麻布賓館では10月19日より
上海蟹コースをご用意しておりますので
是非いらしてください。
重慶飯店 麻布賓館
東京都港区西麻布3-2-34 西麻布ヒルズ1F
03-5771-3680)
上海蟹02.jpg

vol.1 中秋節について
李 楊秀瑛さんプロフィール

重慶飯店 李 楊秀瑛さん vol.1 中秋節について

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年9月19日

月餅.jpg
直径90cmの大月餅
            
中秋節は旧暦の8月15日、秋の真ん中
にあたるので中秋といいます。
中秋節は春節に次ぐ中国の伝統的な節
目の日です。中秋節の風習はさまざまで
すが、親しい人が集まって、円満な生活
を望む日でもあるのです。
また、中国ではこの日は嫁いだ娘が年2
回生家に正々堂々ともどれるうちの1回
でもあるのです。
中国では家族円満は大事なことであり、
その時に口にする食べ物にも縁起をかつ
ぎます。
       
“月”にみたてたお菓子が“月餅”で、日本
の中華街では人気のお土産として一年中
売られていますが、本来は中秋の名月を
楽しむ伝統的な季節のお菓子なのです。
今でも中秋節を楽しむ文化は大切にされ、
国民の休日にもなっており、月餅を仲の良
い友人やお世話になったひと、遠く離れて
いる家族などに贈ります。
            
食事のあと、庭先にテーブルをだしてその
上にお菓子(月餅)と果物を用意し、月を
ながめながら家族団欒の時をもつのです。
          
「中秋節」は、日本のお月見と同じなんで
すが、違うところは用意するものが違うと
ころです。
日本では・・・白玉のお団子とススキ
中国では・・・月餅と果物
               
でも意外なところに共通点があります。
何だと思いますか?
            
お月様にうつる“ウサギ”です。
お月様があまりにもきれいなので、
お姫様がウサギを一緒に連れて天に
のぼってしまったという説があるのです。
              
重慶飯店では毎年中秋節限定のアヒルの
塩卵入り月餅を販売します。この月餅には
ファンが多く、いつもこの時期心待ちにして
おられます。
               
月餅1.jpg
アヒルの塩卵入り月餅
                   
また、重慶飯店の恒例行事として、横浜
中華街にあるローズホテル横浜と重慶飯
店別館に巨大月餅を展示し、中秋節のそ
の日にお客様に召し上がっていただける
ように切り分けられます。
この日のイベントが年々お客様と地域の
方々に知れわたり、今では300名以上の
かたがたが並ばれております。
                  
月餅3.jpg
大月餅の切り分けイベント
               
今年の中秋節は9月22日です。
11時30分より切り分けられますので
もし、ご興味がおられれば、是非参加
してください。
                   
ローズホテル横浜
http://www.loonmoongroup.com
                 
李 楊秀瑛さんプロフィール


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アーネストコラム「洒洒落落」 重慶飯店 李 楊秀瑛さん

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年9月19日

李楊秀瑛さん.jpg
               
アーネストコラム「洒洒落落」は各分野で
ご活躍の方々がそれぞれの視点で自由に
テーマを設定し寄稿いただきご紹介させて
いただく連載コラムです。

7人目は李 楊秀瑛さんです。
李 楊秀瑛(リ シュウイン)さんは約10年前、ア
ーネストで建てたご自宅でフラワーアレンジメント
などのお教室「Hsiuying Design」を主宰されてお
ります。プロのアーティストとして、ホテルのインテ
リアコーディネート、 ショウルームディスプレーな
ど様々なご活躍をされております。
               
李楊秀瑛さんアトリエ3.jpg
李さんのデザインされた作品。
                
李楊秀瑛さんアトリエ.jpg
2001年3月に竣工したご自宅。
元々はゲストルームとして計画されたスペースを
急遽設計を変更したアトリエ。教室はこちらで行っ
ております。

             
李楊秀瑛さんご自宅.jpg
ご自宅パティオ。
李さんのセンスが随所に感じられ
10年経っても楽しく素敵に住まわ
れており、嬉しく感じました。

               
ご主人は横浜中華街「重慶飯店」、併設する「ローズ
ホテル横浜
」を経営されており、オーナー夫人の李
楊秀瑛さんはそれぞれの内装、インテリアコーディネ
ートを全て担当されております。
             
重慶飯店_麻布賓館.jpg
ご自宅近くの東京第一号店となる「重慶飯店
麻布賓館
」。店内は落ち着いた空間で
インテリアに中国の雰囲気を残しながら全体
的 に上品でモダンな印象。

               
先日ご主人との結婚25周年のウエディングパーティ
ーをされたそうで、カラードレスをご自身で作られ、テ
ーブルアレンジ、お土産のお皿デザインなど、全てが
手作りの「大人の結婚式」を挙げらていました。
                
李楊秀瑛さん25th.jpg
ウエディングパーティーの写真集。
会場は山手へレン記念教会に隣接する李さ
んの横浜のご自宅ローズレジデンス。現在は
ハウスウェディングとして使われています。

               
‘いくつになっても自分磨き’とおっしゃるように
社長夫人として、3人のお子様の母親として多忙の
毎日の中、更なる勉強をと最近は書道を本格的に
習われているそうです。
               
いつお会いしてもキラキラと輝いておられる李さん。
今回の寄稿では在日3世でおられる李さんから
中国文化のご紹介です。ガイドブックなどには載
っていないような、貴重な小話が聞けるのではな
いでしょうか。
       
        
Profile
楊 秀瑛(ヤン シュウイン)

「古流松壽会」「ムサ・フラワーコーディネータースク
ール」デザインコースを経て、「デ・マスターフラワー
スクール」マスターコース卒業。ホテルやレストラン
の装花・内装インテリア・テーブルコーディネート、テ
レビ番組のクリスマスディスプレイ、ウエディングを
手掛ける。
さまざまな花材と布地を駆使して“シュウイン スタイル”
を打ち出す。その独創性はフラワーアレンジメントにと
どまらず、鏡、額、シャンデリア等の制作、食器デザイ
ンに及ぶ。

hsuiyingrogo.jpg


vol.1 中秋節についてhttp://earnest-blog.jp/past/2010/09/_vol1.html

vol.2 上海蟹についてhttp://earnest-blog.jp/past/2010/09/_vol2.html

vol.3 嫁入り籠についてhttp://earnest-blog.jp/past/2010/10/_vol3_1.html

vol.4 春節についてhttp://earnest-blog.jp/past/2010/11/_vol4.html

TOTO株式会社 コミュニケーション推進部 佐藤 仁美さんvol.4 熱くて魅力的な人々 −情熱の炎を絶やさずに− 

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年9月16日

日中の気温はなかなか下がりませんが、信州は秋。
コスモスはもう終わり。高くなった秋空に向かって
すすきの穂が陽の光を受けて鈍く輝き始めています。
            
4-001.jpg
          
年齢も、住んでいるところもばらばらな車仲間
の友人たちとランチの待ち合わせをしたのは
農園とワイナリーがある「ヴィラデスト・カフェ」。
軽井沢から浅間山を右手に見ながら、小諸方
面へ車で小一時間ほどドライブすると到着い
たします。テーブルの配置は少々窮屈ですが
窓外に広がる景色を楽しみながらの週末ラン
チだったらきっと気になりません。
             
4-002.jpg
              
この地に農園ができて10年、そこにワイナリー
が開設されて6年だとのこと。やはり、なにごと
かをなしとげるための情熱は、深ければ深い
ほど、熱ければ熱いほど、その実りある結果が
人々に響くことが証明されていることを目の当た
りにしてきました。
          
           
担当した連載の最終回です。
仕事をしているといろいろな出会いがあります。
ひとつひとつ、いずれの出会いも大切なのですが、
才能に甘んじることなく、熱い情熱をもって“こと”と
あたる人と出会ったときにはことさら嬉しくわくわく
します。そんな熱くて魅力的な人をおふたりほど
引用して、コミュニケーションという仕事のひとつの
側面をご紹介しながら、次のかたにブログをお渡し
したいと思います。
           
            
中村洋基さん
            
中村洋基(なかむら・ひろき)さんは電通の売れっ子
クリエイティブ・ディレクター。足利学校で名高い栃木
の足利出身。Webを中心とした広告クリエイティブの
鬼才です。
            
4-003.jpg
          
制作担当いただいているプロジェクトは、TOTOの
コーポレートコミュニケーション(企業広告)
「TOTO TALK web」です。
         
創業者大倉和親(おおくら・かずちか)の「わが国
における厨房・浴室・便所等衛生上の設備は欧米
諸国に劣り、これに要する内地製陶器類もまた不
完全にして、過去において輸入品を防遏(ぼうあ
つ)出来なかったことを深く遺憾とする」という熱き
想いを形にして、1917年にTOTO(当時は東洋陶
器株式会社)は生まれました。
下水道がいまだ整備されていず、衛生陶器のな
にものかも理解されない時代に水洗便器をつくり、
衛生思想の普及と環境衛生の重要性を啓蒙する
ことから始めた業も93年が経ちました。
すでに世の中には、生まれたときから洋式トイレ、
ウォシュレットがあたりまえの世代が成人してお
いでです。この次世代を担う若いかたがたに、
TOTOがどんな会社であるのか、どのような志を
もって日本の水まわりの生活文化水準を現在の
位置に引き上げてきたのか、そしてさらに現代に
おいても粛々とその使命を全うすべく活動を続け
ていることをぜひ知っていただきたいと、現社長
の張本邦雄(はりもと・くにお)は願っているので
すが。
そのミッションを負い、「TOTO TALK web」は、イ
ンターネット世代の若いかたがたにまずは“ふり
むいていただこう”と、第一弾をスタートしました。

tototalk.jpg

TOTO TALK すごいトイレ作っちゃった.jpg


「TOTO TALK」は、webだけでなくTVCMもあります。
TVCMをディレクションいただいたのは広告業界の
トップクリエイター澤本嘉光氏。その澤本氏から、web
チームの候補として名前を告げられたとき、中村さん
はようやく20代に別れを告げたころだったでしょうか。
澤本氏が「若いけどとにかくweb界ではすごい」と太鼓
判を押しながら、「知ったかぶるとひどい目に遭いますよ
・・・」とシニカルに口元を歪めて、謎めいた言葉を残した
のが実に印象的。不安半分、否が応でも期待感が高
まりました。
         
中村洋基さんに初めてお会いしたときの第一印象は
非地球人(いい意味ですし、褒め言葉です)。そこに
いてそこにいないような無機質な表情をもち、口数少
ないかわりに、ときどきその切れ長の目から彼の脳内
のなんらかのシグナルが電波になって発せられるよう
な独特の雰囲気をもつ青年でした。
            
4-004.jpg
          
私はアナログからデジタルに世の中が変わろうとして
いたはざまの世代に属しています。作り込みが必要な
プロジェクトでは、制作チームのメンバーが、どういう感
性をもち、どのような感情発現をし、情熱があるかどう
か、じかに確認できないと安心できないタイプです。 
であるにも関わらず、なかなか中村さんとの対話が対
話になりません。熱いのか?熱くないのか?情熱があ
るのか?ないのか?なにひとつ実態をつかめないまま
透明なシールド越しに相対しているかのようなもどかし
さに焦りと苛立ちを感じながら、プロジェクトはスタート
してしまいました。
          
リアルな人物の実態を見せてもらえないのは、世代格差
によるコミュニケーション方法の違いが原因であれば仕
方ありません。ならばこちらから見にいこうと、中村さん
がネット上に発進している情報をさがしにいくうちに、中村
さんが並々ならない直感力と情熱をもったhotな人である
ことがわかり始めたのは幸いでした。
          
4-005.jpg
         
生来の才能とこれまでの経験に裏付けられた直感力で
「こうだ」と確信した方向性はとことんこだわる。それを実
行するために困難があればひとつひとつつぶしこみ、必
要なことは積み上げていく。その姿勢と“熱さ”はものづ
くりの職人に通ずるところがあり、かつ中村さんが中村さ
んであって、他と一線を画しているのは、駆使する技術
は最先端であっても、必ず人と人とのつながりが感じられ
る人間味が加わる点だと私は思っています。
だからこそ、表現はクリエイティブのプロである中村さん
にお任せし、こちらはそのアイディアが生み出す効果の
確からしさを判断する。あとは凡庸でない表現を実現する
ため、クライアント側としてできる限りのサポートをする、と
いうよい関係性をつくれたのだと思います。
           
TOTO TALK web第一弾は、カンヌの国際広告祭を含む
国内外の広告賞を4つ受賞しただけでなく、公開直後か
ら現在に至るまで、若いかたがたを中心としたTwitterで
700近い好評のつぶやきをつけていただいております。
評価をいただきましたこと、私にとっての今年もっとも嬉し
い出来事のひとつとなりました。
           
           
松嶋啓介さん
           
松嶋啓介(まつしま・けいすけ)さんはすでにご存
じのかたも多いのではないでしょうか。20代でニ
ースに渡ってレストランをオープン。仏ミシュランで
今年で連続5回の一つ星を獲得したフランス料理
の雄です。
生まれは福岡の太宰府。料理人の道に入ろうと思
ったのは小学生のときで、きっかけはお母様にあっ
たそうです。
           
4-006.jpg
           
初志貫徹を成し遂げたばかりでなく、30代前半に
して、「料理人としてはやりたいことのひととおり
はできた」と言い切ることができるほどのありあま
るパワー。今の松嶋さんからは、料理人の枠にお
さまらず、食から文化まで、およそ人が心地よく快
く生活するためのあらゆる領域に関心の網を広げ、
着々と次のアクションのための布石を打っている
様子がうかがわれます。
          
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ほのぼのとした外見とは異なり、松嶋さんの中に
熱い血潮がたぎっていることはその活動領域と
実績を見れば一目瞭然です。
原点のフランス料理店だけでなく、ニースの日本
料理店「saison」、東京のフランス料理店「レストラ
ンI(アイ)
」とビジネスは拡大されました。次はなん
だろう?と問う間もなく、パリ進出のとてもエンター
テインメントな構想を、一見ぶっきらぼうに、でもそ
の実内心では興奮しているに違いない熱心さで語
られてしまうと、松嶋さんの壮大な計画にいつのま
にか巻き込まれて、思わぬ夢の翼を広げてしまう
こともしばしばです。
              
4-008.jpg
          
ご本人は否定するかもしれませんが勉強家。学んで
得たことは、机上で終わらせることはなく、必ず実戦
に応用して有言実行。ねらった的は過たず射抜いて
いくようなそのような印象があります。
             
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自ら「マーケティング力、営業力はNo.1」とおっしゃる
とおりに、自由奔放そうでいて、しっかりとストラテジ
ストだったりするところがまたチャーミングなのですが。
残念なことにご協力いただこうと思った企画はタイミン
グが合わずに実現できなかったのですが、以来、率
直な意見ももらえるようになったことが嬉しい展開です。
           
                
自分の為す業を愛し、強烈な意志をもち、情熱をもって
それを熱く語って周囲を巻き込みながら、真摯に進ん
でいく人々はいつも魅力的に輝いています。
「愛業至誠」。TOTOの社是にもその思いが息づいて
います。
出会った熱くて魅力的な人々に感嘆するばかりでなく
私自身もそのような存在でありたいと願ってやみません。
          
             
back number
vol.1 海のこと、水のこと、エコロジーのこと
vol.2 GT-Rでドライブ
vol.3 お宿「あさば」− 上質であることの義務と責任
profile TOTO株式会社 佐藤仁美さん

TOTO株式会社 コミュニケーション推進部 佐藤 仁美さんvol.3 お宿「あさば」− 上質であることの義務と責任

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年9月05日

修善寺温泉は小さな街です。
            
6年ほど前、町なかのせまい道でのすれ違いで、道脇
のプランターに買ったばかりのドイツ車をこすって以来
私にとっては鬼門同然の町だったのですが・・・。
7月の週末のヨット遊びの帰り道、気まぐれで東京とは
逆方向の電車に乗って訪れて、おっとりと鄙びた町の
風情がとても気になり始めたのです。

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町には3世紀以上続くお宿の「あさば」があります。
ふいにどうしても「あさば」に泊まりたくなり、先週末は
その「あさば」にうかがいました。

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お宿のもてなしには、にぎにぎしいものもありますが
「あさば」で味わうことができるのは、奥ゆかしさだと
思います。空間と時間、お宿の人との距離感、それ
らすべての「間(ま)」が均衡していないと、この奥ゆ
かしさは生まれてきません。その均衡は、惑星がそ
れぞれ太陽の周りを今日も回るような、と言ったらよ
いでしょうか。あるいは、能の囃子の小鼓や大鼓の
音と音の余韻の重なり合い、茶席で茶が点てられる
までに変わっていく釜の音と音のつながりにもたとえ
たい。すべてが“ちょうどよい”とは、本当に心地がよ
いことです。
           
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宿の内には、調度類や装飾や生け花が、ここにあって
ほしいと思う空間に、まるでパズルの答のように、ひと
つひとつおさまっています。
和のもの、洋のもの、トラディショナルなもの、コンテン
ポラリーなもの。宮島達男、Daniel Buren、李 禹煥の
アートピース、Mario Belliniのレンガ色のキャブチェア
やHarry Bertoiaの白のダイヤモンドチェアが置かれる
ことも、気負うことなく必然で、つい忘れがちな、“同時
代的(コンテンポラリー)であること”とはどういうことか
を再認識いたしました。
         
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用意されたお部屋は「藤」。6畳の次の間と8畳の
本間に続いた一段さがった板の間は、せせらぎが
池に流れ込む庭に臨んでいます。
そればかりか、廊下、浴室とも小さな庭に面してい
ましたから、明るく開放的な部屋内からはいろいろ
な時間のいろいろな光を楽しむことができます。
椅子に身を預けて飽きずに庭を眺めることができる
とは、好むと好まざるとに関わらずハイテンポで過ぎ
ていく都会の暮らしにまきこまれている身にはなに
よりの妙薬です。
         
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湯は泉質はアルカリ性単純泉で無色透明。嬉しいことに
「あさば」は源泉かけ流しで塩素は使われていません。
なによりの贅は池に臨んだ野天風呂。朝日も浴びながら
の早朝の湯浴みは、私にとっては至福のときでした。
            
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内湯の「南天」、「卯の花」。ふたつの家族風呂で使われ
ている浴槽はいずれもよく磨かれた高野槇。よい香りに
包まれながら、あふれる湯に伸び伸びと身を浸すことが
できます。(こちらは「卯の花」)
           

        
同じく高野槇の浴槽が使われた藤の間の部屋付の浴室
もよく磨かれた芳しい香りが立ち込めて・・・。
              
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浴槽に身を伸ばして、ちょうど目の高さに小さな庭が広が
ります。気付けば、宿の内の空間の至るところにそれぞれ
の景色があるのです。
           
3-012-2.jpg
          
           

              
これまでの2回の記事のなかで、書きたいことのなかに
結びつきを見出して、TOTOのプロダクトについても同じ
視点でご紹介してきました。TOTOにもさまざまなこだわ
りはあります。開発者たちの重箱をつつくような技術を
搭載して、たとえば、よじれることなく1枚板のように打た
せ湯が吐水されるスーパーエクセレントバスWSシリー
などが造られているのですが・・・。正直に申し上
げましょう(笑)。今回は降参です。どう考えてもお話を
つなげることができません。こだわりの起点が異なること
心構えが異なること、を思い知ったように感じております。
           
3-013.jpg
             
3-016.jpg
             
上質という言葉があります。意味するところは、品質が
高水準、普遍的な価値を持つ。このようなイメージを想
起させたいときに、プロダクト説明のコピーに気軽に使
われる言葉でもあります。
本当の意味の上質とは、気ばらず、自ら出ばらず。あく
まで自然体であって、ですがその自然体の陰には、あ
たりまえに積み上げられ鍛錬された技と、繰り返しの
営みがあるものなのでしょう。
上質であることには義務と責任が伴う。
そのことを「あさば」で教えていただいたように思います。


*ご参考
スーパーエクセレントバス/TOTO Super Excellent Bath
ニューマテリアル/TOTO New Material

            
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vol.1 海のこと、水のこと、エコロジーのこと
vol.2 GT-Rでドライブ
profile TOTO株式会社 佐藤仁美さん

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TOTO株式会社 コミュニケーション推進部 佐藤 仁美さんvol.2 GT-Rでドライブ

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年8月27日

車好きの友人が GT-Rを増車しました。
そうです。2007年に世に送り出された日本のスーパーカー
です。デビュー当時、ニュルンブルクリンクで7分30秒台を
出し、2009年には7分26秒台を出して車業界の注目の的
となったあの車です。
          
2-001.jpg
          
これまでお披露目のパーティーで、シートのすわり心地や
エンジン音だけは体験していましたが、肝心の走るGT-R
に乗ったことがありません。「一度助手席に乗せたい」
(“助手席”にというところがミソです。運転席に、という
オファーはもらえません・笑)という申し出を断る理由は
なにもなく、ドライブに連れていってもらうことになりました。
          
        
友人はGT-Rの性能を私に見せることを目的としていますから
その運転に遠慮はありません。発進から一気に加速。ゆるく
座っていた我が身が想像以上の力でシートに押しつけられる
ターボエンジンの威力に驚いて、気を引き締めてシートポジシ
ョンを変更しました。6速キープのまま侵入した高速連続カー
ブでの体感速度と実際速度のずれは、4輪駆動の前輪と後輪
への力の移動のぶれのなさを表しています。
             
2-002.jpg
             
友人に催促して上がってもらったワインディングロード
では、右に左にと車体にかかる力にすばやく反応して
4輪全体で蹴り出すようにバランスをとっていく安定性
に驚かされました。Rのきついカーブでも、カーブを抜け
て態勢を整えるのと加速するまでの荷重移動のつなぎ
は実になめらか。
しかも上りであろうと下りであろうと、ほとんど3速と4速
で1.8tの重い車体が軽々と前に進んでいきます。
もちろん友人は足回りのセッティングを自分のドライビン
グスタイルにあわせて調節しています。安定性がさらに
増強されているにしても、もともとの設計が“スポーツス
タビリティ”ですから、多少無理な曲がり方をしても滑る
兆候すらなく、乗っていて余計な心理的ストレスがかか
ることはまったくありません。
            
すごい車だ、といううわさは聞いていましたが、実のところ
“ちょっとパワフルなスポーツカー”としか思っていなかった
のでこれには本当にびっくり!GT-Rという車が、これまで
にない高度な性能を求めて妥協なく作りこまれたテクノロ
ジーの結集であることを実感しました。
            
2-007.jpg
            
関係者や専門家にしかわからないような微細なことで
あっても、重箱の隅をつつくように追究し、妥協なく取り
組むことを、開発者自らが求める姿勢とその結果が積み
上げられて実現するパフォーマンス。これぞ日本の技術
開発だと私は思います。真摯な開発者の“ものをつくる
情熱”は、どのような製品にもこめられていると思います。
           
GT-Rは車ですし、ものづくりのコンセプトをまったく異に
していますが、TOTOでも同じような開発者の日々の闘い
が、思いもよらない製品を実現しています。
           
ところで、みなさまは、シャワーに爽快さと刺激を求める
パワーシャワー派ですか?それとも、癒しとくつろぎを求
めるマイルドシャワー派でしょうか?
           
この春、Samui島に休暇に出かけました。
前号でお話に出しました、明確なサステナビリティ・ポリ
シーを持ったSix Senses Resorts & Spasのひとつ、
Six Senses Hideawayで過ごしたプール付のVilla Suite
のバスルームには、半屋外のデッキがありました。
             
2-004.jpg
           
デッキにはシャワーがふたつ。
ひとつはパワーシャワー、もうひとつは蓮の実のような
レトロなシャワーヘッドから滴るマイルドなシャワーが
つけられていました。その時の気分によってシャワー
を選ぶことができる。ただそれだけなのですが、とても
気持ちが豊かになります。
            
この気持ちの贅沢が気に入ってしまい、朝目覚めたからと
シャワーを浴び、ビーチからあがったからとシャワーを浴び
プールに入ったからとまたシャワーを浴び、ディナーに行く
からとシャワーを浴びる、という感じで、いろいろな時間に
デッキに出ていたのですが、休暇のリラックスした気分の
なかで浴びるには、やさしく降り注ぐ通り雨のようなマイル
ドなシャワーがぴったりでした。
              
TOTOの新しいシャワーは、このマイルド系シャワーです。
              
2-009.jpg
            
エアインシャワーという名前のこのシャワーから降り注ぐ
のは空気を含んだ滴です。肌触りもマイルドで、まるで
水の粒に包み込まれるような浴び心地をお楽しみいた
だけます。浴び心地というあいまいな感性を解析し数値化
してこのシャワーが生まれた開発のストーリーは、TOTO
の環境ポータルサイトGreen Channel内のGreen Story
に掲載しております。
              
2-006.jpg
            
                 
空気を含んだ分、水量も少なくて済みますから、こちらも
前号で少しだけお話した4.8リットルの超節水型トイレシリ
ーズ
と同じく、知らぬ間に環境配慮ができてしまうエコロジ
カルな製品なのです。ですが、水量が少ないからといっ
てひょろひょろしたシャワーではないのでご安心ください。
            
ドライブの話がシャワーの話になってしまいました(笑)。
お伝えしたかったのは、レベルの差こそあれ、いずれ
劣らぬものづくりへの情熱のことです。コンセプトを設定
してそれに向けて追究の手を緩めない。海外で、geekと
呼ばれるらしい、いわば技術フェチの源泉が開発者スピ
リットの土台にあることこそ、日本の職人技なのでしょう。
         
GT-Rのような自国を誇りに思える製品が、世界市場で
輝くことがとても嬉しく思えます。
        
*ご参考
エアインシャワー/TOTO New Material ベーシックプラスシリーズ
エアインシャワー プレスリリース
        
 
          
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vol.1 海のこと、水のこと、エコロジーのこと
TOTO株式会社 佐藤仁美さん プロフィール

TOTO株式会社 コミュニケーション推進部 佐藤 仁美さんvol.1 海のこと、水のこと、エコロジーのこと

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年8月19日

季節が夏に向かうと友人たちに誘われてヨットで海に出る
ことがあります。ヨットはドイツのDehler社の34フィート。船齢
も早10数年とそこそこいっていますし、質実剛健。豪華な
設備はなにひとつありません。でも船内にはコンロが3つ
にオーブンが1つ、2槽式のシンクが着いた小さなキッチン
もありますから、数日間だったら5〜6人でも旅をすること
ができます。
        
photo001.jpg
           
毎回、海の上に出ると、ことさら自然の偉大さに感動し
地球の美しさを感じます。
           
photo002.jpg
            
水深200メートルを超えて航海計器が計測不能になっ
てしまうと、自分の足元に広がっている想像もつかない
世界に、どきどきすることもしばしばです。恐怖とは異な
るのですが、自然への畏れが動悸を高めるのかもしれ
ません。
            
photo004.jpg
            
水温や海の深さや空の光によって刻々と変わる海の色。
天候によって海のうねりが変わり、潮の干満によって潮
の流れも変わります。
船をお持ちのかたがたはきっと同じような思いを抱かれて
おいでのことと思いますが、海に周囲を囲まれていますと
人間は地球の上で「生かされている」存在なのだというこ
とを実感させられます。
            
セール(帆)で、あるいはエンジンを使って海上を進み、船
でしかアプローチしにくい入り江にアンカリング(投錨)して
パスタやサラダのシンプルな料理を作ったり、BBQをしたり。
満腹になったら好みの飲み物をかたわらに、デッキやハン
モックの上で潮風に吹かれながら昼寝をするのは、それは
気持ちのよい夏ならではの楽しみです。
              
photo003.jpg
               
同時に、この娯楽のために、海にとってネガティブなことも
おこなってしまっていることについて後ろめたさを感じること
もしばしばなのですが・・・。
              
実は、ヨット内で消費された水は管を通ってダイレクトに海
に排水されてしまうのです。船底あたりには魚の群れが
見えます。使った食器は、洗剤を使って油汚れもきれいに
洗いたいのですが、洗剤入りの水をそのまま海に垂れ流し
てしまうという事実に気付いたときには困惑しました。無意
識に口をついて出たのは「お魚さんごめんなさい!」(笑)。
謝ってすむ問題ではありませんが、いまでも心のなかで謝
りながら、できるだけ少ない洗剤で汚れを落とせるように
工夫をするようになりました。
            
photo005.jpg
            
また、外洋航海のロングクルージングでもしない限りは
死活問題にはなりませんが、船内で使える真水の量に
は限りがあります。
          
ちなみに2007年の日本人1人当たり1日の水消費量は
303リットル(※1)です。生活用水の利用割合は、トイレ
28%、入浴24%、炊事23%、洗濯17%、洗面その他
8%です。34フィートのヨットですと水タンクの容量は大体
150リットル。
34フィート級のヨットではシャワールームやバスルームは
付けてありませんから、おもに使われるのは炊事というこ
とになります。統計的には炊事だけで1人当たり1日平均
で70リットル使うのですから、単純計算すると炊事2日分
しかタンク内に水がないことになります。
           
水使用量.jpg
  出典:『TOTO環境BOOK』より
             
なにも知らずに初めてこのヨットに乗ったときに、盛大に洗剤
を使い、じゃんじゃん水を使って洗い物をして、「ここは陸地じ
ゃない!」と悲鳴をあげられたこともありましたが、いまでは
洗い物をする人の手元が気になってしかたありません(笑)。
           
水質汚染の危険さや水の貴重さをダイレクトに実感するよう
になったのですから、ヨットの功績は大きいと思います。
           
photo006.jpg
           
地球環境保護についてきわめて自然に語られるように
なってずいぶんと経ちます。
製品ばかりでなく、サービス業でも環境配慮が前面に
打ち出されているのを目にするようになりました。
海外の高級リゾート地のなかには、たとえばSix Senses
Resorts & Spas
のように環境破壊を最低限に食い
止めるために、明確なサステナビリティ・ポリシーを持っ
て経営されている施設が、感度の高い人々の間で評価
されるようになってきたと思います。
             
photo007.jpg
Six Senses Hideaway in Samui Island
            
          
TOTOもかねてより、地球環境に配慮した商品開発を
進めてまいりました。これまで環境配慮は企業として
当たり前の行為として考えていましたので、敢えて謳
ってはいなかったのですが、今年、思いもあらたに環境
ビジョンを公にし、TOTO Green Challengeとして方針を
ご披露しました。
          
TOTO Green Challenge.jpg
          
一連の環境配慮商品はグリーン商品と呼んでおりますが、
そのなかでも家庭内で使われる水消費量の28%を占め
るトイレの1回の水使用量を4.8リットルに減らした超節
水技術は、今年から複数の商品に搭載してシリーズ化さ
れております。
その開発秘話は、TOTOの環境ポータルサイト「Green C
hannel」の「Green Story」でご紹介しておりますので、ご
覧いただければ幸いです。
       
          
TOTO Green Story.jpg
         
            
人が生活に快適さを求めれば求めるほど、地球環境に与
える影響が大きくなるのは事実です。ですが、人間が自ら
の存在を消し去ることはできません。いろいろ矛盾を抱えた
生物であることは確かですが、そのような私たちが、できる
範囲で地球のことを考えることが大切だと思います。
TOTOが打ち出す一連の環境配慮商品は「快適で無理なく
環境配慮ができてしまう」そのような毎日をみなさまにご提
供しております。
           
かく言う私は、あれもダメ、これもダメといったストイックな
環境配慮は長続きできません。ヨットでクルージングもし
たいですし、お気に入りの車でドライブも楽しみたい。
Aをする代わりにBで環境配慮をする、というように「快適で
無理なく」これからも自分の生活のなかでなにをどのように
バランスさせるかを考えることで、地球のことを考えたいと
思います。
           

※1出典:国土交通省 土地・水資源局水資源部 平成22年版日本の水資源について
※2出典:※1に同じ(2006年度東京都水道局調べ)


          
             
TOTO株式会社 
コミュニケーション推進部
コミュニケーション企画グループ
佐藤仁美さん プロフィール

アーネストコラム「洒洒落落」 TOTO株式会社 コミュニケーション推進部     佐藤 仁美さん 

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年8月08日

TOTO佐藤仁美さん.jpg

アーネストコラム「洒洒落落」は各分野で
ご活躍の方々がそれぞれの視点で自由に
テーマを設定し寄稿いただきご紹介させて
いただく連載コラムです。

6人目はトイレ、バス、キッチンなどの水まわりメーカー
TOTO株式会社コミュニケーション推進部 佐藤 仁美さん
から寄稿いただいたコラムをvol.1〜vol.4の計4回に亘り
ご紹介させていただきます。

TOTO株式会社 コミュニケーション推進部
佐藤 仁美さん


Profile
大学卒業後フランスへ。帰国後アメリカの文化財団、
ドイツの建築照明を扱うERCO TOTO(現ERCO Japan)
などを経てイギリスへ。帰国後2004年TOTO株式会社
文化推進部ギャラリー・間(ぎゃらりー・ま) 企画担当、
2008年よりコミュニケーション推進部にて広告宣伝
企画業務。
昨秋スタートしたwebスペシャル・コンテンツが、カンヌ
の国際広告祭始め、海外2、国内2と受賞したことが
最近の嬉しいことです。趣味は、車の運転、セーリング
、茶道。現在の愛車はイタリア車。その1台は究極の大
衆車ジョルジェット・ジウジアーロデザインの初代セリエ
2のFiat Panda。
いまの人生は一度きり。
自分なりに熱く生きることを願っています。

***
TOTOは1917年(大正6年)生まれ。
下水道整備が進んでいない日本で、キッチン、バス、
トイレなど、衛生設備の向上を願った初代社長大倉
和親(おおくらかずちか)の「誓って至誠をもって事に
あたり、欧州斯界の製品を凌駕し、世界の需要に応
じ、ますます貿易を隆盛ならしめんことを期す」という
熱い想いをもって設立されました。

私はこの創業者の“熱い想い”が大好きです。“熱い
想い”を受け継ぎ、コミュニケーション推進部員として
日々、お客様にどうやったらTOTOの魅力や底力をお
伝えすることができるのかを考えております。

TOTOの前身が陶磁器のメーカーで、おなじみの高級
食器ブランド「大倉陶園」とも、もともとは同じ会社だった
ことは意外と知られていないかもしれません。誕生から
90年余り、アジア、アメリカでは技術と品質を武器に、
高級ブランドとしての位置づけを確保し、2009年からは
ヨーロッパ進出を本格展開しています。

水まわり設備は生活の脇役ですし、日本国内では普及
品ブランドとしてこれまで歩んできましたので、TOTOと
耳にされたときのイメージは、皆さまには「かっこいい」
「ステキ」と思っていただけないのが現実でしょう。
もちろん脇役として粛々と義務を果たすことも大切な
使命ですから、背伸びはいたしませんが、私の4回の
拙い寄稿が、TOTOの別のなにかを発見していただく
きっかけになれれば幸いです。

TOTO株式会社 
コミュニケーション推進部
コミュニケーション企画グループ
佐藤仁美


Logo_TOTO_blue.jpg
http://www.toto.co.jp


2010/08/20更新
vol.1 海のこと、水のこと、エコロジーのこと
2010/08/27更新
vol.2 GT-Rでドライブ
2010/09/05更新
vol.3 お宿「あさば」− 上質であることの義務と責任
2010/09/16更新
vol.4 熱くて魅力的な人々 −情熱の炎を絶やさずに−


ROSSO/SCUDERIA編集長 平井 大介さん vol.4 スーパーカー最新事情:アストンマーティン編

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年7月28日

これまで4回にわたってお送りしてきたスーパーカー
最前線コラム、最後に登場するのはアストンマーテ
ィンです。スーパーカーのブランドを語る上で、フェラ
ーリなどと同列にアストンマーティンが入ってくること
に、違和感を覚える方もいらっしゃるでしょうか。でも
現在のアストンは、まぎれもなくトップスーパーカー
ブランドのひとつなのです。
         
アストンマーティンというと、007でボンドカーとして
活躍した印象も強いでしょう。イギリスで長く愛さ
れる、エレガントでスポーティなモデルを生み出し
てきたブランドです。近年、そこに高いクオリティと
先鋭的なデザインを加え、その存在感を高めてき
ました。
            
きっかけは、現在アストンを取りまとめているドク
ター・ベッツの存在。元ポルシェに在籍していた
彼が、“打倒911”で世に出したV8ヴァンテージは
速さとシャシーのよさだけでなく、美しいスーパー
カーとして称賛されました。写真のラピードは、最
近登場した4人乗りのスーパーカー。4人乗りとい
うキーワードから連想させるよりはずっとスバルタ
ンな乗り心地と運転性能、そしてスーパーカーに
は必須のワクワク感を備えたモデルです。アストン
マーティンを選ぶというセンス。私が女性だったら
それだけで惹かれてしまいそうです。
            
***

私は、クルマの楽しみ方は所有すること、運転する
ことだけではないと考えています。そのモデルの魅
力をクオリティの高い写真でつぶさに鑑賞し、成り立
ちや開発者の想いを読み込み、試乗記からその風
を感じ取ることは特にこういったハイエンドのモデル
を楽しむために欠かせない娯楽のカタチだと思いま
す。その想いが伝わるように今後も心をこめて本作
りをしていくつもりですので機会がありましたら小誌
をお手にとって頂けると幸いです。
ご愛読、ありがとうございました。
                
AstonMartin01.jpg
4ドアモデル、ラピード。どこから見ても美しい
ことを命題とされ、誕生しました。

             
AstonMartin02.jpg
ラピード初試乗中。4ドアだと油断していましたが
リアルスポーツカーでした。

               
AstonMartin03.jpg
ニュルブルク・リンクにあるサービスセンターにて
V8ヴァンテージのレース仕様と。



         
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vol.1 スーパーカー最新事情:フェラーリ編
vol.2 スーパーカー最新事情:ランボルギーニ編
vol.3 スーパーカー最新事情:ポルシェ編


ROSSO/SCUDERIA編集長
平井 大介さん プロフィール

ROSSO/SCUDERIA編集長 平井 大介さん vol.3 スーパーカー最新事情:ポルシェ編

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年7月21日

前回、前々回とご紹介したフェラーリ、ランボルギーニ
は、いずれもイタリアのブランド。ランボルギーニは現在
資本こそドイツのアウディの傘下に入っていますが、美
を大切にする創業からのイタリアンスピリットを失わない
まま、アウディの先進技術と相俟ってクオリティの高い
クルマ造りを続けています。合併の幸運な例といえるで
しょう。

今回ご紹介するポルシェは、もちろんドイツのブランド。
取材などでドイツを訪れるたび、「ああ、良い国だなあ」
と感じ入る機会が多いのですが、ポルシェはまさに、ド
イツの空気をそのまま具体化したクルマといっていいと
思います。とにかくイイのです。例えば写真の911カレラ
のMTシフトを操ればそのカチッとした手ごたえに工業製
品としての完成度の高さを感じます。まさに非の打ちど
ころがないんですね。

ただ私の場合、あまりの隙のなさに馴染めないという
思いが実はありました。イタリア車は隙だらけですが
(笑)、その分しっかり長所を伸ばして、五感に訴えか
けるクルマを造らせたらピカイチです。逆にドイツは長所
だらけで、可愛げがないと。

しかし、2010年6月号でみっちりポルシェ特集を作って
から、その思いは一変。だって、完璧なのです。素直
にそれを認めたら、ポルシェ以外ありえない、とまで思
ってしまいました。名車中の名車である73カレラ、934
カレラGT、SUVのカイエンなど、さまざまなモデルがあ
りますが、997カレラのMTのフルノーマルモデル、私の
中ではこれに尽きます。間違いのない良さ。それがまさ
にポルシェの魅力ではないでしょうか。

次回は英国が誇るスタイリッシュスーパーカー、アストン
マーティンについてご紹介します。

Porsche01.jpg
ポルシェ911(997)カレラのMT。これに乗って
ポルシェに目覚めました。


Porsche02.jpg
ポルシェ934。昔、これのタミヤ製ラジコンで
遊んだ方も多いのでは?


Porsche03.jpg
いわゆる『ナナサン・カレラ』。今も昔も911と
ひと目でわかるのがスゴイです。



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vol.1 スーパーカー最新事情:フェラーリ編
vol.2 スーパーカー最新事情:ランボルギーニ編

ROSSO/SCUDERIA編集長
平井 大介さん プロフィール

ROSSO/SCUDERIA編集長 平井 大介さん vol.2 スーパーカー最新事情:ランボルギーニ編

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年7月14日

先日、現在活躍中のモータージャーナリストの
方たちに、スーパーカーについて語り合って頂
きました。その中で印象的だったのは、「世の
中の人全員が認めるスーパーカーは、カウンタ
ックだけではないだろうか」という言葉でした。
詳細は最新号のROSSO(2010年8月号)に掲
載されているのですが、カウンタックというクル
マには、そんな究極の結論を導き出してしまう
くらい、強烈に人を惹きつける魅力があると思
います。

今回ご紹介するブランドは、ランボルギーニ
40年近く前にデビューしたクルマにも関わらず
ランボルギーニといえばカウンタック、カウンタッ
クといえばランボルギーニ、と思われる方も多い
のではないでしょうか。あの翼のように開くドア
(シザードアといいます)は、スーパーカーの象
徴ともいえるでしょう。そのカウンタックのスピリ
ットを今に受け継いでいるのが、ムルシエラゴ。
こちらもデビューから10年近くがたっており、モ
デルとしては成熟期を迎えています。

ちなみに日本でランボルギーニは、フェラーリと
並んで称されるブランドですが、イタリアでは知
らない人も少なくないほどの小さな会社。元はト
ラクターのメーカーで、少ないモデルを細々と、
でも世界中のスーパーカー愛に溢れた人々に向
けて送り出しているブランドなのです。ROSSOは
『月刊ランボルギーニ』というニックネームを持つ
ほど、ランボの情報に関して掲載が多く、私個人
も僭越ながら、メディアの中ではランボルギーニ
に接する機会は断トツに多くなっております。

そんな私の一押しモデルが、ガヤルドLP560-4。
このV10モデルとなるガヤルドは、先日生産台数
が累計1万台に達したと発表された人気モデル
です。特にそのスパイダー(オープンモデル)は究
極の出来だと思っています。LP560-4になる前の
先代『スーパーレジェーラ』(最軽量版)は感涙の
仕上がりで、最近日本上陸を果たした『LP570-4』
となった新型スーパーレジェーラの仕上がりにも
今から胸が躍っています。

次回は運転好きの永遠の憧れ、ポルシェについ
てご紹介します。


Lamborghini01.jpg
ガヤルドLP560-4スパイダー。オープンで聞く
V10サウンドは格別です。


Lamborghini02.jpg
ラスベガスのLP560-4試乗会にて。

Lamborghini03.jpg
LP570-4スーパーレジェーラ。今ランボ
を買うなら、絶対コレです。



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vol.1 スーパーカー最新事情:フェラーリ編

ROSSO/SCUDERIA編集長
平井 大介さん プロフィール

ROSSO/SCUDERIA編集長 平井 大介さん vol.1 スーパーカー最新事情:フェラーリ編

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年7月08日

今回より、アーネストコラム「洒洒落落」に寄稿
させていただくことになりました、スーパーカー&
ドリームカー専門誌『ROSSO』及びフェラーリ専
門誌『SCUDERIA』を担当しております平井と申
します。現場から見たスーパーカー最新事情を
私なりにお伝えできたらと思っています。
どうぞお付き合いください。
          
これから4回にわたり、世界のスーパーカー文化
を牽引する4つのブランド、『フェラーリ』、『ランボ
ルギーニ』、『ポルシェ』、『アストンマーティン』に
ついて、それぞれご紹介しようと思います。
この4つ、ROSSOでは『スーパーカー四天王』など
と勝手に呼んでおります。まず今回は、フェラーリ。
       
ちなみにSCUDERIAは定期的に発行されている
ものとしては世界唯一のフェラーリ専門誌でして
隔月発売ながら15年に渡って発行しております。
現在通算87号。ひとつのブランドで1冊の雑誌が
こんなに長い間成立しているということだけ考え
ても、すごいことだと思います。
         
フェラーリと言えば、クルマに馴染みのない方
でもきっとご存知なブランド。速くてかっこよくて
ちょっと高いクルマ、というイメージでしょうか。
フェラーリは、F1を始めレースに積極的に参戦
しており、現場で得たノウハウをフィードバック
する力は卓越しています。“走ることに関する
技術”がずば抜けているブランド、と言えるでし
ょう。
      
直近フェラーリ・モデルの中で、私の一押しは
『430スクーデリア』。ノーマルの430を100kg
軽量化し、20psパワーアップしたモデルです。
ミッションの『F1マチック』が、まるで本物のF1
マシンに乗っているかのような反応の速さ!
F1ドライバーのシューマッハが開発に関わった
だけあり、コーナリングも自分が考えるよりずっ
と速く走れるし、エンジンサウンドも魂を揺さぶ
るようなレーシーな響き。「ああ、これは史上最
高だ」と強く感じました。試乗していて、心の底
から「このまま乗って帰りたい」と思った数少な
い一台です。
     
その430スクーデリアよりスペックで上回るのが
最新モデル『458イタリア』。まだ試乗の機会を
得ていないのですが、評判は上々。430スクー
デリアが音が大きくスパルタンなのに対し、ベー
スモデルとしての快適さを持ち合わせているの
は間違いないでしょう。しかもこれから、オープン
版、スクーデリア版と進化していくことを考えると
非常に楽しみです。
          
次回はスーパーカー少年の永遠の憧れ
ランボルギーニをご紹介します。
       
          
Ferrari01.jpg
430スクーデリア。センターのストライプが目印です。
         
Ferrari02.jpg
フェラーリ本社の試乗会にて。
          
Ferrari03.jpg
458イタリア。国内某所で撮影。写真よりも実物
のほうがカッコイイです。

         
          
ROSSO/SCUDERIA編集長
平井 大介さん プロフィール

アーネストコラム「洒洒落落」 ROSSO/SCUDERIA編集長 平井 大介さん

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年7月01日

アーネストコラム「洒洒落落」は各分野で
ご活躍の方々がそれぞれの視点で自由に
テーマを設定し寄稿いただきご紹介させて
いただく連載コラムです。
             
5人目は株式会社ネコ・パブリッシング
ROSSO/SCUDERIA編集部
編集長 平井 大介さん
さんから
寄稿いただいたコラムをvol.1〜vol.4の
計4回にわたりご紹介させていただきます。
                      
スクーデリア編集長.jpg
             
ROSSO/SCUDERIA編集部
編集長 平井 大介さん

                
profile
1997年4月に入社後、広告部、カー・マガジン編集部
を経てROSSO編集部へ。2007年12月よりROSSO編
集長に就任。2010年1月よりSCUDERIA編集長を兼務。
現在の愛車はランチア・イプシロン・モモデザイン。
小さいものから大きいものまで基本的にはイタリア車
好きで、左ハンドル+マニュアルのイタリア車以外
買ったことがない。
              
ROSSO.jpg
【ROSSO】
赤い車から連想されるもの、それは
スポーツカーやエキゾチックカーであ
ったり、スピードであったりする。最
新のスポーツカーからハイクオリティ
セダン、そしてチューンドコンプリート
カーなど・・・それらに対する熱い思い
を詰め込んだ月刊誌。毎月26日発売。
           
SCUDERIA.jpg
【SCUDERIA】
エンツォ・フェラーリが創業以来、常に
レースとともに歩み続けたフェラーリ。
数多くの栄光を勝ち取ってきたフェラーリ。
そんなフェラーリのすべてと、フェラーリに
まつわるライフスタイルを紹介する隔月刊
誌。偶数月10日発売。
        
           
ネコパブリッシングWEBサイト
https://www.neko.co.jp/index.php

***********
vol.1 スーパーカー最新事情:フェラーリ編
vol.2 スーパーカー最新事情:ランボルギーニ編
vol.3 スーパーカー最新事情:ポルシェ編
vol.4 スーパーカー最新事情:アストンマーティン編


     

ポーゲンポールジャパン株式会社 川島 東治社長 vol.4 趣味は結局コミュニケーション

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年6月23日

ながらくお付き合いをいただきましたブログ寄稿
も今回で最後となりました。「コミュニケーション」
をキーワードにとりとめのないことを書かせていた
だきましたが、硬い内容になってしまっていたの
ではとの反省を踏まえ、僭越ながら今回は私の
プライベート・ライフを紹介したいと思います。
         
私は何より人と接すること、いろいろと見聞きする
ことが好きです。ひとりでじっとしているというのは
仕事で黙々と作業を進めるときは別にして、性分
に合いません。妻の言葉を借りると「回遊魚」。酸
素を得るためにも常に動いていなければならない
のです。
         
私の休日はある意味、平日より忙しいかもしれま
せん。私の一番の趣味は何かと問われれば、実
益も兼ねるという点で「料理」を一番に挙げたいと
思います。今回はプライベートなことを述べようと
していますので、実益というのはキッチン販売を職
業にしているという意味ではなく、家族にとっても
有益であるという意味です。
             
休日の家での食事は、基本的に全て私が作りま
す。料理することが、その食材を買うために買い物
をするところから含めて、好きなんです。自宅の周
りには、自転車や歩いて廻れる範囲のスーパーが
4店と、いわゆる「市場」を含めた商店街がひとつあ
ります。運動不足を補うことを含め、これらを全て歩
いて廻ることから私の休日は始まります。
        
自家製パン.jpg
        
土曜や日曜の朝は可能な場合は前日に小麦粉を
こねるところから始まる自家製パン。サラダや即製
のツナ缶を使ったパテ、卵料理があって、冬には自
家製のハムも食卓へ。オレンジジュースとコーヒー
と一緒のヨーロピアンスタイルの朝食です。これが
済むとその日の昼食や夕食の献立を考えつつ、ス
ーパー廻りとなるのです。
            
ヨーロピアンスタイルの朝食.jpg
          
この土曜日は久しぶりに休日を取れたので、数
年ご無沙汰していた築地市場に行ってきました。
小売店ではなく、中卸店での買い物です。アイス
ボックスを肩に掛け、さながら「業者」の顔でマグ
ロやムール貝、ホヤなどを購入しました。この日
の夕食はムール貝のワイン蒸し、マグロのカルパ
ッチョ、パンはフォーカッチャというイタリアンメニュ
ー。ワインが進みます。ホヤは酢醤油で予め作っ
ておき、この料理を作っている最中、ちびちびとキ
ッチン・ドリンクを楽しむ私のためだけの肴です。
これが好きで料理を作っているかもしれません。
         
イタリアンメニューの夕食.jpg
        
料理以外に好きなことは運動すること。二男が
なぜ今さら、とも思いますが最近野球の楽しさ
を覚え、日曜日の午前は近くの運動場でキャッ
チボールやノックをすることが日課となりました。
          
近所の銭湯.jpg
       
日曜の午後はきっちり午後3時半から、近くの
銭湯へ必ず行きます。ここは世田谷区でも4軒
しかない温泉で、サウナ、ジェット風呂などもあ
り、私にとってはリラックスできる全てが完備さ
れている最高の施設です。午前中の運動で疲
れた筋肉を癒し、常連さんとの会話を楽しみま
す。汗をたくさん流して新陳代謝を促し、水も多
く摂るので血液も浄化された気分になります。
1時間半程度の入浴を終えると家路に急ぎ、乾
いた喉に冷たいビールを注ぎいれます。生きて
てよかったと実感できる瞬間ですね。
          
         * * *
長い休暇で旅行したり外食したりと非日常的な
休日を楽しむことも好きなのですが、日常として
の私の休日は仕事を一切考えない(これが一番
の「非日常」とも言えますが)、誰からの制約も
受けずに自分の欲求を満たすことのできる本当
に貴重な時間です。それが妻や子供たちのため
にもなり、自分の健康維持にもなり、さらに地域
とのコミュニケーションをも図られていることに私
自身も満足を感じています。
       
コミュニケーションとは、それを通して社会との
連鎖を再認識することでしょう。それを喜びと感
じるか、苦痛と感じるかで大きく二分されてしま
うようです。人は一般的に家族という最小単位
での社会生活があり、成長するに合わせて社
会が大きく膨らんでいきます。人間は結局ひと
りでは何もできないという根本的なことに思いを
馳せると、他を知り、己を知ってもらうことがいか
に大切なことかがわかります。
        
さて、私の寄稿は今回で終了です。ポーゲンポ
ールのキッチンは一部の限られた方々のみに
提供される商品ではありません。それぞれのラ
イフスタイルやご自分を取り巻く「社会」に、実り
あるコミュニケーションを創造し育む空間です。
       
「キッチンを進化させる」と会社を興した創業者
フレデミール・ポーゲンポールは、それを通して
本当に進化させたかったのは、希薄になること
で人間関係や社会を脅かすことになるかもかも
しれない「コミュニケーション」だったのでは、と
私はいつもの銭湯で温泉につかりながら考えた
のでした。
(了)
        
       
ポーゲンポール(poggenpohl)サイト

ポーゲンポールジャパン株式会社 川島 東治社長 vol.3 言語としてのポーゲンポール

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年6月14日

+INTEGRATION.jpg
+INTEGRATION(インテグレ
イションシリーズ)
キッチンや食器棚を壁に埋め込み
家屋との一体感・融合感を高め
ダイニングをより一層リビングへ
近づけた

             
小学2年生のあるとき、先生からの「やまびこはなぜ
起こるか」というクラスへの問いに、手を挙げた私が
自信満面に「ヤマビコという妖怪が人の真似をする
から」と答え、クラス全員から大笑いされたという悲し
い思い出があります。
             
そのほか多数の思い込みによる失敗から、数年前
他界した父親に「視野の狭い見方はするな」と常日
頃言われるようになり、それ以来この言葉が呪縛の
ように頭にこびりついています。私がこれまで様々な
仕事に携わる人生を送ってきたのも、ひょっとしてそ
のせいではないかと思うほどです。

やまびこ.jpg
佐脇嵩之『百怪図巻』より山びこ

子供ながらに考えたのは、ならばいろいろなことを経
験すればいい、ということでした。さらに尊敬していた
中学3年次の担任の先生が「一芸に秀でよ」と自筆さ
れた英和辞典を卒業時にくださり、英語が得意教科
であった私は英語もしくは外国語で身を立てることを
決心します。そのころ読んだ小田実の著書『なんでも
見てやろう』という本で海外で仕事をする自分を強烈
に意識することになります。
         
高校生になり、友人5人でそれぞれが別々の外国語
を覚えようという話が持ち上がりました。その当時NHK
のラジオ講座で英語のほか、フランス語、中国語、ス
ペイン語、イタリア語、ロシア語などあり、誰が一番長
く続けられるかという競争をしたのです。
             
私はスペイン語を選び、脱落していく友人を尻目に結
局1年続けました。スペイン語はいわゆるローマ字的
な発音で読みやすく、巻き舌の発音を覚えるとそれが
得意となって、面白く続けることができたのです。英
語と文法が全く違うのでその面白さもありました。
           
大学に入り第2外国語でスペイン語をと思っていたの
ですが、選択教科にはありませんでした。しかたなく
同じラテン系言語としてフランス語を選択したのです
が、スペイン語の基礎があったので当初はすらすらと
頭に入ってきたことを覚えています。
             
当時、その数年後社会人になってすぐパリで仕事を
することになるとは全く思いもよらなかったのです。
ましてや結婚し、3人の子供が現地で生まれ、フラン
スが第二の故郷ほどにもなるとは微塵にも想像して
いませんでした。そして人生の半分を費やして身に
ついたことが、後半に生かされていくことになります。
英語や他の外国語を学ぶことは、その文化や歴史を
学ぶことです。そのことが日本の理解をさらに深める
ことにもなります。
           
哲学にときどき引用されることに、「数人が同じものを
見ていたとしても、それは同じものではない」という命
題があります。これはいろいろな段階で議論があるの
ですが、言葉に関していえば、同じ「りんご」であって
も英語ではapple、フランス語ではpommeなどと、まず
呼び方が違います。また同じ言葉を使っていたとして
も、その人によってはイメージや意味合いが違う場合
もあります。
           
余談ですが、たまたま例として挙げたappleは、パイナ
ップルが「松(pine)ぼっくり」のような形のappleだから
そう命名されたとか、フランス語の芋はpomme de ter
reといって「土中のりんご」という意味だと知ると、感心
すると同時に外国人のものの見方、考え方などが見え
てきます。
          
上述した父親が言った意味は違うのですが、私には
それだけで視野が広がったような気がして、大げさで
すが救われたような気さえしたのです。しかし確かに
そのような勉強に没頭すると関連してさまざまなこと
を覚えるようになり、ひとつのことを多角的、多義的に
考える訓練となっていたことは事実でしょう。
              
言葉を人に置き換えても同じことです。その人にはそ
れまでの生い立ち、環境、考え方、つまり文化があり
それを理解し共感することがコミュニケーションの重要
な要素となります。単純な意思疎通ではそこまで踏み
込む必要はないのかもしれませんが、コミュニケーショ
ン・スキルという段階になると、お互いの文化をいかに
双方が理解しあえるかという領域に向かっていきます。
               
目指すべき満足度の高いコミュニケーションとは、単な
る言葉のキャッチボールではなく、双方のやり取りにお
いて僅かずつでも「高み」もしくは「深み」に導いていく
ことと私は思います。

       ***
         

「一芸に秀でる」ことと「視野を広くする」ことは、一見
対極的に思えます。しかし私はこう考えます。木の成
長は幹がどんどん太くなり、高く伸びていくことです。
必然として枝葉も増え、やがて大きな樹木となります。
基本となる幹が当初は偏狭な一芸だったとしても、続
けること、さらに没頭することで全体として広い視野が
形成されるのです。
            
言葉への執着が現在の私を形成していると言ってい
いでしょう。しかしポーゲンポールという会社に勤める
ことになったのは、英語を話すからとか、ヨーロッパ文
化を多少なりとも知っているからということではありま
せん。

ポーゲンポールのキッチンが私にとっての「言語」と考
えたからです。つまり、キッチンはキッチンのみにとど
まらず、人が成長するに欠かせない付加価値を多く有
していることに気づかされたということです。これが私
の集大成となるかどうかは神のみぞ知るですが、多角
的・多義的に物事を捉え真理・真実を探究する世界が
ポーゲンポールの一貫したコンセプトの中にあると私は
信じました。
                
ポーゲンポールを知ることがその人にとって少しでも新
しい「高み」、「深み」になることを心から願っています。
(了)

フレデミール・ポーゲンポール.jpg
創業者 フレデミール・ポーゲンポール


ポーゲンポール(poggenpohl)サイト


ポーゲンポールジャパン株式会社 川島 東治社長 vol.2 ポーゲンポールと函館

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年6月07日

アーネスとアーキテクツ_キッチン.JPG
「+SEGMENTO」(セグメントシリーズ)
         
私の出身地は北海道函館市です。株式会社ブランド
総合研究所が行っている「地域ブランド調査」(直近
の2009年調査)によれば、全国1000市区町村の中
で最も魅力的な町として第1位にランキングされまし
た。3年連続1位だった札幌市を抑えて初の第1位だ
そうで、素直に喜びたいと思います。
         
評価項目は63と多岐にわたり、回答者数も32,000人
といいますから信憑性は十分といえるでしょう。詳細
こちらを見ていただくとして、結果分析の中で私が
感じた点を少し述べたいと思います。
          
主要な評価項目を見ると、函館市は「魅力度」で1位
になったものの、「認知度」、「情報接触度」、「居住
意欲」、「訪問率」ではベスト5に入っていません。
「観光意欲」で2位、「産品購入意欲(食品)」で3位に
はなっています。
            
ここからは私の分析と意見です。函館市に対し「魅力
的ではない」と回答したのはたったの1.4%だったそう
です。ランキング2位の札幌市には3.9%が「魅力的で
はない」と答えています。認知度や訪問率では上位で
ない函館市が魅力的というのは、まだ訪れていない
人の想像やイメージがかなりポジティブであるというこ
とでしょう。
             
私がもし函館市長でしたら、この結果に喜ぶよりも大
変なことになったぞという思いのほうが強くなると思い
ます。つまり、函館を「体験」していない多くの方々の
憧れにも似た期待が大きく得点を伸ばしてしまったの
で、当地を訪れ、もし失望感を感じてしまったらそれは
倍返し的に大きくなるからです。
              
これは企業のブランドについても似たようなことがいえ
ます。
             
ある高いブランド商品について、実際に購入しユーザ
ーとなった人の口コミや各種メディアでの露出や喧伝
などから、まだ購入していない人は大きな期待と夢を
抱きます。そしてやっと購入できることとなり喜びも最
高潮の瞬間、店員の対応の悪さやショーケースの汚
れなどに気がつきます。手にした商品は紛れもなく憧
れの品なのですが、それ以外のところで自分の抱い
ていたブランドイメージにケチがついてしまうのです。
             
私たちポーゲンポールは世界一のキッチン・ブランド
という自負を持ってお客様に接しています。またお客
様もポーゲンポールのユーザー、オーナーとなること
に憧れを抱いてくださっています。ありがたいことに、
専門家を含めた多数の方々から弊社のショールーム
に高い評価を頂戴しています。しかし、折角そうなの
に、私たち社員の対応やディスプレイ商品の見せ方
などでお客様のイメージを変えてしまうリスクがありま
す。これは本当に怖いことです。
              
人はその印象の80%は視覚から得るという報告があ
ります。そこでもし印象を悪くしてしまったら、残りの20
%で挽回を図らなくてはなりません。それがコミュニケ
ーションです。
             
たった20%分しかないコミュニケーションで挽回できる
のか、との問いには即座にできますと答えます。それが
可能なのがコミュニケーションスキルと呼ばれるものな
のです。目で見た印象というのは確かめようのないもの
で、実は本人もそれが事実かどうか疑っています。その
疑心暗鬼に救いの手(双方にとって)を差し伸べることが
できるのは、十分に配慮されたコミュニケーションしかあ
りません。
             
企業は人なり、というのは真実です。いちセールスマン
の魅力度が傷ついた商品や企業のブランド全体を救う
ことさえあります。私たちは見られることを意識しつつ、
挽回のためのコミュニケーションスキル向上に努めなく
てはなりません。

            ***
          
ポーゲンポールの日本での知名度や認知度は他国
ほど高くありません。他の輸入キッチンブランドにもい
えますが、これは日本において、キッチンとは住宅設
備のひとつに過ぎず、家やマンションを購入すると既
にあるもの、という考えが根付いており、オーダーメイ
ドという観念がほとんどないことが原因だと思っていま
す。
            
しかし、近年どうでしょうか。キッチンを家具、インテリア
自分の好きなデザインを選べるもの、という考え方が
広がっていませんでしょうか。弊社直営店が進出した
ひとつの理由は、このような変化が現れた日本に大き
な期待を寄せているからです。
            
ドイツ版ビジネス・ウィーク誌でキッチン業界にてトップ
ブランドに認定されたポーゲンポール。その同じ年の
昨年、地域ブランド調査でトップとなった函館市。
やるしかないべさ。
(了)
           
              
アーネストアーキテクツ_hakodate.jpg
函館山から見る、扇形に広がる函館市
               
アーネストアーキテクツ_Toji_as_President.jpg
ドイツの新聞に掲載されたグランドオープン(今年3月10日)
のテープカットの様子。 右から、ポーゲンポール本社
デュフナー社長、川島、スタンツェル駐日ドイツ大使
ポーゲンポール本社ギル・グローバルリテール統括役員

           
             
ポーゲンポール(poggenpohl)サイト

ポーゲンポールジャパン株式会社 川島 東治社長 vol.1 コミュニケーション・キッチン

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年6月03日

+ARTESIO.jpg
「+ARTESIO」(アルテジオ)
               
これから4回にわたりアーネストブログに寄稿すること
となりました、ポーゲンポール ジャパン株式会社代表
の川島と申します。
              
まずは自己紹介としまして、弊社が初めて立ち上げた
日本法人の代表に私が就任した経緯をお話しさせて
いただきます。
       
事実は小説より奇なり、こんなこともあるのです。
               
一昨年の7月、当時、観葉植物販売会社の営業担当
役員を務めていた私は東京ビッグサイトに出展してい
ました。最終日、もうすぐ終了となる時間に一人の外
国人が歩いているのを見かけ声をかけたのです。
               
私はフランスに都合11年住んでいました。その外国人
は小柄でフランス人のような風貌でもあったので、久し
ぶりにフランス語で会話ができればと思った程度でした。
実は彼はイギリス人だったのですが、欧州に進出した
い日本企業と日本に進出したい欧州企業向けのコンサ
ルタントということでした。私はオフィス向けに意匠性高
い鉢植えレンタルの受注営業を行っていたので、彼の
手がけた在京外資系企業向けにと期待したのです。
        
それから2ヵ月後、彼から連絡があり、初めてポーゲン
ポールジャパン設立計画の話を聞きました。私が日本
法人の代表者候補ということになっているといいます。
実は今、全世界のポーゲンポール直営店統括役員が
来日しているので、すぐに会ってほしいとのこと。
              
結局その役員から多くの宿題を出され、数週間後の彼
の来日時にプレゼンを行なうこととなりました。そして最
終候補者となり、社長との最終面談のためドイツ本社
へ飛び、結果、2008年12月をもって採用され入社した
というわけです。
               
採用の理由はコミュニケーション能力、とのこと。キッチ
ン業界での経験の有無は問わないといいます。このコ
ミュニケーションという言葉は、私の人生においてもキー
ワードともいえるもので、これはキッチン販売に限らず人
間の生活全般にかかわる重要なアイテムであると再認
識したしだいです。
         
            ***    
          
コミュニケーションとは「意思疎通」のことです。それに
わざわざ「スキル」とか「能力」とかを加えてひとつの
技能として扱っているということは、裏を返せば、うま
く意思疎通ができない人たちがいるということです。
              
その基礎となるのが、一般的に言って、生まれてから
育つ過程で常に同居している家族間のコミュニケーシ
ョンではないでしょうか。愛情を持って相手の話を聞き
いろいろな意見交換や問題解決を行いながら信頼とい
う絆を築いていきます。人間にとって必要不可欠な意
思疎通の根本や、それを技能というレベルに押し上げ
る基礎もやはり家庭にあるというのが私の持論です。
            
さて、kitchenは英語ですが、その語源はラテン語の
coquinaで、「一緒に火を使うところ」という意味だそう
です。また、日本語の台所の語源は平安時代にあっ
た「台盤」という、食べ物をのせる脚付きの台という説
や、女性体内の器官である「胎盤」であるとの説もあ
るそうです。
                 
調べてみますと、人類の竪穴式住居時代の「キッチ
ン」は住居の中央にあり、直火で加熱調理を行ってい
たそうなのですが(つまりcoquinaです)、排煙口が中
央の高い場所にあったために衛生上の問題が生じ、
キッチンは住居の端に押しやられ、さらに別室となった
というのです。
                
しかし現代ではそのような衛生面での心配はありま
せん。はるか昔のようにキッチンが家の中心にあっ
ても問題ないのです。昨今のネガティブな社会現象
の原因を考えると、コミュニケーションの場となるキッ
チンはむしろ中心に位置付けたほうがいいかもしれ
ません。
               
日本における台所の語源が「胎盤」だったとすれば
母親が胎児にへその緒を通して栄養や酸素を与え
るこの器官をイメージしたことに大きな感動を覚えま
す。まさに胎盤(台所)は、一番安心できる母体(家)
にあって、胎児(子供)が外界(社会)に出るまで十
分に育むための、空間と機能を持っているのです。
仮に真実の語源ではなくとも、台所が本来持ってい
る役割を胎盤に例えることに大きな意義を感じます。
           
冒頭の写真は弊社がこの春のユーロ・クッチーナ(ミ
ラノ家具国際展示会にて2年ごとに開催されるキッチ
ン国際展示会)で弊社が新しく発表した「+ARTESIO」
(アルテジオ)というキッチンです。
                
弊社の創業者フレデミール・ポーゲンポールが118年
前、「キッチンを進化させる」とスローガンを掲げ、以来
弊社は一貫してキッチンは家の中のソーシャル・セン
ターであるというコンセプトを訴えてきました。この
+ARTESIOはセンターというより、とうとう屋根まで持
った家そのものとも思えるキッチンですが、根底に流れ
る考えは家族や仲間とのコミュニケーション・センター
である、ということです。
(了)
                     
ハ゛ト.jpg
【バドザルツフレン市場】
ここは弊社本社と工場のあるヘルフォート(Herford)から
少し離れたところで、他国のポーゲンポール社員が定宿
としているホテルのある町です。ここに肉、魚、野菜の市
場が週末に立ちます。

               
公園の~1.JPG
【公園の新緑】
同じくバドザルツフレンにある公園です。
今の季節はとても 新緑が濃く、市民の
憩いとなっているところです。

                    
研修調~1.JPG
【研修調理】
これは弊社の社員を連れて本社研修
した際、実際に料理を してみたときの
ものです。左端が私です。

          
            
ポーゲンポール(poggenpohl)サイト

アーネストコラム「洒洒落落」 ポーゲンポールジャパン 川島 東治社長

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年5月28日

アーネストコラム「洒洒落落」は各分野で
ご活躍の方々がそれぞれの視点で自由に
テーマを設定し寄稿いただきご紹介させて
いただく連載コラムです。

4人目は「ポーゲンポールジャパン」代表
取締役 川島 東治さんから寄稿いただいた
コラムをvol.1〜vol.4の計4回にわたり
ご紹介させていただきます。

ポーゲンポールジャパン株式会社
代表取締役 川島 東治さん

Ebog1.jpg

日本勧業角丸証券に入社後、クレディ・スイス・ファースト
・ボストン証券、山一證券フランス、メリルリンチ日本証券
社と18年間の証券マン時代を経て2008年よりポーゲン
ポールジャパン株式会社代表取締役に就任。


テーマは
「コミュニケーション・キッチン」

これから4回にわたりアーネスト・ブログに
寄稿することとなりました、ポーゲンポール
ジャパン株式会社 代表の川島と申します。
弊社ポーゲンポールは今年で創業118周年
を迎え、発祥のドイツというよりは世界でも
最も歴史の古いキッチン家具メーカーです。
また、ドイツ国籍企業に対し定期的に総合
ブランド評価を行っているドイツ版ビジネス
ウィーク誌によりますと、昨年全産業内で
6位、キッチン業界ではトップのランキング
を得ております。

ブログ中では「コミュニケーション・キッチン」
というテーマについての話を中心に、キッチ
ンや弊社の話だけではなく、日頃私が思っ
ていることを様々な観点からつづっていこう
と思います。
お付き合いのほどをよろしくお願い致します。
            代表取締役 川島 東治


ポーゲンポールジャパン.jpg
ポーゲンポール(poggenpohl)サイト

ニシザキ工芸株式会社 西崎克治社長 vol.4 塗りを極める

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年5月24日

4-1.JPG
画像/作業中の藤戸伸治さん。漆を塗る前に表面を
平滑に研ぎ上げます。漆を塗り上げるには数十回も
の工程があります。

          
vol.3に続き、藤戸伸治さんの仕事場を見ていき
ましょう。神輿づくりには、木工や漆工、彫刻、
錺(かざり)金物、金箔、鋳造、金メッキなど様々
な技術を持った職人達が不可欠です。その中で
藤戸さんの専門は漆を塗る「塗師」という仕事で
す。ご先祖は徳川家康と共に江戸に移り、天皇
家をはじめ徳川家、細川家、津軽家などの御用
達をつとめてきたそうです。
          
御神輿はとても細かな木製パーツを下から組み
上げる形で作られています。囲垣(いがき)や屋
根を支える桝組(ますぐみ)、垂木(たるき)などは
特に細かな部品が多く、これを丁寧にひとつひと
つ分解・掃除して、痛んでいる所を補修してから
下地を調整し、漆を塗っていきます。
             
「お神輿を補修することは、昔の職人と会話すること」
と藤戸さん。職人の技量はもちろん、急ぎの仕事を
した痕跡や、作った季節なども分かるそうです。浅子
神輿店で修業しながら、御神輿の構造を全て把握し
た藤戸さんは、分解や組み立ても全て自分で行いま
す。建築的な要素と家具的な要素の両面を合わせ
持った御神輿は、江戸時代に成熟した職人技術の
結晶といえるでしょう。
             
4-2.JPG
画像/屋根を支える桝組の部材です。龍の彫刻など
細かな部材を分解し、一点ごとに補修していく根気の
いる仕事です。

             
一方、我々ニシザキ工芸が得意とするのも、建築・
家具に関わる様々な木材の「塗り」です。ひとこと
で塗りといっても、建築の外壁や橋、自動車から、
小さなものではお椀や携帯電話まですべてが塗装
されています。塗装には大きく2つ「保護」と「お化粧」
という機能があります。御神輿に例えれば、水や傷、
汚れから守る保護としての塗りと、荘厳さを演出する
ためのお化粧としての塗りです。
              
この目的は、木製建材や家具塗装にも当てはまりま
す。木材を割れや乾燥、汚れから守ると同時に室内
空間にあった雰囲気や色に塗り上げます。自動車な
どの工業製品と大きく違う点は、天然の木の表情を
活かしながら、色をつけていくことです。人の顔と一
緒で、同じ種類の木でも産地によっても色、表情が
全く違います。これをどうコントロールしてインテリア
と調和させるか。そこが塗装の奥深い点で、我々の
最も得意とするところでもあります。
              
4-3.jpg
画像/ニシザキ工芸の塗装工場。同じ種類であっても
木の表情は様々です。塗装によって質感や色を揃えて
いくのが職人の腕の見せ所です。

              
最近は「保護」と「お化粧」に加え、第三の機能も要求
されています。触れたときに、木の味を感じられる「触
感」を大切にした塗装です。今までの機能では割り切
れない「感性価値」とでもいうのでしょうか? もちろん
木材をそのままにして塗らなければ、素材感は残りま
す。ただしワレてきたり汚れが染み付いてしまいます。
しっかり塗って、しかも木肌感を残した仕上がりであ
る「ナチュラルフラット」という塗装手法。これが最近
好評で出番も多くなってきています。
               
4-4.JPG
画像/「ナチュラルフラット」仕上げは、木の温もりを活かし
ながら表面を保護できる、画期的な塗装方法です。

                
しっかりとした材料選び、間違いのない仕事振りは
当然のこと。それに加え、数字では置き換えらない
感性価値を理解し、具現化できるような職人集団と
して、これからも住宅作りのお手伝いをしていきたい
と考えております。


ニシザキ工芸
http://www.nishizaki.co.jp/

ニシザキ工芸株式会社 西崎克治社長 vol.3   神輿師という仕事

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年5月17日

3-1.jpg
画像/前回の深川八幡祭りから、三好二の
御神輿です。こまめな修繕が大切なのは住
宅と変わりません。

           
3年に1度開催される深川八幡祭りは、深川の
各町内から50数基の御神輿がくりだす壮大な祭り
です。別名水掛け祭りともいわれるように、沿道か
ら盛大に水を掛けるため、御神輿の補修は欠かせ
ません。そんな時、頼りになるのが神輿師の藤戸
伸治さん
です。神輿師とは様々な職人の手によっ
て作られる御神輿を統括する、建築でいう棟梁の
ような存在です。
             
藤戸家は室町時代から500年以上続く塗師(ぬし・
漆塗り職人)の家柄で、藤戸伸治さんで19代目と
いうから驚きです。実は江戸指物と漆は深い関わ
りがあります。子供の頃、自宅作業場で仕上がっ
た火鉢や座卓を積んだトラックにのり、塗師屋につ
いて行った記憶もあります。
               
3-3.JPG
画像/19代続く塗師であり、神輿師としても活躍
する藤戸伸治さん。一流の腕前を持ちながらも、
飄々としたお人柄です。

            
現在も私共では漆塗りのサイドボードや建築部材など
漆を使った仕事はあります。また、総漆塗りの塔の
建造をお手伝い等させて頂いたり、宮内庁からお仕事
を戴くことも ……。こうした漆との関わり上、我々は現
在、2つの漆関連団体に所属しています。ひとつは
「日本漆工協会」これは漆の職人や材料屋が中心
の団体です。もうひとつは「漆を語る会」。漆を採取
する人から、器などを作る人、塗る人、売る人、使う
人と超党派の会です。
           
この会合で、藤戸さんともご一緒しています。実は
我々の地元「富岡八幡宮」には、日本一の黄金神
輿といわれる「一の宮」が納められていて、その屋
根などを塗ったのが藤戸さんです。高さ約4.4メータ
ー、重さ4.5トン。屋根につく鳳凰の胸には7カラット
眼には4カラットのダイヤが一対。そして漆で仕上げ
た屋根には24キロもの金粉を塗りこんだそうです。
塗った本人が静かに語っているのだから間違いない
でしょう。まるで純金で出来た屋根なのです。深川
の人間にとって、これはかなりの自慢です。
                 
3-2.jpg
画像/富岡八幡宮に納められている
「一の宮」。通常午前9時より午後5時
まで見学できます。

              
「一の宮」を手掛けた市川市・行徳の浅子神輿店
は残念ながら数年前に店を閉じてしまいました。
ここで塗師として20年以上修業した藤戸さんは、
埼玉に工房をかまえ、御神輿の修復を中心に全
国的に活躍し昔の職人仲間を指揮して新調の
神輿も手掛ける神輿師になりました。
                
そもそも御神輿は、神社の境内を数百分の一に
縮小したミニチュアです。まわりを「囲垣」という
柵で囲い、正面には鳥居があります。本殿には
階段をかけ、扉の中に御霊を奉ります。その上
には大きな屋根が載っています。木地屋、彫刻
屋、飾り金物屋、塗師屋と御神輿を作り上げる
仕事は、神社を作ることそのものでもあります。
彼らの手を借りれば、壁一面の神棚や仏壇を誂
えることも大差ないこと。近い将来、住宅に納め
るそんな仕事のお手伝いをしたいと思っています。
               
3-4.JPG
画像/補修中の御神輿。下の土台は境内で
本殿の階段を上がると扉があり、その中にご
神体を納めます。

             
              
ニシザキ工芸
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ニシザキ工芸株式会社 西崎克治社長 vol.2 日本の伝統を守るパトロンになる

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年5月10日

ニシザキ工芸inuenomi.jpg
          
どんなにモダンでシンプルな住宅も、職人の腕
と感性があってこそ五感に訴える仕事になる。
いい職人の手掛けた家には物づくりへの思いが
込められていると信じています。そして職人達に
とって、自己の思いを表現する大切な道具となる
のが、カンナやノミなどの「道具」です。

第二回は「井上刃物店」の店主 井上さん。

久しぶりに墨田区の「井上刃物店」に足を運びま
した。ここは明治から続く一流の道具店です。店
主の井上さんは、店先でもくもくとカンナの刃を研
いでいました。今はプロの大工でもホームセンタ
ーで道具を調達する時代。毎日カンナの刃を研ぐ
職人は少なくなりました。
           
ニシザキ工芸inouegaikan.jpg
画像/首都高の走る大都会の中で
古い店構えを守る「井上刃物店」。

       
井上刃物店の周りには、寺社や数寄屋建築を手
掛ける名人級の職人がまだまだ残っています。こ
うした職人達にとって、道具はまさに「生きる糧」
なのです。道具の値段は、大工1日の日当が相
場ともいわれます。一流の大工は何枚もの刃物
を買い揃え、その中からお気に入りの一枚を見つ
けていきます。素早く、きれいに、すっきりと切れ
る刃物は仕事の良し悪しとスピードを決めます。
井上さんは道具を見るだけで大工の腕前が分か
るそうです。
        
ニシザキ工芸inouekanna.jpg
画像/カンナの刃を購入した際は、はじめ木を荒く削る
ために使い(荒シコ)、次に中くらいの荒さ(中シコ)、最
後に仕上げと使い込んでいきます。大工は使いやすい
刃だけを残し、仕上げに使うのです(右から荒シコ・中シ
コ・仕上げ用)。

                
大工道具には名工と呼ばれる巨匠の作もあり、
今は美術品として扱われています。しかし井上
さんは「刃物は値段ではない。使ってみないと
その良さは分からない」と言います。井上刃物
店は伝説的な鍛冶職人との付き合いもあり、そ
の作も沢山持っていますが、ほとんど売ったこと
はないそうです。その訳は「道具は職人に使わ
れて初めて道具といえるから」。
          
ニシザキ工芸inouehamonotogi.jpg
画像/「刃物は自分で研いでみないと分からない」
毎日のように刃物を研ぐ井上さん。若い人達に道具
の使い方を教える教室も開いています。

              
         
こうした超一流の鍛冶職人を知るからこそ、
井上さんは「使える」刃物を尊重するのだと
感じました。鍛冶職人達に使い手の希望を
伝え、一緒になって道具を進化させて来た
のも井上さんをはじめとする道具店です。
道具を通して、共に家づくりに参加してきた
人達なのです。
               
例えば、一見モダンなドアも和風建具の技術
が生かされています。厳選された素材を使い
腕のよい職人によって作られた、自然な木目
を活かしたきりっとした仕上がりは、いい刃物
から生まれます。それは美しいだけでなく、木
の導管が潰れないため腐りにくく長持ちするの
です。

伝統技術に関わる職人を公的に保護すること
も大切です。しかし実際の社会に役立つ仕事
をしてこそ、職人の技は後世に伝えられていく
のだと思います。家づくりの中に職人の技を取
り入れることで、伝統技術のパトロンとなること
ができるのです。こうしたことも家づくりの喜び
といえるのではないでしょうか。
          

ニシザキ工芸inouetennai.jpg
画像/店内には様々な道具が並んでいます。中には
何年に一回しか使わないような稀少な道具も。腕のた
つ大工は、こうした珍しい道具をいつでも使えるように
準備しておくそうです。

              
ニシザキ工芸
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ニシザキ工芸株式会社 西崎克治社長 vol.1 成田山を彫った職人の「表札」

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年4月26日

kisimotohori.jpg
          
これから4回に分けて、私が普段お世話になっ
ている職人や道具のことをご紹介したいと思い
ます。ハイセンスな空間や家具もデザインだけ
では、五感に訴える高感度な物は作れません。
それは職人の優れた手業や道具によって生ま
れるのです。
          
第一回は「江戸木彫刻」の名人、大正14年生
まれの岸本忠雄(号・後藤祐浩)さん
          
岸本さんの工房兼店舗は、ニシザキ工芸から
歩いて5分ほどの深川江戸資料館そばにあり
ます。一歩店に入るとムクの木のいい香りが
漂ってきました。店の奥をのぞくと、畳の作業
場にいる岸本さんが、いつも通り作業台の前
に座っていました。
     
kishimotogaikann.jpg
画像/岸本さんの工房エントランス。
モダンなデザインに木彫が栄えます。

          
kishimototyoukokutou.jpg
画像/岸本さんは名人でありながら本当に
きさくな方です。何本あるか分からないほど
の彫刻刀を駆使して、今も現役で活躍され
ています。

           
実は岸本さんとは祖父の代からのお付き合い
で、座卓を飾る彫刻などをよく彫ってもらってい
ました。戦後工房の再建を私の祖父がお手伝
いして、その分を彫刻の仕事で返したという事
もあったとの話。深川ならではの職人同士の
深いつながりを感じます。
                   
岸本さんは「江戸木彫刻」を継承する貴重な職
人として、勲六等瑞宝章、名誉都民、江東区指
定無形文化財保持者にも選ばれています。しか
しその飾らない人柄からは、権威じみた風情は
かけらも感じられません。国会議事堂や旧最高
裁判所、天皇陛下即位の式台を彩る彫刻をはじ
め、成田山正面に掲げられた大看板「成田山」を
彫ったのも岸本さんです。その一方で小中学校
の課外授業や趣味の木工教室を手伝うなど、幅
広い交流によって「江戸木彫刻」の伝統を伝える
活動も行っています。
          
kisimotosakuhin.jpg
画像/インテリアを彩る建築彫刻から仏像
や彫像レリーフ、篆刻など、様々なタイプ
の彫刻を手掛けています。下絵や書など
も全て自分で描いているそうです。

         
過去の作品集を見せて頂くと、意外にも有名ホテ
ルなど洋風インテリアの仕事が多いことに気付き
ました。江戸木彫刻というと「和」を想像しますが
いわゆる日本の洋館建築を飾ってきた華麗な装
飾を沢山彫っているのです。こうした点も、江戸=
東京で仕事をしてきた職人ならではの特徴だと感
じました。
        
kisimotohyousatu1.jpg
画像/何といっても、この彫りの深さが
岸本さんの腕前を物語っています。

          
岸本さんにはぜひ、自宅の表札を彫ってもらいた
いと思っています。今はステンレス板にシルクス
クリーンプリントですが、そろそろ年相応の表札
が欲しくなってきました。岸本さんは彫刻だけで
なく、南画や書道の腕前も超一級です。その篆
刻(てんこく)は、字体の筋の強弱や余白の凹凸
刃物の痕などに、なんともいえない味わいがあり
ます。なにより誰もが目にする「成田山」を彫った
名人に表札を彫ってもらえるなんて素敵ではない
でしょうか。
             
kisimoto.jpg
画像/一番難しい物は何ですか?と伺うと
「トラや牛のように実物のいるもの」とのこと。
龍や獅子など空想の生き物の方が彫り
やすいそうです。


おそるおそる値段を聞いてみると、表札であれば
私にも都合のつく金額で彫ってくれるとのことです。
岸本さんは芸術家としてではなく、ひとりの職人と
して一途に仕事をしてきた方なのです。生活の中
で活かされるために彫られた作品に、私は芸術品
以上の魅力を感じました。表札だけでなく、玄関先
やリビングに飾ってもよし、ぜひお客様にもお勧め
したいと思います。私の表札の材料はけやき。
背景は緑色ともう決めています。

ニシザキ工芸
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アーネストコラム「洒洒落落」 ニシザキ工芸株式会社 西崎克治社長

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年4月21日

nishizaki.jpg
写真中央、ニシザキ工芸株式会社 西崎克治社長
             
アーネストコラム「洒洒落落」は各分野で
ご活躍の方々がそれぞれの視点で自由に
テーマを設定し寄稿いただきご紹介させて
いただく連載コラムです。

第3回の担当は
東京・深川の江戸指物師の家に生まれ、現在は
モダンなインテリア空間にあったオーダー家具
キッチン製造を手掛けながら「深川八幡祭り」
総代もつとめるニシザキ工芸株式会社の西崎克治さん

テーマは
職人の技が息づく家づくり
〜表札から荘厳なお神輿まで日本の手業を住宅に残したい


家づくりに関わる職人達は、普段表に出ない縁
の下の力持ちです。しかし実際に手を動かし、
家という物を作り上げているのは彼らなのです。
ハイセンスな空間や家具も、デザインだけでは
成り立ちません。高度な職人の腕前と、自在に
操られる道具があってこそ、五感に訴える住宅
は生まれます。完成した建物にかくれている職
人達の技や道具を、4回に分けてご紹介したい
と思います。
       ニシザキ工芸株式会社 西崎克治


*ニシザキ工芸株式会社 西崎克治社長の寄稿
は4月26日(月)よりスタート致します。
        
ニシザキ工芸
リビング.jpg
http://www.nishizaki.co.jp/       
          
東京・深川でオーダー家具やオーダーキッチン
を製造するニシザキ工芸は、一昔前までは神
楽坂にも店を構え、花柳界に火鉢や脇息、衣
桁、鏡台などを納めていた江戸指物(さしもの)
師でした。指物の伝統を踏襲しながら現代の
インテリア空間にあった仕事を手掛けていま
す。また地元・深川八幡祭りには会社ぐるみ
で毎回参加し「富岡八幡宮神輿総代連合会」
の総代として、来年の大祭にむけての活動を
開始したところです。

アートフロントギャラリー 廣濱さん vol.4 「as you like」―寝室編―

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年4月19日

松田重仁.jpg
松田重仁
木彫レリーフ


 「寝室」というとホテルの中では「最も寛げる
場所」と言えるでしょう。その為、一般的には
心地よい眠りへと誘ってくれる、穏やかな優し
い色合いの作品を飾るのがベスト、のように
言われています。しかしながら、ご自宅の、し
かもご自分の寝室の場合は誰に気を遣うこと
なく一番お好きな作品を飾ることをお薦めいた
します。
     
 夜寝る前にそれを目にすることで一日の疲れ
を癒し朝は朝で一日の始まりのエネルギーを
充填してもらえることでしょう。また、季節毎に
作品を掛け替えたりされても好い気分転換に
なります。例えばベッドリネンやスプレッドを交
換するのと同時にアートもコーディネートされて
みてはいかがでしょうか?それだけで充分に
部屋の模様替えが可能です。
      
渡辺信子 .jpg
渡辺信子
レリーフ(布、木)

            
布施典子.jpg
布施典子
エッチング

        
 実はアートを飾るスペースとして意外にも「寝
室」は一番の穴場なのです。リビングルームよ
りむしろお手軽に室内の雰囲気を変えることが
できますよ。写真のようにヘッドボード上の壁が
空いていればそちらにアートを掛けるのが最適
です。その場合、地震などでも簡単に外れない
金具を用いると安心です。
         
 是非お好きなものをお好きなように飾っていろ
いろと楽しんでみてください。あなただけのプレ
イベートギャラリーに。
           

           
アートフロントギャラリー
http://www.artfrontgraphics.com/

アートフロントギャラリー 廣濱さん vol.3 「Fresh」―ダイニングルーム編―

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年4月09日

黒木周.jpg
黒木周
クロスグラフ(版画)

           
 楽しい会話と美味しいお食事。何かの記念日
または結婚式などの際、家族や大切な人とホテ
ルで食事をされる機会は少なくないでしょう。そ
んな時、食べ物がより一層美味しく感じられる
演出は大変重要です。まず何よりも「フレッシュ
で清潔感があること」、これはホテルやレストラ
ンに限らず、もちろん一般家庭においても一番
大切でしょう。
           
 例えば、鮮やかなビタミンカラーの絵が飾って
あってもいいかもしれません。上の写真のように
椅子の張り地やクッションと色味を合わせつつ
それより少し鮮やかな作品を飾っても素敵ですね。
「夜はちょっと落ち着きたい」という場合でも外光
の有無、照明の色、明暗によってだいぶ雰囲気
を変えることが可能です。
          

田中芳
雲肌麻紙に箔、岩絵具

               
 もしも「インテリアをあんまりカラフルにするのは
ちょっと…。」という場合は少し動きのある楽しい
作品を飾ってみてはいかがでしょうか。空間全体
に生き生きとした表情が生まれます。一家団欒
きっと家族の会話も弾むでしょう。
         
アートフロントギャラリー
http://www.artfrontgraphics.com/


アートフロントギャラリー 廣濱さん vol.2 「Comfortable」−リビングルーム編−

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年3月30日

百瀬寿 和紙に箔、顔料など.jpg
百瀬寿
和紙に箔、顔料など

           
 「ホテルのような空間」と聞いてまず思い浮か
べるのが、ゆったりしたラウンジスペースでしょ
うか。大きなソファが贅沢に広い場所に置かれ
ドカッと腰を下ろす心地良さ。落ち着いた雰囲
気の中でゆったりした時間を楽しめる、それこ
そが高級ホテルの醍醐味ではないでしょうか。
そんな寛ぎの場所を演出するアートとはどんな
作品でしょう?

ホテルの場合、不特定多数の方が作品を目
にします。そのとき、「見ていて気分が優れな
い」、「違和感がある」、「圧迫感がある」と感
じない作品を設置することが重要になります。
アートは主観的なものですので定義づけは
困難ですが、簡単に言ってしまうとそういう
ことです。

一般家庭に置き換えて考えても、来客の多い
ご家庭の場合は同じようなことが言えるかもし
れませんね。しかしながらリビングは家族みん
なでゆったり過ごす空間です。まずは住人が
気に入った作品を飾ることが何よりではない
でしょうか。

上の写真は個人のお宅の実施例ですが、
百瀬寿さんのグリーンの作品がお庭の植栽の
緑に良く映え見ていると清々しい気分になりま
す。元気なお子様のいるお宅で、明るく楽しい
雰囲気にぴったりでした。

           
佐伯和子 タペストリー.jpg
佐伯和子
タペストリー

        
 またもう一枚の写真、佐伯和子さんのタペス
トリーは、こちらのお宅の5m超の吹き抜けに
合わせて特別に制作していただきました。奥様
のお好きなオレンジ色を織り込んで華やかさと
シックさの両面でリビングを演出しています。
         
 こんな風にご家族皆さんの好きな作品が、
玄関同様「Welcome」の心も表現できていれば
素敵かもしれませんね。
          
アートフロントギャラリー
http://www.artfrontgraphics.com/


アートフロントギャラリー 廣濱さん vol.1 「Welcome」−エントランス編−

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年3月24日

名称未設定 1.jpg
田中芳
雲肌麻紙に箔、岩絵具


 第1回目のテーマはホテルのエントランスや
レセプション家の中で言えば「玄関ホール」の
アートについてのお話です。
        
 ホテルの場合、お客様が入っていらして、あ
る種の高揚感、期待感を抱かせる場でありな
がら「いらっしゃいませ」あるいは「おかえりな
さい」と温かく向かい入れる場でもあります。
       
 何よりもまず来客の目を楽しませつつ、見て
いて「ホッとする」温かみある作品が求められ
ます。具体的には「土の温もり」であったり「水
の流れ」であったりと人造物ではない「自然」
を感じられるような作品ではないでしょうか。
          
 それは表現されたモチーフが「自然」のことは
もちろん、素材そのものが「土」や「漆」、「岩絵
具」といった天然素材であることも含まれます。
       
 一般のご家庭では、草原や森などの緑を描い
た風景画なども飾りやすいかもしれませんね。
上海の某ホテルのエレベーターホールでは、満
面の笑みをうかべた人の彫刻作品が、訪れた
人を温かくお迎えしています。
      
 大胆なデザイン、フォルムの中にも親しみ易さ
を併せ持つ作品こそがエントランスに相応しいと
言えましょう。家もホテルもまずは入ったときの
第一印象がポイントです。
          
 一歩足を踏み入れたとき、そこがどんな場所
としてアピールされているのかがわかります。
そんなことを念頭に世界各国のホテルを巡って
みても楽しいかもしれませんね。
          
         
アートフロントギャラリー
http://www.artfrontgraphics.com/
            

アーネストコラム「洒洒落落」 アートフロントギャラリー 廣濱さん

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年3月24日

アートフロントギャラリー.jpg

アーネストコラム「洒洒落落」は各分野で
ご活躍の方々がそれぞれの視点で自由に
テーマを設定し寄稿いただきご紹介させて
いただく連載コラムです。

第2回の担当は
ザ・ペニンシュラ東京、星野リゾート「星のや」な
どのアートコーディネートを手掛けられております
アートフロントギャラリー ギャラリスト 廣濱さん

テーマは
住みたいのは五つ星ホテルのようなラグジュアリー空間
〜「理想の家」と「上質なホテル」の共通項を探る〜


「どんな家に住みたいですか?」とお尋ねすると
「ホテルみたいな部屋」というお答えをよく耳にし
ます。その場合の「ホテル」とは一体どんな空間
なのでしょうか?そして、どんなアート作品を置く
ことで完成されるのでしょうか?弊社のアート設
置事例をご覧いただきながら「理想の家」と「上
質なホテル」の共通項をご一緒に探ってみまし
ょう。尚、最初にお断りさせて頂きますが、アート
は「これが正解」ということはありません。見る側
も作る側も常に自由で対等です。
        アートフロントギャラリー 廣濱

    

アートフロントギャラリー
代官山 アートフロントギャラリー.jpg
http://www.artfrontgraphics.com/

世界の版画2000点を中心に、絵画・彫刻
レリーフなど様々なアート作品を取り扱っ
ており、大地の芸術祭 越後妻有アート・ト
リエンナーレをはじめとする展覧会の企画
運営なども行っています。


モダンリビング編集長 下田結花さんvol.4 「フィンランドに見た豊かさ」

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年3月17日

IMG_0116.jpg
ヘルシンキにある「イッタラ」本社のショールーム。
周囲の壁は外壁だった部分。中庭にガラスの天井
がかかりショールームに。昼 間からテーブルには
キャンドルが。これも北欧では普通のこと。


 3月6日から11日まで、フィンランドに取材に行った。
          
上の写真は、その取材先の1つ、「イッタラ」のショー
       
ルームだ。「イッタラ」は以前、ガラスのみを扱っていたが
      
現在は陶磁器の「アラビア」などを統合し、キッチンウエア
        
からテーブルウエア全般までを扱う。北欧を代表する
        
ブランドのひとつである。
             
 このショールームは、「アラビア」の工場の中庭だった
          
部分にガラスの天井をかけたスペース。体育館1つ分
         
くらいの広さはある。
             
 私たちが着いたのは、朝の9時頃だったが、この一角
        
の大きな木のテーブルの端で、マーケティングチームの
          
4人の女性がミーティングをしていた。そのテーブルの上
          
には、サンドウィッチやクッキー、お茶、ジュースの入った
            
「イッタラ」の器が並んでいた。
            
 ぱっと見たら、どこかのティールームかと思うだろう。
         
だが「イッタラ」に限らず、北欧のオフィスや社員食堂では
           
これはあたりまえの光景だ。デンマークの会社や工場でも
              
何度も目にしている。美しい器や空間、セッティングは
            
特別なことではない。住宅と同じように、オフィスでも
            
過ごしている。
            
 こうした景色を目にするだびに、「暮らし」とはなんだろう
          
と思う。テーブルという、ささやかなスペースから始まる
             
幸せがある。そのことを北欧の人々はよく知っているの
             
ではないだろうか。
           
 ショールームには、有名なフィンランドの建築家
        
アルヴァ・アアルトがデザインしたベース(花器)「サヴォイ」
            
もあった。アアルトのベースは現在ではスティールの型を
              
使っているが、初期には木の型で作られていたという。
          
その意味は、翌日、イッタラ村の工場を見学して
        
初めて理解できた。
         
 「イッタラ」のガラス製品は、鉛を含むクリスタルではない。
           
環境を配慮し、無鉛ガラスでありながら、高い透明感を
               
出している。製品は熟練した職人による完全なハンドメイド
          
のものと、機械と手作業の両方からなる作り方に分かれる。
             
私たちが訪れたイッタラ村の工場は後者だった。
         
 工場に入ると、真っ先にアアルト・ベースの作業が見えた。
          
炉から取った熱ガラスの固まりを回しながら吹いて玉にし
            
スティールの型(波形)に押し込む。ある程度冷えたところで
             
型から取り出して棒から外し、除冷室でさらに3時間冷まし
           
上部をカットして磨く。
       
こうしてアアルト・ベースが出来上がる。6人くらいの
         
チームで1分半に1個くらいのスピードでできていくが
        
2割は不良品としてその場で廃棄、ファイバー工場へ
            
送られ、再生されるという。

 アアルトがこのベースをデザインしたのは1937年。
           
さまざまなヴァリエーションを持ちながら、70年以上
             
愛されてきた。
         
 この物作りの伝統と、それを使い続けるていねいな生活。
            
そこに、今、私たちが求めている「豊かな暮らし」が
           
あるような気がしている。
         
IMG_0146.jpg
ショールームの一角では,ミーティングが行われ
ていた。テーブル にはイッタラの器が。この横に
は立派なキッチンもある。

        
IMG_0123.jpg
ショールームにセッティングされた
アアルト・ベース。この ウォーター
グリーンは今年の新色。

        
IMG_0121.jpg
かつては、この木の型に吹きガラスを
流し込んで、成形されてい た。型も長
くは持たず、出来上がったベースも表
面がつるっとしてはいなかった。

          
IMG_0242.jpg
イッタラ村の工場で。白のアアルト・ベースを制作し
ているとこ ろ。色ガラスはクリア・色・クリアとガラス
を3層重ねて作る。

           
IMG_0264.jpg
上部の膨らんだ部分をカットする前のアアルト・ベース。
上の穴の 部分は、ガラスを吹くための棒が付いていた
ところ。出来上がったベースは、ひとつひとつ、微妙に
形も厚さも違う。

                
               
モダンリビングのブログ「ML日誌」に掲載中。
下田編集長の「編集長日記」
http://mdnlvng.exblog.jp/

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モダンリビング編集長 下田結花さんvol.3 「コーヒーテーブルブック」

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年3月08日

DSC06618.jpg
センターテーブルに置かれた「コーヒーテーブルブック」。
インテリア本や写真集、画集などが多い。

                  
 4月7日発売のモダンリビングでは、過去5年間に、パリ
       
ロンドン、デンマークの取材で撮影したインテリア写真を
       
使って、海外のインテリアがなぜ素敵なのかを解き明か
          
す特集をする。そのための写真を膨大な中からセレクト
          
したのだが改めて気づいたことがある。
             
 欧米のリビングには必ずフォーカルポイントがある。
          
暖炉、あるいは大きなアートなどだ。それを囲むように
        
ソファやパーソナルチェアが置かれている。そして、中央
         
にはセンターテーブル。その上には何冊も、大型の豪華
       
本が積まれていることがある。画集や写真集などの美し
               
いヴィジュアル本だ。
            
 こうした大型豪華本のことを「コーヒーテーブルブック」
         
と呼ぶ。初めて聞いたとき、コーヒーテーブルといっても
              
サイドテーブル程度のものしか思い浮かばなかったから
              
不思議に思ったものだ。欧米の住宅を取材で訪れるよう
            
になって、やっと合点がいった。こうした本は、ゲストや家
            
族がソファに座ってお茶を飲みながら、眺めるためのもの
           
だが、インテリアとしてひとつの「スタイル」になっている。
             
日本では、インテリアがまだ成熟していないと感じること
          
があるが、それはこうした「インテリアのスタイル」といえる
           
ものが、定着していないからではないだろうか。
                
例えば、アート。多くの日本の住宅では、壁は白いまま
          
空いている。一部の愛好者を除くと、アートはまだ一般的な
              
ものではない。しかし、欧米ではインテリアとしてのアートが
               
どの家でも存在していた。
               
 ロンドンで訪れた何人かの著名なインテリア・デザイナーの
             
家では、モノクロ写真を壁に飾っていた。モノクロ写真といっ
              
ても、作家のオリジナルプリントで、ギャラリーで販売されて
             
いる「アート」である。モノクロ写真は、色がない分、どんな
             
インテリアとも相性がよく、少しノスタルジックでもありながら
            
インテリアにモダンさをプラスする効果もある。
                   
 だからだろうか。コーヒーテーブルブックの中に、そうした
           
モノクロ写真の写真集が多いのも自然なことなのだろう。
         
        
DSC06606.jpg
ロンドンのインテリア・デザイナーの自宅。リビングの
ソファの後ろの壁には、モノクロ写真のオリジナルプリ
ントが飾られていた。

               
DSC06622.jpg
同デザイナー宅のベッドルーム。
寝室らしい写真をセレクトしている。
ベッド周りもすべて黒と白でコーディ
ネイトされていた。

         
DSC09040.jpg
モダンリビングのインテリア撮影から。
モノクロ写真をコーディネイトして撮影。こんな
和モダンのインテリアとも、不思議と合う。


                    
                
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モダンリビング編集長 下田結花さんvol.2 「グリーンに溢れた空間」

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年3月01日

DSC02776.jpg
小さな場所には、畳める家具が便利。
ディレクターズチェアとバトラーテーブル
でどこでも自分のパーソナルカフェに。

             
 ここ5年ほど、毎年4月にはミラノ・サロ
              
ーネの取材のため、ミラノに行く。ミラノ・
              
サローネは、世界最大の家具見本市。
               
ファッションでいえば、パリコレのような
                
もの。世界の主なインテリアブランドが
             
凝ったインスタレーションや展示で
                
新製品を発表する。主会場には限らず
               
ミラノ市内のさまざまな場所で繰り広げ
               
られる。

 それを連日見て回っている中で、いつも
           
感じることの1つは、なんて緑が多いの
           
だろうということだ。どの建物もベランダ
        
や屋上から、グリーンが溢れている。
              
そしてそこには必ずと言っていいほど
          
小さなテーブルや椅子が置かれていて
            
「過ごす場所」になっている。プライベ
         
ートカフェのようだ。
               
 日本でも住宅の設計の際に、外部
            
空間を取り込むことを希望する施主が
         
ふえている。庭だけでなく、コートハウス
        
であったり、テラスであったり、バスコート
       
であったり。しかし、残念ながら、空間は
        
あっても十分に活用されていないことも
       
多い。その理由のひとつは、グリーンが
       
足りないからだ。
          
 撮影のときは、外部空間に鉢植えの
       
グリーンを持ち込む。その量にたいてい
        
の場合、施主は驚かれるが、たっぷりの
          
グリーンを置くと、外部空間ならではの
        
心地よさは格段にアップする。実際、体験
        
するとみなさん納得し、多くの場合、グリ
       
ーンを買い取りたいとおっしゃる。
          
 グリーンを探し、選び、鉢や鉢カバーを
        
合わせるという作業は、個人ではなかなか
         
大変だ。手入れの心配や、枯れてしまったら
        
どうしよう、という不安もある。
          
 そこで、モダンリビングでは、日植ガーデン
          
と個人住宅向けの観葉植物レンタル
        
「LOVE GREEN」をスタートした。モダンリビング
           
が一軒一軒のインテリアや空間に合わせて
         
樹種や鉢をセレクトし、グリーンの置き方を
         
プランニング。グリーンのプロである日植ガーデン
       
が搬入、月1回メインテナンスに伺う。これなら
        
インテリアや空間にあったグリーンをコーディ
        
ネイトでき、枯れてもすぐ取り替えてもらえ
        
手がかからない。LOVE GREENには、屋外だけ
       
でなく、室内のグリーンのレンタルプランもある。
            
 東京のベランダやテラスを、ミラノの街のように
        
グリーンで満たしたい。そして、そこでお茶やお酒
         
を楽しむ「おうちカフェ」をする人が増えることを
         
私たちは密かに願っている。
            
DSC02758.jpg
LOVE GREENを使っての撮影。外部空間
を過ごす場所にするには家具も重要。

         
DSC02772.jpg
ベンチを置いて、アウトサイドリビングに。
クッションを置いたり、テーブルクロスをかけた
りすることで、ぐっとくつろげる場所になる。

          
       
DSC02755.jpg
都会のベランダでも、置きグリーンでこんな緑に溢れ
た空間を作る ことができる。
          

            
             
★「LOVE GREEN」についての詳しい内容
お問い合わせは、専用WEBサイトをご覧ください。
(観葉植物の購入にもご対応しています)
http://www.love-green.jp/


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モダンリビング編集長 下田結花さんvol.1 「絵画の歓び」

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年2月22日

「一角獣を抱く貴婦人」ラファエロ作.jpg
ラファエロ・サンツィオの「一角獣を抱く貴婦人」
              
絵画は多くの物語を秘めている。
            
ラファエロの「一角獣を抱く貴婦人」もまさに、そうした1枚だ。
             
今、上野の東京都美術館で開催中の「ボルゲーゼ美術館展」
             
を見に行った。
             
東京都美術館は、上野公園の奥まったところにあり
             
出かけて行くにはちょっと気力がいる。
             
それでも「ボルゲーゼ美術館展」は
             
行くだけの価値があった。
             
会場を入ってすぐのところに、美術館の建物の大きな
               
写真が掛かっていて、その成り立ちが語られている。
                 
ローマ教皇パウルス5世の甥、シピオーネ・ボルゲーゼ
                 
枢機卿がヴァチカンの権威を背景に収集したコレクション
                
といってもよい。ルネサンス・バロック絵画の傑作が多い。
            
ラファエロの「一角獣を抱く貴婦人」は、18世紀から
              
19世紀にかけて加筆され、全く違った絵「聖カタリナ」
                 
として存在していたという。
                     
そのモノクロ写真も展示されているが、肩は覆われ、
                 
背景は隠され、一角獣は聖女にまつわる車輪に
             
取り替えられていた。
                   
修復によって姿を取り戻したのは、1930年代に
             
なってからだ。
                  
ラファエロらしい端正な面差しもさることながら、
                 
衣装とジュエリーの印象も強い。
               
「ファッションから名画を読む」(深井晃子・著/PHP新書)
                   
によると、この時代、服は袖と身頃を紐で留め付け、
              
その間から高価な白いリネンの下着を覗かせていた。
               
この絵にも、その特徴がよく表れている。
               
この絵を眺めていて、ふと浮かんだ小説があった。
                    
塩野七生さんの書いた「メディチ家殺人事件」(朝日新聞社)
                     
だ。その中に出てきた女性がフィレンツェの宝石職人に
                    
オーダーして作らせた首飾り。以前、ローマで見た
                
ラファエロの絵の首飾りを再現してほしい…
                 
その描写は、まさにこの絵の首飾りそのものだった。
                 
37歳という若さで亡くなった早熟な天才
               
ラファエロ・サンティオは、高貴な人々からも愛された
              
眉目秀麗な青年だったと言う。
              
背景となる歴史、画家の人生、そしてさらにその絵が
              
経てきた時間と、1枚の絵から広がる物語は果てしない。
                 
絵そのものの美しさももちろんだが、その「物語」が
                
いつも私を引きつけてやまない。
                 
                 
東京都美術館.jpg
「ボルゲーゼ美術館展」が開催されている東京都美術館。
上野公園 の奥まったとところにあるレンガ造りの建物。
この展示終了後、改修に入り、休館する。

ボルゲーゼ美術館.jpg
ローマのスペイン広場の階段を上がると広大な
公園が広がる。そこ に佇む,ボルゲーゼ美術館。
17世紀始め,古代ローマの荘館 を手本に
コレクションを収蔵する目的で建てられた。

「メディチ家殺人事件」塩野七生著.jpg
塩野七生・著「メディチ家殺人事件」(朝日新聞社)は
歴史上の事実を元にした小説。トスカーナ大公コジモ一世
の青年期に起こった事件をモチーフに、当時のフィレンツェの
生活が、生き生きと描かれている。


ボルゲーゼ美術館展
場所 東京都美術館(上野)
http://www.borghese2010.jp/index.html 
会期  1月16日(土)〜4月4日(日)
時間 午前9時から午後5時まで
休館日 毎週月曜日
           
             
アシェット婦人画報社
「モダンリビング」編集長 下田結花さん

旧婦人画報社(1999年アシェット・フィリ
パッキ・ジャパンと合併、現アシェット
婦人画報社)に入社後、書籍編集部、
別冊編集部、女性誌の編集部を経て
2003年から「モダンリビング」の
編集長に就任。
モダンリビングのブログ「ML日記」にて掲載中。
下田編集長の「編集長日記」
http://mdnlvng.exblog.jp/

「モダンリビング」は1951年に創刊。
建築としての家づくりにとどまらず、
インテリアにも重点をおき、毎号
「幸せを実感できる暮らしと空間」
を提案するビジュアル建築誌です。
http://www.hfm.co.jp/product/modernliving

アーネストコラム「洒洒落落」スタートします

  • アーネストコラム「酒酒落落」
  • 2010年2月22日

モダンリビング 下田結花さん.jpg
                  
アーネストブログのスペシャルコンテンツとして新たに
アーネストコラム「洒洒落落」がスタートします。

各分野でご活躍の方々がそれぞれの視点で自由に
テーマを設定し寄稿いただき、ご紹介させていただく
連載コラムです。

初回は「モダンリビング」編集長 下田結花さんから
寄稿いただいたコラムをvol.1〜vol.4の計4回にわたり
ご紹介させていただきます。

アシェット婦人画報社
「モダンリビング」編集長 下田結花さん

旧婦人画報社(1999年アシェット・フィリ
パッキ・ジャパンと合併、現アシェット
婦人画報社)に入社後、書籍編集部、
別冊編集部、女性誌の編集部を経て
2003年から「モダンリビング」の
編集長に就任。
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下田編集長の「編集長日記」
モダンリビングのブログ「ML日記」にて掲載中


「モダンリビング」は1951年に創刊。
建築としての家づくりにとどまらず、
インテリアにも重点をおき、毎号
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